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万華鏡

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第七十八話 バレンタインデーその二

「和風RPGの般若みたいな」
「般若って言い過ぎでしょ」
「実際にそうなんだよ」
 そこまで恐ろしいというのだ。
「うちの女子は」
「言うけれどね」
「何だよ」
「女の子を般若にさせてるのはね」
「俺だってんだな」
「女の子だって普通にしていれば怒らないわよ」
 琴乃はチョコレーをと鍋に入れながら弟に言う。
「別に」
「本当にちょっとしたことで怒るんだよ、うちのクラスの女子は」
「ちょっとって何をしたらよ」
「最近胸大きくなったんじゃね?とか言ったらさ」
「殴られたとか?」
「引っ掻かれたんだよ」
 殴られたのではなく、というのだ。
「危うく噛まれそうにもなったわよ」
「それはまた極端ね」
「実際にそう思ったから言っただけだよ」
「確かにその娘も極端だけれど」
 それでもだと言う琴乃だった。
「あんた自身も悪いわね」
「引っ掻かれる様なことしたのかよ、俺」
「そうよ、その言葉を」
「胸のこと言ったら駄目なのかよ」
「女の子の顔や身体のことは絶対に言わないの」
「じゃあデブとかチビとかもな」
「どれもよ、絶対に駄目よ」
 姉は弟にこう厳しく言う。
「さもないと引っ掻かれるどころじゃ済まないわよ」
「そんなにやばかったんだな」
「そうよ、女の子にはね」
「優しくかよ」
「気を使わないと」
 そうしなければというのだ。
「あんたそのうち大変なことになるわよ」
「そんなにかよ」
「確かに女の子は怒ると怖いから」
 むしろ男より恐ろしい、金襴緞子の角隠しも狛犬の雌の角もそうしたものを表していると俗に言われている。
「気をつけなさいよ」
「その言葉覚えておいた方がいいよな」
「お母さんだって怒ると怖いでしょ」
「確かにそうだよな」
「そう、だからね」
 それでだと言う琴乃だった。
「女の子もよ」
「言わなくていいことはか」
「言うとね」
「般若になるんだな」
「そうよ、鬼か羅刹かね」
 そうした存在も挙げる琴乃だった。
「夜叉とかね」
「怖いのばかりだな」
「あんたどれを見たい?」
「どれも嫌に決まってるだろ」
 これが弟の返答だった。
「何で好き好んでそういうの見ないといけないんだろ」
「だったらよ」
「そういうことはか」
「そう、言わないの」 
 女の子に、というのだ。
「言っておくけれど女の子が何か言われて泣くかっていうとね」
「殆どないよな」
「やり返してくるでしょ」
「倍返しでな」
 何処かの銀行員ではないがだ。
「くるよ」
「そういうのは受けたくないでしょ、だからね」
「女の子にはか」
「変なこと言わないの」
 くれぐれも、というのだ。
「女の子は怖いんだから」
「そのこと覚えていないと駄目か」
「さもないとね」
「さもないと?」
「あんた包丁で刺されるか」
 若しくは、というのだ。
「鉈でお腹斬られるわよ」
「何だよ、それ」
 その例えにはだ、弟も顔を姉に向けて問い返した。 
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