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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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森の少女

ある日、おれたちは22層にあるキリトの家に遊びに来ていた。その理由はキリトからのメールだった。
俺は少し興味がわいたので、ミザールを連れて22層のログキャビンに来た次第である。
「んで、キリト。さっさと説明してくれ」
「ああ。ここなんだけどな?」
キリトがマップを呼び出すと、キリトの家から少し離れた森の一角を指した。
「昨日、村で聞いた噂なんだけどな…。この辺の森が深くなってる所…。出るんだってさ」
「「は?」」
意味深な笑みを浮かべるキリトに俺達は訊き返した。
「「何が?」」
「幽霊」
念の為確認する。
「…アストラル系の奴ではなく?」
「うん、ホンモノ。プレイヤー…人間の幽霊。女の子だって」
「「…」」
なんかさっきからミザールの汗がハンパない。かく言う俺も震えが止まらないが。
「ちょいまち。これはゲームだぞ?ゆ、ゆゆ幽霊なんてでで出るわけ…」
「それはどうかな~?」
いかにも楽しそうなキリトが追い討ちをかける。
「例えばさあ…。恨みを残して死んだプレイヤーの霊が、電源入りっぱなしのナーヴギアに取り付いて…」
「「いい加減にしろ(して)!!」」
同時に武器を取り出すと、キリトに向ける。
「悪かったよ、今のは不謹慎な冗談だ。まぁとにかく、それを確認するために呼んだわけだ」
ちらりとアスナを見ると、手を合わせて謝っていた。俺は少しため息を付き、
「良いぜ、行ってやるよ」
その後、死なない程度にミザールに叩かれたのは言うまでも無い。





































小道を歩き出して______実際に足を動かしてるのは俺とキリトでアスナとミザールは肩の上______十数分後、深い森の中へと入っていった。杉に似た巨大な針葉樹が聳え立つ間を縫ってゆっくりと歩く。
すると、アスナが言った。
「大きい木だねぇー。ねぇ、この木登れるのかなぁ?」
「う~ん…ライトはどう思う?」
「俺に振るなよ…。システム的には不可能では無い気がするぞ?なんなら試すか?」
「ううん、それはまた今度の遊びテーマにしよう。ーーーーーーー登ると言えばさぁ」
とアスナがキリトの肩に乗ったまま体を伸ばし、木々の隙間から遠くに見えるアインクラッド外周部を見る。
「外周部にあちこち、支柱みたいになって上層まで続いている所あるじゃない。あれ……登ったらどうなるだろうね」
「……私も知りたいなぁ」
と、ミザールが俺を見る。が、
「あ、俺やったことあるよ」
キリトが言った。
「「ええー!!」」
上、煩い。
「俺もその付き添いで一緒に居た。結論から言えばダメだった。岩自体でこぼこしてたからひょいひょい登ってたけど大体八十メートルくらいで落ちたぞこいつ」
「え、ええ!?流石に死ぬでしょうソレ」
「うん。だから俺も登ってコイツの服の首根っこ掴んだ」
「いや~、ライトのアシストなきゃ死んでたな」
「嫌々、普通は結晶転移を使うからな?」
「流石、キリト」
「ミザールさん?それ誉めてるのですか?」
他愛ない会話を交わしながら歩く内、森はどんどん深くなっていった。心なしか鳥の声もまばらになり梢を抜けて届く陽光も控えめになってきた。
アスナは改めて周囲を見回しながら、キリトに訊ねる。
「ね、その……ウワサの場所って、どの辺なの?」
「ええと……」
キリトがマップで現在位置を確認する。
「あ、そろそろだよ。もうあと何分かで着く」
「そう言えば、具体的にどんな噂なんだ?」
「ええと、一週間位前、木工職人プレイヤーがこの辺に丸太を拾いに来たそうだ。この森で採取できる木材は結構質が良いらしくて、夢中で集めている内に暗くなっちゃって……。慌てて帰ろうと歩き始めた所で、ちょっと離れた木の陰にーーーーーーーちらりと、白い物が」
改めて聞くと汗が止まらなくなったが、話は容赦なく続く。
「モンスターかと思って慌てたけど、どうやらそうじゃない。人間、小さな女の子に見えたって言うんだな。長い、黒い髪に白い服。ゆっくり、柱の向こうを歩いていく。モンスターでなきゃプレイヤーだ、そう思って視線を合わせたらーーーーーーーカーソルが、出ない」
「「ひっ……」」
「キリト、ストップだ。流石に俺無理」
キリトは更に言葉を続けようとするのを防ぐため、アスナとミザールを肩から下ろし、殴ろうとしたーーーーーーーその時。
俺達からかなり離れた針葉樹の幹の傍らに、白い物がちらりと見えた。
とてつもなく嫌な予感をひしひしと感じながら、俺はそれに視線を凝らした。すると視線を集中している部分の解析度が上がる。白い何かはワンピース。その裾から覗いているのは……脚だ。
「き……キリト君、ライト君、あそこ」
「う、嘘だろおい……」
「ガクガクブルブル」
三人の様子を見て俺は半ば呆れていると、どさり、と言う音が耳に届いた。
「あれは……幽霊なんかじゃないぞ!!」
その途端、キリトは叫び走り出す。
「ちょ、ちょっとキリト君!?」
「全く……」
キリトに続き、俺も少女に駆け寄る。針葉樹の下に到達すると、既にキリトは少女を抱き抱えていた。まだ意識は戻って無いらしい。念のため、少女の体を見たが、幽霊らしき現象は見受けられない。
すると、遅れながらアスナとミザールもやって来る。
「だ、大丈夫なの?」
「うーん……」
キリトは少女の顔を覗き込みながら言う。
「とりあえず、消滅しないって事は生きてるって事なんだろうが……妙だな……」
「ライトもそう思うか?」
「「妙って?」」
アスナとミザールが同時に問う。
「あのな……幽霊じゃないならどうしてカーソルが出ないんだ?」
「「あ……」」
二人は少女の方を見て納得したらしい。
「何かの、バグ、かな?」
「んなもん知るか。俺の知る限り、バグなんて起きたこと無いしな」
ぶっきらぼうに俺は言う。
「とりあえず、放ってはおけないわ。目を覚ませば色々判ると思う。家まで連れて帰ろう……勿論、二人もね」
「「わかった」」
一応同意はしたが……さて、明日まで首をかっ切る事が無きゃ良いが………






























キリト達の家に戻った俺達は、アスナのベッドに少女を寝かせ、キリト達は向かいのベッドに、俺達は椅子を持ってきて座った。
「まず一つだけ確かなのは、こうしてウチまで移動させられたからにはNPCじゃ無いよな」
「そう……だね」
「つーか、こいつ本当にプレイヤーかすらも怪しいがな」
するとミザールが首をかしげ、
「何で?」
と言った。
「……まぁぶっちゃけ確証が無いから言えねぇ。とにかく今日は寝て、明日考えるしかねぇだろ」
「……そうだな。ライトの言う通りにしよう」
結局、俺達はキリト達の家で寝泊まりすることになった。全く………こうなるなら来なきゃ良かった。 
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