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ポルターガイストは使いよう

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第二章

「是非買いたい」
「それでは」
 こうしてだった、ブラウンはその家を買うことにした。そしてここで業者の人に何時何処でポルターガイスト現象が起こるのかを聞いた。
「それでそれが起こる時間は何時なんだい?場所は」
「はい、リビングで」
「ああ、この部屋だね」
 家の写真を観ながらの言葉だ、立派なリビングの写真を。
「いい部屋だね」
「そこに夜の十二時になると」
「そこにあるものが乱れ飛ぶんだね」
「はい、そうなります」
「貴方もそれを見たんだね」
「これまで住まれた方がどなたも苦情を言ってこられるので」
 それでだというのだ、彼にしても。
「この目で確かめました」
「それで夜の十二時になったら」
「はい、実際に起こりました」
 リビングでだ、ポルターガイスト現象がというのだ。
「凄かったですよ」
「わかったよ。そのことも」
「それでは」
「契約をしよう」
 書類の手続きもした、こうしてだった。
 ブラウンは彼の家族と共にその家に入った、家族は家に入ると家の隅から隅まで見て感嘆の言葉を漏らした。
「いや、いいお家ね」
「そうだよね」
「こんないいお家はじめてよ」
 妻のオードリーだけでなくだ、息子のアンドリューも娘のキャサリンも家のあちこちを見てこう言うのだった。
「頑丈そうで」
「しかも綺麗で」
「格好いい感じね」
「本当にあれみたいじゃない」
 特にだ、妻のオードリーがブラウンに言うのだった。
「イギリスの昔のお家」
「映画に出て来るみたいな」
「風と共に去りぬに出てきてもおかしくない位よ」
「ははは、あれは南部だよ」
 ブラウンは妻の言葉には笑ってこう返した。
「合衆国じゃないか」
「あっ、そうだったわね。けれど」
「それだけ立派なお家だっていうんだね」
「しかも設備も凄く整っていて」
 趣があるだけではなかった、この家は。
「キッチンもバスも冷暖房も」
「全部いい感じだね」
「これは凄い家よ」
 オードリーは感嘆の声をここでも漏らした。
「こんなお家で暮らせるなんて夢みたいよ」
「しかも安かったり」
「ええ、けれどね」
「うん、リビングにね」
 ここでだ、ブラウンは妻だけでなく子供達にも話した。アンドリューは自分に、キャサリンは妻に似ている。
「夜の十二時になったら」
「出るのね」
「出るというか起こるというか」
「ポルターガイストね」
「そう、それが起こるから」
「その時はなのね」
「リビングには入らない様にしよう」
 こう家族に言うのだった。
「ものが乱れ飛ぶからね」
「危ないからなのね」
「そうしよう」
「そうね、わかったわ」
 オードリーが夫の言葉に頷いた、そのうえでだ。
 彼女は子供達にもだ、強く言った。
「わかったわね、夜の十二時にはリビングに入ったら駄目よ」
「ものが飛んできて危ないから」
「だからなのね」
「そう、その時には絶対にね」
 リビングに入るなというのだ。
「わかったわね」
「うん、わかったよ」
「というか私達夜の十二時にはもう寝てるから」
「リビングには十二時には入らないよ」
「絶対にね」
 子供達は笑顔で両親に約束した、こうしてだった。
 一家は夜の十二時にはリビングに入らない様にしてこの家での生活をはじめた。このことだけに気をつけての生活は実に快適だった。
 何も不自由はなかった、ただ。 
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