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クー=シー

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第四章

「夜家の人間が寝静まっている間に」
「お家に入って」
「そしてな」
 その寝静まっている間に、というのだ。
「誰にも気付かせないでな」
「お金とかを盗んで」
「逃げるらしい」
「随分腕の経つ泥棒なのね」
「何人いるかわからないがな」
 そうするというのだ。
「だから気をつけるんだ」
「そうなのね」
「ああ、じゃあな」
「戸締りはしっかりして」
「それで泥棒が入らないといいがな」
「それはね」
 メアリーはヘンリーの言葉に不安な顔で応えた。
「泥棒も馬鹿じゃないから」
「悪い奴こそ頭が回るんだ」
 これは当然のことだ、捕まらない様にする為だ。
「だからだな」
「ええ、戸締りをしてもね」
「一応それは確かにしておくか」
「そうしましょう」
 こう夫婦で話すのだった、しかし。
 アーサーはグリーンの身体をブラッシングしながらだ、その両親に明るく言った。
「大丈夫だよ」
「大丈夫?」
「そう思うの?アーサーは」
「だってうちにはグリーンがいるんだよ」
 だからだというのだ。
「絶対に大丈夫だよ」
「グリーンは確かに大きいがな」
「番犬にもなりそうだけれど」
「しかし、相手は泥棒だぞ」
「大丈夫なのかしら」
「大丈夫だよ」
 明るく言うアーサーだった。
「だってグリーンだから」
「ううん、じゃあ泥棒のこともか」
「幸運をもたらしてくれるのか」
「そうだよ、だから大丈夫だよ」
 アーサーはあくまで明るく言うのだった、彼は泥棒についてもグリーンがいれば安心していた。それが子供故の無防備さからくるものだとしても。
 しかしだ、ヘンリーとメアリーもそんな我が子の言葉を聞いて言った。
「そうだな、グリーンはな」
「大きいしね」
「番犬にもなるし」
「ひょっとしたら」
 我が子の言葉も反芻しつつ話していった。
「幸運をもたらしてくれてな」
「守ってくれるかもね」
 こう話すのだった、二人で。
 何はともあれ一家は泥棒へのセキュリティも入れた、そうして夜の安眠に入るが。
 ある夜だ、そのセキュリティを無効化、解除してだ。
 二人の怪しい者達が忍び込んだ、その声はというと。
「いいわね」
「ええ、もうこのお家のセキュリティはね」
 女の声だった、どちらも。
「全部解除したわ」
「そう、じゃあ後はね」
「金目のものを手に入れてね」
「さっさと逃げましょう」
「いつも通りね」
 こう話してだ、二人でだった。
 家の中を進んでいった、一家は全く起きる気配がない。寝静まっている。
 それをいいことにしてだ、泥棒達は進んでいくが。
 ここでだ、二人はリビングに寝ているグリーンに気付いた、最初はびっくりしたが。
「寝ているわね」
「そうね」
「じゃあ起こさない様にして」
「このままね」
 進もうと話してだった、そして実際にだ。
 慎重に彼等の仕事に入った、だが。
 不意に彼女達は寝てしまった、そのままぐっすりと。そして朝にリビングに降りてきた一家がびっくりして警察に通報した。
 泥棒達は盗む前に捕まってしまった、その彼女達はというと。
「最近この辺りを荒らしていたな」
「泥棒達だったのね」
 一家で夕食の時に話す、驚いた顔で。
「セキュリティの解除と金品を盗む名人か」
「女の二人連れでね」
「女が泥棒なんてな」
「ちょっと想像がつかなかったわ」
 ヘンリーとメアリーはまずこのことを話した。 
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