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特殊陸戦部隊長の平凡な日々

作者:hyuki
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第11話:おはなみに行こう!-2


朝食を終えると、なのはは花見に持っていく弁当の準備、ヴィヴィオは朝食の
後片付け、ゲオルグは花見に持っていくものの積み込みの続きと
それぞれがそれぞれの仕事を始めた。

弁当を作るなのはの隣で食器を洗うヴィヴィオ。
皿についた洗剤の泡をすすぎつつ、その目はなのはの手付きに注がれていた。
今は卵焼きを作っていて、同時に鶏肉にからあげの味付けをしている。

(上手だなぁ・・・ママ)

菜箸で卵をきれいに巻いていくなのはの手付きに見とれていた。

「ヴィヴィオ」

急に名を呼ばれハッとする。
目をあげるとなのはがシンクの方を指さしていた。
なのはが何を言いたいのか掴みかね、首を傾げる。

「もうすすぎ終わってるよ」

なのはの言葉にヴィヴィオは慌てて自分の手元を見る。
すすぎ中の皿はすっかり泡がなくなっていた。

「はわわ・・・ごめんなさい、ママ」

ヴィヴィオはあたふたと手に持っている皿を水切りかごに置き、
次の皿に手を伸ばす。

「なにをぼーっとしてたの?」

「ごめんなさい・・・」

なのはに問われ肩を落とすヴィヴィオ。
その様子を見ていたなのはは首を横に振る。

「別に怒ってるんじゃないの、ヴィヴィオ。
 ただ、どうしたのかなと思っただけなんだよ」

出来上がった卵焼きを大皿に移しながら、微笑を浮かべて言う。

「どうやったら、ママみたいにお料理がうまくなるのかなって・・・」

また1枚、皿のすすぎを終えて水切りかごに置きながらヴィヴィオは言う。
その声はだんだんと小さくなっていく。

「そっか・・・」

からあげをあげるために用意した油を張った鍋を火にかけながら、
なのはは嬉しそうに微笑むと、ヴィヴィオの頭に手を伸ばしてゆっくりとなでる。

「焦らなくても大丈夫だよ。 これからゆっくり教えてあげるからね」

「うん。 ありがと、ママ」

ヴィヴィオも柔らかな笑みを浮かべてなのはの身体に身を寄せた。

「おーい、全部積み終わったぞ」

そこに、ジュースやお茶などを車に積み込む作業をしていたゲオルグが
キッチンに顔を出す。

「他に何か積むものは・・・・・なにやってんだ? 2人とも」

身を寄せ合うなのはとヴィヴィオの姿を見たゲオルグは、首を傾げながら尋ねる。

「母娘のスキンシップ、だよ。 ね、ヴィヴィオ」

なのはがウィンクしながらそう言うと、ヴィヴィオもニコッと笑って頷いた。
2人の様子に腑に落ちないものを感じつつ、ゲオルグは険呑な目で二人を見る。

「・・・・・どういうことだ?」

「パパにはナイショなの! ね、ママ」

「そうだね。 女同士の秘密だね」

悪戯っぽい顔で笑い合う2人を見てゲオルグは肩をすくめた。

そのとき、呼び鈴が鳴り来客があることをしらせる。

「あっ、コロナとリオが来たのかも!」

ヴィヴィオは最後の一枚の皿を水切りかごに入れると、キッチンを出て
玄関へと走っていく。

その背中を見送りながら、リビングに歩いていくゲオルグ。
ソファの上で寝転がり足をパタパタさせているティグアンを抱き上げると
自分自身はソファに座り、ティグアンを膝の上に座らせる。

つぶらな瞳を瞬かせつつ自分の顔を見上げるティグアンに向かって、
ゲオルグは心情を吐露し始めた。

「なのはと結婚してもう4年になるけど、やっぱり女ってのはよくわからないよ。
 ホント、俺達とは違う生物なんじゃないかと思う。 時々だけどな。
 まあ、だからこそ惹かれあうのかもしれないけどな。
 なあ、お前はどう思う?」

真剣な顔でティグアンに問いかけたものの、ティグアンはわけがわからないと
いうようにこくんと首を傾げる。
その仕草にゲオルグは自嘲めいた笑みを浮かべる。

「なんて、こんなこと言ってもまだわかんないよな。
 でもなティグアン。 言っておくけど女には気をつけるんだぞ。
 おとーさんは幸いなのはっていう最高の奥さんを見つけられたけど、
 世の中には怖ーい女性がたくさんいるんだ。 はやてとかな。
 なのはにしたって普段はあんなにやさしく見えるけど、
 いざ怒ると本当に怖いんだよ。 だからな、女には気をつけるんだぞ」

ティグアンが理解できていないことが判っていつつも、さらに続けるゲオルグ。
だが、その背後に忍び寄る影に彼は全く気付いていなかった。

「ゲオルグくん」

普段より低いトーンの、しかも囁くような声が耳元で聞こえたとき、
ゲオルグはビクッと肩を震わせて背筋をぴんと伸ばした。
自身の父の様子にただならぬものを感じたのか、
ティグアンはゲオルグの膝から飛び降りると、リビングを出て玄関の方へと向かう。

「あんまりティグアンに変なことを教えないでって、前にも言ったよね。
 覚えてる?」
 
「もちろん、覚えてるさ」

「ふーん。じゃあ、いいの」

背後にあった気配が遠ざかり、なのはの背中がキッチンへと消えると
ゲオルグは大きく息を吐いた。

「ああ、それと」

再びすぐ後からなのはの声がして、ゲオルグはまたビクッと身を固くする。
そのゲオルグの肩になのはの柔らかい胸が押しあてられる。

「わたしも、ゲオルグくんっていう最高の旦那様と一緒になれてホントに幸せだよ。
 それだけっ!」
 
ゲオルグを後から抱きしめるように回されていた手が離れ、
なのはの気配も再び遠ざかる。
なのはがキッチンに姿を消したあと、ゲオルグは照れくさそうに頬を掻いた。






少しするとリビングのドアの向こうから少女たちの賑やかな話し声が聞こえてくる。
そしてだんだんとその声が大きくなり、ゲオルグの耳にもはっきりと
会話の内容が聞こえるようにってきたところでガチャッと音をたててドアが開いた。

ドアの向こうから姿を現したのは3人の少女と1人の少年。
先頭をいくヴィヴィオに続いて、少しくすんだブロンドの髪を
ツインテールにした少女と紺色のショートカットにリボンを結んだ少女。
2人に手を引かれているのはティグアンである。

4人はまずキッチンへと向かい、弁当を作っているなのはに話しかけた。

「ママ、リオとコロナが来たよ」

ヴィヴィオの声に応じて、おにぎりを握っていたなのははその手を止めて振り返る。

「おはよう、リオちゃんコロナちゃん」

「おはようございます」

リオとコロナの2人は揃って丁寧に頭を下げて挨拶をする。
顔をあげると、コロナがなのはに話しかける。

「今日はお招きありがとうございます。よろしくお願いします」

「ううん。こちらこそ、来てくれてありがとうね。
 今日は他にもいろんな人が来るけど、2人とも楽しんで帰ってね」

そう言って、2人に優しく笑いかけるなのは。

「はい。ありがとうございます」

「ヴィヴィオが誘ってくれたときから、ずっと楽しみにしてたんで
 思いっきり楽しませてもらいますっ!」

コロナとリオはなのはに向かってペコっともう一度頭を下げ、
今度は感謝の意を表す。

「ママ。 何かお手伝いしたほうがいい?」

ヴィヴィオが首を傾げながら尋ねると、なのはは首を横に振った。

「ううん。 もうちょっとで終わるからいいよ。リビングででも待っててね」
 
「はーいっ!」

元気よく返事をするとヴィヴィオ達はキッチンを出る。
そして連れだってリビングへと入っていく。

リビングのソファではゲオルグが本を読んでいた。
ヴィヴィオ達がゲオルグの側まで来ると、ゲオルグは目をあげて3人の姿を確認し
読んでいた本をパタンと閉じてテーブルの上に置いた。

「パパ、私のお友達を紹介するね。 コロナとリオだよ」

ヴィヴィオの紹介に合わせてお辞儀をするコロナとリオ。
頭をあげると最初にコロナが口火を切った。

「えと、コロナ・ティミルといいます。 ヴィヴィオとは格闘技のトレーニングも
 ご一緒させてもらっています」

少し緊張した面持ちでコロナが自己紹介を終えると、続いてリオが口を開く。

「リオ・ウェズリーです。 ヴィヴィオとコロナと知り合ったのは
 まだ最近ですけど、格闘技も一緒にやってます。 よろしくお願いします!」

リオの方は溌剌とした口調で自己紹介を終える。
ゲオルグは2人の自己紹介をニコニコしながらに見ていたが、
2人が話を終えると咳払いをしてから話し始める。

「ヴィヴィオの父で、ゲオルグ・シュミットです。
 2人ともいつもヴィヴィオと仲良くしてくれてありがとうね。
 今日はめいっぱい楽しんで帰ってね」

ゲオルグの言葉にコロナとリオが頷く。
そしてヴィヴィオも含めた3人はソファに腰を下ろした。
それと入れ替わるように立ち上がるゲオルグ。

「ヴィヴィオ。 俺は庭で一服してくるからお友達にはゆっくりしてもらいなさい」

「うん」

そしてゲオルグはガラス戸を開けて庭に出ていった。
少しして、ゲオルグが出て行ったガラス戸の方を見ながらコロナが口を開く。

「ヴィヴィオのお父さん、優しそうな人だね」

「そうかな。 たしかに基本優しいけど厳しいこともあるよ」

「ちゃんと勉強しなさい、とか?」

リオが興味津津といった面持ちで尋ねると、ヴィヴィオは何度か首を横に振った。

「ううん。 あんまりそういうことは言われないけど、
 悪いことをしてちゃんと謝らないときとかはスゴく怒られるんだよね。
 あとは、ちゃんと挨拶をしないときとか」
 
「スゴくって、怒鳴られるの?」

「ううん。あんまり大声をあげて怒鳴ったりしないんだけど、お説教が長いんだよ。
 "自分の行動に悪いところはなかったかしっかり考えなさい"って、
 わたしが答えるまで何十分でもじっと待ってるの」

「へーっ。 そういうのもちょっと辛いかもね。
 でも、頭ごなしに怒鳴られるのよりはいいんじゃない?」
 
「そだね。 まあ、格闘技の練習にも付き合ってくれるし
 勉強の質問をしたらちゃんと答えてくれるから、ぜんぜん大好きなんだけどね」
 
微笑を浮かべたヴィヴィオが答えを返すと、コロナとリオが身を乗り出す。

「格闘技の練習に? じゃあ、ヴィヴィオのお父さんって強いの?」

「強いよ。 わたしも組み手で一回も勝ったことないもん。
 それに、まだまだ全力じゃないみたいだし」
 
「へえっ、すごいね!」

意気込んで尋ねるリオとは対照的に、コロナは頬に指をあてて上を向き
何かを思い出そうとして考え込んでいた。
その様子を目にしたリオは首を傾げてコロナに声を掛ける。

「どうしたの、コロナ?」

リオの声にコロナはハッと我に返り、リオの方に目を向ける。

「ヴィヴィオのお父さん、どこかで見たような気がするんだけど・・・」

「どこかで見たって・・・会ったことがあるってこと?」

首を傾げたリオの問いにコロナは首を横に振る。

「うーん、そうじゃないと思うんだよね・・・」

コロナは呟くように言うと、頬に手を当てて考え込む。
その姿をリオとヴィヴィオはかたずをのんで見守っていた。
しばらくして、ふいにコロナは顔をあげた。
その表情は晴れやかなようにも見え、口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。

「思い出した! この前に次元港であったハイジャック事件の中継で見たんだ」

「ええっ!? じゃあ、ヴィヴィオのお父さんはテロリストさん!?」

「違うよっ!!」

目を丸くしたリオが立ち上がりながら大きな声をあげると、
すかさずヴィヴィオが同じく大きな声でそれを否定する。
きっかけになったコロナは2人の様子を苦笑して見ていた。

「リオ! 私が言ってるのはヴィヴィオのお父さんが
 管理局の魔導師じゃないかってこと」

コロナはそこで言葉を切ると、ヴィヴィオの方に向き直る。

「違う?」

「うん、そうだよ。 詳しいことはよくわかんないけど」

ヴィヴィオがコロナの問いに対して頷いて答えたちょうどそのとき、
庭でタバコを一本吸い終わったゲオルグがガラス戸を開けて
リビングへと入ってきた。

「な、なんだよ・・・」

リビングへと足を踏み入れた瞬間、真剣な表情をした3人の少女に一斉に見つめられ
ゲオルグはたじろいで一歩後ずさる。

「あの、いいですか?」

引き攣った顔をしているゲオルグにコロナが歩み寄り上目づかいで見上げると、
ゲオルグは優しげな微笑みを浮かべてコロナを見下ろす。

「なにかな?」

「えと・・・おじさんは、特殊陸戦部隊の隊長さんですか?」

「ん? そうだけど、それがどうかしたのかい?」

優しげな口調、そして口元に浮かんだ笑みは些かも損なわれることがないが
コロナが自分の所属部隊や地位を言い当てたことでゲオルグはその両目を
わずかにスッと細めてコロナの顔を見据える。

「おじさんがヴィヴィオと格闘技のトレーニングをしてて、
 しかもかなり強いって聞いたんですけど、それでこの前の
 ハイジャック事件の中継でおじさんの顔が映ってるのを思い出したんです。
 で、私もインターミドルに出場したいと思ってるので、
 お相手してもらえたらいいなって・・・」

「なるほど・・・」

そう言って小さく頷くとゲオルグはヴィヴィオに目を向ける。
その表情はコロナを見据えていたときのような険呑さがすっかり抜け落ちていた。

「2人に異世界旅行の話はしたのかい?」

「ううん、まだ」

「なになに? 異世界旅行って?」

ふるふると首を横に振ったヴィヴィオがコロナとリオの方に顔を向けると、
リオが身を乗り出してヴィヴィオに問いかける。

「コロナは去年も行ったと思うんだけど、今年もママやフェイトママたちと一緒に
 無人世界へのお出かけに今年も行くんだよ」

「でも、去年はおじさんはいなかったですよね?」

「去年は仕事が重なっちゃってね。 今年は俺も参加するよ。
 だから、その時なら相手ができるんじゃないかな」

ゲオルグの言葉にコロナは顔をほころばせた。

「みんなー、お弁当もできたしそろそろ行こっか!」

そのとき、キッチンから大きな重箱を持ったなのはが姿を現す。

「車で行くからみんな乗り込んでね」

なのはの言葉に従って、ヴィヴィオをはじめとする子供たち4人は
玄関に向かって駆けだしていった。
2人きりになり、なのははゆっくりとした歩調でゲオルグに近寄っていく。

「ね、ゲオルグくん」

「ん?」

子供たちの背中を追って、リビングから玄関へとつながるドアの方へ
目線を向けていたゲオルグは、なのはの方へと目を向けた。
ゲオルグの視線の先にあるなのはの顔には場に似合わぬ真剣な表情が浮かんでいた。

「どうしたんだ? そんな顔をして」

「だめだよ、ヴィヴィオの友達を威圧するなんて」

「・・・・・・悪い。 つい、な」

肩を落として頬を掻くゲオルグをなのはに呆れたような目を向ける。

「まったく。 謝る相手が違うでしょ」

「ごもっとも。 あとで折を見て一言言っとくよ」

「そうして」

ゲオルグの方を睨むようにして短くそう言ったあと、なのはは表情を和らげる。

「さてと。 じゃあ、行こっか。 運転よろしくね」

「はいはい」

ゲオルグはひらひらと手を振ると玄関に向かって歩き出す。
なのははその背中を追うと左腕に抱きついて身を寄せた。

 
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