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魔法少女まどか☆マギカ ~If it were not for QB~

作者:46熊
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業話 崩落

 ある日の体育、その日は体育館でバレーだったのだが、ほむらは保健室だった。

 あの日以来精神的に追い詰められたほむらは休む事はしなかったが保健室に行く事が多くなり、クラスの人間も段々と最初からいないかのように扱うようになっていたのだった。

 「あれ、今日暁美さん休み~?」
 「いいじゃん、ほら今日夏凪も休みだしさ、ちょうどぴったり偶数でチーム割れるよ」
 「そだね~、まあ居たって邪魔だし、ちょうどいいかもね~」
 「6人同士でやって、残された人もかわいそうだし~」
 「独りぼっちは、寂しいもんね~」
 「鹿目さんがいるじゃん、まあ彼女にはほんと助かってるけどね~」

 クラスメイトにとってほむらはそう言う認識なのだろう。まどかが付き合ってあげているから他の人は彼女と付き合わなくて済む、まどかはそんな事を考えた事など無かったのだが、クラスの判断はそんなもののようだ。

 「ごめん、今日ナギ(夏凪)休みだから、私と一緒に練習しない?」
 「冬本さん……お願いします」

 クラスメイトの下卑た笑い顔に嫌気がさしたが、まどかは黙って相手とサーブ&レシーブを始める。バレーはあまり嫌いじゃないが、あんまりやると筋肉痛で非常に痛い想いをするのが少し嫌いなのだ。

 「ああっ……ご、ごめんなさっ!!!!」
 「あ~いいっていいって、取ってくるから」

 遠くに打ち過ぎてしまったまどかのボールを友達が取りに行ってくれた。非常に申し訳ないのでとりあえず予備のボールを補充しようと倉庫前に向かう。

 その時だった。

 「ま、まどか……」
 「あっ、ほむらちゃんっ!!!!! 大丈夫なの、体調?」
 「……頑張ります」

 どう考えても無理をしていたのだが、彼女の気持ちも分からないでも無い。弱い自分を変えたくて、無理をおして出て来たのだ。

 「あ、でも……」
 「あ、暁美さんじゃない」
 「丁度良かった、私疲れて抜けるから、代わりに入ってくれない?」
 「どうせ先生来ないしさ~」
 「それじゃあ、鹿目さん宜しく~」

 以前仁美と共にとばっちりを受けた女性徒が、さっきまでまどかと組んでいた少女と一緒の側のコートに入る。

 「急な話だね……まいいや、ガンバろ、ほむらちゃんっ」
 「あの……私も入っていいんですか?」
 「うんっ、一緒に頑張ろうっ!!」

 まどかはコートに入る。ほむらもおどおどした様子で入る。相手がにやついている事に二人は気が付いていなかった。

 「じゃあ私からやるね、暁美さん、行くよ~」
 「は、はいっ!!!」

 緩いボールが上がってくる。ほむらは前方へ走って受け止め、後ろに回す。初心者らしい打ち方、だがそれでも真っすぐ後ろのメンバーの頭上にボールは落ちる。その時だった。

 「行くよ~……っ!!!!!!」
 「ほむらちゃんっ!!!!!!!!」

 明らかに度を超えたスピードの球がほむらの顔を狙って飛ぶ。まどかがとっさに飛びだし弾こうとしたが間に合わなかった。そのままワックスのかかった木製の無機質な地面に体を打ち付け酷くすりむいた。

 「ごめんね~、少し狙いがそれちゃって」
 「鹿目さんっ!!!!!!」
 「ま、まどかでいいって、言ったのに……ったたた、ごめんね、はしゃいじゃって」

 えへへと言いながらまどかは立つ。立ち上がり、さっき強烈な一撃を打ち込んできた少女の方を睨みつける。今までまどかが見せた事の無い勝ち気な瞳に、苛立ちが募る。

 「ごめんって言ってるじゃん、そんなら鹿目さん、御詫びのしるしっ」

 ボールがまどかの手に渡る。まどかは怒りを何処にぶつける事も出来ず相手に回る。レシーブ、トスが綺麗に上がる。そこからアタッカーは相手方のエース、しかも彼女はほむらのせいで以前大層怒られて以来逆恨みしており、他の女子よりも憎悪は深い。

 今までの戦いが無かったら日和見していたかもしれない。だがこのままでは……ほむらに強烈なスパイクが決まる。

 「それじゃ……行けっ!!!!!」
 「ほむらちゃんっ、取れなくてもいいから避けてっ!!!」
 「暁美さん、さっき私がミスして失った分、チームメイトならフォローしてくれるよね?」
 「……っ!!!!!」

 両腕に打ちつけられるボール、だがしっかり彼女は上空にボールを打ち上げた。それなのに。

 笛が鳴る。流石に審判をやっていた控えの選手も止めざるを得なかった。同じ所を二回も、しかも味方から。

 「あら、まずいかな。誰か保健室、って鹿目さんだったね、お願いね~」
 「ほむらちゃんっ、大丈夫!!? ほむらちゃんっ……」


 「ほむらちゃんっ!!!!!!」

 保健室のベッドの上。まどかはずっと居てくれたらしい。ちなみに保健室の先生には『ほむらの不注意でボールが当たった』と言う事を淡々と言われた。まどかは言い返せなかった。あまりにも理路整然と話すから反応できなかったのだ。

 「私……本当にごめんなさい」
 「ほむらちゃんが悪いんじゃないよ、悪いのは……」
 「私がこんなじゃなかったら……誰も辛い思いしなくて済んだんですよね」
 「そんな訳ないでしょ!!!!!」

 強く語勢を荒げるまどか。そんな事があってはならない、最初からほむらが居なければなんて、考えたくもない。自分の為にあれだけ時間を操作して何度も何度も自分が死ぬ姿を見せられてもなお自分を助ける事だけに全てを賭けてくれたほむらに。

 「本当は、分かってるんです。仁美さんの件から、ううん、そのずっと前からも、ずっと、私は皆から邪魔者扱いされてたって」
 「そんなの……違うよ、私は、ほむらちゃんのお陰で……」
 「嘘、言わないでください。私、鹿目さんに何もしてやれてない、いつもしてもらうばかりで、何も……」
 「ほむら、ちゃあん……」

 こんなにも無力な自分、まどかはほむらにして貰った事を何も返せていない。命を賭けたほむらに、自分は言葉しか掛けられない。

 「もっと、強くなりたい……ううん、強くなれなくていい、普通で居られればそれでいいのに、私は……」
 「なれるよ、ほむらちゃんなら、絶対になれr」
 「なれません……奇跡も、魔法も、無いんですから……」

 絶望した。そうだ、奇跡も魔法もありはしない。夢も希望もこの世界には存在しない。絶望を孕む魔女の存在を消したために、この世界から希望が消えた。絶望なんて溢れているのに、そのうちの一部を消した事で大切な人の生きる糧を奪ってしまったのだ。

 「……………」
 「……もう少し眠ります。鹿目さん、今までそばにいてくれて、ありがとう」
 「……また明日、学校で」

 鞄を持ちあげ、まどかはほむらから離れる。無機質に鳴るガラガラと言う保健室の戸の音。

 まどかは振り返らなかった。靴をはき、校舎を後にし、校門前のベンチに座る。そこで、ただ一人で涙を流し続けた。


 何時間そこに居たのだろうか、辺りは暗くなっていた。母は放任主義な所があり、門限を守らないのは元気な証拠とかで笑って許してくれるのだが、流石に心配をかけるのも良くない。

 いつもの道、ただ暗いというおまけつきではあったが。そこを一人でとぼとぼと歩いていた。街灯の明かりもチカチカとして消えかけ、あまり良い雰囲気では無い。

 そんな中、まどかの前方からふらふらと歩いてくる人影があった。 
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