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万華鏡

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第七十七話 迫るバレンタインその六

「癖が強いからな」
「個性的な人よね」
「相当にな」
「だからよね」
「ひょっとしたらな」
 今は仮定だがそれでもというのだ。
「実現しないかもな」
「あの人次第ね」
「そうなるな、けれどな」
「けれどって?」
「いや、あたし達ってさ」
 軽音楽部の一年生全体のことをだ、美優はここで話した。
「何か部長さんに頼りきりだよな」
「言われてみれば」
「それってよくないよな」
「うん、二年生になったらね」
 琴乃も美優のその言葉に応えて言った。
「私達が部活引っ張ることになるからね」
「二年生から部長とか出してな」
「部長、副部長、書記ね」
 この三役をである。
「出してね」
「それ以外にも二年生になったらな」
「そうよね、部活を引っ張っていかないといけないから」
「だからな」
 それでだというのだ、美優も。
「今のあたし達だとな」
「ちょっとね」
「明らかにな」
「うん、私達駄目よね」
「そう思うよな、やっぱり」
「ええ、何でも先輩達にしてもらってて」
 琴乃はここでそのことを真剣に言った。
「よくないわね」
「あたし達ももうちょっとしたら二年になるしな」
「そうしたこと考えていかないとね」
「駄目だよな」
「やっぱりね」
 こうしたことも話したのだった、そうした話をしながらランニングをしてだった、その後で演奏の練習もした。その後で。
 五人は部長のところに来てだ、商業科のことを聞いたのだった。
「あの、商業科にも軽音楽部がありますよね」
「そうですよね」
「ええ、あるわよ」
 その通りだとだ、あっさりと答えた部長だった。
「最近交流ないけれどね」
「ってことは」
「これまでは」
「そう、結構あそことは仲いいのよ」
 部長は五人ににこりと笑ってこう話した。
「二年生はね」
「けれど私達は」
「そうしたことは」
「ちょっと御免なさいね、私達そっちは怠けてたのよ」
「怠けてたっていいますと」
「それって」
「三年生の人達の代は結構色々一緒にやってたのよ」
 商業科の軽音楽部と交流があってだ、イベント等も一緒にしていたというのだ。
「工業科や農業科、水産科、看護科の方ともね」
「そっちの軽音楽部の人達ともですか」
「一緒にしてたんですか」
「ライブとかね、けれど私今思うとそっちは怠けてたわ」
 部長はこのことは五人に申し訳なさそうに話した。
「だから三月の卒業ライブは」
「その時はですか」
「三月の時は」
「一緒にやることをね」
 それを、と言うのだった。普段とは違いわりかし真剣な顔で。
「考えておくわ」
「そうですか」
「そうされるんですか」
「あちらの娘達と話してね」
 そうして、というのだ。
「そうしてね」
「じゃあ三月は、ですか」
「全学科の軽音楽部共同ですか」
「皆で、ですね」
「卒業ライブですね」
「三年生の人達を送るライブね」
 それをするというのだ。 
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