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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員

作者:木偶の坊
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 第14話 再会

 
前書き
大変お待たせしました!! 第14話です。

お腹を下していました。別に新しく買ったゲームに夢中でサボってたとかそんなんじゃないんですよ?

そういえば私の友人に漂白剤を薄めて飲んで一回下痢しただけで済んだ人がいるのですが薄めて何とかなるものなんでしょうか? ちなみに飲んだ理由は休みの日に家族で旅行することになっていたらしく友人はそれが嫌で飲んだとか……どんだけ嫌なんだよ……。

前書きに書く内容じゃありませんでしたね。すみません。
 

 
「う~ん、空山先輩か……やっぱりどこかで見たような顔をしているんだよな~」
勇人は昨日、追試が終わり教師に裁かれた後に出会った先輩が気になっていた。



やはり彼も誰かの手引きで“表”に出てきたのだろうか?
うーん、分からん。
そんな事より今は補習に向かわないと。
勇人は学校に向かって歩き出した。









「やっと終わった~いや~本当に疲れた……まったく、だから勉強は嫌いなんだよ」
かなり前に話したと思うが勉強は分かるから楽しいのであり分からなければつまらない事この上ない。




え? じゃあ先生に分からないところを聞いたらって?
ここが一般高校だったらそうしていたけどここは武偵高だ。教師に聞きに行く勇気なんて僕にはない!!




「それにしても旅行楽しみだな~」
僕は北海道がいいな~。暑いのは少し苦手なんだよね。沖縄とかもいいけどあそこは特に暑いからな~。それに僕って泳げないし。




「あ……昼飯食べるのを忘れていたな。少し遅めだけどここのスーパーで買っていくか」


「うん~何にしようかな……」
今、僕の目の前にハンバーグ弁当とミートスパゲッティが並んでいる。さて、どちらにするべきか……。値段は同じだしどうしようかな……。






勇人が悩んでいると……。




ダンッ!! 
銃声が聞こえた。





「きゃあああ!!!」
悲鳴も聞こえた。




「おとなしくしろや!! 警察よぶんじゃねぞ!! そしたら次はこのガキを殺すからな!!!」
男の怒鳴り声が聞こえてくる。次? まさか…… 



声のする方を見てみると拳銃を持った男が小学生ぐらいの女の子に銃口を当てている。
女の子はあまりの恐怖で声すらも出せないようだ。



そして、2人の前に警備員らしき男が倒れている。倒れている男から血が出ている。しかしまだ、体が微かに動いているので即死ではないようだ。



「……………………」
(∩ ゚д゚)アーアーキコエマセーン!! ミエマセーン!!




聞こえなかったこと、見なかったことにしてハンバーグ弁当を持ってそのまま男には死角になっているレジへ行こうとする。
しかし店内がこんな状態で買い物なんてできるのか? 金だけおいて帰ろうかな?


それに、女の子を助けないのは紳士としていかがなものか……。
ブラドと戦った時だって遠山先輩に腰抜けって言われているし……。葛藤とは正にこの事か……。



ええい!! 仕方ない!! 僕は真のジェントルマンになるんだ!! やってやる!!



男に後ろから抜き足で近づく。諜報科ならこれぐらいお手の物だ。
男の後ろにポジションを取り、拳銃を持っている手を掴んで捻る。


「なっ!?」
突然勇人に手を捻られ男は驚愕し、拳銃を落とす。




「お前は紳士を怒らせた……それが敗因だ!」
そう言い、男の顎に掌底をして、男を気絶させ女の子を抱きかかえる。


「お嬢さん、早くお逃げなさい……」
「は、はい!!」
女の子はすぐに人込みの中に消えていく。


「ふう……疲れた……とっとと警察に引き渡すか……それに撃たれている警備員も助かるかもしれないし」
男を拘束しようと近づいた瞬間――


ダンッ!!  


「ぐっ!?」
銃声が聞こえたほぼ同時に腹部に痛みが走る。


「きゃあああ!!!」
再び周りが悲鳴を上げる。



「この野郎……俺がいない間に仲間を可愛がってくれたな」
拳銃を持った男が前から歩いてくる。他にも後2人ほど男の後ろにいる。


(仲間がいたのか!? くそっ! してやられた!!)


「おいおい……こんなところで犯罪犯すなんてふざけすぎじゃないか?」
「へっ、俺たちは0課に消される運命にあるんだ。俺たちだけ死ぬなんてお断りだ! 少しでも多く、道ずれにしてやる!!」
(うわあああ!? めちゃくちゃ理不尽じゃねえかあああ!? うん? 0課に消される? てことはこいつら……) 


「全員すぐに逃げろ!! 殺されるぞ!!」
勇人は遠くにまで響くように叫んだ。


「おい!! 動くな!! 動いた奴は片っ端から撃ち殺すぞ!!」
男の1人が怒鳴りながらマシンガンを取り出す。
周りの人間は動きを止めて黙る。


「…………」
(ちっ! 面倒くさいな!!)


心の中で悪態をつき、どうやって奴らを倒そうか考えている時――


ビュン!! 


「ぐあっ!!」


勇人の横を物体が通り抜けて、マシンガンを持っている男に直撃する。

(いまのは……ごみ箱!? なんで!?)


男に直撃した物、それは人2人は入れるだろう大きなゴミ箱だった。
後ろを振り返ると大分離れた所に自分と同じく武偵校の制服を着ている男子生徒が立っていた。
まさか、あの距離からごみ箱を投げつけたというのだろうか?


「空山先輩!?」 
「よう、天原。俺も混ぜろよ」
先輩が凶悪な笑顔をしながら歩いてくる。



一瞬、先輩が昔、一緒に暮らしていた彼に重なって見えた。



「チィ!! そっちも仲間が居やがったのか!!」
先程、ごみ箱をぶつけられた男が再び立ち上がりマシンガン構える。


「おっと」
男が発砲してくる前に、空山先輩がMk23を構え、男の手を撃つ。


ダンッ!!


「があ!!」
男は手を撃たれ、マシンガンを落とす。


「今だ!」
勇人は男に近づき、マシンガンを拾って男を殴りつける。


「ごふっ!!」


「全員今の内だ!! 逃げろ」
そう叫ぶと周りの人間は一斉に逃げる。


「良い判断だ。さすがだな」
「空山先輩こそ、ただの武偵にしておくには勿体無いですよ。武装検事でもめざしてはいかがですか?」
「考えておくとしよう。その前に、まずはこのバカ共だ」
「そうですね」
勇人はナイフを構え、勇輝は右手にMk23を、左手に勇人のナイフより大きい大型のナイフを構えた。

 
「さて、とっとと始末しちまおうぜ」
「ええ」


二人は同時に地を蹴り、敵に向かっていく。


「チィ!! 殺せ!!」
男2人が銃を構え、発砲してくる。


「任せな」
そう口にするなり、空山先輩が僕の前に出て、飛んできた銃弾を左手の大型ナイフで斬る。


「ええ!? 空山先輩、あんたも人外かよ!?」
「“裏”の出身は皆、人外だ!! 気にするな!!」


「あ、ありえねえよ!! さすがに銃弾を斬る奴なんているかよ!!」
奴が驚く、まあ、無理もない……。


「それはお前たちのレベルが低いだけだ」
そう言いながら、勇輝はMk23を走りながら発砲して男たちの銃を弾く。



「今だ! 天原、戦いやすくしてやったんだから感謝しろよ」
「缶ジュース1本でどうですか先輩?」
勇人は勇輝にそう返事をして男に斬りかかる。



「ガキが調子に乗るなよ!!」
「そっちこそ紳士を甘く見るなよ!!」



男が殴りかかってくるが勇人は男の拳を回避して腕を掴み、ナイフを突き刺す。


「ぐうう!!」
男は悶絶する。そして勇人は男のこめかみに拳を入れる。
男は脳震盪をおこしてそのまま倒れる。


「さて、空山先輩の方は…………ええ……何やってんすか先輩……」


勇輝の方を見てみると、勇輝が武器をしまい、貴族が両手を後ろに組んで歩く様に両手を後ろに添えて男の攻撃をすべて躱している。先輩は完全に遊んでいるようだ。


「ちい!! 死んじまえ!!」
男が懐からもう一丁拳銃を取り出し、勇輝に向かって発砲する。


「あらよっと」


ガキン!!


対する勇輝は大型ナイフを取り出し、銃弾を斬る。


「あの人……本当に何者なんだ……実力はまさに未知数だな……」


銃弾を斬るなんて芸当は流石の勇人でも狙ってできるものじゃない。しかし、勇輝は本気を出していないにも関わらず、遊び感覚で銃弾を斬っている。


「さて、じゃあ終わりにしましょうか」
「!?」
先輩がそう呟くと同時に先輩の姿が消えた。


「な!? 奴はどこ――!?」
男は突然、倒れ込んだ。


「そう焦らなくても、お前の目の前にいるぞ。ってもう聞こえてないか……」

先輩はいつの間にか男のすぐ傍にいた。先輩は拳を握っていたので大方、鳩尾にパンチでもしたのだろう。


本当に、彼は何者なんだ?



「いや~楽しかったな。天原」
「そ、そうですね……アレ?」
「ん? どうした?」
「いや、最初に叩きのめしたはずの奴がいなくなっているんですよ……」


「このおおお!! 離せえええ!!!」 


「「!?」」


さっきの男が警備員と取っ組み合っている。どさくさに紛れて逃げようとしたところを警備員に見つかり拘束されそうになった様だ。

カチャ……
男が拳銃を構える。


「!? 早く離れろ!!」
勇人がいち早く警備員に離脱を促すが……。


ダンッ!!
銃口から放たれた銃弾は警備員の頭部に命中し、警備員は倒れた。


「…………」


「見たか!! ざまぁ見ろ!! どうせ死ぬんだったらほかの連中も巻き込んでやるよ!!」
男がそう言い、外へ走り出す。


ほかの連中……? 突然、雄一達の顔が浮かんできた。 



「そんな事、させるかよ……」
「天原?」


右手のナイフを走っていく男に目掛けて投げた。


ヒュン!


ザクッ!  


「ぐあああ!!」
ナイフがふくろはぎに突き刺さり、男は転ぶ。そして勇人は男に近づき……。


男の顔面に拳を叩きつけた。


「ガフッ!!」
男は再び気絶した。


しかし、勇人は気絶している男に何度も拳を叩き込む。


既に男は歯が折れ、顔は鼻血や歯肉から出血した血で赤くなっている。
それでも、勇人は男を殴りつける。


パシッ!


何者かが勇人の腕を掴んでいた。



「天原」
空山先輩が僕の腕を掴み少し悲しそうな目で見ていた。


「先輩……」
「もういいだろう、こいつはもう瀕死だ。あと、手を洗え」
先輩に言われ、自分の拳が真っ赤になっていたことに気づく。



「手を洗ったら、ちょいと付き合ってくれよ」
「しかし、こいつらを引き渡さないと……」
「大丈夫。すでに通報されていてすぐに警察が来るさ。それに、あまり目立ちたくはないだろう?」
「…………」

勇人は黙って勇輝についていくことにした。







2人は高所から寂れた街を見下ろしていた。


「先輩、どうして僕を助けてくれたのですか? 先輩は面倒なことは避けるタイプだと推測していたんですが……」
「まあ、確かに面倒事は嫌いだが……可愛い弟がピンチなら話は別さ」
「そうですか……。うん? 弟?」
今、先輩はなんて……。

「そうだ。てか、やっぱり覚えてなかったか……まあ、仕方ないよな。お前はあの時、まだ3歳だったからな」
あの時って……? まさか……

「そ、そんなありえませんよ!? 一緒に暮らしていた子は僕より5歳くらい年上ですよ!? 先輩は3年、つまり17か18歳でしょう!?」
「確かにそうだが、俺は実際の年齢なんて知らねえよ」
え!? それじゃあ……


「そ、それじゃあ僕も実際の年齢は……」
「いや、お前の年齢は合ってるぞ。母親がお前を産んでそれから、親父と2人でお前を育てたんだからな」
母親が僕を産んで、僕を父親と2人で……?


「それじゃ……僕と先輩は……兄弟って事……ですか……?」
「その通り。それに赤の他人だったら面倒なんて見ねえよ」
「…………」


沈黙が続く……。


勇輝が口を開く。


「まあ、その、あれだ……でかくなったな、勇人」


「……兄……さん……」
目が熱くなってくる。


「本当に……生きていて……良かった……ごめんな、1人にしちまって……」



何かが、僕の頬を伝ってくる。




泣いたのは久しぶりだ……。



「落ち着いたか?」
「うん。まだ、少しだけ信じられないけどね」
「ま、そりゃそーだよな」
「ねえ、兄さん」
「ん? どうした弟よ」
「父さんと母さんの話を聞かせてくれない?」
「ああ、いいぞ」



「さて、どこから話そうかな……まあ、最初からでいいか」


「もともと親父と母さんは“裏”の出身じゃないんだ」
「え? そうなの?」
「親父は武偵で、母さんはどこかのお嬢様だったらしい」
「恋愛物でよくあるパターンだね」
「そうだな。親父はあるボディーガードの仕事を受けていて、その相手が母さんだった。最初の頃は互いに挨拶しかしない程度だったらしい。そして、色々あって2人はめでたく、思想相愛になった」
「完全にパターンじゃないか……」
「ああ、完全にパターンだな。しかし、そこら辺の武偵とお嬢様が付き合うなんて周りが許す筈もない。そして、2人が取った行動は……」
「あっ……」
もう分かった。このあと両親がどんな行動をとったのか。



「予想通り、駆け落ちだ。リアルにやるとか本当に若気の至りってのは恐ろしいよな」
「でも、なんで“裏”なんかに……」
「さあ? そこまでは俺も聞いていない。ちなみに俺は逃亡生活中に産まれたらしい。出産のとき、親父はめちゃくちゃ狼狽えていたってさ。想像して見ろ、いかにも厳格そうで仏頂面でマッチョの男が狼狽えている顔を」
「……………………ぷっ」

兄さんの言った通り想像してみると笑いそうになった。



「兄さんって父さん似?」
「たぶん、そうだろうな。そして、お前は母さん似だ。写真でもあればいいんだがな」
「そうか……確かに見てみたいかな」


「色々あって“裏”にきて、母さんがお前を身ごもった。そして、お前を産み、母さんは少しして命を落とした」
「それって……僕が生まれたせいで……」

「いや、多分、母さんは体が限界だったんだ。はっきり言って、当時の“裏”の環境はずっと昔のヨーロッパが幾分かマシになった程度だ。母さんは、あまり体は強い方じゃなかったらしいからな。お前が無事生まれのは運が良かったからだろうな」


「でも……」

自分が生まれてこなければ兄さんは両親と暮らせただろう。



「気にするな。母さんはお前が生まれた時、泣きながら『元気に生まれてきてくれてありがとう』って言っていたんだ。親父も『よく、無事に生まれてきた。(震え声)』って言っていたぞ」
「父さん、また狼狽えていたの?」
「ああ、俺は親父の狼狽え振りに狼狽えたがな」

「母さんが亡くなってからは親父はどこからかきれいな水と粉ミルクを持ってきて、焚火で温めてミルクを作っていたな。そして『どれぐらい熱いか分からん。勇輝、ちょっと飲んで見ろ。弟のためだ』って言われると同時に飲まされて、俺の舌がやられた。あれは熱かったぞ。毎日それの繰り返しだ。親父にたまには自分でやれって提案したが『私は暑い物を飲んだら死んじゃう病だから無理だ』と、訳の分からんことを言っていた」


「なんか……ごめん……」

厳格そうで仏頂面の人が暑い物を飲んだら死んじゃう病って……どうやら、父さんは真面目な顔をしているがおもしろい冗談を言う人のようだ。



「過ぎたことだ。気にすんな」



「でも、父さんはどうしたの?」
「親父は病で亡くなった。咳が酷かったからな、結核とかだろうな。あんなに頑丈な体でも病気には勝てないって事だ」


「そうなんだ……その後は兄さんが一人で僕を……」
「そうだ。そして、あの時の火事で離れ離れになった」
「兄さん。どうやって脱出したの?」
「俺もよく覚えてないんだわ。気づいたら雨の中、目を覚ました。すぐにお前を探したが見つからなかった。あの後どうしたんだ?」
「必死で走ってるうちにまだ誰も居なさそうな建物を見つけたからそこで暮らしたよ。武敏さんに拾われるまでだけどね」
「あん? 武敏? あいつがお前を?」
「うん、知っているの?」
「知っているも何も、俺はあいつの店の常連だからな」
「そうだったんだ」


兄さんとしゃべっている内に夕方になった。


「おっと、そろそろ帰らねえとな。この後立て込んでいてな、先帰るぜ」
「うん。兄さん、ありがとう」
「……どういたしまして」


そう言うと、兄さんは街並みに消えて行った。
 
 

 
後書き
空山 勇輝 (そらやま ゆうき)

性別    男

学年・組  3年A組

学科    強襲科

勇人の兄。3年生だが実際の年齢は不明である。勇人と同様、目立つのは嫌で実力を隠している。
実際の戦闘能力は殺し合いに慣れている勇人でも未知数と感じる程である。凄まじいバカ力の持ち主で近くの椅子等を片手で軽々と持ち上げ投げるなり、振るなりして戦うこともある。その気になれば鉄骨もいけるとか……。使用する銃はMk23
     
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