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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第52話 話される真実

「何故お前が………」

そう小さく呟き、驚くレジアス。その声は若干震えが混じっていた。

「何故か………そうだな、部隊の皆の仇を討つ為に地獄の底から蘇って来たと言えばお前は満足するのか?」

ゼストは小さく笑いながら呟く。
しかしレジアスは相変わらず驚き戸惑っていた。

「………俺を殺しに来たか………ふん、かつての友に裁かれる最後なら悪くは無いかもしれん………」

何とか自身を落ち着かせ、俯きながらそう呟いたレジアス。
そんなレジアスに静かに近づくゼスト。
レジアスの胸ぐらを掴み、持ち上げて……

「ぐはっ!?」

そのまま殴り付けた。

「あなた何を!?」

オーリスが割って入ろうする前にゼストはレジアスに叫んだ。

「何をしているレジアス・ゲイズ!!お前は俺を裏切ってまでも地上部隊の事を考え、懸命に動いていたのだろうが!!今折れることは許さん!!礎になった者、俺の部下達にも示しがつかん!!」
「………だがワシは………」
「中将………」

そう項垂れるレジアス。そんな姿をオーリスは見た事も無かった。
しかしそんなレジアスを見てもゼストは態度を変えなかった。

「話も事情もスカリエッティから話を聞いている。失敗なんて昔からずっとして来た。俺もお前も全て思う様に進んだことは一度も無い、それでも俺達は前へと進んできた」
「………」
「それがここまで来て、折れるのか!?確かにお前は手段を選ばずに違法な事にも手を染める事も躊躇せずにむしゃらに進んできた。それによって俺達の様に犠牲になった者もいただろう。だがそれを全て踏み締めここまできたのだろう?それなのに何だこの体たらくは!!ふざけるな!!どんな事があっても諦める事は俺が許さん!!」

デバイスを展開し、首元に突きつけるゼスト。

「中将!!」

そんなゼストを止めようと、デバイスを展開しようとしたオーリスだったが、レジアスが制止させた。

「中将?」
「やり遂げろ。もはや今のお前を正しい道に戻すなどとも思わん」
「そう………だな………ワシは色んな事を手段を選ばずにやって来た………それが友を裏切ることになってもだ………」

理不尽な目にも、悔しい思いも、道を踏み外し、手を汚す事に嫌悪感を抱きながらもそれでも進んできた。

「そうだ、ここで引き下がるわけにはいかん………!!」

槍の穂先を手で掴み、自分の首元から離す。手から血が流れるが気にせず、ゼストを見て答えた。

「今更逃げることは許さん。お前は人生をとしてお前の理想を達成させろ。それがお前の出来る唯一の償いだ」
「ああ!!」

レジアスの答えを聞き、満足したゼストは部屋を後にしようとした。

「待て!!」

そんな制止の言葉を聞き、足を止めた。

「………全てが終わったら飲み行こう。お前に話さなくてはいけない事、詫びなければいけない事、言い出したらキリがないが、それでもワシはお前に全てを話さなければならない」
「………分かった、楽しみにしている」

そう言い残して今度こそ部屋を後にした………









「………いいんですか?」

部屋の外、壁に寄り添い、ゼストを待っていたメガーヌが居た。

「今は昔話をのんびりしている暇は無い。奴のやる気を戻せただけでも良しとしよう」
「手伝わないんですね」
「ああ。レジアスの手伝いよりも俺達にはやらなくてはいけない事がある。子供達だけにそれをさせるわけにはいかない」
「ええ、そうですね………」
「メガーヌ、君は………」
「行きますよ。ルーも戦っているんです。私だけ見ている訳にはいかないわ」
「だけど君のお腹には………」
「だからこそです。この子の未来の為にも私は戦います」

お腹に手を添えながらそう断言したメガーヌは何を言っても考えを変えないという顔で言った。
最初こそ、反論しようとしたゼストだが、言葉が出ず、頭をかいてため息を吐いた。

「はぁ………分かった。だが無理だけは絶対にするな」
「それはあなたもですよゼスト?」

そんなメガーヌの言葉に苦笑いしながら「ああ」と一言答えるゼストであった………
























「状況は………?」
「今も本局ではゆりかごの対応に揺れているみたいです。機動七課はレジアス中将の元、先ずは混乱した地上部隊の統率を優先に動き出しました」
「流石やなあのおっちゃんは。流石に折れて静かになるんかと思っていたんやけど………」

とシグナムの報告を聞きながら笑みを溢すはやて。

(………主と中将は水と油の様な間柄だが、互いに認め合っている部分もある。良いライバルと言うことだな)

と思いながらシグナムも小さく笑みを溢した。

「皆の状況はどうや………?」
「高町なのは、バルト・ベルバインの2名以外は今日六課に合流する予定です。負傷者は出ましたが全員業務に支障が出るほどでは無いです」
「そか………ヴィヴィオちゃんの行方は?」
「依然掴めていません………」

グリフィスの報告を聞いてはやては椅子にもたれ掛かり小さくため息を吐いた。

(最悪の流れや………恐らくクレインは初めからヴィヴィオちゃんを狙っておったんやな………やっぱりヴィヴィオちゃんは………)

『はやてちゃん。有栖家の皆さん、並びにイーグレイ家の皆さんが集まりました!』

そんな中、リインフォースから通信が入った。

「了解やリイン。直ぐに集めるから客室に案内頼むで」
『了解です!』

リインに指示を出しはやても立ち上がる。

「よしゃ、私達も行こうか。色々と聞かなくちゃあかんからね………」

そう言うはやてに、部隊長室にいたシグナムとグリフィスは無言で着いて行った………











「待たせてごめんな………準備出来たから案内するで」
「はい、分かりました」

はやてにそう言われ星達は立ち上がる。

重傷のバルトと狂ったなのはを1番最初に見つけたのは零治を止めようとしていた星達有栖家だった。追えば間に合うかもしれないその状況下で、有栖家の面々は2人を助けることを優先した。なのはを気絶させ、バルトの傷を応急処置し、何とか最悪の事態だけは免れた。

それと同時にあの場の惨状を見て皆覚悟を決めていた。

「こっちや」

そう言われ部屋の中へと入る。中には別荘に来ていたライトニング、スターズのメンバー、そして1部のロングアーチメンバー(グリフィスを初めとした各部署のリーダー、そしてヴァイス)が席に着いていた。

(キャロ………)

そしてライトニングの中のキャロを見て申し訳ない気持ちで一杯だった。映像で零治の事を確認したキャロ。当然直ぐに零治に連絡を取ったが繋がらず、余り時間を取れない影響もあり、中々星達にちゃんと事情を聞けずにいた。

更にリーダーであるエローシュ、そして真白が行方不明。その影響か、残された3人は意気消沈していた。

「それじゃあ星ちゃん達は彼女達の前の席に座ってな」

そう言われ案内された席の後ろには六課の防衛に協力したダメっ子の3人とクアットロ、ディエチが並んで座っていた。

「あれ?ウェンディのお父さんはまだみたいやな」
「今向かっている見たいっス。始めてもらって良いってメール来てるんですけど………」

そう言いながらはやてを見るウェンディ。

「そうか。………それじゃあ始めさせてもらうで」

その姿には先輩後輩は無く、初対面の様な他人行儀の姿がそこにあった。
ウェンディだけでは無く、他のメンバーの殆どが顔見知りでありながら重苦しい雰囲気がこの部屋にはあった。

「皆、集まってくれてありがとな。まだ上からは直接命令は来てへんけど恐らく私達にはゆりかごを止めるため近いうちに駆り出される事になるやろう。今、無限書庫のユーノ君にも協力してもらってゆりかごについて調べてもらっとる。それについてはまた改めて………今回は有栖家の皆にも来てもらい確認したい事があったからここまで来てもらったんやけど………」

そう言いながらはやては星達を見る。星達は何も言わず静かにはやての言葉を待った。

「私達は星ちゃん達を信じておった。……いや、今も信じとる。呼ばれた時点でどんな話の内容かはもう分かってるはずや。………私達に隠している事、話してくれへんか?」

そう言われはやては星達を見る。
暫く無言が部屋の中を包む中星が立ち上がり、はやての隣に立った。

「………皆さん初めまして。顔見知りも多いですが自己紹介させてもらいます。私は有栖星。地球に住む一般人です。………ただ私達には魔力がありデバイスも使えます」

そう言って一旦言葉を切る。
目を瞑り、自身を落ち着かせる。

そして覚悟を決め、話し始めました。

「皆さんが映像で確認した刀を使う魔導師は有栖零治、私達の家主で、かつて黒の亡霊としてミッドチルダ最強の傭兵黒の亡霊と呼ばれていました………」































「ストーカー?」
「そうなの…………」

5月の中旬。
ゴールデンウィークの殆どをバイトで過ごしたりと憧れのキャンパスライフから外れた生活をしてきた俺。エリスとも数日出かけただけで、当人はゴールデンウィーク前から不機嫌そうだったが、それでも当日はショッピングに食事と中々楽しい時間を過ごせたと思う。

そんな中、俯き気味に言われた言葉。少々疲れている様にも見える。

「………大丈夫か?」
「ストーカー被害は別に今回が初めてって訳じゃ無いの。高校の時も男子にこそこそと家まで付きまとわれたりしたし、一生懸命隠れて私に付いて来ようとした後輩とか可愛くて………」
「いや、それストーカー違うだろ」

エリスの高校生活が容易に想像出来た。まあこの容姿に明るい性格と来れば学校のアイドルでもおかしくない。

(加奈も猫かぶらずにいればな………)

学校では家の態度とは真逆な清純な女子高生を演じる加奈。同級生はその雰囲気が高嶺の花で近づけなかったとよく言っていた。
それさえ無ければ学校のアイドルと言われていただろう。
………まあ加奈が望むとは思えないけど。

「違うの?………ってそんな話はともかく!!今回は何か違うタイプなの………何か変な視線を感じて周りを見ても分からない。………けど何かずっと見られている気がして………」
「うわぁ………ちょっと危ないなそれ………」

今の所、視線を感じるだけの様なので気のせいと言う可能性もある。何て言ったってこの容姿である。
男女問わず、思わず見てしまうだろう。
だけどずっと、それも最近毎日と言うのは危険かもしれない。

「孝介………」
「そんな目で見なくても家に送るぐらいはしてやるよ。バイトギリギリになるかもしれないが、事情を話せば分かってくれるだろうし」

俺のバイト場は回転すしのチェーン店。そこの社員さんはまだ20代と若いので、妙に話があう。
今回の事も言えば時間をずらしてくれるだろう。

「まあ安心しろ、何かあっても俺が守ってやるよ」
「孝介ってあまり強く無さそうよね?」
「失礼な!俺だってやるときはやるぞ!?昔馴染みに空手やってた奴が居て、よく喧嘩してたからな!!」

言わずともがな、桐谷の事である。

「そうなの?………じゃあお願いするわね、しっかり私のナイトをするのよ?」
「おうよ!!」















「………ふう」

目を開け、小さく息を吐く零治。

「どうだい黒の亡霊の精神は?」
「特に変化は無いわ。おかしい所も何も無い。………なのに時々、私の意識の外で体が勝手に動く………それがバルトマンとバルトを仕留め損なった………」

悔しそうに呟く零治。糸が切れた人形の様に動かないままクレインにそう答えた。

「まあ動けなくしてくれるだけでもOKさ。それに重傷で短時間で傷を癒さなくてはいけなくなると最後の聖王器を使わざるおえないだろう」

「聖僧女リアレスの杖、パールバティね。………確かにあれならどんな重傷患者でも短い時間で修復出来るわね。だけどあれを使うとなると回復に秀でた魔導師で尚且つ、相当な魔力を使用するからあの時もリアレスしか使えない杖だったわ」
「そこは問題無いさ。適役の人物がこの世界に居る」














「あれで本当に良かったの?」
「ヴェリエ元帥の事?」

ヴェリエ・マーセナルと話を終えた2人はそのまま車で移動していた。

「そうよ。私はそんなに簡単に信じて良いとは思えないわ」
「俺もそうさ。だけど今の管理局にはあの人は必要だし、あの人の言葉も信じたいと思えたんだ。だからあの人を信じてみる事にした」
「………まあいいわ。それで、今度は何処に行くのよ?六課の道じゃ無いわよね」
「そうだね。ハッキリ言えばこっちの方が加奈を連れてきた理由かな」

そう言った大悟の言葉を聞きながら外の景色を見る加奈。

「こっちは………確か聖王教会?」
「そう。カーニバルが始まる1ヶ月前からカリムさんにお願いしていた事があったんだ。それがあの事件後に聖王教会の認可が下りた」
「カリムさん………ねえ………」
「あれ?食いつく所、そこ………?」

睨む加奈に冷や汗が流れる大悟。

「………で、そのお願いした事って言うのは?」
「聖王教会で保管されていた聖王器、聖杖パールバティの使用許可さ」






















「零治君が………!?」
「黒の亡霊!?」

星の発言に地球にいた頃からの知り合い、はやて達を始め、顔見知りのスバルやティアナ達も驚いていた。

「レイ兄が………!?2人は知ってたの!?」

エリオの問いにキャロとルーテシアは小さく頷く。

「そもそもの発端は私達が中学2年、14の時に古い馴染みの仲介屋から仕事を受けたのがきっかけでした。その依頼主は次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ」
「ジェイル・スカリエッティ!?」

フェイトは思わず立ち上がり、大声を上げてしまった。

「そう、フェイト、あなたがずっと追っていた犯罪者です」
「えっ!?どうしてそれを………?」
「レイが言っていたので。………どこで知ったかは教えてくれませんでしたけど………」

そう星が言った所で、はやてがフェイトに座るようにジェスチャーを出し、フェイトもそれに従い席に座った。
それを確認した星は話を再開した。

「零治………すみません、私達はレイと呼んでいるのはレイと言わせていただきます。………レイも当然ジェイル・スカリエッティの事は知っていました。だからこそ、接触してきた真意を確認する意味でもその依頼を受ける事にしたんです。その依頼が暴走した人造魔導師の確保。その人造魔導師は地球にいるはやて達に向けられて差し向けられたものでした」

そんな説明にはやてを含め、地球に住んでいた者皆動揺を隠せないでいた。

「………全然気が付かなかったわ」
「それは海鳴市で起こった事なのか………?」

シャマルが思わず呟き、その隣にいたシグナムが星に質問した。

「いいえ、戦闘が実際に起こったのは隣の遠見市の森林地帯なので、恐らく気が付かなかなったのだと思います。………そしてその人造魔導師を海鳴市へ送った人物が………クレイン・アルゲイルだったんです」

そこまで説明して星は用意されていた水を飲む。場はひそひそと話す声はあるものの、誰もが知らない情報を一辺に説明され、動揺していた。フェイトやはやてもである。

「そして………」
「ま、まだあるんか………?」
「そうですよ、むしろまだ序章と言っていいぐらいですから。そしてここからは私の説明よりももっと適役な人がいるのですが………ウェンディ」
「もうついたみたいっス」

「いやぁ………済まない、遅れてしまった………!!」

そんな事を言いながら慌てて男性が入って来た。

「えっとあなたは………」
「ああ、自己紹介をしないとだね。初めまして、私はジェイル・イーグレイ。こっちが妻のウーノ・イーグレイ」

小さく会釈するウーノの姿に男性陣からどよめきがあったがジェイルは気にせず話を続ける。

「桐谷君達機動七課に新型のバリアアーマー、ゲシュペンストを提供した科学者で、その子達の親だ」

そう説明して一旦言葉を切る。そして………

「そして、かつて私はジェイル・スカリエッティと呼ばれていた者だ」

爆弾発言をした………












3日前…………


「正体を明かすつもりですか!?」
「ああ。最早この状況は我々だけじゃ解決できない。バルトマンもバルト君もそして高町なのはも零治君には敵わなかった。こうなると別々に行動してては絶対にクレインは止められない。ここは正体を明かし、機動六課に協力をお願いするかしないと思うんだが………不服そうだね」
「当然です!!」

そう怒り交じりに答えるウーノに少々怯えながらもジェイルはため息を吐いた。
バルトとなのはを最初に発見した有栖家はその場に残り、2人の応急処置をしていた。その為、はやて達にも見つかり、事情を説明しなくてはならなくなった。

「どっちにしてもあの場で零治君を確保出来なかった時点で有栖家の事も、有栖家に関係している私達もいずれ気づかれる事になった」
「ですけど、別にスカリエッティに戻らず、イーグレイのままでも………」
「説明する以上、私達の話は必ず必要になる。………良い機会だ。それでもせめて娘達は守るさ。それにイーグレイよりもスカリエッティの方が相手も信用する」
「………分かりました。ですけど捕まる時は私も一緒です」
「………ありがとうウーノ」














「ジェイル・スカリエッティ!!」

当然六課の対応は臨戦体制だった。特にフェイトに関しては目の前にずっと探していた相手が現れたのだ。他のメンバーよりも迫力があった。

「ストップやフェイトちゃん!!」

今にも確保に動こうとしていたフェイトをはやてが止めた。

「はやてどうして!?」
「聞いとらんかったんか?最初にイーグレイって名乗ったやろ?」
「そうだね………あっ、フェリアの言っていた博士って………」
「そう、私さ」
「じゃあずっと私達を騙して来たんだ………」
「そんな事は!!………」

フェイトの言葉に言い返そうとしたノーヴェだったが、続く言葉が出ず黙り込んでしまった。

「フェリアもそうだが、彼女達は悪くない。フェリアには零治君の調査の為、地球に送り込んだがノーヴェ達3人は自分達で決めて地球に行き、学生となった。そこに私の意思は無いよ」
「分からへんな………ここ数年ジェイル・スカリエッティの噂が全く立たず、組織間の揉め事で消されたのか?って噂が立ったほどや?世紀のマッドサイエンティストに一体何があったんや?」
「気持ちの変化さ。フェリアから始まり、段々と人間らしくなっていく娘達は、研究よりもずっと私の心を満たしてくれた。無限の欲望とも言われた事があったが自分でもこの変化には驚いたよ」

そう言って笑うジェイルの顔は誰もが思い浮かべていたマッドサイエンティストの姿とかけ離れていった。

「自分のしてきたことから目を背けるつもりはなかったが、娘達の為に、私はジェイル・スカリエッティである事を捨て、フェリアが名乗っていたイーグレイをそのまま名乗ることにした。そしてずっと私を利用してきた老人達から離れ平穏に暮らそうと思っていたのだが、私達のしてきた事の償いと言う気持ちを込め、娘達と共に違法研究所を潰していたんだ」
「そうか……一時期かなりの違法研究所が見つかってかなり慌ただしかった事があったんやけどスカリエッティの仕業やったんやね」

捜査官であったはやてや、執務官であったフェイトも当然調査していたが、犯人の足は全く取れないでいた。

「まあ当然さ、私の娘は優秀だからね!!」
「………ドクター?」
「すいません………」

嬉しそうに、自慢そうに言ったジェイルだったが、隣のウーノさんに睨まれた事で顔を引き攣らせながら謝った。

「………何やろ、この懐かしい感覚」
「中学校時代の零治を見てるみたい………」

何とも言いようの無い感覚に悩まされ、先ほどの警戒も何処へ行ったのか、スッキリしない顔でフェイトは席へと着いた。

「………まあそんな訳で私は私なりの行動をしていたのだが、そんなある日、事態は急変した。………私にも関係ある話なのだが、それ以上に零治君にとって因縁の対決をした事件が起きた」
「因縁の対決………?」
「レイから聞いていたと思いますが、バルトマン・ゲーハルトとの戦闘です」

その問いにジェイルの代わりに星が答えた。

「ええ聞いたで。そしてあのバカと一緒に撃退したってのも」
「その事件に我々もいたんだ。そしてあの事件の黒幕はクレイン・アルゲイル」

その瞬間、部屋の中が静止した。誰もが驚きで答えられなくなっていた。事件に参加していたキャロとルーは特に驚く事は無かったが、他は違っていた。

「あの事件はバルトマンが原因じゃないんか!?」
「バルトマンの目的はもう一度、レイが先輩と呼んでいた人物、ウォーレン・アレストとの再戦を望んで、クレインに協力しただけです。本当の黒幕はクレイン・アルゲイルです」
「バルトマンは再戦を望んだ?でも零治の先輩って人はバルトマンに負けたんじゃ………」

「いえ、ウォーレンさんはバルトマンに満身創痍ながら勝ったんです」

「嘘っ!?」

そんな星の発言に一番驚いたのは後ろの方で静かに話を聞いていたティアナだった。

「あなたは確かティアナ・ランスターさんでしたね」
「は、はい………」
「私の言った事は本当です。私やライや夜美、そして優理もあの場でバルトマンと戦いましたし、そこでその話も聞きました」
「本当に………?じゃあ一体誰がウォーレンさんを………」
「………エリット・クリース」

その名前を聞き、部屋の空気が凍った。

「な、何を言っておるんや!!確かにバカと比べれば力の差は明らかやったけど、それでもエース・オブ・エースと呼ばれた男やで!?」
「これは憶測でしかないですが、先ほどウォーレンがバルトマンに勝ったものの、既に満身創痍と話しました。そこに一番に駆け付けた魔導師がエリット・クリースです。後は言わなくても分かる人は分かるでしょう」
「………まさか手柄を自分のものにするため?」
「恐らくそうです。現に、神崎大悟があの場所に駆け付けた時にはバルトマンによって殺されていました」
「そんな………そんなのって………お兄ちゃ……私の兄のティーダは知っているんでしょうか?」
「多分レイは直接会って話していると思います。それにトーレさんも知っているだろうし………」
「………ん?あれ?何でトーレ先生の名前は出てくるんですか?」
「………スバル、あんたトーレ先生の名前フルネームで言える?」
「えっ?トーレ・イーグレイだよね?………ん?えええええ!?」

大きな声で驚くスバルにティアナがげんこつを入れた。

「そう。ティアナ君のお兄さん、ティーダ君と私の娘と言うよりは妹に近いが、2人は交際しててね………いずれ結婚報告があると思うのだけれど、私は父親としてどう対応すればいいのか………
「ドクター………?」

脱線しそうになったジェイルをウーノが睨みつけ、踏みとどまらせた。

「オホン!!………話を戻すよ。あの事件の黒幕がクレインだと分かったと思うのだが、そのクレインには2つの目的があった」
「目的?」
「1つはマリアージュの使用実験。そしてもう1つがクレインを飼い慣らしたつもりで従わらせていた最高評議会の老人達の抹殺だ」
「なっ!?」

その事実にはやては思わず声を上げ、部屋の中も今までの静けさとはうって変わりざわざわと騒がしくなった。

「最高評議会を殺害したのはクレインなの!?でもその証拠は!?」
「それは私もクレインと同じ様に過去老人達に飼い慣らされており、同時期に始末しようとしていたからさ」
「飼い慣らされていた!?それじゃ今までジェイル・スカリエッティが起こしていた犯罪って………」
「彼らの指示の元、私が行っていた研究だ」

もちろん全てがそうでは無いのだが、当然その事は言わなかった。

「………以前、零治君が管理局は信用出来ないって言う本当の意味が分かった気がするわ………零治君は知っていたんやな………」
「そうだね………」
「管理局って何なんだろう………」

どの局員か分からないが誰かが呟いた言葉に誰も答える事が出来なかった。

「そんなに悲観する事は無い。老人達がやらせていた事は私利私欲の為のものであり、君達が携わったわけじゃない。それに今の元帥の元、管理局は良い方向に変わっていた。だからこそ、私もバリアアーマーの技術協力をしていたし、こうやって君達を信じ、この場に現れた。………君達のやって来た事は決して間違っていない」

そうジェイルに言われて、俯いた顔を上へ向ける六課の局員達。

「さて、それじゃあ続きだけれど………」
「その前に15分ほど休憩を入れます。流石にここまでずっと喋りっぱなしで博士さんや星ちゃんもつかれたやろ」
「………そうだね、君達も色々と話されて疲れただろう。その提案に賛成だ」
「了解や、それじゃあ休憩を………」
「………と、その前に私からお願いがあるのだが………」
「何や?」
「今話した内容は機動六課又はそれに関連する者達以外には口外しないでほしい。私の存在もあるとは思うが家族の事を考えると、それを承諾してくれないのであれば本題に入る前に私達はこの場を離れ、独自に行動する、済まないが私は世界よりも家族の無事を第一と考えている」
「素直に私達が逃がすと思うん………?」
「それでも私達は逃げるさ。家族全員で」

はやての言葉にハッキリと返したジェイル。
暫く視線を変えず、見つめ合った2人だが、先にはやてがニヤリと笑い、頭をかきながら答えた。

「冗談や。私としてもいきなりこんな事実を公表する気も無いし、そもそも事実かも分からない。証拠もあらへんしね。そんな状態じゃ誰も信じてくれへんよ」
「そうだね。………でも君達は信じてくれるのかい?」
「私は1人の管理局員の前に零治君達有栖家の友達や。その友達が真面目な顔で打ち明けてくれた話を嘘だとは思えへん。………まあこんな事七課のレジアス中将に言えば何言われるか分かったもんじゃないんやけど………」

あははと苦笑いしながら答えるはやて。

「………いいや、だからこそ私達も星君達も君達を信用出来るんだ。休憩後続きを話すよ」
「ありがとう。こちらにしてもクレインの情報が無さ過ぎてどんな情報でも欲しい所なんや………それに………」
「何か心配事でも?」
「知っとると思うやけどスターズの高町なのはとバルト・ベルバインが零治君に負けてな。なのはちゃんの方は外傷は特に問題無いんやけど精神的に、バルトさんに関しては重傷でかなり危険な状態なんや………」
「ああ、それに関しては問題無いよ。高町なのははともかく、バルト君は彼等が何とかしてくれる」
「彼等………?」
「管理局最強の矛と盾の2人だよ」
 
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