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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  012 とある少女の爆弾発言と修行風景


SIDE 平賀 才人

「サイト! 君の技に惚れた! 僕を鍛えてくれないか!?」

目の前にはハルケギニアには概念すら存在していないはずのジャパニーズDO☆GE☆ZAで俺に弟子入りを志願している、女子寮潜入の為かローブを羽織ったギーシュ・ド・グラモンと柔和な微笑みを浮かべているユーノ・ド・キリクリ。

「何でギーシュが土下座なんか知ってるか判らないけど、とりあえず何故か居たたまれない気持ちになってきたから頭を上げてくれ──と言うより、立ってくれ。……これは君の差し金か? ユーノ」

「ふふふ、正解」

(何でこうなったか……)

朝。日課の訓練の後に部屋に戻ってルイズを起こそうとした時、ルイズの部屋のドアが叩かれた。気配からギーシュとユーノが居るのは判って居たが、扉の前で土下座をしているとは露ほども思っていなかったから、多少面を食らってしまった。

「ん……? 何よ……? 朝から五月蝿いわねぇ。……って、ギーシュにユーノ? こんな朝っぱらからどうしたのよ?」

「僕はサイトに弟子入りしに来たんだ」

「私は少々サイトに用があって来ましたの」

「……とりあえず、そこは通行の邪魔になるから部屋の中に入りなさい」

部屋の出入口にてガヤガヤしていたら、ルイズが瞼を擦りながら眠気眼で起きてきて2人に自らの部屋へと入る様に促す。

「……で、ギーシュはともかくユーノはサイトに用が有るって言ってたけどどんな用事だったの?」

(……ん? 〝ハ・ナ・シ・ヲ・ア・ワ・セ・テ〟……?)

ユーノがいきなり目配せをしてきたと思ったら、口パクで──更には〝日本語〟でそんな事を伝えてきた。……ハルケギニアでは存在しない日本語を知っている事から、ユーノが俺と同じ様な存在だと云う事がこれでほぼ確定した。

「………」

俺はそれに鷹揚に頷くとユーノは更に言葉を紡ぐ。

「私はトリスタニアに行った時、サイトに悪漢から救って貰って。……個人的にサイトにお礼がしたくなったから来ました」

「……サイトにお礼がしたいのは判ったけど、こんな朝っぱらからじゃなくてもいいんじゃないの?」

「あら、知りませんの? サイトは昨日のミスタ・グラモンとの決闘以来、女子達から人気があるんですよ。……〝ミス・ツェルプストー〟を筆頭に」

――ビキィ

このトリステインで貴族を始め、多少政治に明るい者なら知っている〝ツェルプストー〟と〝ヴァリエール〟の不仲を突いたセリフに、ルイズからナニかが切れる音がした。ユーノはそれを知ってか知らずしてか、更に話を進める。

「それに、私……サイトの事が好きですから」

ユーノの爆弾発言にピシリ、とルイズの動きが止まった。俺の動きもギーシュの動きも止まった。

「……えっと? 〝本気〟と書いてマジ?」

「ええ。〝本気〟と書いてマジです。それこそ、前世から好きです」

今のユーノのセリフで確信した。俺はユーノの──〝円〟のいきなりのあけすけな発言に頭を抱えたくなる。……因みに、ルイズとギーシュの2人は未だに停止状態から復活していない。

(やっぱり〝そう〟か……)

……別に円が俺の事を〝そういう目〟で見ている事は何となく気付いて居たが、男同士なのでどういうリアクションを取れば良いのか判らなかった。……なので、円の気持ちに気付かないフリをしていたが、それにケリを着ける前に俺が夭逝してしまった。

「ふふふ、どうリアクションしていいのか判らないと云う顔ですね」

「「え──」」

「あ、拙い“サイレント”」

漸く復活したルイズとギーシュが息を大きく息を吸い込み、この後がどうなるのかを容易に想像できた俺は、部屋の外に叫び声が洩れない様に2人の咆哮より先に“サイレント”の魔法を掛ける。

「「ええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

一通り叫び声を上げた2人はまるで餌を待つ鯉の様に口をパクパクさせながら俺とユーノを交互に見る。

「ちょっと、ユーノ! どういう事よ!?」

「〝どういう事よ〟って、こういう事ですけど」

「ちょっ、引っ付くな。ユーノ」

ユーノはルイズに見せびらかすかの様に俺の右腕に抱きつく。そうなれば、割と主張しているユーノの母性の象徴が俺の腕に当たる訳で──

「こら! ユーノはサイトから離れなさい! サイトも鼻の下を伸ばさない!」

……ユーノを〝女の子〟として意識してしまう事も無きにしも非ずなのだ。……いくらユーノが元・男とは云え。

「ふふふ、私の用事は終わりました。……ルイズ、これは忠告ですが早くサイトを囲ってしまわないと面倒な事になりますよ?」

「……判ってるわよ」

ユーノは何やら思わせ振りな言葉を残してそそくさと退室していき、ルイズもユーノの言葉に某かを感じたようで、いくらかの感情を込めてユーノのセリフに理解を示すような言葉を溢す。……あえて言うなれば、当事者であるはずの俺の意思はそこには介入していない。

因みに、残されたギーシュは去って往くユーノを見ているだけでユーノの爆弾発言のダメージから未だ回復していないようだ。

(とりあえずギーシュをどうにかしないとな)

「とりあえずギーシュ」

「な、何だい」

「俺は毎朝の様に学園の周りを走っているから、来たかったら来てみれば?」

「うん。……そうだね、そうさせて貰おうか。僕もそろそろお暇させて貰うよ。また朝食の時に会えたら」

「ああ、またな」

ギーシュも女子寮潜入の為に着ていたローブを羽織り、すごすごと退室して往く。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふっふっふっふっふっ」

「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

ギーシュが弟子入りして早い事3日目に突入して、今日も日課の朝練の一環であるジョギングで体力を作る。

(今日で3日目になるが、ギーシュも意外と頑張るモンだ……)

当初のギーシュのジョギング時の呼吸音は「はぁっはぁっはぁっはぁっ」等では無く、「ひぃっひぃっひぃっひぃっ」と云った感じで、俺も昔は〝ああ〟だった事を思い出して懐かしい感じがした。

閑話休題。

一通りジョギングを終えると簡単な、魔法ありきの組み手に移行する。

「いくよサイト! “フラッシュ・バン”」

「甘い! 誰の作ったオリジナルスペルだと思ってる。弱点を知らないとでも思っているのか?」

ギーシュの杖先から淡い光の粒が出てうち上がるが、流石に何の工夫もしていない自分で作ったオリジナルスペルに引っ掛かる訳にはいかないので、そのままギーシュが光の粒を見ずにギーシュへと突っ込む。

「くっ!?」

「……俺の勝ちだな?」

「……ああ。参ったよ。降参だ」

俺はギーシュが降参の意を示したのをを確認すると、ギーシュの頚に当てていた杖を引っ込める。……因みに、7戦7勝0敗。それがギーシュとの今回までの戦績だ。

「よし、今日はここまで」

「ありがとうございました」

ギーシュは俺に1つ礼をすると、疲労がまだ抜けきっていないからか束無い足取りで帰って往く。……因みに時間は地球の日本での時間に当てれば、まだ早朝5時頃。……朝食まで時間まで1回寝るつもりだろうと云う事は何となく俺の実体験から想像できるので、そんなギーシュを生暖かな目で見送る。

「さて、俺のノルマを終わらせるか。……来い、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”」

<呼んだか? 相棒>

「ああ、朝の訓練だ。〝バージョン2〟にコンバートしてくれ」

<応っ!>

“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”が仰々しい装飾の籠手から、緑色の宝玉が埋め込まれたオープンフィンガーグローブへとその姿を変えた。

“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”のバージョン2。〝籠手〟をそのまま防具として使うのならまだしも、デルフリンガーを振るう際には重厚な籠手が着いているとどうしてもデルフリンガーが振るい難いので、俺がドライグに無理を言って作って貰った。

『Boost!』

『Boost!』

『Boost!』

計3回の倍加で負荷を──つまりは普段かかる8倍の負荷を、俺自身への身体へ掛ける。

「よし、〝倍加固定〟」

<応っ!>

倍加固定。これまたドライグに頼んで作って貰ったシステムで早い話が、〝倍加固定〟の字を読んで字が如く倍加を〝止めさせる〟システムである。……メリットとデメリットが有るが、その話は追々と。

(……にしても、そろそろ視線がガチで鬱陶しくなってきたな。……なんなら、こっちから接触するか?)

そんな感じで日課のノルマを消化していく。……タバサとか云う青い髪の小柄な少女の、まるで監視するかの様な視線に気付かないフリをしながら。

SIDE END 
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