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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  011 ヴェストリ広場での決闘 その2

SIDE 平賀 才人

<ヒュ~、やっぱり相棒の剣はいつ見ても冴えてるねぇ>

「助かったよデルフリンガー」

<いいって事よ! また、荒事になったら俺様を使いな!>

俺は喋る魔剣──“デルフリンガー”を鞘に納め、〝倉庫〟にしまっておく。

デルフリンガー。意思を持ち言葉を話す魔剣──インテリジェンスソードで、ある日“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”ごっこをしようと思い立ち、トリスタニアにある武器屋に直行し、そこで喋る魔剣デルフリンガーと出会った。好奇心からその武器屋の店主との交渉の末、50エキューと云う安値で買い叩いた。

デルフリンガーは当初はただの錆びた剣で、売れないと嘆いていた店主から厄介モノ扱いされていたところを値切り交渉をした結果、ついぞ100エキューの半額の50エキューで押し付けられ──買った。……喋る剣って珍しかったし、デルフリンガーからも〝俺を買え〟とか言われたし。

錆び方にどこかしらの違和感を持った持った俺は虚無魔法の“リコード”でデルフリンガーの記憶を探ってみた。そしたら、その正体は6000年モノの宝剣で初代ガンダールヴの相棒と云う、色んな意味でふざけた剣だった。

……俺がデルフリンガーから記憶抜き出していると、デルフリンガーは自分の本来の姿を思いだした様で、錆びを振り落とし元の姿であろう無骨な──されど光沢のある頑強そうな姿へと、その姿を変えた。

閑話休題。

「……で、話は覚えていますね?」

「ああ。ルイズに今まで馬鹿にしていた事を謝ればいいんだろう? トリステインの名門グラモン家の末弟だ。潔くルイズに頭を下げよう──」

(……なんだ? 悪いモンでも食ったか?)

思っていた事と違う展開になって内心あたふたとしてしまう。

「いきなり停止してどうしたんだい?」

「いえ、いきなりミスタ・グラモンの態度が軟化していて少々驚いただけです」

「まぁ、あんな凄い剣技を見せられたらね。……それより、ミスタ・グラモンなんか他人行儀な呼び方ではなく、僕の事は気軽にギーシュと呼んでくれたまえ」

「あ、ああ。宜しく、ギーシュ」

「ああ、宜しく頼むよ新たな〝友〟よ」

「〝トモ〟……?」

瞬間、俺の頭はギーシュの言った事を理解するのを止めてしまって、ついついギーシュの言ったワードをそのまま鸚鵡返しにしてしまう。

「何を言ってるんだい? 昨日の敵は今日の友と言うじゃないか。それに、決闘もした仲なのだしね」

「……まぁ、いいや。宜しくなギーシュ」

ギーシュのあまりのヤンキー的な思考に嘆息しそうになるのを堪え、友人は多い方が良いと考えつき友誼を結ぶのを承諾する。

「ギーシュ!」

「……サイト、連れてきたわよ」

仮の主であるルイズと、モンモランシーがおそるおそると云った感じで声を掛けてきた。……モンモランシーを伴っているところを見るに、約束通りちゃんと連れてきてくれたようだ。

「モンモランシー!?」

「……ギーシュ、ルイズに連れられて来てみたらこれは一体どういう事よ?」

「これはだね……」

ギーシュはモンモランシーに俺と決闘する事になった経緯を──アルヴィーズ食堂でモンモランシーがギーシュにワインをぶっかけて去って行った後の事を所在無さげに説明した。

「──と云う訳なんだ。……ルイズも今まで馬鹿にして、すまなかったね」

「……別にいいわよ。私が魔法を使えないのは本当の事なんだから。……それに、どうせギーシュが私の事を馬鹿にしてサイトが私を馬鹿にした事を謝る様に言ったんでしょ?」

――ギクリ

「はは、どうやら主にはお見通しだったようだね。サイト」

「ははは……」

ルイズの正鵠を射た推察に俺は乾いた笑いしか返せない。

「モンモランシー……」

「ギーシュ、何よ?」

「本当に済まなかった!」

ギーシュはその場でモンモランシーに向かい、腰を曲げて──頭も下げて謝った。……ギーシュが頭を下げて数秒。ギーシュの謝意を感じたモンモランシーはつぐんでいた口を徐に開いた。

「はぁ、これに懲りたのならあんまり私以外の女にはちょっかい掛けない事。良いわね? ……それを約束出来るならさっきの別れ話の事は考え直してあげる」

「ありがとう! モンモランシー! 約束するよ!」

ギーシュとモンモランシーが寄りを戻したすぐ後。ギーシュがこんな事を、俺を推し測る様な事を言い出した。

「サイト、君の剣の腕は見せてもらった。次は君のメイジとしての腕前が見てみたい。もう一度、今度は決闘としてではなく模擬戦として僕と戦ってくれないか?」

「ん? 模擬戦? ……別に良いが」

断る理由が特に見つからないので、了承する。

SIDE END

SIDE ギーシュ・ド・グラモン

僕、ギーシュ・ド・グラモンはこのままトリステイン魔法学院を卒業したら、国の為に魔法衛士隊に入隊するなり、父上の後を継いで領主になるであろう兄上の元に就く事になったり、モンモランシ家に婿入りする可能性もあるだろう。……勿論それに非は無いが、〝このままで良いのだろうか〟と思う事もしばしば有ったりする。

「サイト、君の剣の腕は見せてもらった。次は君のメイジとしての腕前が見てみたい。もう一度、今度は決闘としてではなく模擬戦として僕と戦ってくれないか?」

「ん? 模擬戦? ……別に良いが」

サイトは僕のいきなりの申し込みに、快諾と云う訳ではななかったが多少顔を渋らせた後、僕の申し込みを承諾してくれた。

「今度もコインが開始の合図だ」

「ちょっと、ギーシュ!? サイトも!」

「いいんだルイズ。さっきは剣を使ったけど、俺のメイジとしての腕前は披露していないからな」

「いくよ」

「ああ、何時でも来い」

僕はサイトが杖を構えたのを確認すると、先ほどとは違う感情でコインを空中へと弾いた。

SIDE END

SIDE OTHER

「往け! 僕のワルキュ──」

「遅い! “フラッシュ・バン”」

才人はコインが落ちたのを確認した瞬間、ギーシュのゴーレムが立ち上がる前に“ライト”のコモン・マジックを──杖先から打ち出された淡い光をまるで閃光玉の様に光を弾けさせる様に改良したオリジナルスペルでギーシュの目を自分から逸らした。

「ぐっ! 眩しっ!」

才人の杖先から出た光を素直にまじまじと注視していたギーシュは、いきなり弾けた閃光に思わず杖を手放し両手で目を覆ってしまう。……当然、才人からすればギーシュのその行動は判りやすい隙にになる訳で──

「俺の腕前、見てもらえたか?」

「……ああ、よく見せて貰ったよ」

ギーシュの背中に才人の杖が押し付けられる。……時間にして10秒。勝負は一瞬で、目眩ましをしてギーシュの後ろに回りこむ。……才人のしたことは単純だった。

SIDE END

SIDE タバサ

サイト・ヒラガ。使い魔召喚の儀でルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに召喚された青年。……私の使い魔が彼を見た瞬間、私の使い魔は物凄く彼に対して怯えだした。

いくらその怯えている理由を問い質しても、〝シルフィはあのお兄さんに宿っている赤い龍が怖いのね!〟と、要領を得ない答えが返ってくるばかりなので、仕方なく自分で監視することにした。

赤い龍。……彼からその片鱗を見たのは今日の授業で主が馬鹿にされている時だった。私の見間違えでなければ、怒った彼の背後に赤い龍を象ったオーラが見えた。

「……いいわねぇ。しびれるわぁ」

どうやら、隣に立つ自称・友人の悪癖がまた始まったらしい。……否、回りの女子の様子を見るに、彼に魅せられたのは隣に立つ赤髪の友達だけではないらしい。

これからも彼──サイト・ヒラガの監視を続ける事に決めた。

SIDE END

SIDE ユーノ・ド・キリクリ

ヴェストリ広場で行われたサイトとギーシュの決闘。最終的にはサイトが勝つとは思っていた。……が──

(これは少し予想外だね)

真人君──サイトの左手を見るに、サイトはルイズと“コントラクト・サーヴァント”を行っていないからガンダールヴにならずして、どのように勝利を収めるかと思ったら、まさかデルフリンガーらしき剣を出してくると云う奇想天外な方法できたから、仰天したものだった。

(ダメだ。……また〝知識〟を頼りしてしまう)

そもそも転生者──〝ボクたち(イレギュラー)〟が居るのだから、〝知識〟はカンペ程度にしか使えないのだ。あーだこーだ言っていても仕方がない。

(……とは云え)

そろそろサイトに本格的に接触して、色々と照らし合わせたいところだ。

(でもなぁ)

サイトの主であるルイズとは面識は有るが、そこまで親しいと云う訳では無い。サイトに接触するには間にワンクッションが欲しいところだ。

(メイドでも使おうかなぁ……)

「うーん、どうしたものか……」

(アレは、ギーシュかな?)

サイトと接触する方法を考えながらヴェストリ広場からの帰路を歩いていると、お誂え向きの人物が──ギーシュ・ド・グラモンが広場に某かを悩んでいる様子で1人残っていた。

「もし?」

ボクは、何やら話がいい方に転がりそうなのでギーシュに話しかけた。

SIDE END 
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