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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第75話 糸が切れていた間



 赤いオーバーロードが去ってから、沢芽市は物々しい空気に包まれた。

 外を歩く人はいない。街路のあちこちに量産型黒影とカーゴ車が配備され、インベスは見つかり次第、彼らによって処理された。

 それらの様子を物陰から、咲、そして戒斗とザックは窺っていた。

「そんなことがあったの――」

 道中で戒斗とザックは教えてくれた。咲が紘汰と没交流の間に、紘汰に何があったか。

 和解したはずの貴虎に襲われたこと(貴虎のアリバイを知る咲は偽物と予想している)。
 退院した光実と連絡がつかないこと。
 赤いオーバーロードとユグドラシル勢力によって、紘汰がひどい傷を負ったこと。

(あたしが紘汰くんからはなれなかったら、こんなことにはならなかった? ああ、でもそれだとヘキサをほっとくことになった。だめだよ。やっぱり、あたしが選ぶのはヘキサなんだ)

 結論は決まり切っている。なのに葛葉紘汰のそばにいなかった自分自身が、歯がゆくて。

(あたし、なんかおかしい)

 自身の心の変化が恐ろしい。咲は知らず我が身を抱いた。

「おい、戒斗、咲。あれっ」

 ザックの声に咲は我に帰り、ザックが指したほうを見上げた。

「何だあれは…」

 ユグドラシル・タワーの外壁に濃緑の蔦が絡みつき、外壁を覆っていく。濃緑の中に点在する赤紫はヘルヘイムの果実だ。ヘルヘイムの植物がユグドラシル・タワーを内側から侵食しているのだ。

 戒斗が一番に走り出した。咲とザックも戒斗を追う形で走り出した。どこへ行くかなど聞く必要はなかった。目指す場所など、ユグドラシル・タワー以外にない。

 駆けつけたタワー前にはマリカがいた。弓さえ持たず、無手のまま複数の上級インベスに袋叩きにされていた。

「ザック! 室井!」

 戒斗の声を受け、咲もザックもドライバーを装着し、ロックシードを開錠した。

「「「変身!!」」」

《 レモンエナジーアームズ  ファイト・パワー  ファイト・パワー  ファイ・ファイ・ファイ・ファイ  ファ・ファ・ファ・ファ・ファイト 》
《 クルミアームズ  Mister Nucle-man 》
《 ドラゴンフルーツアームズ  Bomb Voyage 》

 それぞれのアーマー装着が終わるや、バロンとナックルがマリカを襲うインベスたちを殴り、蹴り飛ばした。
 インベスの集中攻撃から解放されたマリカを、月花が支えた。

『はぁ…っ、はっ…』
『おねーさん、まさか赤いのと戦ってから、ずっと変身しっぱなし?』

 覚束ない足元。上がった呼吸。それらが月花の問いを肯定していた。

 戦いから気を逸らした月花とマリカにも、インベスは容赦しない。カミキリインベスが彼女たちに細長い凶手を揮った。

「「はあぁ!」」

 その凶手が届く前に、カミキリインベスは、城乃内秀保と凰蓮・ピエール・アルフォンゾの二段跳び蹴りを受けた。

「パティシエ――ナメんなよ」

 城乃内が先にドングリの錠前を開錠してバックルにセットし、グリドンへ変身した。グリドンはドンカチを持ってバロンとナックルが戦う場に飛び込んだ。 
 

 
後書き
 おや? 何やら咲に心境の変化が訪れたような……?
 あえて言うなら正妻いるのに気になる子が出来ちゃった的な。

 そして満を持してのパティシエ師弟参戦です! この師弟お好きな方にはお待たせいたしました。別々に登場させると尺を取るので師弟キックにしました。

 今回微妙だったのは、変身音声の重複ですね。特にレモンエナジー。長いわ!! 
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