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第四章


第四章

「辺境はかなり手強い宇宙海賊も多いですから」
「だからこそ余計にですね」
「はい、精強な義勇軍を向かわせます」
 そうすると言う八条だった。
「そう考えているのは事実です」
「ではそれで」
 バールはそれに応えて述べる。
「いくとしましょう」
「わかりました。では閣議に提案して」
「はい」
「そのうえで議会に出しましょう」
「それで話は決定ですね」
「それでは」
 話はこれで決定した。こうしてすぐに辺境に義勇軍が向けられた。そうしてそのうえで辺境の宇宙海賊やテロリストの掃討がはじまったのだった。
 義勇軍はすぐにそうした勢力を殲滅していく。こうして辺境の治安はよくなった。
 そして辺境への開拓や開発は順調に行われるようになった。そしてその彼は今度は国防省の前で演説するのであった。それも中央政府のだ。
「手ぬるい!」
 彼は一人で看板を持って主張する。
「義勇軍を使うだけでは駄目だ!」
「あれっ、何かデモがいるぞ」
「珍しいな」
 国防省のスタッフはその彼を見て目をしばたかせていた。
「こっちにデモが来るなんてな」
「そうだよな。外務省とか財務省じゃなくてか」
「こっちにか」
「はじめて見ましたけれど」
 こんなことを言うスタッフもいた。実際に中央政府国防省にデモをしてくる人間は殆どいない。これは各国でも同じである。
「変わった人だな」
「そうだよな」
「しかも一人で来てるし」
「何をしているんだろうな」
「正規軍は何をやっているのか!」
 彼は一人プラカードを掲げて拡声器で抗議を続けている。
「何の為の正規軍か!」
「正規軍がどうとかって」
「何かはじめて聞きますけれど」
「何を言いたいんだ?」
「義勇軍にばかり辺境に行かせてだ。彼等は何をしているのか!」
「まさか火事場に行かせるわけにもいかないしな」
「そうですよね、それはちょっと」
 だが国防省の面々は言うのだった。
「犠牲を出す訳にはいかないし」
「元々そういう時の為の義勇軍ですし」
「やはりああいう場合は彼等が」
「正規軍も戦わなければならない!」
 だが彼の主張は続く。
「そう、市民の為に戦うべきだ。市民軍だからだ!」
「軍人も市民だからなあ」
「犠牲が出たらそれこそ」
「厄介だし」
「それだけは」
 ここには連合軍の実情がはっきりと出ていた。多分に政治的な意味合いからだ。
「避けたいよな」
「そのまま国防省への批判にもなりますし」
「やはり」
 これが彼等の本音だった。そして彼はそのことも言ってきた。
「軍人は犠牲を恐れるのか!」
「あっ、言ってきたか」
「このことも察してきていたか」
「鋭いですね」
「そうですね」
 スタッフ達はこのことを聞いて困った顔になった。
「そう来るか」
「参りましたね」
「確かに犠牲は出してはならない」
 彼はそれはよくわかっていた。これははっきりと言ってしまえば当然のことだ。誰も犠牲が出ることなぞ望んではいない。敵がそうなることは望んでも。
 
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