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第三章


第三章

「それで何でこう言う?」
「別に必要ないだろ」
「そうだよな」
「さすればだ」
 しかし彼の言葉と主張は続く。
「どうするべきか。知る必要がある」
「また正論を言うな」
「というか真っ直ぐの論理しかないよな」
「ストレートしかない?」
「変化球ないよな」
「我々は知らなければならないのだ」
 彼はまた言うのだった。
「違うだろうか」
「いや、知ってもな」
「軍事よりも今は」
「開拓の話だよな」
「それだよな」
 連合ではどうしてもそちらに優先順位がいってしまう。開拓とその後の充実した開発である。今はその開発の話が連合全体で議論の中心になっているのだ。
「今どうなんだ?」
「何処も今それに必死だしな」
「そうだよな」
 こう話されていくのだった。
「資金はそちらに重点的に回されてるしな」
「人口もまた増えてるしな」
「人間ってのは次から次に増えるからな」
「全くだ」
 これも連合の特徴だ。それこそ百年もあればすぐに二倍になる。人口もまたこの時代においても国力において非常に重要なパラメータであるのだ。
「そっちをどうかするかだよな」
「開発していくしかないからな」
「インフラとかそういうのをな」
「その通りだよな」
「軍事はな」
「まずは国の安全だ」
 しかし彼の主張は続く。
「安全が保障されてこそ全てが成り立つ」
「だから宇宙海賊もテロリストも減ったしな」
「別に何もないよな」
「そうだよな」
 彼の主張は連合においては受け入れられないというよりは興味を引かれるものではなかった。そういうことは全くなかった。
 しかし彼はその主張を続けた。連日連夜時間があれば街に出て演説しそしてサイトも立ち上げた。ありとあらゆる手段で訴え続けた。
 ビラも配り仕事の合間に主張する。しかし誰も聞かない。
「なあ、今日の飯どうする?」
「ハンバーガーにしようかな」
「ああ、じゃあ俺もそれにしようか」
「スパムバーガーもな」
「いいよな」
 そんな話もして誰も聞かない。
「あとビールとかいいよな」
「ああ、ハンバーガーにはビールだよな」
「それが一番だよな」
「あとラーメンも買うか」
「そうだな」
 こんな話をしながら楽しんでいた。やはり誰も聞かない。
 とにかく連合において軍事は誰も振り向かなかった。しかし実際には軍隊というものは常に動き回る組織である。これはどの国でも同じだ。
 その国防省ではだ。長官である八条義統が制服組の面々を集めて議論をしていた。その顔はいささか深刻なものであった。
 流麗な顔を深刻なものにさせたうえで。彼は言うのだった。
「それではですね」
「はい、そうです」
 その制服組のトップである統合作戦本部長スブタイ=バール元帥が応えた。
「ここは義勇軍です」
「義勇軍を行かせますか」
「そのまま辺境にいてもらいます」
 まさにそうするというのである。
「そして辺境の治安の維持に役立ってもらいます」
「辺境の治安ですね」
「それは以前より長官もお話されていますね」
「はい」
 八条自身もそのことを認める。
 
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