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名古屋攻勢

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第二章

「毎日中日の記事あるから」
「そうだよな」
「けれどあなた」
 もうこの呼び名である。
「別に中日は」
「ああ、セ・リーグファンじゃないからな」
「西武ファンよね」
「昔からな」
 実は前の監督の髪の毛が気になっていたりする、どうなっていくのかと。
「だから野球はいいけれどな」
「コアラは?」
「嫌いじゃないな」
 動物はどちらかというと好きだ。
「観るのを楽しみにしてるよ」
「それじゃあどうして言うの?」
「いや、どんな場所かってな」
「いい場所よ」
 遥は明るい笑顔で夫に答えた。
「これ以上はないまでにね」
「結婚式も派手でか」
「引き出ものもね」
「そうだよな、名古屋と東京じゃな」
「全然違うわよ」
 もうそれこそだというのだ、遥はにこにことして夫に話していく。
「これからあそこで生活することになるからね」
「二人でな」
「任せて、お料理も」
 遥は右手をガッツポーズにさせてこうも話した。
「それはもうあなたも知ってるわよね」
「何度もご馳走になってるしな」
 結婚前からだ、だからこのことは彼もよく知っている。
「けれど名古屋に入ると」
「実は東京の時は食材があまりないせいもあるけれど」
「名古屋だとか」
「本格的だから」
 満面の笑顔でこう言うのだった。
「楽しみにしててね」
「名古屋料理か」
「攻めて攻めて攻めまくるから」
 料理でだというのだ、そしてだった。
 正幸は遥と共に名古屋に入った、勤め先は彼女の実家がやっているその服屋だ。だがその服も妙にだった。
 雰囲気が違っていた、東京と。
 その服を見てだ、正幸は共にいる遥に言った。当然ながら彼女もいるのだ。遥は店の制服の青と白の服を着ている。OLの服そのままだ。スカートは膝までだ。
「服がな」
「少し違うでしょ」
「こっちの方が派手か?いや」
「いや?」
「この雰囲気は何なんだ」
 大阪のおばちゃんのあの虎や豹のそれではない、それとはまた違う。
 東京より派手だが何処か垢抜けていない、それでついついこう言ったのだった。
「味噌か」
「味噌臭いっていうのね」
「それも東京の味噌じゃないな」
 ではどういった味噌かというと。
「赤味噌か」
「八丁味噌よね」
「ああ、そんなのだよな」
 そうした感じだというのだ。
「名古屋の服ってな」
「そうでしょうね、名古屋はね」
「こうした感じのデザインか」
「東京とは違うでしょ」
「大阪ともな」
 正幸は大阪には何度か出張で行ったことがある、それで言うのだ。 
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