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妖刀使いの滅殺者

作者:雨の日
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第39話

あと一人。
明日で、全ての戦闘が終わり、巨龍との戦いが幕を開ける
ヒースクリフの話では、攻略組全員で戦いに臨むようで、最強ランクが勢ぞろい
だがもちろん、主戦力は俺だ。今日までの約一週間、獲得したアイテムはどれも一級品
序盤から本気で行くつもりだ
しかし、クエストの内容が分からないだけあって不安も多い

「・・・レイ、寝れないの?」

隣から眠そうに眼をこすりながらサチが体を起こす

「ん、あぁ・・・」

「例のクエスト・・・?」

「そうだな・・・正直、怖いよ。下手したら死ぬかもってクエストだろうし」

しかし、サチはくすりと笑った

「・・・そんなの、いつもでしょ?」

「・・・ははっ。確かに、そう言われればそうじゃねぇか」

俺の意志はいつから弱くなった?
そうだ・・・俺は何時でも死線を潜り抜けてきたじゃないか

「ありがとうサチ。俺、頑張るよ」

「・・・うんっ」

サチは後ろから俺に抱きつき、安らかに寝息を立て始めた

「おやすみ。お前は絶対に向こうに返してやるからな」



翌日
朝起きると、キリトだけでなく、NPC探しを頼んだ全てのメンツからメールが届いていた

「え、と・・・転移門前か」

「レイ・・・最後のデュエル?」

家を出ようとした時、突然サチが
後ろからぎゅっと抱きつき、すぐにはなれた

「私も、応援に行く!」

「あぁ・・・心強いぜ」

そして俺はサチの手をとって、広場にある転移門に向って歩き出した
道中、サチはずっと俺の手を強く握りしめていた

「・・・お前か?我々を全員倒し、二時間後に迫った巨龍に挑むのは」

「あぁ!俺は妖刀使いの滅殺者!名をレイ!」

「威勢がいいな。隣の女は伴侶か?」

「まぁ、な」

「ふ・・・守れよ?その女」

言われなくとも守るさ
俺は腰の黒印を抜き放つ

「俺の名はストラ。最後の戦士にして最強だ」

片手剣を取り出して、ストラは低く構える
俺も、黒印を定一に構える
気が付けば、周りには巨龍討伐メンバーがギャラリーとして溢れていた
その中にはNPCの姿がなく、本当にクエストが近い事を実感した

「では、始めるか!」

「おう!」

「・・・スキル封印!覇!」

・・・は?

「お互いに、純粋な剣と剣の戦いといこうではないか」

「くっ・・・ははっ・・・ははははっ!」

面白い。本気の真剣勝負か
やってやろうじゃないか

「では、あらためて!」

ストラが垂直に振り上げた剣を黒印の刀身で受け流し、開いた腹部に蹴りをいれる
体制を崩したストラだが、崩れた体制のまま、剣を突き出し、俺の肩をかすめる
思いもよらない体制からの突きに動揺し、動きが大きくなりすぎ、隙が出来てしまった

「レイ!!」

サチの声が聴こえ、体が弾かれたように動き、なんとか剣を振られる前に立て直し、黒印を上から素早く振り下ろす
だが剣に防がれ、お互い競り合いが始まる

「ぐ、ぬぅぅう!」

「うぉおぉぉ!」

激しく火花が散り、お互いの武器が弾かれた
ストラは、手から落ちかけた武器に気をとられてしまっていた
反対に俺は、あえて黒印を捨て、拳で正拳突きを見舞う

「な・・・!?」

「武器が全てじゃねぇぜ!」

そういった後、落とした黒印を拾い上げ、すくい上げるようにしてストラの右腕を武器ごと切り裂く

「まだまだぁ!!」

スキルなしでの俺の限界!
10連撃!乱舞~妖~!

「う、らあぁぁぁぁぁあああ!!」

一撃、腹
二撃、肩
三撃、胸
四撃、腕
五撃、足
六撃、首
七撃、腹
八撃、胸
九撃、横両断
最後―――――
縦両断!!

全てが決まった・・・が

「素晴らしいが、まだ甘い!」

俺の手から黒印が弾かれた
ストラは俺の乱舞を全て紙一重で受け身をとり、ダメージを最小限にしていた

「今度は・・・こっちが行くぞ!」

剣と肩腕を俺に切り落とされたはずのストラだが、残された部位で何を放つつもりだ
強烈な蹴りが俺の頬をかすめる。しかし、それを認識したときには、次の攻撃が俺の目の前に現れていた

「はやくね!?」

「ふっ・・・!」

体を捻った裏拳が的確に顎に向かってくる
なんとか軌道上から顔をずらし、攻撃をかわすがまた次の攻撃がくる
今度は蹴り、一直線に繰り出された蹴りは俺の腹部に直撃し、大きく吹き飛ばされる

「がっ・・・!?」

「この程度か・・・やはりお前も、巨龍と戦うにふさわしくないようだな」

プチッ・・・
俺の中の何かが切れた気がした

「何に・・・ふさわしく・・・無いだとぉぉ!!」

繰り出された裏拳を受け止め、そのまま背負い投げる
そして、飛ばされた黒印をとりに駆けだし、拾い上げる、がそれと同時にストラも剣を片方の腕で構えていた

「あぁぁあああぁああぁ!!!」

「く・・・あぁぁあああ!」

互いの剣が互いの中心を貫く
HPゲージが徐々に減り、お互いのHPがほぼ同時にレッドに変わった

「素晴らしい。身を犠牲にここまでダメージを負わせるとは」

お互い剣を抜き、俺は来るであろうストラの奥義に備えた

「お前は・・・耐えられるか?この攻撃を・・・」

「こい・・・よ」

なにがくる・・・
どこからくる・・・

全身の神経を張り詰めて相手の出方をうかがう
と・・・

「死」

突如、ストラの周りに、俺が観た事ある剣、見た事のない剣、全てが現れた
さらに、斧、槍、鞭、刀・・・
おそらく、この世界全ての武器が集まっているのだろう
あからさまな戦力の差・・・
廻りの群衆もこれには勝てないと悟ったのか散り散りになりつつある
でも
彼女はあきらめていなかった

「レイ!ぜーーーんぶ、へし折っちゃえ!!」

「「「「「「「!?」」」」」」」」

「・・・はははっ!!いいぜサチ!見てろよぉ!」

「「「「「「「「な、なんですとぉ!?」」」」」」」」

「やってみよ!・・・死、あるのみ!!デス・フィニッシュ!」

「頼むぞ黒印―――」

大きく息を吸い込み、迫りくる全ての武器に黒印を掲げた

「うっ・・・らぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

「おぉぉぉおおぉぉぉぉおお!!!」









「・・・まさか本当に全て折るとは・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・死ぬかと・・・思った・・・」

結論から言うと、俺は全ての武器を破壊して、この戦いに勝利を収める事ができた
俺が一本折るたびに群衆は沸き、最後の一本が砕かれた時には、広場が覆い尽くされていた程である

「レーーーーイ!!」

「のわっ!?」

サチが飛びついてきて、バランスを崩した俺はそのままサチと倒れこんだ

「凄い!すごいよ!ほんとに全部折っちゃった!」

キリト達も続々と集まり、称賛の拍手が巻き起こっている
しかし、巨龍はすぐそこまで迫っている・・・


巨龍討伐クエストまで
残り
1時間―――
 
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