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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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箱庭のとある日常

ノーネーム本拠、そこで一輝は帰ってきた瞬間に正座させられていた。
一輝はその理由が分かっていないそして同時に、汗をたっぷりかいたため、早くシャワーを浴びたいとか考えている。ついでに言うと、今も絶賛汗を掻いている最中なので、いっそギフトを使って体温を下げよう、とかも考えている。
だが、まあ目の前で怒っている黒ウサギの様子を見て、それはダメかな、とちゃんと理解できていた。

「はぁ・・・なあ、いい加減なんで怒ってるのかを聞いてもいいか?」

そして、このままでいても話が終わらないことを理解して、一輝のほうからそう問いかけた。
ちなみに、黒ウサギの後ろでは問題児三人組が笑いをこらえている。

「何で、ですって・・・。そんなの、決まってるじゃないですか!」

そう言いながら、黒ウサギは一輝の後ろで縛り上げられている巨大な怪鳥を・・・両足の長さが不揃いな(・・・・・・・・・・)怪鳥を指差し、

「なんで情報を集めてきて欲しいといった“魃”を倒してきたのですか!!?」

そう、言った。
言われた本人である一輝は腕を組み、少しばかり考えた後に、

「俺、そんなこと言われてねえぞ?」



 ==========



結論だけを言ってしまえば、一輝の言い分は一切間違っていなかった。
だがしかし、一輝も悪くないわけではない。
なぜかといえば、黒ウサギが情報収集を依頼した一輝は、一輝の式神だったからだ。黒ウサギが一輝に頼もうと考え、本拠で見つけて話した。そして、一輝は自由に散歩をするために式神を置いていったのだから、当然五感の共有なんてしていなかった。
結果、情報の行き違いが生じてしまったのだ。

「はぁ・・・全く、何で偶の散歩に行ったら怒られにゃならんのだ・・・」
「そうね。強いて言うなら、プレイヤーにもかかわらずギフトゲームにも参加しないで遊ぼうとしたからかしら?」

風呂上りの一輝が食堂で水を飲みながら愚痴を言っていたら、音央がそれに答えた。

「にしても、珍しいですね。一輝さん、いつもなら出れる限りのギフトゲームに出て、ようやくご自分の時間を取っていますのに。」
「それも、自分の時間といいながら人助けばっかり。」
「いつも言ってるだろ?人助けなんてしてない。ただの憂さ晴らしだ、って。」

一輝はそう言いながら、再び水の入ったコップを傾けて水分を補給する。
そのコップが置かれるのと同時に、鳴央が水を注いだ。

「あ、悪いな。」
「いいですよ。それに、どう考えても水分不足でしょうし。」
「まあ確かに、水分は足りないでしょうね。」

旱魃そのものである魃の退治に、入浴。
汗を掻く要素には困らない。間違いなく水分不足だろう。

「で?何で一輝は、いつもと違って朝から出かけていたのかしら?」
「・・・いい天気だったし、散歩日和かなー、と」
「旱魃が起こるような方向が、ですか?」

一つ目の理由は、鳴央によってあっさりと否定された。

「・・・いや、旱魃と遭遇したのは偶然だし、」
「ある程度近づいたら、陽炎が見えたんじゃないかしら?」
「・・・・・・あ、そうだ。俺も一応、サウザンドアイズに行ったほうがいいんじゃ、」
「換金なら、黒ウサギさんだけで十分ですよ。」
「それに、魃が意識を取り戻しても十六夜に飛鳥、耀がいれば問題ないわ。」

一輝が逃げることも出来ず、誤魔化すことも出来ない状況を作られてどうしようかと悩み始める。

「というか、それ以前にどうして朝から出かけていたのかしら?」
「確かに、そこからおかしいですね。どうしてギフトゲームに参加しようとしていなかったのか・・・いえ、そうじゃないですね。どうして、」
「どうして今日、ギフトゲームが開催されないのかを知っていたか、だろ?全く、なんでか俺の周りの女性陣は、俺の心が読めるヤツが多すぎる・・・」

一輝は前の世界のことまで含めてそう言い、頭を掻いてから観念したように顔を上げた。

「確かにそうですよ。俺は今日、ってか当分の間ギフトゲームが開催されないことが分かってた。それで、散歩に出かけたんだよ。どうだ、これで満足か?」

一輝がそう言うと、二人は一輝の隣に座った。
それは、一輝が放す前に逃げるのを封じよう、という意図によるものだ。

「じゃあ、まずはどうしてギフトゲームが開催されないことを知っていたのかしら?」
「・・・尋問?」
「一輝さんのことですから、自分のやったことを誰にも知られずに済ませようとしているのではないかと思いまして」

一輝は再び、唸った。
そして、今度こそ心から観念して、聞かれたことを答えていく。

「晴明。この間、あいつから聞いたんだよ。魃が来る、って。」
「なるほどね。それで、一輝は何もないからでかけたのね?」
「そして、そのまま魃胎児に向かった、と。」
「ま、元々は魃退治、ってより依頼をこなすためだったんだけど。」

一輝に対して出された依頼は、情報収集。依頼主は晴明である。
ただし、倒してしまっても問題ない、とも言われていた。

「それで、どうして倒すことになったのですか?」
「そうだな・・・ま、大した理由じゃないよ。ちょっとそんな気分になっただけ。」

そして、一輝はその時のことについて話し始めた。



  =============



一輝が陽炎に向かって歩いていってみたのは、ユニコーンが巨大な爪に貫かれようとしている瞬間だった。
そして、一輝はそれを見た瞬間に飛び出してその爪をつかんだ。

『貴方は・・・』
「ん、俺?通りすがりの“ノーネーム”。」

一輝はそう言いながら、爪をつかんでいる相手を観察する。

「ふむ、コイツの近くで陽炎が起こってることと長さのおかしい両足から考えて、コイツが魃で間違いないか?」
『は、はい。間違いなく、魃ですが・・・』
「そうか。それはちょうど良かった。」

一輝がそう言いながら手を離すと、魃は一輝から距離をとる。
そのまま逃げようともしたのだが、一輝の張った結界によってそれは出来ぬ相談になってしまった。

「にしても、魃と遭遇するとか・・・変な縁を感じるな。俺が殺した白澤に、五代目が殺したやつのこともあるし・・・」
『どうするのですか?』

一輝が考え事をしていると、後ろからユニコーンが話しかける。

「どうする、ってと?」
『魃をどうするのかと思いまして。』
「ああ、なるほどなるほど。そうだな・・・あれって、倒したらまずかったりするかな?」
『いえ、問題ないと思います。』
「じゃあ次に、あれって倒したらお金か何かもらえたりするかな?」
『あれ自体が、売れると思いますが。』
「ん、なら倒そう。」

一輝はそう言いながら量産型・妖刀を抜き、

「一閃、絶雅。」

一太刀の下、魃を倒して見せた。



  =========



「とまあ、そんなことがありましたとさ。」
「つまり、いつもと変わらない人助け、ってことね。」
「ですね、安心しました。」

二人はいつもと代わらぬ一輝の様子に、笑みを浮かべた。

「でも、それなら正直に言えばよかったじゃない。」
「やだよ、わざわざ人に言うことでもない。つーか、おまえ達にも話すつもりは無かったのに・・・」
「ダメですよ。せめて、私達には話してください。」

鳴央はそう言いながら立ち上がる。

「一輝さんが自分のやったことをなんとも思っていないのは、良いことだと思います。でも、それを誰にも知られていないのは悲しいです。」
「そういうこと。だからせめて、私達には話しなさい。」

鳴央に続いて音央も立ち上がり、そう言ってから、

「じゃあ、私達は仕事に戻るわね。まだやることもあるし。」
「それなら、俺に聞きだそうとなんてしないで仕事しようぜ?」
「それも、私達の仕事ですよ。」

一輝は、どんな仕事だ、とは言わなかった。

「あ、そうだ。今度、六本傷のカフェで私と鳴央に何かおごって。口止め料、って事で」
「了解。それくらいならお安い御用だ。」

そして、一輝を残して二人は仕事に戻っていった。


余談だが、結局一輝がやったことは御礼に来たユニコーンによって、コミュニティ全員の知るところとなったのである。
 
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