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パンデミック

作者:マチェテ
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第五十七話「支部長の考え」

―――【エクスカリバー本部・支部長室】


タガートは支部長室の中にいた。
支部長に自身の作戦を伝えるためだ。

ヴェールマンに知られる前に作戦を実行させなければならない。
作戦が採用されてしまえば、誰も文句は言えない。


「支部長………今後の方針に関して提案があります」

「ほう………聞かせてもらいましょう」




「"エリア4"でブランクを抜いて作戦を展開しましょう」



「…………ブランク抜きで?」

「はい。ブランクは本部防衛の際の暴走で多数の兵士から疑いの目を向けられています。おそらく、
このままブランクが参加したとしても、周りの兵士がブランクを信用せず、作戦に支障が出る。
連係もまともに出来ない状態で作戦に放り出すより、参加させない方がまだ良い、と思います」

「……………………」

「それに、本部は襲撃を受け戦力を削がれました。弱いところを他の支部に見られては、士気に関わる。
それだけでなく、本部が弱っていると他の支部からの干渉を受けやすくなる。主戦力だったブランクが
戦力として使えなくなった現状では尚更です」

「……………確かにそうですね」

「しかし、我々には"覚醒兵部隊"や"ブリューナク"があります。制圧までは出来なくとも、"エリア4"の
大多数の感染者を減らすことが出来ると思います。"主戦力が不在でも本部は強い"……それを他の支部に
知らしめれば、士気は高まり、干渉も少なく済みます」

「…………………………」

支部長はじっとタガートを見ている。
タガートも支部長の反応をじっと見た。











「タガート……君は、犠牲者を出せばブランクの信用を取り戻せると………そう思っているんですか?」







タガートは目を見開いて驚いた。
そしてすぐに誤魔化しの言葉を模索し始めた。

「な………何のことです? 支部長…………」

「おそらく君は、わざと犠牲者を出させて、上層部に反感の目を向けさせようとしている。
そして兵士達にブランクの存在の重要さを知らしめようと考えている。……違いますか?」

全て正解だった。
タガートは否定できず、押し黙った。



「君がそんなことしなくても、ブランクには次の作戦に参加してもらうつもりです」


「……………え?」

タガートは一瞬、呆けた顔をした。

「正直、私は上層部の連中が嫌いです。彼等は保身を優先させ、主戦力を外そうとしている。
"ブランクがもう一度暴走したら"と必要以上に恐れ、自ら戦力を減らそうとする。それは、人類の
存続を任された我々にはあってはならない。"全ては人類の未来のため"……エクスカリバーは、人類を
守る剣でなければならない。分かりますね? タガート………」


全ては人類の未来のため。

タガートも人類の未来を考え、犠牲を強いる作戦を提示した。
しかし、ヴェールマンも支部長も、それを認めない考えを示した。

支部長にとって、兵士一人一人が重要な戦力。
失うことは、戦力の損失であり、人類の損失。

兵士を失う=人類滅亡に近づく

それが支部長の考え方だった。




「しかし、君の意見の一部は認めましょう。他の支部に弱っているところは見せられない」







「"エリア4"ではなく、失敗した"ブラック・アロー"作戦を完遂してもらいましょう」


ブラック・アロー作戦。

ソレンス達が新兵として最初に参加した作戦。
新兵死者84名、行方不明者17名を出した作戦だ。

「懐かしい作戦名が出ましたね………何故、今ブラック・アロー作戦の話に?」

「ただ、作戦を遂行するのではありません。こちらから条件とノルマを提示します」






「まず、条件から。2度目のブラック・アロー作戦はクラウソラスとカラドボルグのみで遂行して
もらいます。他の兵士が介入することは認めません。そしてノルマ。ブランクはノルマとして感染者を
100体以上を単独で撃破してもらいます」

「…………?」

正直、聞きたいことがいくつも出てきた。

何故、クラウソラスとカラドボルグのみで?
何故、ブランクにノルマを?
そもそも、何故今ブラック・アロー作戦の話を?

タガートはそれらの疑問を支部長にぶつけてみた。

「1度目のブラック・アロー作戦で半数近くの感染者が撃破されました。残り半数は、今なら損失も
それほど出さず完了させられるでしょう。………それでは意味が無い。精鋭とは言え少数で遂行すれば
兵士達や他の支部に本部の強さをアピール出来る」

「なるほど………では、ブランクにノルマを提示した理由は?」

「ブランクが100体以上を倒せば、ブランクがどれだけ必要かを兵士達も改めて気づくでしょう?
タガート……君はクラウソラスの……ブランクと同じチームのメンバーです。彼をサポートして下さい。
君が"エリア4"で使う予定だった覚悟は、2度目のブラック・アローで発揮して下さい。……頼みましたよ」

「り、了解しました!」


タガートの考えは否定されたが、新しい目的が出来た。
2度目のブラック・アロー作戦が展開される。 
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