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魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-

作者:炎狼
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終結

 ゆりかごの壁を貫いて現れた聖は突然の登場に驚いているなのはに念話を送る。

(なのは、ヴィヴィオの相手は俺がする。お前はサーチャーを使ってクアットロを探せ)

(う、うん。わかった、だけど気をつけてね。ヴィヴィオの力は相当上がってるよ)

(心配すんな。きっちりもとのヴィヴィオに戻してやるさ)

 なのはと聖は頷き合うと、なのははヴィヴィオから後退しヴィヴィオとなのはの間に聖が割ってはいる。

 すると、ヴィヴィオは聖の顔をまっすぐと見て目じりに涙を浮かばせる。

「……パパ?」

「俺のことはまだ覚えてんのか……」

 どうやらヴィヴィオの記憶の中にはまだ聖の記憶が微かに残っていたようだ。しかし、そんな一縷の希望すらも奪う悪魔の囁きがヴィヴィオの脳内に響く。

『あらぁ? 陛下ぁ、なぁに動揺しちゃってるんですかぁ? そいつも貴女の本当のお父様なんかじゃないんですよ?』

「うぅ……」

『貴女は目の前の二人を倒すことだけ考えてください。その後のことは私がいろいろ考えてあげますからぁ』

「ぐぅ……! ああああっ!!」

 ヴィヴィオは頭を押さえ苦しげにうめく。なのはがそれに反応し立ち上がろうとするが、聖はそれを制する。

「クアットロか……。ヴィヴィオ! 俺のことを覚えている今だから言うぞ! 絶対俺が助けてやる、だからお前もお前の中で戦え!!」

「……パ……パ」

 その言葉を最後にヴィヴィオから虹色の魔力があふれ出した。その魔力は衝撃波ととなって二人を襲うが、聖はそれを片手ではじく。

 魔力の奔流が止むと、ヴィヴィオは光のともっていない虚ろな瞳で聖を見ていたが、彼女の目からはとめどなく涙があふれている。

 だが、彼女は態勢を低くして戦闘態勢をとった。

 聖もそれに答えるように腰を落とすと、ヴィヴィオではなく恐らくゆりかご内の奥深くでヴィヴィオを操っているであろうクアットロに言い切った。

「クアットロ! 趣味のワリィテメェのことだ、どうせこの戦いも見てんだろ!! けどなぁ、いつまでもそこが安全圏だと思うなよ!! すぐにテメェはぶっ倒されるからなぁ!!」

 聖が言い切った瞬間、ヴィヴィオが殴りかかる。聖もそれに反応すると、自身もフロアを蹴りヴィヴィオの拳に自身の拳をぶつける。

 そのぶつかり合いで二人の拳から紫電が飛び散り凄まじい衝撃を生んだ。その影響かフロア全体に亀裂が入り、さらに二人の下のフロアは大きく陥没した。

 すると、二人が弾かれた様に後方に飛ばされる。しかし、聖とヴィヴィオは互いに壁を蹴ってもう一度拳をぶつける。

 だが今度のぶつかり合いは一つではなく、二人の猛烈な拳のラッシュだった。

「オラァァァァァ!!」

 聖は気合の咆哮をあげながらヴィヴィオと激しくラッシュを繰り広げる。それによって生まれた余波は先程の比ではなく、玉座の間のいたる所に衝撃によって生まれた亀裂や陥没が生じていた。

 なのはは二人の戦闘を見て思わず息を呑んでしまった。

 ……これが聖君の本当の力。

 今まで自分達の前では決して出すことのなかった聖王の力を解放した聖の戦闘はかつてないほどの激闘だった。しかし、それを受け止めるヴィヴィオも凄まじかった。

 ほんの数秒二人の戦いに目を奪われていたなのはであるが、彼女はすぐに首を横に振り自身が今やるべきことに専念する。

 ……あと少し、あと少しでサーチャーが最深部までたどり着く!

 サーチャーの情報に目をやると、あとは最深部を残すだけとなっていた。恐らくだがあと一分もかからずに終わることだろう。

 だが、そこで聖がなのはの近くを通り過ぎた。いや、ヴィヴィオに打撃をもらい吹き飛ばされたのだ。

「聖くん!!」

 悲痛な声を上げるなのはだが、聖は叩き付けられてめり込んだ壁から頭から大量に出血した聖が顔を出した。

「ったく……さすが本物の聖王ってだけはあるな。紛いもんの俺とは力が明らかに違う」

〈そうですね。気を抜けば恐らくすぐにやられてしまうでしょう〉

「だけどそんな風にやられるつもりもねぇ! 娘に負けたなんて父親として恥ずかしいもんなぁ!!」

 頭から流れ出る血をバリアジャケットの袖で乱暴に拭いながら聖は追撃をしてくるヴィヴィオの攻撃を避けると、彼女のわき腹に蹴りを放つ。

 ヴィヴィオはすぐに返されるとは思っていなかったのか、苦悶に顔をゆがめて吹き飛ばされた。

(なのは! あとどれくらいだ!!)

(あと三十秒で最深部!)

「上等!!」

 聖はヴィヴィオを追ってもう一度彼女と拳をぶつけた。







 二人が戦う様子をゆりかごの最深部で妖艶な眼を向けながら観察しているクアットロは先程の聖に言われた言葉をくだらないと思っていた。

「いくら聖王の力を手にしたところで、貴方は所詮ただの紛い物……陛下を倒してここまで来るなんて無理に決まってるわ」

 ほくそ笑みながらモニタを見ていたクアットロだが、ふと聖が笑みを浮かべているのが分かった。

 しかもただ笑っているだけではない、クアットロが監視用に置いておいた自身のサーチャーに向かって笑みを浮かべていたのだ。

 ……なに? サーチャーはシルバーカーテンで見えなくしているはず……まさかそれを見つけたというの?

 彼女が疑問に思っていると、モニタの中の聖は声には出さずに口の形だけでクアットロに伝えた。『ミツケタ』と。

 瞬間、クアットロの全身に戦慄が走った。同時に彼女は自身の背後に浮かぶ桃色のサーチャーに気がついた。

「まさか……!?」

 クアットロが驚愕の声を上げた瞬間、新たにモニタが表示された。そこにはなのはが移されており、彼女は言い放った。

『見つけた……』

「……ここに来る間にサーチャーを飛ばして進んできて、あの子と戦いながら操作し続けていたと言うの!? ……だ、だけどここは最深部、玉座の間からここまでたどり着くことがそう易々とできるわけ……」

 そこまでいったところで彼女の言葉をあざ笑うかのような聖の声が聞こえた。

『おいおいクアットロ。何か忘れてんじゃねぇか? ここにいる高町なのは一等空尉なんて呼ばれてる?』

「……エース・オブ・エース」

『大正解。じゃあそのエース・オブ・エースの得意な魔法は?』

「砲撃……ま、まさか!?」

 聖はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。そしてなのはは壁の一角まで足を運ぶとレイジングハートを構えブラスターシステムを起動させる。

『あきらめろクアットロ。テメェは終わりだ……なんてったって、うちのエースを怒らしちまったんだからな』

 ヴィヴィオと掴みあいながら告げた聖の声はもはやクアットロに聞こえているのかいないのか。彼女は相当な恐怖を味わっていた。

『ブラスター3!!』

 なのはが言うと同時にブラスタービットがレイジングハートの砲身の周囲に展開し、レイジングハートからも合計六枚の桃色の翼が広がる。

 同時に砲門にはなのはの魔力が収束し、魔力の塊が形成されていく。

 なのははカートリッジを二つ使いすべてをリロードする。それだけで先程まで小さかった魔力の塊が何倍にも膨れ上がった。

『ぶっ放せ、なのはぁっ!!』

『……ディバイン……バスターーーーーッ!!!!!!」

 なのはが叫ぶと共に、収束していた魔力が超極太の魔力砲となり玉座の間を貫き、最深部までの壁を破壊し、貫通していく。

 クアットロは先程までの余裕は何処へやら。冷や汗を浮かべ、歯をガタガタと震わせ恐怖をその身で体現していた。

「いや……いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 恐怖の絶叫を上げ逃走しようとするが、足がもつれてしまい思うように動けない彼女を容赦のない桃色の魔力が呑み込み、クアットロはその圧倒的な質量に押しつぶされ、一瞬で意識を失った。






「目標沈黙……!」

 なのはが言うと、レイジングハートから溜め込んでいた蒸気が噴出し冷却された。

 すると、聖とつかみ合っていたヴィヴィオがもう一度苦しげにうめくと、彼女の瞳に光が戻り、聖のことを認識した。

「パパ……?」

「目が覚めたか?」

 聖が笑顔で掴んでいた彼女の手を離し、拘束を解くが、その瞬間ヴィヴィオが叫んだ。

「ダメッ!! パパ逃げて!!」

「なに? づッ!?」

 ヴィヴィオが言った瞬間、彼女の声に反して拳が放たれ、聖の肩口に強い衝撃が走った。

「聖くん! ヴィヴィオ!!」

「来るななのは! ……そうか、自己防衛モード」

「自己防衛モード?」

「ああ。聖王が戦意を喪失した場合、その聖王はゆりかごの制御下に置かれるんだ。そして、自己防衛プログラムが聖王に出す命令は唯一つだ。『侵入者の抹殺』」

 聖の後ろでなのはが息を呑む音が聞こえた。ヴィヴィオは涙を流しながら二人に首を振った。

「そうだよ……だから二人とも逃げて……! これ以上二人を傷つけたくないよ!」

 ヴィヴィオの悲痛な叫びになのはも瞳を潤ませる。しかし、聖の瞳はまだあきらめてはいない。

「私がなのはママ……ううん、なのはさんや聖さんに懐いたのは『傍にいて力を学習させてくれる人』だったからなんだよ……。この聖王の鎧がそうさせたんだよ! だから私は……存在しちゃいけない子なんだよ!! 私ごとこのゆりかごを破壊すればすべてが終わるんだよ!!」

「ふざけんじゃねぇ!!」

 ヴィヴィオの叫びに対し、聖がその双眸に僅かに涙をためながら恫喝した。

「お前が存在しちゃいけないだと!? それ以上ふざけたことぬかしたらぶん殴るぞヴィヴィオ!! いいかヴィヴィオ、声を大にして言ってやるよ。お前には生きる意味しかねぇ!! 聖王のクローンで存在しちゃいけねぇなら俺だってそうだろうが!」

「で、でも! 私は二人を利用して……」

「だからなんだ! 第一お前がただ単に俺たちを利用したって言うんなら、俺と戦ってるときに涙なんかながさねぇだろ!!」

 その言葉にヴィヴィオがハッとした様に顔を上げた。聖はそんなヴィヴィオをまっすぐ見据えて今度は打って変って優しげな声で告げた。

「ヴィヴィオ、お前は存在していいんだ。俺たちにはお前が必要だ。……だってよ、お前は俺たちの子供じゃねぇか。自分の子供を守ってやれないほうがずっとずっと辛いんだ」

「そうだよ、ヴィヴィオ。貴女は私やフェイトちゃん、聖くんの大切な子供なんだから」

「パパ……、なのはママ」

 ヴィヴィオは瞳から大粒の涙を流しながら二人を見つめた。その様子を見た聖となのはは互いに頷き合うと、聖がヴィヴィオに告げた。

「ヴィヴィオ、お前を助けるためにちょっとだけ痛い事をする。我慢できるか?」

「……うん、出来るよ……! だってパパの娘だもん……!」

「いい子だ。……いけるかなのは?」

「うん!」

 なのはは頷くと、ヴィヴィオの体にレストリクトロックを仕掛ける。ヴィヴィオは一瞬痛そうな表情をするが、声を上げずに耐えた。

 しかし、彼女の意思とは逆にヴィヴィオの体はそれを引き剥がそうとする。

「すごい力……! だけどこれぐらいで……!!」

 ロックを維持しながら苦い顔をするなのはは、そのまま聖のほうを見る。聖もそれに頷くと、自身の右手に魔力を収束させる。

 ……ヴィヴィオの体内にあるレリックだけを取り出して破壊。

「クラウン、やれるな?」

〈もちろんですよ。ヴィヴィオ様を救わなくては〉

「ああ。……行くぞヴィヴィオ!」

 聖は宣言すると右手の魔力を保持しながら床を蹴ってヴィヴィオの眼前に躍り出ると、彼女の胸部。ちょうど胸の中心に拳を放った。

「貫け閃光!! リヒト・エクスプロード!!!!」

 声と共にヴィヴィオの胸に食い込んだ拳から魔力が放出され、ヴィヴィオは来る下に叫ぶ。しかし、その瞬間ヴィヴィオの背中からずるりと音を立てるように赤い宝石のようなロストロギア、レリックが姿を現した。

「ぶっ壊れやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 聖の声が響いた瞬間、ヴィヴィオの体内から吐き出されたレリックに亀裂が入り、一瞬にして砕け散った。

 そして、その砕けた余波で爆発が生まれ玉座の間を光の奔流が襲った。

 数秒の後、光の奔流が止むと玉座の間は大きく陥没していた。なのははふらつく足で陥没したフロアの中心に目を向ける。

 そこには肩で息をしている聖と、フロアに倒れこんでいる先程までとは違う少女の姿をしたヴィヴィオの姿があった。

「ヴィヴィオ……聖くん……!!」

 なのはが呼ぶと、それに反応するようにヴィヴィオの指がピクリと動いた。聖もそれに気がついたようで倒れているヴィヴィオに駆け寄ろうとするが、

「来ないで……。……だいじょうぶ、ひとりで立てるよ……」

 ヴィヴィオはふら付きながらも足をしっかりと立てて立ち上がった。その姿が嬉しかったのか、聖はヴィヴィオに歩み寄り彼女をきつく抱きしめた。

「……パパ。がんばったよ……」

「ああ……! よくがんばった! おかえり、ヴィヴィオ」

 聖はヴィヴィオを抱きしめ彼女の耳元で告げた。ヴィヴィオもそれに頷くと、聖の背中に手を回し、彼に身を任せる。

 二人が抱擁していると、なのはが駆け寄りヴィヴィオと聖もそれに顔を上げた。すると、なのはは大粒の涙を流しながら顔をくしゃくしゃにゆがめて二人を抱きしめた。

「よかった……本当によかった……!!」

「あぁ……本当にな……」

 なのはの背に手を回しながら聖も大きく息をつきながら全身の力を抜いた。 
 

 
後書き
お待たせしました……

とりあえずは主な戦いはこれで終了です。
あとはゆりかご内からの脱出と聖たちのその後のお話。
おそらく後やって三話から五話で最終回かもしれません

では感想などあればよろしくお願いします 
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