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魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-

作者:炎狼
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決戦 後

 フェイトがスカリエッティを倒し、聖がゆりかごへと向かったその時、旧市街の方でも戦闘がいよいよ佳境に入ってきていた。 

 ギンガと戦いを繰り広げるスバルは肩で息をしながらも、決して諦めることのない強い意志を持って彼女を見据えた。

 すでにスバルの体からはギンガからの攻撃により、所々切れたり、擦れたりしており、血が滲んでいるところも多かった。

〈大丈夫ですか?〉

「うん。これぐらいどうってことないよ。それに、体は痛くなくてもギン姉のほうがもっと苦しいと思うから」

 相棒、マッハキャリバーの心配に笑いながら返すが、その瞳は真剣そのものだ。

 スバルは大きく深呼吸をすると、自分に対し構えを崩さないギンガを見据える。

 ……今のギン姉を止めるにはちょっと無理しちゃうかもしれない……だけど!!

 スバルは一度大きく深呼吸をすると、ここにはいないなのはに謝罪した。

「ごめんなさいなのはさん、少しだけ約束を破ります!! マッハキャリバー!!」

 スバルが叫ぶと、マッハキャリバーもそれに答える。その瞬間、彼女の足元には魔法陣が展開し、スバルは高らかに宣言した。

「ギア・エクセリオン!!!!」

 その声に答えるようにマッハキャリバーから空色の翼が展開された。

 このギア・エクセリオンは、かつてなのはのレイジングハートに実装されていた、術者の能力を限界まで引き起こすシステムである、『エクセリオン』と同じである。

 スバルは呼吸を整え、もう一度ギンガを見据える。ギンガもまたただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、構えをとった。

「……いくよ、ギン姉!!」

 言うが早いか、スバルは一気に駆け出した。ギンガもそれに反応しスバルに向かって駆ける。

 二人は数度ぶつかり合うが、やはりこの状態でもギンガの方が戦闘の技量が高いのか、押し負けることもあったが、スバルはそれでも諦めずに突き進む。

 そして、二人は再び真正面から激突した。

 今度は一撃当てての撤退ではなく、二人は肉薄した状態で互いのバリアを展開しながらそれを崩しあっていた。

 この局面であっても、ギンガはバリアは右手で保持している。対するスバルは手ではなく頭部にバリアを張っており、眼前にはギンガの左手が迫っている。

 もしこの状態でバリアが破られれば、スバルの負けは必然であり、最悪の場合死が待っているだろう。

 しかし、スバルは一歩も退かず勇気を持ってギンガとぶつかり合う。

 ……絶対に諦めない! なのはさんとヴィータ副隊長が教えてくれて鍛えてくれたこの防御と、撃ち抜く力だけは絶対に負けない!! 足元だってマッハキャリバーが支えてくれてる!!

 心の中で今までの辛くも乗り切ってきた訓練の日々を思い出しながらスバルは進む。

 ……聖さんも背中を押してくれた、諦めるなって言ってた。だから私は――!!」

「絶対にギン姉を助ける!!」

 スバルが言い放つと同時に彼女のバリアがギンガの螺旋の一撃に耐え切れずに破れた。しかし、スバルはそれを頭を掠めながらも避ける。

 その影響で鉢巻が千切れ飛ぶがスバルは右の拳でギンガのバリアを破壊し、自らの魔力を圧縮して作り出したスフィアと共に、ギンガの身体に零距離からの大威力砲撃を叩き込む。

「一撃必倒!! ディバイン……バスター!!!!!!」

 師であるなのはの技を確かに受け継いだスバルの砲撃はまさに『一撃必倒』の名にふさわしく、ギンガを一撃で昏倒させた。

 気を失い倒れこむギンガを受け止めながら、スバルは右手を天に掲げた。

「……やりました!!」

 ギンガを救うことが出来た嬉しさからか目には涙が浮かんでいたが、同時に笑顔も見られた。






 ちょうどその頃、ティアナが閉じ込められているビルの結界の制御をしていたナンバーズ、オットーが一機のヘリを確認した。

「あれは……」

 その瞬間、オットーを護衛するように展開していたガジェットが緑と灰色の魔力の棘に破壊された。

 爆煙が巻き起こる中、オットーはその場から脱しようとするものの、それを二つの緑色の糸が拘束した。

「貴女が地上で戦っている子達の司令塔ね」

 煙が晴れ、声の主が露になった。

 そこにいたのは、先日機動六課を襲撃した時に相対したシャマルと、ザフィーラだった。

「うまく隠れていたつもりみたいだけれど、クラールヴィントからは逃れられないわ」

 彼女は指にはめられている二つの指輪型のデバイス、クラールヴィントをオットーに見せながら冷静な声で告げる。

「残念だがここまでだ。諦めて投降しろ」

 隣に控えていたザフィーラがオットーに投降を命じるが、オットーは捕まってはなるまいと、拘束を強引に切って逃走しようとするが、

「ウオオオオオオオオ!!」

 ザフィーラの咆哮が轟いたかと思うと、オットーの眼前に先ほどガジェットを破壊した灰色の棘が突き出し、それがオットーの目の前に壁となって立ちはだかった。

 同時に、シャマルもバインドを使いオットーを拘束し、ザフィーラは更にオットーの後方にも魔力を展開させ彼女を完全に閉じ込めた。

「終わったな」

「ええ。だけど、まだ……」

 シャマルはザフィーラに頷きながらも、ゆりかごの中で戦っているであろうヴィータのことを思っていた。






 ナンバーズの三人と睨み合いながら、ティアナは結界が崩れたことに気がついた。

 それとほぼ同時に、ティアナの目の前にいたノーヴェが声を上げてティアナに突貫した。

「うおらああああああああ!!!!」

 ノーヴェの動きに続き、後方にいたディードもティアナへ接近し、ウェンディはボードを構え、シューターを打ち出そうとしてた。

 それらを見切ったティアナは軽く笑みを零すと展開させていた二つのスフィアをノーヴェとディードに対して打ち出した。

 二人はそれを避けるものの、ティアナは銃形態のクロスミラージュからボードを構えているウェンディに対し、弾丸を撃ち込む。

「くっ!?」

 ウェンディはそれに苦悶の表情を浮かべるが、既に時遅く、ウェンディのシューターとティアナのシューターがぶつかり合い、それらは大きな爆発を起こす。

 爆発の衝撃で砂煙が舞い、皆の視界を奪う。

 しかし、ディードは明確にティアナに斬撃を放った。

 それでもティアナは冷静に対処し、ディードの攻撃をダガー形態のクロスミラージュで受け止め、そして、小さく呟いた。

「……聖さんに習っておいてよかった」

 そう呟いたのもつかの間、ティアナはディードの剣に、クロスミラージュのダガーを滑らせるようにして受け流した。

 ……刃走り!!

 以前、聖にダガーで相手の攻撃を受け流すにはどうしたらいいかとたずねた時に教えてもらった技を、ティアナはこの局面で実行したのだ。

 ディードはこのように受け流されるとは思っていなかったのか、態勢を崩してしまう。

 その時、彼女の頭に強い衝撃が走った。一瞬何をされたのかわからなそうな表情をしたディードであるが、すぐにそれを理解する。

 ……シュー……ター?

 ディードは掠れる意識の中で、自分を襲った衝撃が、ティアナが最初に放った二つのシューターのうちの一つであると理解したものの、彼女はそのまま意識を失った。

 同時に、先ほどの自爆で吹き飛ばされたウェンディの顎にもティアナのシューターが直撃し、彼女もまた、その場に倒れ付した。

「ウェンディ! ディード!!」

 二人の名を叫ぶノーヴェであるが、その身体をオレンジ色の魔力が拘束した。

「ぐっ!? くそ!!」

「……貴女達を保護します。おとなしく、投降しなさい」

 肩で息をしながらも強い光が灯った双眸でノーヴェにクロスミラージュを突きつけるティアナに、ノーヴェは悔しげに歯噛みした。






 シグナムは、地上本部の中をゼストを探して走っていた。

 先程まで外で戦闘を繰り広げていたのだが、ゼストがシグナムの隙をつき、シグナムはの地上本部への進行を許してしまったのだ。

 現在はリインとのユニゾンを解いており、リインもここにはおらずはやての元へと返した。

 ある一角を曲がったところでシグナムは立ち止まった。

「お前は……」

 そういうシグナムの前にはアギトが立ちはだかっており、彼女の後ろには魔力で作られた壁が作られている。

「こっから先は通行止めだ……!」

「……お前は確か、アギトと言ったか。安心しろ、もとよりあの方を殺すつもりで戦っているわけではない。ただ、この事件の根幹に関係している可能性もあるからな。話をしたいだけなんだ」

 シグナムの言葉に嘘偽りはなく、それは彼女の瞳からも見て取れた。アギトはそれを感じ取ると、ゆっくりと頷いた。

「……わかった、けどもう少し待ってくれ。旦那の昔の友達との話が終わるまで」

 アギトはそう言うと、壁を崩してシグナムを通れるようにする。シグナムはそれに頷くとこの先にあるレジアス中将の私室へと向かう。アギトもそれに続き二人は先を急ぐ。

 レジアス中将の部屋に辿り着いたシグナムは、思わず息を呑んだ。

 そこには、血の海に沈むレジアスの姿があったのだ。ゼストは彼の傍らに佇み、下唇をかんでいた。

「ゼスト殿、これは……」

「私が来たときには既に殺されていたよ。おそらく、スカリエッティ達の仕業だろう」

 レジアスの胸には、三つの刃物で刺されたような傷跡があり、その形状からしてゼストがやったことではないと物語っていた。

「……まったく、馬鹿なやつだよお前は」

 倒れている彼の肩に触れながら小さく溜息をつくゼストは、本当に残念そうであった。すると、ゼストは苦しそうに胸を押さえ、次の瞬間には少量であるが吐血をした。

「ゼスト殿!」

「フフ……やはりもう長くはないか。……シグナムよ、最後に頼みがある」

「なんでしょうか?」

「アギトの……ロードとなってはくれまいか?」

 その瞬間、アギトの表情が強張った。

「何言ってんだよ旦那!! アタシのロードはアンタしか!」

「強がるなアギト。残念ながら私とお前では魔力の質が違う。それに、初めてシグナムと対峙した時、お前は内心でシグナムが自分に適していると感じていただろう? お前ももう私に縛られることはない。好きなように生きろ」

「……!」

 アギトは口を噤んでしまった。

 しかし、ゼストの体はもう限界が近いようで、彼はまたしても血を吐いた。

「……すまんが一人にしてくれ。そして、決して戻ってくるな」

「……はい」

 シグナムは静かに返事をすると踵を返し、部屋から立ち去ろうとする。それに従うようにアギトも目尻に涙を溜め彼女に続く。

 そして、シグナムとアギトは廊下で真正面から向き合う。

「……私はこれからゆりかご周辺で戦う仲間達の援護に向かう。お前はこれからどうするアギト」

「アタシは……」

 アギトは言葉に詰まる。しかし、先程ゼストが言ったことが彼女の背中を押す。

「旦那には好きなように生きろって言われた。だから、アンタと行くよシグナム」

 シグナムはそれに頷くと、彼女に手を伸ばす。アギトもそれに答え、シグナムの手に自らの手を置いた。

 同時に二人を魔力が包み込み、アギトはシグナムの胸へと吸い込まれるように吸収された。

 魔力が晴れると、アギトとユニゾンが完了したシグナムが悠然とそこに佇んでいた。ユニゾンの影響か、シグナムの髪の色はピンクから薄いオレンジ色へ変色し、バリアジャケットの上半身部分も装甲がなくなり薄い内着だけになっている。

 ……これは。

 内心でシグナムはアギトとのユニゾンが完璧であることに驚いた。だが、すぐに彼女は走り出す。

「アギト、早速で悪いが一気に行くぞ!」

『ああ! どんと来いシグナム!!』

 アギトの返答を聞いたシグナムは小さく笑うと、窓を切り裂き一気に飛び出した。



 ユニゾンしたシグナムの姿が窓から確認できたゼストは、僅かに口角を上げると、

「……この世界を頼んだぞ。シグナム、アギト……」

 最後にそういい残すと、ゼストは眠るように目を閉じ息を引き取った。







「ハァ……ハァ……。くっそ! 硬すぎだろこの駆動炉!!」

 そう毒づくヴィータであるが、彼女は既に満身創痍であり頭部からの出血も含め、体のいたるところから出血していた。

 迫るガジェットをすべて破壊し駆動炉にたどり着いたはいい物の、駆動炉の自己防衛システムやガジェットとの戦闘で疲弊したヴィータは限界を迎えようとしていた。

 握っているグラーフアイゼンのフレームにも傷があり、戦闘の凄まじさが伺える。

 すると、駆動炉の自己防衛システムがまた動き出しヴィータに狙いを定める。

「この自己防衛システムも駆動炉ぶっ潰さなきゃいくらぶっ壊しても無駄ってわけかよ……上等だ」

 ヴィータは歯を食い縛ると同時に飛び上がり、ツェアシュテールングスフォルムへ変化させたグラーフアイゼンを思い切り振り下ろす。

「どりゃあああああああああ!!!!」

 気合の咆哮を上げ駆動炉にフォルムの、ドリル部分を叩き付ける。駆動炉とグラーフアイゼンが衝突し火花を散らすが、駆動炉にダメージは見られない。

 それよりも、グラーフアイゼンの方がダメージが大きいのか、ドリルの部分のヒビは大きくなった。

「くっ!!」

 それに気付いたヴィータは苦い顔をするが、その瞬間、自己防衛システムが光学兵器での攻撃を行った。

 爆炎が辺りに舞い、ヴィータの姿を一瞬見えなくするが、彼女は肩で息をしながら何とか先程までいた場所へ降り立つ。

 先程の光学兵器の攻撃によりダメージを追ったのか、出血箇所は更に増えていた。だが、ヴィータはそれでもあきらめることはせずもう一度グラーフアイゼンを構える。

「教えてやるよ……。鉄槌の騎士に砕けねーもんはねーってことをなぁ!!!! アイゼン!!」

〈了解!〉

 ヴィータが言うと同時に、グラーフアイゼンからカートリッジが吐き出される。

 ……残ったカートリッジ全部だ。本当にこれで終わりにしてやるよ!!

 グラーフアイゼンを振りかぶり、もう一度ツェアシュテールングスフォルムに変化させたヴィータはそれを渾身の力で振り下ろす。

「ツェアシュテールングスハンマー!!!!!!」

 全力で振り下ろしたグラーフアイゼンと駆動炉はまたしても火花を散らす。だが、今度は先程とは違った。

 ビキッと言う破砕音と共に、グラーフアイゼンのドリルが駆動炉に食い込んだのだ。それを視認したヴィータは更に力をこめた。

 割れたところを抉るようにヴィータは攻撃する。

 体のあちこちからは無理をした影響から鮮血が舞うが、ヴィータはお構いなしに続ける。

「これで終わりだああああああああ!!!!」

 途端、駆動炉のヒビが大きくなり、やがてそれは駆動炉全面にに広がった。

 そして、駆動炉は大きな音を立ててバラバラと崩れ去った。同時に、自己防衛システムもなくなったのか、先程までのキューブ状のものもなくなった。

 すると、先程まで中に浮いていたヴィータだが、本当に全ての魔力を使い果たしてしまったのか、

「あ、ヤベ……」

 空中から力なく、駆動炉のフロアへと落ちていくが、彼女は笑っていた。

 ……これで、アタシの仕事は完了だ。間に合ったみてーでよかったぜ。

 しかし、その瞬間、ヴィータは誰かに抱きかかえられた。

「お疲れさん。ヴィータ」

「……あぁ。本当に疲れたよ、はやて」

 ヴィータは駆けつけたはやてによって抱きかかえられており、はやてもまたヴィータに労りの言葉をかけた。

「とりあえず出口まで連れて行くな」

「はやてはどうすんだ?」

「私はヴィータを置いて来たらなのはちゃんの援護に向かう予定や。もう時間もないしな」

 はやてが言うと、ヴィータは頷き彼女の胸を軽く叩き告げた。

「なのはのことよろしく頼んだぜ。はやて」

「うん。けど、そんな心配もないかもなぁ」

 はやてが小さく笑みを浮かべながら言うと、ヴィータは怪訝そうに首を傾げたが、すぐにそれに気がついたのか、はやてと同じく小さく笑った。

「なるほどな……聖か」







 玉座の間では、なのはと聖王と化したヴィヴィオが激戦を繰り広げていた。

 一度は追い詰められたなのはであるが、今はヴィヴィオと戦うことが出来ている。しかし、それでも劣勢は劣勢のようで、彼女の頬を汗が伝った。

「はあああああ!!!!」

「くぅっ!!」

 容赦ないヴィヴィオの拳がなのはを襲うが、なのはそれをぎりぎりのところでよける。

 ……あと少し! あと少しで探知が終わる!

 なのははここにくる道中で仕掛けてきたサーチャーの探知があと少しで終わることを確信していた。

 だが、それにより、一瞬の隙がなのはに生まれてしまった。ヴィヴィオはそれを見逃さず、なのはに強烈な蹴りを放とうとした。

 しかし、

『一閃必中!! ディバインバスター!!!!』

 その声と共に、玉座の間の壁からヴィヴィオと同じ虹色の魔力砲撃がヴィヴィオとなのはの間を貫いた。

「悪いななのは。お前の技使わせてもらったぜ」

 壊れた壁の中から出てきたのは、なのはが好いており、辛い時に助けてくれた人物。

「聖……くん?」 
 

 
後書き
ふいー……やっとここまできましたねぇ。
地味にお待たせして申し訳ありませんw

次で戦争は終結でございますが、そのあとももうちょっと続きますw

感想などありましたらお願いします。 
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