地球最後の日には・・・
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夕暮れの丘
前書き
僕が彼女を抱え、向かった先は海が遠くに見える小さな丘の上。
僕が一番安心できて、好きな場所。
彼女の命も後わずかだろう。
やっと丘の上に着いた。
彼女はうっすらと目を開け、静かに夕暮れ色に染まる海を見ていた。
千草に残された時間も残りわずか。そんなこと誰が見たってわかるくらいに千草の身体は衰弱している。
僕らは青々とした草の上に座る。
きっと僕らはここで最期を迎えるんだ。
よかった。・・・大切な人と大好きな場所で最期を迎えることができる・・・。
「ねぇ、千草?」
「・・・」
彼女からの返事はない。もう喋ることすらできないのだ。
僕は彼女に伝えたかったことを伝える。
「僕ね、きっとあの日からずっと孤独だったんだよ・・・だから、友達とかといるときも無理に笑顔つくってさ、誰かがそばにいないと不安で・・・僕ね・・・____寂しかったんだ、きっと・・・ずっとね・・・。」
「・・・」
相変わらず彼女からの返事はない。
僕はそっと、彼女の手を握る。
溢れ出てきそうな涙を必死にこらえるが、掠れた声で、今にも泣き出してしまいそうな声で彼女に一番伝えたかったことを告げる。
「僕、千草と出会えてよかったよ・・・」
そして・・・彼女は
「・・・ありがとう、拓斗・・・」
彼女の口から初めて発せられた僕の名前。
僕の涙腺はもう限界だった。
おさえていた涙が一気に溢れ出てくる。
「っ、うんっ・・・」
________
彼女は最期に僕の手を握り返すとそのまま永遠の眠りにつく。
そして僕も彼女の手をしっかり握りしめ草の上に寝転がり眠った。
後書き
彼女たちは地球の最期を知らない。
彼女たちが知っている世界はどこまでも平凡な地球。 -END-
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