| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム ~神々の系譜~

作者:定泰麒
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一章 運命の始まり
  第一話

 
前書き
 字数少なめです。 

 
「すべてが終わった。神々の戦い、ラグナロク。ようやく勝つことができたのだ……。だがなぜだ、我が義兄弟、ロキよ。なぜ我々は敵にならねばならんかった」

 「神と、巨人はそうなる運命だったのだ。オーディン……、すまなかった。そしてありがとう……」

 神々の戦いは、神々の王であるオーディンと巨人を率いるロキとの壮絶な戦いの末、オーディンが勝利した。まだ戦場には無数の骸があり、所々火の手があがっている。オーディンは、義兄弟であるロキの死を持って戦争を終わらせた。

 オーディンは、ラグナロク後にユードゥという勝利に最も貢献した神に、天空神という称号を送り戦場になった世界を彼に与え、更に12人の神々を彼の部下とした。

 幾ばくかの時が過ぎ、かつて戦場であった場所には木が生い茂り、花が咲き乱れている。時とは残酷なもので、神々の時代は神話としてもあやふやなものとして残るくらいでしかなく、神は空へと昇り人が時代を創るそんな時代になっていた。

 


 グラン歴740年
 
 アグストリア諸侯連合の一つであるノディオン王家。ここに新たに命が生まれようとしていた。ノディオン王国は、黒騎士ヘズルの血筋にあたり魔剣ミストルティンを継承している。

 「エルト兄さま、生まれそうです。すぐにお兄様も来てください」

 「そんなに引っ張らないでくれラケシス。お前がそんなに急がないでも赤ちゃんは待ってくれるさ」

 まだ幼い妹に声をかける兄。エルトシャンというその少年は、まだ体付きこそ出来上がっていないものの、その才能は、測りきれんと主君であるイムカ王にも称され将来を嘱望されている。
 そんな彼にも今日、弟が生まれようとしていた。実の母ではなく、妹のラケシスの実母である女性と父である現ノディオン王との間に生まれる子供であった。

 妹に引っ張られながらも、お産室へ向かう。そこには、神妙な面持ちの父と苦しむ継母、それにお産の手伝い達が所狭しと駆け回っている。ラケシスは、部屋に入ると母の元へ駆け寄りその手を握る。

 「父上、どうですか?」

 「エルトシャンか……どうも、相当な難産なようだ。無事に生まれてくることを願うしかないとは、男とは辛いものだな」

 「……ですが、どうやらそれもあと少しのようですよ」

 王は、妻の方を振り返ると少しずつ少しずつ赤ん坊の頭が股から覗くようになっていた。それから2時間後、ノディオン王家に新たに男子が誕生した。

 その男子の名はロキ。後に世界の命運に関わる使命を持って生まれた子供であった。






 『はい、でました。目開かん、マブイ。目開いたと思ったら、周り囲んでんの美男美女。……つーことは、転生だな間違いなく。しかも、俺手ちっちゃ、それに裸……』

 そんなこと思いつつも俺は抱き上げられ、人から人に手渡され最後にヒゲを蓄えた男の下に。

 『きっとお前の父親だぞとか母親だぞとか言ってるんだろうがわからん。とりあえず、泣いてこの場をやり過ごすんだ、そうしたらとりあえずおkだろ』

 俗にいう転生というのでこの世に生まれ落ちた俺。前世では、いろいろあった。でも別段なんか思い残すこともなかったはずなんだが、なぜまた転生しているんだ?
 考えてもしかたねぇ。時間が経てば分かるだろう、俺がここに来た理由ぐらい。

 今世では、ロキと名付けられた人物はこれまでに散々転生を繰り返してきた。中には人ではない時もあった。なぜ彼がこんなにも呑気でいられるのか、それは経験で知っているのだ。いずれ神からの啓示を受け自分が立ち向かわなければならない運命があることを。

 それだけ彼は転生というものを経験してきているのだ。本人にも覚えておくことができないくらいに、精々記憶として残っているのは前世の前世ぐらいであって、後は体に染み込んだ武器の使い方。それと、完璧なまでの処せ術。生きるために必要な知識。数えるくらいのものだ。




 始まりは突然に。終わりも突然に。そんな言葉を元に生きる彼の元に、第一の神からの啓示として与えられたのは、3歳の時。偶然自室にて本を読んでいたとき、怪しまれないようにもちろん絵本だ。その隙間から封筒がひらりと舞った。そこにはロキがいなかった場合のこの世界の顛末と、今から自分が何をすればいいのかが書かれた便箋3枚にわたった手紙なのであった。
 
 「なになに……嘘、エルト兄さん死んでしまうん! それからそれから、えっこれって、まずくない……アグストリア滅びるんかよ。しかも敵じゃなくて勇者によってとか洒落ならん。しかも勇者死ぬんかい、もうこの大陸悲惨すぎ。それで俺がすべきは……剣術の訓練と10歳になったら鉄の剣をもってマーファ城北の泉の岬に向かえとな、マーファ城ってどこだっけ……」

 廊下から足音が聞こえてきた。しかも、歩いている音ではなく走っている音だ。俺は、焦りながらも瞬く間に手紙を本に挟みベッドの下に隠した。そして扉が開き、そこにいたのはラケシス姉さんなのであった。その顔はまるで人形のようであり、美しい。だが、まだ幼く女の子らしい愛嬌と可愛さがある。

 「ロキ、遊ぶわよ!」

 「待って、姉さん。眠いんだ」

 「そんなに寝てたら、大臣みたいに太るわよ。あなたも嫌でしょデブは」

 「それは、大臣に失礼だよ。でもわかった行くよ。それで何するの?」

 「へへっ、それはね……」

 ところ変わって、所謂会議室のような場所。そこでは、ノディオン王国の王子であるエルトシャンの士官学校への入学への話し合いが行われていた。

 「父上、ということは私はグランベルの士官学校へと参ればよろしいのですね」

 「すまんが、そういうことだ。外交的にもそれが良いということになってな。イムカ王もそうしておけと、そこでの成長に期待しているとおっしゃられていたぞ」

 「そうですか、それは嬉しく思います。では、いつからそこへ参ればよいのですか?」

 「今は冬。さすれば春になれば道が開かれると心得ます」

 「さすがは、メウス。それが良いだろう」

 「はっ、では春から士官学校へと参りましょう。では、失礼します」

 「うむ、今のうちに訓練に励め。士官学校には他国の王子達も来ているとの話だ。くれぐれも彼らに侮られんようにな」

 エルトシャンは頷き、一礼するとその場を去っていった。

 「王よ。子息殿の将来は楽しみでございますな。間違いなく英雄と呼ばれる王になりましょう。それにご息女はますます綺麗になられ、末の子息は齢3歳にして字を嗜むという。まさしくこの国は安泰でございます」

 「メウスよ。お主は口がうまいのう」

 ノディオン王は、口を開け笑うとそのまま立ち去った。その後ろにメウスが従ってついていった。



 
 「ねぇ姉さん、これって女の子が着る服じゃ……」

 「ロキ、私ね妹が欲しかったの。だからあなたはその代わりね」

 「あら、ロキちゃん似合ってるわよ。ふふふ」

 俺は一体何やっているんだろうという思考に囚われながらも姉と母親にいいように遊ばれているのであった。

 
 

 
後書き
 こんな雰囲気で書いていく予定。シリアスとコメディがいい感じにバランスが取れたらいいなと思っています。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧