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ファイアーエムブレム ~神々の系譜~

作者:定泰麒
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第一章 運命の始まり
  第二話


 かつて暗黒神ロプトウスが大司教ガレに降臨した。彼は暗黒神ロプトウスを崇拝するロプト教団を作り上げ、十二魔将の乱により大国グラン共和国を滅ぼし、ロプト帝国を成立させた。

 ロプト帝国は子供狩りや人々の虐殺によって、恐怖の限りを尽くした支配を行い続ける。そんななか、ロプト皇帝の弟・皇族マイラが反旗を翻し、各地に自由解放軍が興った。反乱は長く続くも解放軍は次第に追い詰められ、最後に立て籠もったダーナ砦にて解放軍戦士12人に神が降臨し、632年、十二聖戦士が誕生した。

 聖戦士の力を得た解放軍は、翌年打倒帝国を掲げて聖戦を開始、それから15年後にロプト帝国を滅ぼすことに成功。英雄となった十二聖戦士たちは各地に散り、グランベル七公国と周辺五王国を建国、後にグランベル王国を勃興させた。

 これが、今から約100年前のお話だ。この大陸に生を受けたものなら必ず聞いたことがあるお話。そして今からおよそ10年後にロプト教団が暗躍し始めるとあの紙に書いてあった。

 ちなみにあの紙は隠しておいたはずなんだけど、いつの間にかすっかり痕跡もなく消えておりました。いつものことなのでさほど気にしてはいない。逆にそのほうが助かる、ああいうものがもし外に出回ったりでもしたらまずいからな……。

 「ロキ様、かかってきなさい」

 「はい!」

 と、そんなことはさておき俺は剣術の稽古を始めました。6歳の時だったかな……、王子たるもの強くあらねばならんと父上のお達しで、まぁいずれは剣術も始めなければいけなかったから丁度よかったんだけどね。

 「はぁ、とりゃ、せいや!」

 「よし、その調子です」

 いま剣術を教えてくれているのは、元クロスナイツ隊長。これが強いのなんのって、剣に触ったのは久しぶりだったていうのもあるけれど、それでもいろんな世界を救ってきて武術には自信があったのに本気だしても一太刀しか当てられなかった。

 「よし、型通りの剣術はほぼ完璧のようですね。次回からはより実践的な剣術を教えていきたいと思います」

 「了解です。ありがとうございました」

 剣術の訓練を始め、約1年。どうやら今日で基礎訓練から抜け出せそうだ。てかあれだな、正直教えてもらわなくてもいいんだよな。体をある程度作ってしまって、剣さえくれればもう自分でなんとかできるんだけど。まぁいろいろと怪しまれないためには必要なことかな……





 「王よ。次からは、ロキ様の訓練をより実践的なものにしていきたいと心得ます」

 「ほぅ、まだ1年だが。それほどまでにロキは才があったというか」

 「私は、これまで何千という兵を鍛えてきました。その中にはもちろんエルトシャン様もございますが、これほどまでに才に恵まれたものを見たのは初めてでございました。今でもこの右腕に受けた傷が疼きます。まさに彼の武を磨くことこそ、私のなすべき最後の集大成であると」

 「そうか、お主にそれほど言わせるとはな。頭も良い上に腕も立つか……これは、嫌な予感がせんでもないな」

 「王よ、その心配はございません。エルトシャン様、ラケシス様、ロキ様。彼らは皆仲良く、それに王は名君であられる。万が一にも過ちは起こりますまい。臣下にも悪しき者はございません」

 「その通りでございます」

 「そうか、お主達がそう申してくれるのは、嬉しいことだが……なにも嫌な予感はそのことだけではない。どうも、イムカ王の子息があまり好人物ではないようだ。何もなければいいが……」

 ロキ達の父である王のこの予感は、当たらずとも遠からずであり、将来をまさに案じしているようであった。

 


 そのころエルトシャンといえば、幼年学校をようやく卒業し、現在は予科2年であった。王子ということもあり無下にされることもなかったが、厳しかったと言える。しかし、そこは決して楽しいと思える場所ではなかったが、彼はその学校にてシグルドやキュアンという親友とも呼べるべきもの達に出会っておりあながち悪いところとも言えなかった。

 「私には兄妹がいないから、君たちが羨ましいよ。弟が欲しかった」

 「そうかい、でも俺にも妹しかいないから弟のことはわからないよ。そこは、エルトシャンに聞かせてもらわないと」

 「うーむ、弟か。俺も最後にあったのは弟が3歳の時なんだよ。だからこれといって遊んだ記憶がないが実に愛らしかったと言っておこう、そんな弟だが、妹の手紙を読むあたり今は剣術の稽古をしているらしい。しかも、才能があったらしく私以上の速さで剣術を習得しているとか、妹が弟に負けぬようにと叱咤激励が書いてあったよ」

 「あのエルトシャンも、兄妹には弱いと見える」

 「ふん、否定はできん」

 3人は顔を見合わせ、笑いあった。将来の英雄達は未だ幼く、しかしその姿は周りのものにとっては余りにも凛々しく、華々しい。しかし、この時間もあと2年で終わろうとしていた。

 「そういえば、その妹だが……今度の王都で開かれる王の誕生祭に出席するらしい。確かシグルドの妹君もそうであったろう?」

 「そうだ。その時キュアン、妹を君に紹介しよう」

 「シグルド、妹君は可愛いか?」

 「ふん、この度のパーティでは一番の美しさを誇るのは間違いないだろう」

 「ほう、私の妹も負けていないと思うがな!」

 ここで、シグルドとエルトシャンが顔を見合い合わせにらみ合う。ただならぬ雰囲気にキュアンは慌てて止めるが……

 「待て待て、そこで争ってどうする? しかし、楽しみだな。二人ともの妹君が参加か……楽しみだな」

 キュアンは正に火に油を注ぐこととなってしまい。シグルドとエルトシャンはどちらの妹が可愛いかの争いになってしまったのであった。次の日には、元通りの仲の良い友人になっていたというのは補足でつけておこう。




 ひと握りの人物達が、世の中を操る。それがこの世界の全てだった。それが変革されることはまだまだ先のことであろう。魔法が存在し、神の存在が近くに感じられる世界は、これまでに数々巡ってきた。ここもそんな世界とそう変わりない。
 それに魔物と言えるものもほとんど存在せず、敵は人間だけというのも恵まれているほうだと思う。まぁ戦争がいいとは思わないが。

 「ロキ、私今度のパーティはどんな服装でいったらいいと思う?」

 「えー、俺に聞かれてもね。父上か母上に聞けばよろしいじゃないですか」

 「あなたも可愛くなくなったわね。でもその通りね、子供にはまだ早かったわ」

 「……姉さんも子供でしょうに」

 「何か言った!!!」

 「いえ、なにも。それじゃ、俺はやりたいことがあるから失礼します。お姉さま」

 「ふん!」

 一体、どんな大人になるのか心配になる。あんなに可愛いのに性格があのままだったら結婚も夢のまた夢のだろう。今度のパーティで少しでもそれが改善してくれるといいけど……はぁ、無理だろうな。
 自室へと戻る途中、ふと書斎へと赴いた。父から既にいつでも好きな時に本を読んでいいという許可はもらっている。

 「なんか……面白そうなのないかなぁー」

 決して少ないとは言わないが、所詮は書斎程度であり本自体はあまり多くはない。お気に入りの本は何冊かあるが、それも読み飽き、新たなジャンルに挑戦しようかと考えていた。
 そんなさなか、書斎の扉が開く音が聞こえた。

 振り返れば、そこにいたのは我が国の大臣のメウスさん。頭がよく、父に対しての忠誠心は天井を突き抜けているレベルだ。難点は、デブハゲ……。惜しい惜しすぎるぞ、昔はかっこよかったと父と母は言っていたが現在はそんな有様である。

 「これは王子様、なにかお探しのものでも?」

 「うーん、新しく本を読んでみようと思ってね。なにか面白そうなものはあるかい?」

 「そうですな……これなんかどうですか?」

 そう言って手渡されたのは、ノディオンの歴史書だった。確かに読んだことはないし、とくだん歴史にも興味なかったが、読んでみることにするか。王子だし知っていても損はないだろう。

 「歴史書か……どんなことが書いてあるの?」

 「そうですなぁ、例えばこの国の生い立ちやクロスナイツの創設、それに魔剣ミストルティンを継承した際の話も載っていたと心得ますよ」

 聞く限り悪くはなさそうだ。メウスにお礼を言うと自室へと戻った。ベッドに横たわりながら歴史書を開く、書物には読みやすいように年表とともにそれにまつわる話が書いてあり、それら全てを網羅するために歴史書は分厚くそれでいて第8篇にもわたっているらしい。
 しばらくはこれで暇を潰せそうだな。あー、なんか楽しいことないかな……

 うとうととしながら本を読んでいたら、部屋をノックする音が聞こえた。どうぞと声をかけベッドから立ち上がりドアを開けた。ラケシス姉さんだ。

 「どうしたんですか? 姉上?」

 「ロキ! あなたもパーティに行くことになったわよ!」

 おいおい、嘘だろっ!!!





 


  
 
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