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こんな私(俺)の物語 リメイク

作者:金猫
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第ニ話 家族が増えました

 
前書き
長らくお待たせいたしました。
この辺から前作と違います。
 

 
体を起こすことさえ億劫になるくらいの倦怠感を伴って、俺は起床した。
昨日の事を思い出す。あんな絶望したような表情をする幽々子は見たくない。考えろ、どうすればまた笑ってくれる?
能力が原因なんだ。それなら、三つ候補がある。
一つ目は、『封印と解放の境界』を操って幽々子の能力を封印する。
二つ目は、幽々子に能力の制御を教えて、能力をコントロールできるようにする。
三つ目は、『境界を操る程度の能力』を使って幽々子の『死に誘う程度の能力』を無効化する。
まず一つ目の『封印と解放の境界』を操って幽々子の能力を封印する。これが一番手っ取り早い。しかし、今回みたいに成長につれて能力が強くなって俺の能力を上回る可能性もある。下手をすれば被害が大きくなる。この案は却下。
二つ目の幽々子に能力の制御を教えて、能力をコントロールできるようにする。これも却下だ。理由は、俺が教えるとして、教えきるまでに俺が死ぬからだ。文通という手もあるかもしれないが、今の不安定な幽々子を一人にするのは危険だ。
三つ目の『境界を操る程度の能力』を使って幽々子の能力を無効化する。やはりこれが一番確実かつ現実的な手段だろう。これができれば、二つ目も達成できる。

そうと決まれば早速実行しよう。ではどうやって幽々子の能力の影響を受けないようにしよう?種族を変える?死の影響を受けない種族はすでに死んでいるものか、不死身だけだ。そんな存在にはなれない。
だとすると、境界を纏うことによる概念障壁の常時展開だな。境界の設定は、『有害と無害の境界』。自分に有害な概念を全て無害化する。自分に有害な現象にすると物理的なことも遮断してしまうので、あくまで概念のみだ。
設定を完了し、境界を纏う。そして、幽々子の家の庭に通じるスキマを開く。

待ってろ幽々子。俺はお前を独りにしない。


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西行寺邸の庭に到着した。やはりこの家は広い。
早速幽々子を探し始める。

「さて、どこにいるのかしら?」

周囲を見渡す。幽々子はすぐに見つかった。庭に生えている桜の木。その枝に乗っている。そして、首には縄が巻き付けられていて、もう片端は枝に結ばれている。まさかーーッ!

そう思った瞬間、幽々子は枝から飛び降りた。

俺は反射的に『境界を操る程度の能力』を使って幽々子の真下にスキマを作り出し、出口を真下の地面に創る。そうすれば、体が宙に浮くことがないから、首は絞まらない。

結果、自殺は自殺未遂になった。
俺は幽々子のところに向かう。そして、名前を呼ぶ。

「幽々子」

「え?紫・・・・・・?」

今更気がついたらしい。

「幽々子、死んではダメよ」

「でも・・・・・・私がいると、皆死んでしまうから・・・・・・」

予想通りの受け答えだった。でもな、

「私は大丈夫よ。死なないわ」

そう言うと、幽々子は伏せていた目を上げてこちらを見てくれた。

「私も普通じゃないから」

そう言って俺は幽々子を優しく抱き締めてやる。
それから幽々子は決壊したかのように泣き出した。
俺は黙って抱き締め続けた。

後から思い出して恥ずかしさで一人悶えていたことは秘密だ。


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幽々子の自殺未遂事件から二週間ほど経った。俺はあの後、家に一旦帰って、暫く幽々子の家に泊まると親に言って、服やら色々と必要な物を持って幽々子の家に戻ってきた。親の説得には苦労したんだぜ。

能力の制御だが、幽々子は意外とコツを掴むのが早く、今では無差別に死に誘うことは無くなった。
にしても、この世界はなんなのか、よくわからない。東方プロジェクトの世界のようでそうではない。東方プロジェクトでゆかりんが生まれたのは少なくとも平安時代以前・・・・・・だと思う。だから、こんな平成に八雲紫がいるなんておかしい。

ま、いいか。今ここで生きている。事実はそれだけだ。

さて、そう自分の中で結論付けて、今までなるべく見ないようにしていた現実に目を向ける。

「す~す~」

俺に思いっきり抱きついて寝ている幽々子さん。
正直に言います。鼻血出そう。可愛すぎる!ナニコレ?幻想郷五大お姉さまの一角がロリ化するとこんなに可愛いの?
ああダメだ。こんなの直視できない。確かに嬉しいんだけど、今は子供、しかも女、同性だからなんか悲しい。

まあでも、いつまでもこのままというわけにもいかない。朝食の時間だしな。

「ほら、幽々子起きて」

「ん~」

まだ半開きの目を擦って起き上がる幽々子。カメラないかな?
因みに、俺も幽々子も寝巻きは浴衣である。言ってしまおう。

幽々子、浴衣、はだけてる。

天然って怖いよね。いや、ある意味無意識なのか?萌え殺しさせる気か?
とりあえず俺は指摘することにした。

「幽々子、浴衣はだけてるわよ」

そう言うと、幽々子は少しぽーっとした後顔を赤くして布団を掴み体を隠した。

何故そんな反応をする?精神男だからショックだぞ!?

「女同士でなにをやっているのよ・・・・・・。私はご飯を作るから、幽々子は布団を畳んでおいて」

そう言って俺は台所に向かう。これを普通の人が見たら異質に見えるだろう。
俺たち、一応小学生だからな。説得には苦労したんだぜ!


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さて、朝食を終えた俺たちは着替えて学校に向かう準備をする。漸く幽々子が学校に登校できるまで安定したからな。能力的にも、精神的にも。

俺は幽々子よりも大分早く準備が終わったため、能力について考えていた。
俺の『境界を操る程度の能力』は強大な能力だ。消費する霊力も半端じゃない。実は初めてスキマを使った時は、二回発動したらもう疲労困憊だった。だが、俺の能力は反復練習すると少しではあるが負担が減るため、今は比較的自由にスキマを使える。それでも三桁開けれるかわからないが。

他には、『意識と無意識の境界』を操って古明地こいしがやっていたステルスもやってみようと思ったのだが、行き詰まった。境界を操って無意識を支配下に置くことはできたが、そこからがわからないからだ。無意識をどう操れば誰にも認識されなくなるんだ?他人の無意識を操って俺を無意識に見ないように仕向けるとか?
原作の能力では予測されにくいとかしか書いてないからわからない。

東方プロジェクトの能力はただでさえ曖昧なのに、俺の能力はそのなかでも特に曖昧だ。ま、その分応用の幅が桁違いに広いんだけど。

「紫~、行くわよ~」

おっと、思考に没頭しすぎていたらしい。さてと、行きますか。

登校中も能力の訓練を欠かさない。幽々子と話ながら能力を操る練習をする。ポケットの中で見えないようにスキマを開け閉めするだけなのだが、話ながらだとどうしてもスピードが遅くなってしまう。言ってしまえば、並列思考をしてみたいんだ。前世では高校生だったが、実は若干中二病な俺なので、こういうものには憧れる。

幽々子も能力を制御しながら話しているはずなのだが、随分と余裕そうな表情だ。

まあ、こんな日常が続き、俺たちは中学生になった。


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中学生になったある日、俺は山に来ていた。理由は幽々子が七草粥を食べたいと言ったからだ。だからと言って山で原材料を採る必要性はあるのかな?幽々子が言い出しっぺだから幽々子も一緒に来ている。

暫く山菜を採っていると、気配を感じた。

気配を感じた方向に向かってみると、一匹の傷付いた狐がいた。俺はその狐を見たとき思った。


  いい実験台、発見。


いや待て、石を投げないで。実験と言っても治療系の実験。より正確に言えば『過去と現在の境界』による時間逆流治療だ。なにも酷いことをしようってわけじゃない。
早速実行に移す。傷口の境界を操り、傷を修復していく。
・・・・・・・・・・・・ふぅ。とんでもなく負担がかかった。具体的に言えば霊力の八割は持っていかれた。これは大体だから、実際はもっと多いだろう。
治療を終えてキョトンとしている狐を見る。治した箇所を見ると、綺麗な毛並みが見えた。よし、

「家で飼いましょう!」

「いいわね~」

「コォン!?」

いいリアクションをする狐ですね。

家に連れて帰り、二人で狐を洗いまくる。洗い終わった狐の毛並みは金色に輝いていた。
そして二人で狐をモフりながら寝た。
いつも以上に気持ちよく寝れたZE☆

そして翌日。

暑苦しさで起きた。夏場だから、基本は涼しくしているはずなんだけど・・・・・・。
気になって見てみると、狐の尻尾が増えていた。具体的には九倍に。モフモフだよ。

「起きて」

俺は抱いている狐を起こす。狐はまだ眠いのか、前足で目を擦った。

「尻尾が九本になってるわよ」

そう言った瞬間、目を擦る動きが止まる。そして、次の瞬間、脱兎ならぬ脱狐の如く逃げ出し・・・・・・その先に開かれていたスキマの落とし穴に落ちた。ホント、スキマって便利だよな。
スキマから首だけ出して質問する。

「ねえ、あなたは妖怪?」

「・・・・・・」

しかし狐は黙ったままだった。

「私の言っている言葉の意味は分かる?」

「(コク)」

意味は分かっているらしい。なら、会話できるか?

「もう一度聞くけど、あなたは妖怪かしら?」

「・・・・・・(コク)」

肯定、つまりは九尾の狐で間違いない。尾が九本あるんだから。

「そう。私は八雲紫。隣で寝ている女の子は西行寺幽々子よ。よろしくね」

俺はスキマから九尾の狐を解放する。狐はこちらこそよろしくと言わんばかりに頭を下げてきた。

「さて、あなたは妖怪、私は人間。普通なら一緒に生きるなんてできない。・・・・・・でも、私たちは普通じゃない」

「それは知っている。先程見たからな」

「あら、喋れるじゃない」

「当然だ。仮にも九尾だからな」

そりゃそうだ。九尾なら人語を理解するなんて当たり前だろう。喋ることだってできるはずだ。

「それで、あなたはこれからどうするの?」

「そうだな・・・・・・傷を治してくれた恩を返そうと思っているよ」

「なら、私のお願いを聞いてくれるかしら?」

「出来ることなら」

「それじゃあお願い、私達の家族になってくれるかしら?」

俺はそう言った。その言葉を聞いた九尾の狐は、ポカンとした表情を浮かべた。

「ふふ、面白いことを言うな。恐怖が、畏怖が、人間の負の感情が具現化した妖怪を家族にしたいとはな」

「あら、その割には嬉しそうね」

確かに妖怪は負の感情を具現化した存在だ。だけど、人と妖怪、その垣根を、境界を越えることはできないことじゃない。今の俺はそう思っている。スキマだからな!

「そうだな、それもいいかもしれないな・・・・・・」

「それじゃあ、今から私達は家族ね。あなたの名前は?」

「偽名なら名乗ってきたが、本名はないんだ。折角だから、紫が名付けてくれないか?」

「あら、私でいいの?それなら、名付けさせてもらうわ。あなたの名前はーー藍。藍色の藍と書いて(らん)よ」

こうして、俺達に新しい家族が増えた。今更ながら、両親への説明どうしよう・・・・・・。


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藍が家族になってから数週間。
俺達は、藍に空の飛び方を教えてもらっていた。折角ファンタジーな力があるんだから、飛行とかもやってみたいしね。
幽々子は俺がやることをなんでもかんでも真似しようとする。親鳥についていく雛鳥みたいだ。
他にも、藍には霊力や妖力のことや、結界を教えてもらったりしていた。藍以外にも妖怪はいると思うし、自衛手段は身に付けようとしている。

それはさておき、学校では修学旅行が近づいてきた。行き先は定番と言っていい京都。
うん。藍に聞いたところ、京都は妖怪が比較的多い地域らしく、藍もここに来る前は京都に居たらしい。が、他の妖怪と気が合わなかったらしい。京都を妖怪の一部は、人間は自分達のエサとしか見ておらず、非常に気性が荒いらしい。しかも、俺と幽々子は霊力が普通よりもずば抜けて高いため、狙われる可能性が高いらしい。らしいばっかりなのは、藍から聞いた情報だけだからだ。

こんなにもドキドキしない修学旅行は初めてだよ。なんだって一大イベントの時に襲撃されなきゃならないんだよ。
というわけで、修学旅行には藍もついてくる、が、ここで問題が発生したらしい。

「私が妖狐のままでは、集団で襲い掛かってくるかもしれない。どうしようか・・・・・・」

とのこと。藍は妖怪の中でも長生きで、今まで悪いことどころか人助けをしていたため、種族は天狐だと言う。ここも原作と違う。もうここ東方とかなりずれてるよ!
で、藍の問題に俺は、

「じゃあ人間になればいいじゃない」

と言った。
藍はまたもポカンとした表情を浮かべた。

「そんなことができるのか?」

「そういえば、私の能力を教えてなかったわね。私の能力は『境界を操る程度の能力』。人と妖怪の境界を弄ることだってできるわよ」

そう言ったら、藍はさらに間抜けな表情になった。

「紫も『程度の能力』を持っていたのか?」

「あら、藍も?」

「ああ、私は『神通力を操る程度の能力』を持っている。まあ、最近手に入れたばかりだがな。それにしても、とんでもない能力だな・・・・・・。幽々子も『程度の能力』を持っているのか?」

「ええ、『死を操る程度の能力』をね」

「・・・・・・段々自信が無くなってきたよ・・・・・・」

藍が沈んでいた。

「それだけの能力を持っているのなら、私を式神にできるかもしれないな」

「え?式神契約って契約する相手より強くないといけないんじゃないの?」

「いや、式神契約はお互いの了承があれば潜在能力を基準に契約することができる」

何?それはいいことを聞いたんだぜ☆
もっふもふの式神・・・・・・いい。凄くいい!

「ら~ん。ちょっと式神契約をやってみない?」

「目が怖いぞ!?」

よいではないか~よいではないか~。
結局契約はできなかったが、かわりに超もふってやった。

そして、修学旅行当日になった。


 
 

 
後書き
次回、修学旅行 
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