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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第三十三話 残る者たち

 なのはの手にゆっくりと降りてくる赤い宝石。

「これで駆動炉の封印も完了だな」
「うん。あとは」

 なのはと俺の視線が交わりお互いに頷き合う。

「「フェイト(ちゃん)の所に向かうだけ」」

 向かう先は最下層。
 フェイトが向かったプレシアのいるところ。
 だが次の瞬間

「きゃっ!」
「なのはっ!」

 凄まじい振動が襲った。
 バランスを崩したなのはをすぐに抱き寄せる。

 どういう事だ?
 次元震はリンディさんが抑えてるはずだ。
 だが振動は徐々に強くなり、下からは凄まじい魔力の猛りが感じられる。
 恐らくフェイトとプレシアがいる最下層。

「ユーノ、無事か?」
「僕は大丈夫。だけどこのままじゃここが崩れる!」

 ユーノの意見には同感だ。
 だがそれ以上ににフェイト達が心配だ。
 しかしこの状況だ。
 いざとなったら撤退できるように準備しておく必要もある。

「ユーノ、入口に戻ってアースラへの転送準備をしてくれ」
「士郎は?」
「最下層に行く」

 俺はなのはにユーノと共に行くように言おうとしてやめた。
 なのはの瞳には怯えも何もない。
 ただフェイトを助けに行くという強い意志がそこにはあった。

「わかった! なのはも気をつけて!」

 ユーノにもなのはの意思は伝わったのか、すぐに来た道を逆に走り始める。
 そして、俺達は最下層に向かうのだが、当然というかここ、時の庭園の構造を把握していない。
 解析を使えば把握できるかもしれないが時間が惜しい。
 なので手段は問わない。

「なのは、レイジングハート、今からする事は秘密で頼む」
「え? わ、わかった」
「All right」

 ちょっと……いや、かなり荒業で道を造るとしよう。
 ハルバートを外套にしまうように霧散させ、左手に握るは使い慣れた洋弓

「―――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)

 右手には捻じれた剣を持ち、跳躍する。
 空中で剣を番え、最下層に狙いを定める。

「―――偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

 放たれた剣は一瞬で音速を超え、空間すら捻じ切る勢いで俺が立っていたところを突き進む。
 そして、最下層に続くトンネルが出来る。

 着地し、弓を外套にしまうように霧散させ、なのはを見ると唖然としていた。
 まあ、宝具だから驚くのは無理もないか。

「なのは、とばすから掴まれ」
「え、う、うん!」

 俺はなのはを抱きかかえ、最下層に伸びる道に飛び込んだ。




side クロノ

 戦いの場と化した時の庭園。

 そこは凄まじい勢いで崩壊していた。
 そして崩壊が進むのに合わせるかのようにジュエルシードの魔力がどんどん高まっていく。

 一つのジュエルシードだけでも厄介だというのにそれが八つもあるんだからもはや手の着けようがない。

「艦長、庭園が崩れます! 戻ってください。
 クロノ君達も脱出して崩壊までもう時間がないの」
「わかった! フェイっ!!」
「きゃっ!」
「フェイトっ!」

 エイミィからの通信にフェイトの事を呼ぼうとしたその時
 上からは瓦礫が落ち、フェイトが立っていた場所が隆起する。
 アルフが慌ててフェイトの事を掴もうと手を伸ばすが届かない。

「……最後までごめんね」

 そんな崩壊の中、プレシアの言葉だけはしっかりと聞き取れた。

 プレシアはアリシア・テスタロッサの入ったポットのそばに立ちながらフェイトの事を見つめていた。
 先ほどのつぶやきは誰に向けられたものなのだろうか?
 フェイトを最後まで危険目に合わせた事か
 それとも最後まで付き合わせてしまう事になったアリシアに向けられたものか
 もしくはその両方か

 その答えはわからないがゆっくりしていられる状況じゃない。
 現にプレシアが立つ場所も亀裂がどんどん広がっている。
 この下には虚数空間が広がっている。
 落ちれば生存は絶望的、いや不可能だろう。

 しかしその状況下でもプレシアは落ち着いていた。
 憑き物のが落ちたようなその表情は全てを受け入れる覚悟が出来ているように見えた。

 冗談じゃない。
 フェイトはプレシアを求めているというのに、その手を振り払ってあえて死を選ぶつもりか。
 そんなの認めない。

 危険なのは承知している。
 そんな中プレシアのところに行こうとした次の瞬間

「っ!!!」

 背筋に寒気が奔った。
 本能が危険と警告する。
 その発生源は上
 僕だけじゃない。

 ここにいる全ての者がこの状況の中上を見上げていた。
 ジュエルシードの魔力が満ちている庭園の中でも明らかにわかる異質な魔力と存在感。

 その存在感が膨れ上がる。
 それとほぼ同時にその異質なモノは天井を突き破る。
 だがそれでも勢いが衰える事はなく、さらに下を目指して一瞬で視界から消えた。
 その速さはもはや視認できるものではない。
 当然、今のが何だったのかわかるはずもない。

 しかし恐ろしい程の速度で天井を破ったモノはその余波だけで周囲にある瓦礫を薙ぎ払ったのだ。
 仮に直撃しなくてもただでは済まないのは間違いない。

 そして、異質でこれだけの事が出来る可能性があるのは

「まさか士郎か?
 エイミィ! 何だ今のは!」
「わ、わかんない。というか観測結果は後!
 早く逃げて!」

 あまりの異質さに呆然とする僕達に向かってエイミィが叫ぶ。
 フェイトやプレシア達もあまりの異質さに呆然としていたらしい。
 エイミィの声で動き出す僕達。

 その時、魔力を感じ再び見上げる。
 天井に空いた穴。
 そこから何かを削るような音と共に赤いナニカが飛び出してきた。

 飛び出してきたのはなのはを抱えた士郎。

 なのはと士郎が向かったのは駆動炉。
 つまり導き出される答えは。

「……駆動炉から最下層まで道を作ったのか?」

 そのあまりの答えに頭が痛くなってきた僕だった。




side 士郎

 カラドボルグより遅れ、駆動炉からのトンネルから飛び出る。

 俺がやった事は結構単純で魔力放出と重力の恩恵を受け、最高速でトンネルを駆け抜け、トンネルの終点が見えると同時に無銘の魔剣を突き立て、ブレーキにして降りてきたのだ。

 トンネルを抜けると同時に周囲に視線を向け、状況を把握する。
 全員確認。今のところはまだ無事のようだ。
 だが隆起した所に残されたフェイトと亀裂が広がる大地に残されたプレシアとアリシア。
 しかもプレシアの足場が崩れるのにももう猶予がないのも明白。

 迷いも躊躇いもなく判断を下す。

「フェイトを!」
「うん」

 なのはを離すと、なのははすぐさま減速しながらフェイトに向かう。
 たった一言だけで俺の思いは通じたようだ。

「フェイトちゃん! 飛んで!! こっちに!!」

 なのはの言葉にフェイトがプレシアに視線を向ける。
 そんなフェイトにプレシアはただ一つ頷いただけだった。

 フェイトとプレシアのそんなやり取りを、プレシアのフェイトに対する視線が先ほどまでとは違い穏やかなのを見て確信した。
 フェイトの思いは届いたのだ。

 それに従うように、何かに縋るようになのはに手を伸ばすフェイト。

 フェイトの手はなのはにしっかりと握りしめられる。

 その光景を満足そうに見つめるプレシア。
 そして足場は崩壊し、ゆっくりと虚数空間の中にプレシアとアリシアが落ちていく。
 ようやく届いたフェイトの思い。
 それが失われようとしている。
 それを黙って見届ける?

 それこそまさかだ。

 なのはとフェイトのために剣を執ると決めた。
 プレシアがここでいなくなればフェイトが苦しむのなんて考えなくてもわかる。

 ならばそのままプレシアとアリシアが虚数空間に落ちるのを見ているはずがない。

「あっさりと諦めるな!!」

 鎖と布が踊り、布がプレシアの腕とアリシアのポットに巻きつき、その上から鎖がさらに絡みつく。
 その先は俺の右手に握られる。
 そして、俺自身の身体を支えるのは辺りにある瓦礫と俺の身体に絡む幾多の鎖。

 鎖が軋みを上げながら俺の身体とプレシアとアリシアの身体を支える。
 だがそれとほぼ同時に俺の身体から異音がした。

「ぐっ!」

 当然といえば当然である。
 プレシアとポットの中を満たす液体に入ったアリシア。
 それを身体一つで支えるだけでかなりの負荷だ。
 さらに俺が駆動炉から魔力放出を使い降りてきた勢いも剣で多少減速させたといえ、身体に絡みついた鎖で止めたのだ。
 肋骨が折れるのは当然のこと、二人を支える腕の骨が折れ、筋肉が断裂するのもやむを得ない事であった。

「士郎君! プレシアさん!」
「母さん! 士郎!」

 なのはとなのはに支えられるフェイトが悲鳴を上げる。

「なのはとフェイトは脱出しろ!」
「だけど!」
「早くしろ!」

 折れた肋骨が内臓を傷つけたのか口から血が零れるが構わずに叫ぶ。
 俺の言葉になのはが悔しそうにゆっくりとだが確かに頷いたのが見えた。

「信じてるからね! ちゃんと戻ってきてね!」

 俺にそう声をかけ、フェイトをしっかりと抱きしめ、入口に向かって速度を上げる。
 その時アルフがこちらに来ようとするが

「二人を頼む」

 首を横に振り、静かに言葉を紡ぐ。
 アルフは一瞬迷うもしっかりと頷いて、なのはを追う。
 そんな中、フェイトはなのはの腕の中で見えなくなるまでプレシアを見つめ続けていた。

 それを見届け一安心する。
 少なくともこれでなのは達は大丈夫だ
 その事に安堵する俺に

「私を助けようとするなんてね」
「ふん。せっかく思いが通じたのにお別れというのはな」

 プレシアの言葉に苦笑しながら軽口を叩くが内心では焦っていた。
 ダメージを負った身体。
 通常ならば吸血鬼の修復力により修復されるところだが、修復出来ていない。

 なぜなら

 折れた腕にかかるプレシアとアリシアの重さに
 折れた肋骨に食い込む鎖
 損傷しているところに一番負荷がかかっているのだ。
 こんな状況ではいくら死徒といえども修復できるはずがない。

「士郎! 無事か?」
「何とかな!」

 クロノは俺達を心配してかまだ残っていた。
 もっとも降ってくる瓦礫のせいでまともに近づく事すら出来ないだろうが。

 そんな中隆起した足場によりこちらにすべり落ちてくる一振りの剣。
 その剣は見覚えのある西洋剣。

「……まだ運は尽きてないみたいだな」

 その光景に思わず笑みが零れる。

 まだ無事な左手でアリシアのポットに絡まる布と鎖を握る。

 剣はアリシアのポットの横を通り、虚数空間の底に落ちていく。
 そのタイミングで

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 俺の言葉と共に虚数空間に落ちていく剣、デュランダルが爆発を起こす。
 爆風でアリシアとプレシアが上に押し上げられる。
 だが現状の身体では二人を同時に引き上げる事は出来ない。
 そのため俺が執った手段は

「クロノ! しっかり受け取れよ!!」
「なっ!」

 爆風で浮かび上がるタイミングに合わせ、左腕の力で引き上げながらそのままクロノの方に放り投げる。
 宙を舞い俺の視界から消えるアリシア。

「ちゃんとキャッチしたか?」
「ああ、なんとかな! だが次からは先に言ってくれ!!」
「善処するよ。さっさとアリシアを連れて逃げろ」
「協力者である君を残して行けるか!」

 クロノの返答に苦笑しながらプレシアを見る。
 まったくクロノも大概に人がいいな。

「で、さっさと両手を使ったらどうだ?」
「フェイトを苦しめた私には母親の資格もないもの。
 フェイトの力にはなれないわ。それに病に侵されたこの身体じゃ長くはないわ。
 だから私を置いて行きなさい」

 俺の言葉に淡々と返すプレシア。
 プレシアの瞳には恐怖はない。
 ただ受け入れていた。

 それを表すかのようにプレシアの右腕に絡まる布と鎖は握られることなく、また左手もだらりと下げられたままであった。
 だがそれは

「また逃げる気か?」
「……なにを」
「フェイトを苦しめたから母親の資格がない? 病に侵されて長くない?
 ふざけるな。貴様が死ねば、フェイトは悲しむんだぞ。
 そんなこともわからないのか、プレシア・テスタロッサ!!」

 俺の言葉に目を見開くプレシア。

「フェイトを苦しめたと後悔があるなら償えばいい。病は俺がどうにかする。
 諦めるな! フェイトを娘と思うなら、後悔があるならば足掻いて見せろ!!」
「……そうね。また逃げようとしていたのね、私は。
 もう逃げない。長くは一緒にいられないのかもしれない。
 それでも、例え短い時間でも私が出来る精一杯の事をする!」

 プレシアの右手が、そして左手も上に伸ばされ布と鎖を掴む。
 生きようと足掻くプレシアに笑みが零れる。

 プレシアが生きようとしている。
 プレシアが戻ってくるのを待っているフェイトがいる。
 そして、俺が無事に戻る事をなのはが信じている。

 だから俺も絶対に諦めない。

 まずはプレシアを引き上げるのが最優先。

 周囲に視線を向けると
 近くにまだ崩れていない足場があった。
 そこにはまだ亀裂も入っていない。
 あそこならいける。

「プレシア、あそこに投げるからうまく着地しろ」
「わかったわ」

 俺の視線を追い、場所を確認したプレシアが頷く。

 両手で布と鎖を掴み直し、不安定で痛みを発する身体を捩じり、プレシアを足場と逆の方向に振る。
 振り子による勢いと腕の力でプレシアを投げると同時に布と鎖を霧散させる。

「っ!」

 足場に倒れるように着地するプレシア。
 その光景に安堵のため息を吐きつつ、身体に絡む鎖を順々に消していき、俺自身もプレシアのそばに降り立つ。

 一息つけると思ったらさらに振動が大きくなる。
 まずい!

「クロノ君、士郎君、急いで!! 天井が崩れるよ!!」

 エイミィさんの悲鳴のような声と共に映像が現れる。

 急ぎたいのだが、病魔に侵されたプレシアはもはや走る事も出来ない。
 プレシアを俺が抱きかかえればいいのだが、俺自身の身体の修復がまだである。
 それに確認しないといけない事がある。

「クロノ! 先に行け!」
「だがっ!」
「俺のスピードなら追いつける! 行けっ!」

 俺の言葉に歯噛みするクロノ。
 だがそれもわずかな時間。

「信じてるからなっ!」

 貸していたオハンを俺に投げ返し、アリシアの入ったポットにバインドだったか、拘束魔法を使って抱きかかえ飛んでいくクロノ。
 クロノの投げたオハンを左手で掴み取り、ジュエルシードを睨む。

 どうやらクロノには俺の身体の骨が折れたのは気がつかれなかったようだ。
 その事に一安心しながら、自分の右手を確認するように握る。

 問題ない。十全ではないがほぼ修復している。
 あと一分もあれば肉体は完全に修復できる。

「エイミィさん、リンディ提督に繋いでくれ」
「そんな場合じゃないよ!! もう」
「頼む。確認しなければならない事がある」
「もうっ!」

 頭を抱えるエイミィさんがため息をつき、ものすごい勢いでパネルを操作するのが映像越しでもわかる。

「士郎君? どうしたの、早く脱出を」
「確認します。このままジュエルシードを放置すればどうなりますか?」

 俺の問いかけにリンディさんの表情が固まる。
 それだけで答えがわかった。

「このままジュエルシードを放置すれば俺達の世界が消える。
 間違いないですね」
「……ええ、そのとおりよ」

 申し訳なさそうに言葉を紡ぐリンディさん。
 嫌な予感ほどあたるというがその通りだな。

 輝きを増し、魔力をどんどん増していくジュエルシードを見つめる。

「まったくケリをつけるとはいえやり過ぎだな。
 悪いが少々付き合ってもらう事になるぞ、プレシア」
「それは否定しないし付き合うのは構わないわ。けど本気?」
「ああ、アレを止める」

 これが完全に解き放たれれば地球は消える。
 そうなれば幾多の命が失われる。
 勿論その中にはなのはの帰りを待つ高町家の方々やすずかやアリサ達もいるのだ。
 それを目の前にして逃げるなんて選択肢は初めからない。

「あなたがいなければ私はフェイトのところまで行けないのだから信じてるわよ」
「ああ、ならばその期待に応えるとしよう」

 プレシアの意外な言葉に一瞬固まるが、笑みを浮かべて返事をする。

 その時、左手に持つオハンが金切り声を上げた。
 オハンが声を上げるという事は自身に危険がせまるという事、だがジュエルシードではない。
 これが反応したのは

「上か!!」

 カラドボルクを使ったせいか、それとも振動で限界を迎えたのか。
 破滅の咆哮を上げるように俺達に向かって天井が落ちてきた。




side リンディ

 アースラの中に戻った私はすぐにクロノやなのはさん達の状況を確認する。
 なのはさん、フェイトさん、アルフさんは脱出準備をするユーノさんの所にもうすぐ到着する。
 クロノもアリシアさんを抱えて、出口に向かってる。
 これなら間に合うわね。

 だけどもはや絶望的な位置にいるのが士郎君とプレシア女史。

 今すぐ脱出してもギリギリという時間。
 その時

「艦長、士郎君が確認したい事があると」
「この状況で!?」

 士郎君なら今の状況がまずいのはわかってるはずだ。
 この状況で確認したい事とは何なのか。
 まさか気がついたのだろうか?

 内心嫌な予感がしながらモニターを開く。

「士郎君? どうしたの、早く脱出を」
「確認します。このままジュエルシードを放置すればどうなりますか?」

 問いかけは素早く、簡潔だった。
 その問いかけに私は表情を崩してしまう事で応えてしまった。
 士郎君は

「このままジュエルシードを放置すれば俺達の世界が消える。
 間違いないですね」
「……ええ、そのとおりよ」

 もはや手の施しようのない状況に気が付いていた。
 そして、私の表情で確証を得てしまった。

 事実ディストーションシールドを展開して可能な限り次元震を抑えていた。
 だけどジュエルシードが暴走しようとしている今、その効果は抑えていた分次元断層が起きるのを先延ばしにしただけにすぎない。

 士郎君は輝きを増し、魔力をどんどん増していくジュエルシードを見つめる。
 そんな中で

「まったくケリをつけるとはいえやり過ぎだな。
 悪いが少々付き合ってもらう事になるぞ、プレシア」
「それは否定しないし付き合うのは構わないわ。けど本気?」
「ああ、アレを止める」

 世間話をするかのような軽い口調でそんな事をいう。
 これはそんなレベルの話じゃない。
 そうだというのに

「あなたがいなければ私はフェイトのところまで行けないのだから信じてるわよ」
「ああ、ならばその期待に応えるとしよう」

 士郎君は余裕の笑みすら浮かべている。
 その時士郎君が持つ黄金の盾が金切り声を上げる。

 その声に応えるように一気に亀裂が奔り崩れ落ちる天井。

「士郎君!!」

 咄嗟に叫ぶけど

 私の声はもはや遅すぎた。

 崩れ落ちた瓦礫にサーチャーが呑まれたのか士郎君とプレシア女史の映像が消えた。

 モニターには何の映像も映し出されず、ただ砂嵐と砂嵐のノイズだけがブリッジに響き渡っていた。 
 

 
後書き
今週も何とか無事に更新。

時間の関係で一話だけですが。

そしてオリジナル宝具
叫び伝える黄金警鐘(オハン)
 ケルト神話の盾で4本の黄金角と4つの黄金の覆いが特徴。
 持ち主に危機が迫ったときに金切り声を叫びその危機を知らせるといわれている。
 持ち主のクルフーア王がフェルグスと戦った際はカラドボルグの一撃を受けても盾は無傷であったいわれる。

 にじファン時代のオリジナル宝具の一覧も近いうちに公開します。

 それではまた来週

 ではでは 
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