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幻想の運び屋外伝 天覇絶槍が幻想入り

作者:アーミー
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第一部
出会い編
  第四話 幸村、初めての遭遇の巻

 
前書き
2か月以上更新できずに申し訳ありませんでした。最新話です!どうぞ! 

 
  幸村サイドイン

 俺は今、首に手ぬぐいを掛けて動きやすい服装をしている。
 先日、霊夢から条件付きで神社の周りへ外出することが許された。どうやら魔理沙殿が説得してくれたみたいだが…なぜ霊夢殿は顔を赤くされていたのだろうか?
 それは兎も角、その条件と言うのが…
「なぁ幸村~、朝早くないか?」
「何を言うか魔理沙殿。俺にとって、これくらいの早起きは当たり前ですぞ!」
「それは幸村視点からだろ~。まだ明け方だぜ?」
 そう魔理沙殿の監視付きだ。俺が外出する日時を魔理沙殿に伝えて、その時間帯に魔理沙殿が来るまで待機。彼女と合流したら外出できる。尚、行先は必ず霊夢殿に伝えることだ。
 細かく決められたが霊夢殿曰く、『幸村が妖怪に襲われても対応できない可能性があるじゃない。現に弾幕や武器が無い今の状態じゃ逃げることしかできないからよ。』とのことだ。
 霊夢殿が心配してくださるのは有難いが、俺とて無駄に死線を潜り抜けてはおらん! といつもの俺なら言う所だが、確かに戦う術がない今の俺は妖怪からしてみれば只の赤子に過ぎぬ。
 だから、自分一人でも対処できるような力が得られるまで、霊夢殿のいいつけを守ると決めたのだ。
「それでは魔理沙殿、一緒に参ろうぞ!」
「って俺は一緒に走らないからな…」
 そう言って魔理沙殿は箒に跨り宙に浮いた。魔理沙殿曰く、〝まりょく”なるもので浮かんでいるらしい。俺にはさっぱりわからぬが……


「ところで幸村、今日はどこまで行くんだっけ?」
 神社の階段を駆け下り、左右の道に分かれるところまで来たところで魔理沙殿が尋ねてきた。
「霊夢殿には〝霧の湖”と言うところまで行くと伝えてありもうす。」
「霧の湖か…なら右だな。」
「右か、わかった!」
「っていきなり走るな! って速っ!」
 俺は右に向かって全速力で走る。久しぶりの走り込みに熱くなってきたぞ!
「うおおおおおおおおおおぉぉぉっ!熱血うぅぅぅうぅぅぅうううう!」
「ちょ、おま、速い! 速いって~!」
 俺の後ろを魔理沙殿が追いかける。が、そんなことは気にせず、嘗て(かつて)上田城付近で走り込んだ記憶を思い出す。
「(このように走れるとは…なんと楽しいことか!)」
「ま、待て~! 速いって!」
「これくらい普通普通!」
「んなわけないだろ~!」


半刻後…

「おお! ここが〝霧の湖”か! なんと美しい眺めだ!」
 霧の湖とやらに着くと、そこは霧に覆われているが、朝日が差し込み幻想的な風景を生み出していた。
「ハァ…ハァ……ゆ、幸村…先行するなよ…霊夢に怒られるぞ…ヒィ……」
 霧の湖に見とれていると、魔理沙殿がゆらゆらと揺れながらこっちにやってきた。
「? 魔理沙殿? 何故息が切れているのか? 箒に乗ったままでは息が切れることはないと思うが?」
「幸村が速すぎて無駄に魔力使ったからだよ! 移動するにも地味に疲れるんだよこれ!」
「う…それは失礼した…以後気を付けまする……」
「ならいいんだけど……」
 そう言って魔理沙殿は近くの木陰に座った。
「と、とりあえず休憩~~」
「なら俺は少し散策してくる。」
「あまり遠くに行くなよ~。霊夢に怒られるのは嫌だからな~。」
「しかと了解した。」
 そして魔理沙殿はかなり疲れたのか、目を閉じてすぐに寝てしまった。
 無理をさせすぎたか。次からは相手に合わせないとな……
 そう心に決めた俺は湖の淵を辿りながら散策を始めた。


 暫く散策すると、急に辺りが冷えて暗くなってきた。
「おかしい…まだ朝だから暖かくなるはずだが…?」
 嫌な予感がするので、魔理沙殿の方へ戻ろうとしたときだった。
「!」
 俺の後ろに何かが通り過ぎ、地面に刺さる音がした。
「もしや妖怪か!?」
 そんなに魔理沙殿から遠く離れていない筈なのに…急いで戻らねば不味い!
 そう考えている間にも辺りが徐々に暗くなってくる。
「くぅ!」
 俺は自らの勘を信じて一直線に走る。何度も木の枝や根っこにぶつかるが、そんなの気にしている暇はない。相手が判らぬ以上、逃げるしか俺に残された術はないのだ。


  幸村サイドアウト

  魔理沙サイドイン


  ヒューン…ゴスッ!
「いでぇ!? な、なんだ! 妖精の悪戯か! それとも妖怪の襲撃か!?」
 辺りを見渡すが何もいない。手元を見ると赤い果実が落ちていた。
「何だ、これが落ちてきただけか…」
 魔理沙はまた寝ようとして目を瞑ろうとした。
「……なんか寒いな? 〝アイツ”の仕業か?」
 辺りがなんだか寒くなってきた。また〝アイツ”だろうと予想を立て、立ち上がって辺りを見渡した。
「ん? あれは…?」
 ある一点が暗くなっており、なんか移動している。
「ってこっちに向かってるぅ!?」
 その一点がこっちに向かってきた。と、よくみるとその暗い所から赤い人影が見えた。
「あれは…幸村か!」
 辺りが寒いこと、移動する黒い点、そして逃げてくる幸村。
「やっぱあいつらか!」
 アイツらだと確信した魔理沙はポケットからあるものを取り出し、黒い点の中心へ向けた。
「幸村ぁっ! 伏せろぉぉぉっ!」

  魔理沙サイドアウト


  幸村サイドイン

 勘だけで走ること少し、偶然にも林を抜け、視界が開けるとそこには魔理沙殿が何かを持ってこっちに向けていた。
「幸村ぁっ! 伏せろぉぉぉっ!」
 すると、魔理沙殿が持っている物に光が集まる。俺はすぐに地面に飛び込むように伏せた。
「恋符『マスタースパーク』!」
 伏せたと同時にバチバチッと音がしたと思うと、物凄い轟音とともに俺の頭上を何かが通り過ぎていった。それは大量の光だった。
 暫くして、光が止むと魔理沙殿が駆け寄ってきた。
「大丈夫か、幸村!?」
「俺は大丈夫だったが、先ほどの光は……?」
「その説明は後だ、後ろを見な。」
 俺は立ち上がって魔理沙殿の言うとおりに後ろを向くと、二人の少女が目を回しながら倒れていた。
女子(おなご)が何故?」
「さっき幸村を襲っていた犯人だよ。まぁ、襲ったというより悪戯した犯人だな。」
「な、なんと!」
 まだ十歳近くの女子が俺を襲っていたとは……
「……ん? 魔理沙殿、あの空色の女子の背中に何かがついているようだが……?」
 よく見るとそこには、氷の結晶で作られたようなモノが女子の背中に生えている。
「あぁ、アイツはチルノ。ここいらに住んでいる妖精だよ。」
「よ、ようせい?」
「で、その隣にいるのはルーミアだぜ。」
「ま、魔理沙殿。ようせいとは一体なんなのだ? 妖怪とは違うのか? それに先ほどの光は何なのだ!?」
「順番に話すからちょっと落ち着け。先ず、妖精って言うのは自然から発生するもので、自然が無くならない限り不滅、つまり何度でも蘇るんだ。でも、逆に自然が無くなると妖精も消えてしまうんだ。」
「つまり……自然と一緒に過ごしている存在、という見解でいいのか?」
「まぁそんなもんだな。それと、妖精は大の悪戯好きさ。あ、ルーミアは本物の妖怪だぜ。」
「なるほど。では、先ほどの光は?」
「それはこれのおかげだぜ。」
 すると魔理沙殿は八角形の物体を取り出した。
「これは〝ミニ八卦炉”っていう俺の宝物だぜ。これで撃ったんだ。」
「これが…?」
 見た様子、そんな凄い物には見えないのだが……
「これを撃つときは精神を集中させ、優しく八卦炉に呪文をかける。にっくきターゲットを狙って放つのは恋の魔法! それがさっき放った光さ。」
「よく分からなかったが、何となく分かったぞ!」
「それどっちだよ……」
 すると”ちるの“と呼ばれた妖精が先に起き上がった。
「う~~、思いっきりやられた~。何だよ何だよ、ただ悪戯しただけなのにスペルカード撃ってくんなよ!」
「悪戯してきたチルノとルーミアが悪いぜ。」
「むぅ~! って誰だこいつ?」
「自分が悪戯していた奴を忘れんなよ……」
 小声で魔理沙殿が何かを呟き、妖精ちるのが俺を指さしてきた。
「某、真田源治郎幸村と申す。」
「??? 名前……どれ?」
「幸村、言い忘れていたけど妖精ってだいたいバカなやつらが殆どだぜ。」
「魔理沙! バカって言うな!」
「じゃあ一足す一は?」
「二だよ、そこまでバカじゃないもん!」
「じゃあ五引く三は?」
「………………………………二?」
「長い間だったけど正解だな。」
「だからバカ扱いするな!」
「じゃあ五かける六は?」
「……………………?」
「やっぱバカじゃん。」
「ま、まだ習ってないだけだもん!」
「魔理沙殿、苛めてはならぬぞ。」
 あまりにもちるのがかわいそうだったので止めてやった。
「むぅ……でもなぁ」
「なに、子供は遊ぶのが一番。そなたらは寂しくてつい俺に悪戯をしただけであろう?」
「う、それは……」
「それに、先程の問いは俺も分からなかったからな。」
「……え!」
 突然魔理沙殿が俺を信じられない者を見るような眼で俺の方を向いた。
「? どうした、魔理沙殿?」
「いや、なに気にしなくていいぜ(あれ? 幸村って思っていたよりチルノ並に……バカか?)」
 今、もの凄く不愉快なことを思われた気がするが・・・気にしないでおこう。
「こうなったら……」
 と、ちるのは急に空へ飛び上がった。ついでに”るーみあ“という妖怪も一緒だ。
「そこの紅い奴! あたいと勝負だ!」
「はあぁぁぁっ!?」
 突然の申し出につい声を上げて驚いてしまった。
「ちょっと待てチルノ! 幸村は幻想郷に着てまだ日が浅い。弾幕ごっこなんてこいつには出来ないぞ!」
「あのー魔理沙殿? “だんまくごっこ”とはいかがなるものか?」
「ほら、幸村だって弾幕ごっこは知らない……って霊夢から弾幕ごっこの事を聞いていないのか!?」
「うむ、一度も聞いてはおらん。」
「(だから霊夢は幸村を外に出さなかったんだな……なら、どうして教えなかったんだ? ここに住む以上、弾幕ごっこのルールは教えなきゃいけない筈。なのに、何故……?)」
「魔理沙殿? だんまくごっこ、というのは一体?」
「あ、あぁ。弾幕ごっこな。まぁそれを先に説明するよりスペルカードルールってやつを先に説明しないとな。」
「“すぺるかーどるーる”?」
「スペルカードルールっていうのはここ幻想郷内で起きた揉め事や紛争を解決するための手段で、人と妖怪が対等に戦う場合とか強い妖怪同士が戦う場合、必要以上に力を出さないようにするための決闘のルール、規則さ。」
「して、弾幕ごっことやらは?」
「弾幕ごっこっていうのは、霊夢が人と妖怪の力量を埋めるために考案されたスペルカードルールに基づいたもので相手を殺すための戦いじゃないんだ。具体的にはわざと隙間が作られていて、それを避けることができる弾幕を放っているんだ。こっちは本来の〝命を賭けた妖怪退治”を擬似的に再現したものだから“ごっこ”ってついているんだと思うぜ。」
「要するに、妖怪と人が対等に対決できる規則でいいんだな?」
「まぁそんなところだ。」


「話は済んだ?」
「うむ、待たせた。」
 魔理沙殿の説明を聞き、ちるのの前に立った俺は彼女を視界に捉える。
 ちるのは地面に降り立ち、腕を組んでいた。るーみあという女子はちるのの後ろで見ている。
「弾幕ごっこが初めてなら、そうだなぁ……あたいが一枚のスペルカードを放つから、幸村、だっけ? 全部避けるか、あたいに触れたらそっちの勝ち。もし一発でも当たったらあたいの勝ち、でいいよな?」
「分かった。」
「それじゃあいっくよー! 氷符『アイシクルフォール』!」
 ちるのが何かを宣言すると、彼女の周りから矢じりの形をした氷の塊が出現し、俺に向けて放ってきた。
「うおっ!?」
 摩訶不思議な減少に驚く俺だが、身を反らすことで躱せた。
「どんどんいっくよー! そぉれっ!」
 先ほどより多くの氷の塊が出現する。
「気合いで避けるだけだ! うおぉぉぉっ!」
 次々と放たれる氷の塊を気合いだけで避けていく。しかし、見たこともない現象に驚愕し身体が追い付いてゆけず、寸前のところで避けることが何回もあった。
「幸村! 弾幕をよく見るんだ!」
 その時、離れてみていた魔理沙殿が声を上げた。
「殆どのスペルカードにはちゃんと一定の動き方が存在するんだ。その動きを見極めるんだぜ!」
「動きを、見極める……」
「それと幸村が勝つためには全て避ける必要はないだろう?」
「……触れれば俺の勝ち、か。」
 魔理沙殿の助言を聞いて、ちるのが宣言したスペルカードの動きを見た。
「そぉれ! もういっちょっ!」
 ちるののすぺるかーどである〝あいしくるふぉーる”とやらは、先ず彼女の横に氷の弾幕が発射され、その後に向きが変わり、その弾幕がこちらに向かってくる。
「(まずは敵情視察だ)」

 何回かちるののすぺるかーどを観察しながら避けていた、そしたら……
「…………そこか!」
 ようやく見つけたのだ。弾幕が殆ど来ない空間。それはちるのの〝真正面”だった。
 後はそこへ向かい、ちるのに触れれば俺の勝ちだ。
「どうした幸村! あたいの弾幕に腰を抜かしたか?」
 弾幕が一旦止み、ちるのが次の攻撃に備えている途中に話しかけてきた。
「……なに、そなたの動きを見破っただけでござるよ?」
「はぁ!? そんな簡単に見破られるものか!」
 俺の挑発に乗ったちるのは弾幕を放ってきた。先ほどより弾幕の数が多いが。
「もう見切ったぁぁぁっ!」
 ちるのの氷の弾幕が放たれる。その瞬間に俺は走り出す。
「なにぃ!?」
 予想外の行動に驚くちるの。俺はそのまま走って彼女に近づいていく。
 彼女との距離まであと少し。だが、それと同時に両脇から弾幕が迫ってくる。
「うおおおぉぉぉぉっ!」
 あともう少しで彼女に触れる。そう思いながら右手を前に突き出した。



「…………」
「…………」
 俺の目の前には驚いた顔をしたちるのの顔がある。
 ちるのの放った弾幕は俺に当たらず、突き出した右手はちるのの肩を掴んでいた。
「俺の勝ち、だな。」
「…………」
 茫然としている彼女から手を離した。
「初めてな割にはやるじゃん! すげーな幸村!」
 魔理沙殿が笑顔で近づいてきた。
「魔理沙殿のおかげだ。」
「え?」
「あそこで魔理沙殿の助言を聞いていなかったら、きっと攻略方法が見つからなかったからな。」
「そ、そうかな?」
「あぁ! 助かったぞ魔理沙殿! この借り、必ずや返すぞ!」
「お、おう。そうか、でも借りを返すってそんな大げさな……」
「おい! 確か幸村って言ったな!」
 魔理沙殿に感謝の意を示していると、ちるのが大声を上げて俺に話しかけてきた。
 後ろを向くとるーみあと共に腕を組みながら宙に浮いていた。
「こ、今回はあたいが手加減したから幸村は勝ったんだからな! 勘違いするなよ!」
「うむ、俺もまだまだ精進する所存だ。」
「……〝しょうじん″とか〝しょぞん″って意味分からないけど、次は本気を出してやるからな! それまでちゃんと弾幕ごっこができるようになっとけよ! いいな!」
「ああ、約束するぞ!」
「! わ、わかったならそれでいいんだ! じゃあな!」
 そう言うと二人は俺たちに背を向けて霧の湖の向こう側へ行ってしまった。
「……さて幸村、そろそろ帰ろうぜ? 霊夢が心配すると思うぜ。」
「それはどういうことだ?」
「もう朝飯の時間過ぎてるぜ。」
「もうそんな時間か! 急がねば飯抜きにされる!」
 魔理沙殿に時間を知らされ、急いで走り出す。
「って俺を置いてくなよー!」
 

 この後、二人は遅くなった事に対して、霊夢に叱られたのは言うまでもない。
 
 

 
後書き
次回、幸村は霊夢と共に食器の買い出しに行くため香霖堂へ訪れる。そこで初めて幸村は自分以外の同性と出会う。
「幸村、香霖堂の店主と会うの巻」 
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