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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/未来パラレル編
  第27分節 おわる侵略



 “呉島碧沙が死んだのにシアワセになった自分が許せない”


「ヘキサ、死んだ、のに……?」

 戒斗はしなやかな指で遠くを差した。吊られて咲も鎧武もその方向をふり仰ぐ。

「説明しろ、と言ったな。教えてやる。俺は号砲を鳴らしに来た。今からヘルヘイムの最後の侵略が始まる」


 途端、地面が揺れ始めた。


 咲は立っていられず尻餅を突いた。

 ユグドラシル・タワーだ。タワーの外壁がどんどん剥がれていっている。剥がれた壁面から伸びるのは、タワーに寄生した大樹の木肌。

 ヘルヘイムの大樹が急激に成長し、ユグドラシル・タワーを突き破ったのだ。

 生い茂る枝は丸い天蓋を次々と突き破る。大樹の梢に覆われたスカラーリングが、雷ほどもある電磁を走らせ、粉々に砕けた。




 ようやく地揺れが治まって、鎧武に肩を掴まれても、咲は立ち上がることができなかった。目の前で起きた現実がショッキングに過ぎた。

「あの樹は育ちきって咲けば“種”を飛ばす。地球でない星、あるいは異界にな。今度は地球がヘルヘイムの森に成り替わり、どこかの世界を侵略するわけだ」

 くっく、と。戒斗はまるでその瞬間が楽しみだといわんばかりに笑いを零した。

『これが……これがお前の望んだ“強さ”か! 戒斗っ!』
「そうだ。人間の限界を超えて世界を屈服させる強さ。俺はずっとそれだけを求めていた」

 戒斗が自らの身を誇示するように両手を挙げると、再び彼の姿は消え、金色のオーバーロードがそこに立った。

『そして、手に入れた。全てを超越した支配者の力を!』

 咲は泣きたい思いで、けれど怪人から目を逸らせなかった。
 これが駆紋戒斗の行き着いた果ての姿。駆紋戒斗の偽りなき心が出した答え。

 咲は鎧武の手をほどいて、自らの足で立ち上がった。

「あの樹が種を飛ばすって言ったわよね。どうやったら止められるの?」
『咲…?』
『樹ごと燃やすか、倒して枯らすしかないな』

 握った手の平に爪が食い込む。――あんな大きなものに火を放てば街に飛び火するし、除草剤を撒けば街まで汚染してしまう。戒斗はそれを承知の上で答えている。

「分かったわ。じゃあこっから先は、」

 咲はドライバーを取り出して装着した。そしてパッションフルーツの錠前を開錠し、バックルにセットした。

「変身」

《 パッションフルーツアームズ  Time on the Bladedance 》

 黄熟した果実の鎧が装着され、咲をアーマードライダー月花へと変える。
 時計草のモチーフをあしらったライドウェア。両手に、時計の長針と短針のような双刃。

『あたしの個人的なやつあたりよ!!』

 双刃を両手に構え、月花は戒斗に向けて駆けた。 
 

 
後書き
 のっけからドラゴンフルーツでなくパッションフルーツに変身する辺りから咲の心情を慮って頂けると<(_ _)>

 ヘルヘイムの侵略は最終段階に入りました。地球はほぼ制圧完了、次のフェイズに移行しつつあります。地球だけでなくここではない異世界の危機――ここまで書くと作者が何をこれの元ネタにしたか分かる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
 戒斗がすっかりボスキャラ的位置にいるのですが、決戦の相手は戒斗ではないんだなこれが。 
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