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闇夜の兵士達 ~戦争の交響曲~

作者:SOP
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第1部
第1楽章 内乱
  第2話 開幕

 
前書き
3/16
修正を加えました。 

 
 連邦軍の車列が内務省国内軍に護衛されて進んでいく。スラム街へと移動しているのだ。その中に山田絢一等軍曹の部隊もあった
 朝食の後、ブリーフィングで作戦の説明があった。今回、彼女たちの旅団に与えられた任務は、特別区の反政府武装勢力の殲滅だった。軍と内務省国内軍との、以前から続いていた叛乱鎮圧作戦の一つだ。
 反政府武装勢力の連中は元々、諸外国から日本に来た移民だ。大戦当初の混乱で被災した移民への支援に政府の手が回らず、戦略兵器によって壊滅した都市を特別区として、彼らをぶち込んだ。その為に、特別区の治安は急速に悪化し、複数の民兵組織が作り出され、それが、反政府武装勢力へと発展した。それと、政府側の民兵組織もある。
 これだから政治家は信用ならない……。絢はそう思いなが外を眺める。
 爆発と共に、新たな煙がスラム街から立ち上る。未確認情報ではあるが戦車も在るとの事。情報元は内務省だ。どうやら義父が情報を回しているらしい。
 一方、ブリーフィングでは、全く逆の事を言われていた。ただのゲリラ狩りで、相対する敵戦力は少数。武器はゲリラのお友達であるAKとRPGで、精々、迫撃砲がある程度、だそうだ。弾薬はNATOの物だ。内部に武器商人が入り込んでいるらしい。彼らに接触して武器を密売してもらう必要があった。最近は、後方での武器の横流しが横行している所為か、弾薬が回ってこない。
 状況としては、陸軍は西側、国内軍が東側から街へと突入しており、敵を駆逐している真っ最中だ。私達の属する大隊の任務は、友軍の確保したエリア―――もっとも、政府側民兵組織のテリトリーなのだが―――を保持する事だった。支援は狙撃小隊がエリアの高層建築物に潜み、その他の支援部隊も中心部からカバーしてくれる手筈だった。
 
 私達が来る前に、戦略爆撃機であるB-1R(ランサー)が、絨毯爆撃を繰り出しており、大戦で街は廃墟と化していたが、さらに酷くなっている。また、それに追い討ちを掛けるように砲兵部隊もフル稼働中だ。全く、無茶苦茶だ。

「もうすぐ安全地帯(グリーン・ゾーンだ)!
 ようやくこの鬱陶しい迫撃砲からおさらばできるぞ!」
 
 カーナビを見ていたであろう兵士がそう言うと無線から歓声が沸きあがった。友軍の確保している地点までの道のりは安全とは言いがたく、内務省国内軍が車列の護衛をしてくれたが、ルート付近では戦闘が続いていた。瓦礫だらけの道路を軽装甲機動車が駆け抜け、爆発で生じた破片が装甲を叩く。

「頭を出すなよ、餓鬼ども!
 危ない仕事は内務省の連中に丸投げだ!」

 絢はそう言いながら国内軍の部隊を観察する。市街戦に対応するために開発されたレオポルト2PSO戦車とBMP-T戦車支援戦闘車のそれぞれ2両が、通過する陸軍部隊を守るように、交差点に陣取り、交差する通りの向こうの敵に戦車砲と、機関砲で攻撃を始める。曳光弾が空気を切り裂き、砲弾の爆発が地面を揺らす。
 最近、レオポルト2PSO戦車をレオポルト2A7+戦車に更新する計画が進んでいるらしい。若い連中がこの動きを連邦軍と全面戦争する為の布石だと噂話をしていた。全く、馬鹿馬鹿しい話だ。
 その時、車列のそばを国内軍の2両のCV9040歩兵戦闘車に護衛されたAMV装輪装甲車が通り抜けた。その車体には赤十字が描かれている。そう、戦場救急車だ。誰かが負傷したのだろう。もしくは戦死したか……。

「良く見ておけ。油断すれば誰でもああなるんだ」

 三村俊也少尉がそう言うと、沈黙が流れた。誰もが自分の死を想像したのだろう。絢は、私は楽に死ねそうに無いな、と微かに自らを嘲笑した。
 車列は硝煙の漂う、安全地帯(グリーン・ゾーン)と呼ばれるエリアへと入った。
 安全地帯(グリーン・ゾーン)中心部では、数多の車両が止められ、兵士達が歩き回っている。どうやら迫撃砲が降ってこようとも、銃弾に曝される事はないようだ。
 そう思いながら山田絢一等軍曹は軽装甲機動車から降りた。小隊の車列を止める場所を聞くためだ。他の小隊は別の地区の担当だ。

「第1301部隊のb-02分遣隊だ。仕事に来た」

 絢がそう言うと、一人の兵士が近付きこう言った。

「ようこそ、地獄のバカンスホテルへ!
 あちらのホテルの裏に止めてください!!」

 その兵士が指差した方向を見れば廃墟と化したホテルの傍らに道があり、誘導員と思しき兵士が立っている。

「分かった。兵士を下ろしてくる」

 絢はそう言うと車列へと戻り、無線のチャンネルを小隊の周波数にする。

「運転手以外、全員を下車しろ。髪の毛一本忘れるなよ!
 車両はホテル廃墟に居る誘導の兵士の指示に従え!
 さぁ、動け。さもなくば、私から貴様らのケツに一発くれてやるからな!!!」

 その言葉と共に兵士達が一斉に車両から飛び出した。皆、顔が真っ青だ。その時、何かが風を切る音が響いた。

「伏せろ!!」

 誰かの悲鳴のような叫びが、騒音に包まれた世界に響き渡る。絢は咄嗟に地面へと身体を投げ出した。
 爆発。重苦しい爆音が絢の鼓膜を揺さぶり、焼けた金属の匂いが鼻を衝く。そしてロースト・ビーフのような肉の焼ける匂いと新鮮な血の匂い。
 
「クソッタレ、誰か来てくれ!」
「おい、しっかりしろ!!」
「衛生兵!!」

 兵士達が傷ついた仲間の為に衛生兵を呼ぶ声が周囲に響き渡る。だが、死に瀕して、助けを求める声には遠く及ばない。
 絢は起き上がると、9mm拳銃を引き抜き、もう助からない兵士の下へと歩み寄った。彼女の目は冷たく凍っていた。

「軍曹、手伝って―――『パン!!』―――エッ?」

 重傷者の傍らに居た兵士が絢に手助けを頼もうとした時、銃声が響き渡った。呻き声を上げていた負傷者が沈黙し、彼女の持つ拳銃の銃口から、白い煙が伸びていた。

「助からない兵士は射殺しろ。それが苦痛から救ってやれる最後の手段だ」
「一体どういう事ですか、一等軍曹!!
 まだ、後方に送ってやれば助かるかもしれないじゃないですか!!」

 若い兵士が絢に猛然と抗議する。補充で来た新兵の一人だ。

「後方に送る間にどれだけの時間が必要になるのか分かっているのかね?
 それまでにはこいつは死んでいた。苦痛を無くしてやる事が、我々の唯一できる戦友への手向けだ」
「で、ですが!!」
「君は上官の命令に反抗するかね?」
「クッ……」
「Yesか、Noか?
 さぁ、どっちだね?」
「………はい……」
「よろしい、さぁ、仕事を始めたまえ」

 絢がそう言い終ると、周囲に短い銃声が何度も響き渡った。それと共に重傷者の呻き声が消えていく。

「第2分隊は動かせる者を臨時救急所へと連れて行け。第3分隊は死傷者の装備は剥ぎ取って、臨時の死体安置所に送って来い。残りは我々に続け。このエリアの戦闘司令部(CP)へと向かうぞ。状況を掌握する」
「了解」

 三村隼也少尉がそう言うと分隊長の一人が返事をする。残りの兵士もバラバラと動き出したその時、彼の無線機に通信が入った。彼は兵士達に背を向け、無線を繋ぐ。

CP(コマンドポスト)よりb-02へ。聞こえるか?】
「こちらb-02。どうした?」
【b-02。早速だが、問題発生だ。エリア外延部のストーン5-6から敵と交戦している、との連絡を最後に通信が途絶えた。至急、確認に向かえ】
「了解、現状はどうなっている?」
【敵部隊が前線を押し上げてきている。幾つかの部隊から通信が途絶えている。注意したまえ。
 なお、HQ(ヘッド・クォーター)は戦術機甲部隊を投入する事を決定した。あの貧乏性な司令部(HQ)がだ。これは尋常じゃない。嵐になるぞ、02】
「了解。直ちに現場へと向かう。02、アウト」

 三村の顔は段々と曇り、最後には深くため息を吐いた。その様子を見た絢は彼に尋ねる。

「どうでしたか、少尉殿?」
「問題発生だよ、軍曹」

 三村の答えに絢は頭を振った。全く、何時も通りの最悪の日だ。

「またですか……。どうせ敵が反撃を開始したとの事でしょ?」
「その通りだ。司令部は戦術機甲部隊を送り込むようだ」
「それで片付けば良いのですが……。で、目的地は?」
「ストーン5-6だ。通信が途絶えたらしい。全滅してなければ良いが……」
「捕虜の人権は在って無い物ですからね。急ぎますか」
「ああ。もう間も無く“処理”も終わるだろうからな」

 三村はそう言いながら振り返った。そこには大破炎上した車両と、血に濡れた路面。袋に収まった僅かな死体だった。負傷者を優先して搬送したらしい。そして数少なかった死体も後方へと送られていく。その傍らを国内軍のレオポルド2PSO戦車を装備する戦車小隊が通り過ぎていった。


 国内軍戦車小隊を率いるその男は緊張していた。彼にとって中尉に昇格し、自分の小隊を持って初めての本格的な実戦だった。
 小隊が陸軍の歩兵部隊―――つまり、三村隼也少尉や山田絢一等軍曹の小隊―――の傍らを通った時、これが実戦だと改めて実感した。飛び散った肉片、地面へと広がる赤い海。それを陸軍の歩兵達は黙々と片付けている。
 俺には出来ないな、と男は思いながら額の汗を戦車の中で拭った。“6年前”のあの事件を思い出したのだ。初めて参加した任務。“覆る事のない(ことわり)が歪んだ”あの惨劇。
 
「――か―し―――さ―――尉――尉殿?
 あ――もう――。中尉殿!」
「あっ、あぁ、すまない。どうした?」
「どうした、じゃありませんよ……。ボケッとしてないで周囲を警戒してください!」
「すまん。昔を思い出していた。6年前の忘れ去りたくても忘れ去る事の出来ない物を、ね……」

 その男の言葉は車内の空気を“殺し”た。静寂が世界を覆い包んだような感じだ。だが、戦闘は続いていく。男は任務を心の中で再確認したこの部隊の任務は“火消し”であり、千切られそうになった防御線を繋ぎとめる事だった。もっとも、鏃を務めている部隊も居るが。
 防御拠点に近付くごとに戦闘音が激しくなっていく。銃声と爆音だ。まだ、悲鳴は聞こえない。

「全車、戦闘準備。視界が悪い。突発的な戦闘に注意しろ。」
【【【了解】】】

 火災による煙が酷い。赤外線映像が無ければ戦闘は困難、と言うほどではないが、きつい物だ。

「廃棄された車両に注意。慎重に乗り超えて行け」

 赤外線映像で確認できた自動車を、エンジンの馬力に物を言わせて乗り越えていく。いや、ここは重量に任せて踏み潰している、と言った方が適切だろう。
 金属が軋む音がエンジンの騒音の中で響き渡り、履帯がアスファルトで舗装された道路―――とは言っても整備されておらず、劣化してボロボロだが―――を抉り取る。
 小隊の先頭―――2号車が交差点を左折した時、その車両の左翼で爆発が起きた。破片がレオポルド2PSO戦車の装甲を叩く。

接触(コンタクト)!
 友軍が戦闘中、交戦します!!】
 
 先頭車両からそう無線が入り、120mm滑腔砲から多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)が放たれ、拠点の向かいに着弾する。そのまま2号車は車体を敵の方向に向けた。

「2号車はこちらが展開するまで援護射撃。残りは我に続け!」
【【【了解!】】】
「前進!」

 男の掛け声と共に彼のレオポルドPSO戦車が前進する。2号車の陰を抜け、道路の中央に躍り出た。防御拠点では必死に友軍の兵士が応戦しており、その向こうでは雑多な火器で武装した民兵達があらゆる所で攻撃してきた。砲塔に搭載された同軸機銃が応戦し、曳光弾が空間を走り抜ける。瓦礫に弾痕を残すが、撃ち抜けない。
 男は装填手用ハッチの後方に取り付けられた遠隔操作式銃座(RWS)を操作し、それに取り付けられたM2重機関銃でコンクリートを粉砕し、敵をミンチにする。後続の車両も展開を完了し、攻撃を開始する。砲弾が遮蔽物を吹き飛ばし、銃弾が路面を叩く。

「横列隊形を組んで前進。拠点まで進め!!」

 中尉のその言葉と共に、戦車小隊は進み始める。人の歩く速さとほぼ同じスピードでゆっくりと、だが確実に、だ。
 時折、対戦車擲弾発射機(RPG)を発射したと思われる煙と共に、ロケット弾が地面へと着弾し爆発を巻き起こす。部下の戦車が、敵が撃ってきたと思しき場所に砲塔を向け、徹底的に砲弾を叩き込む。その場所を特定するのは実に簡単だ。後方噴射炎(バックブラスト)を見つけ出せば良いのだから。 

「シアン2-1よりストーン3-2。聞こえるか?」
【こちらストーン3-2。待ちくたびれたぞ、2-1!
 直ちに敵を排除してくれ。これ以上は持ち堪えられそうに無い!】
「了解、掃討に移る。2、4号車は前進と後退を繰り返せ。敵を疲弊させるんだ。本車と3号車はそれを援護する!
 有らん限りの弾薬を撃ちまくれ!!」

 その号令と共に2匹の巨大な鋼鉄の獣は前進を始めた。それと共に反政府軍の攻撃が激しくなる。廃墟の中や影から銃撃してくるのだ。鬱陶しい事この上ない。
 その時、500m先の建物の屋上から敵が対戦車ミサイルを撃ち込んできた。白煙が空中に浮かび、戦車の上部装甲の付近で爆発する。イスラエルの開発したアクティブ防護システムであるトロフィーのレーダーがミサイルを探知し、回転発射機から散弾銃のバックショット弾のような金属製ペレットを射出して、ミサイルを撃ち落したからだ。
 使われたミサイルはM47ドラゴンだろう。通常のミサイルならば一直線に飛んでくるが、ドラゴンは構造上、左右に軌道がぶれる。

「11時方向、500m先の4階建てのビル屋上!」

 男の号令と共に120mm滑腔砲が咆哮し、建物の一部を吹き飛ばし、そこに歩兵の銃撃が集中する。兵士達は建物の壁に穴を開け、そこから銃撃しており、制圧射撃で敵を釘付けにした後、無反動砲を叩き込んでいく。
 だが、反撃もされる。ふとした瞬間、歩兵達が吹き飛ばされる。熱風と共に瓦礫などの破片が、彼らに襲い掛かるのだ。無残な物体が地面に横たわり、無事な兵士達が建物の中に重傷者を引き摺っていく。
 おそらく迫撃砲を使ってきたのだろう。短時間で展開可能な迫撃砲はゲリラ戦においてとても有利だ。

コマンドポスト(CP)、こちらシアン2-1!!
 敵が迫撃砲を投入してきた。歩兵部隊の損害が続出している。早く奴等を叩き潰してくれ!!」
不可能(ネガティヴ)だ。敵迫撃砲チームは逐次移動していて捕捉出来ない!
 無人機(UAV)の操作をそちらに送る。そちらで見つけ出して潰してくれ!!】
「了解……」

 男は悪態を吐きながらタッチパネルを操作する。画面には赤外線映像の白黒画像が現れた。操作する機体はMQ-9リーパー無人攻撃機。米軍など世界各国が使用している優秀な無人機だ。装備はヘルファイア対戦車ミサイルのようだ。
 画面いっぱいに廃墟の街が広がっている。所々で爆発と共に、黒煙が立ち上り、兵士達が銃撃戦を繰り広げている。男にはその様子が手に取るように分かった。
 だが、今の男にはそんな事は関係ない。ただ、迫撃砲部隊を潰すだけだ。その時、パネルがショッピングモールだった廃墟の裏側を映し出した。そこには数門の迫撃砲を撃ちまくっているゲリラ部隊を確認した。男は躊躇無く、その部隊にレーザーを照射し、ヘルファイア対戦車ミサイルを発射した。
 ミサイルは何の問題も無く、レーザーの照射されている場所へと向かっていく。そして、爆発。弾頭に詰められた爆薬が起爆し、爆風と共に熱せられた破片が周囲に飛散し、敵兵士達を切り刻む。
 男はそれを見ても何の感慨も持たず、無人航空機(UAV)コマンドポスト(CP)へと送り返す。 

コマンドポスト(CP)、こちらシアン2-1。迫撃砲部隊の排除を完了した。任務を続行する」
【了解、敵部隊にそこを突破されるな。奴等を叩きのめせ。コマンドポスト(CP)、アウト】

 男はそのまま、通信を切ると、小隊の指揮に戻る。幸い、大した変化は無いようだ。まぁ、相も変わらずもぐら叩きが続いているという事だが。
 その時だった。凄まじい金属音と共に車体が揺さぶられる。どうやら何かが戦車に直撃したようだ。モニターを覗くと、2両のMBT-2000戦車―――パキスタン軍の主力戦車であるアル・ハーリド戦車、もしくは中国製の90-ⅡM戦車と言った方が分かりやすいかもしれない―――が瓦礫のそばから姿を現した。その後ろからも同型の戦車が続いている。
 
【警報、正面に敵戦車、ウワッ!!】

 その通信が2号車の最後となった。爆音と共にレオポルド2PSO戦車が炎上する。ハッチが開き、兵士達が飛び出してきた。それを追う様に銃弾が走り抜け、戦車兵の一人が倒れる。撃ってきたのは敵歩兵のようだが、姿が見当たらず、逆に敵戦車が前に出てきた。

【クソッ、前進します!!!】

 逃げる仲間を援護するように、4号車が前進する。味方歩兵部隊も対戦車兵器で援護する。対戦車ミサイルが放たれ、敵戦車に直撃する。爆発がMBT-2000戦車を包み込む。だが、煙が晴れたとき、その戦車は健在だった。爆発反応装甲が防いだのだろう。装甲が焦げた程度しか変化が見られない。
 敵戦車が発砲し、味方の拠点が吹き飛ばされた。そのまま拠点が沈黙する。

「4号車、後退するんだ。1と3は奴の後退を援護する!!
 こちらシアン2-1。コマンドポスト!
 敵が機甲戦力を投入してきた。こちらは損害1.敵の損害は軽微だ。このままでは押し切られる!!」
【こちらコマンドポスト(CP)!
 状況が錯乱している。敵の大規模反攻だ。増援部隊到着まで持ちこたえろ!】
「ええぃ、了解しました!!」

 無線が何時の間にか、騒がしくなっていた。無線が混線し、広域データリンクの更新が遅延している。混乱という名の交響曲はまだ始まったばかりだ。
 
 

 
後書き
5,6話を統合しました。 
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