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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第11話「上位悪魔の加入」

―――フォカロルとの戦いから3日後………


―――【ヴァチカン"悪魔狩り連盟 ルークス・ソーリエ" 大聖堂】


アイリスら5人の悪魔狩り達は、フォカロルとの戦いの後、ヴァチカンに帰還した。
下位悪魔とフォカロルとの交戦報告のためだ。












「5人共、ご苦労様」

5人の目の前には、黒いトレンチコートを着た茶髪の男性が立っている。
「アルバート・ブラン」。5人の上官にあたる人物だ。

「アルバートさん、色々と報告があります」

パトリックが資料をアルバートに差し出した。しかし、アルバートは資料を受け取ろうとはしなかった。

「いや、資料は必要ない。君らの活躍を疑う余地はないからね。それより………」


「君らの後ろの彼についての説明が欲しいんだけど………」


5人の後ろには、フード付きのパーカーを着た青年………べリアルが立っていた。
アイリスは笑顔を浮かべ、クリスは苦笑い。パトリックはどう説明していいか分からないという表情を
浮かべ、アリシアは腕を組み苦笑いし、キリシマはただ無表情で待っている。

「ええっと、これは……ですね………」

「パトリック、報告役は君だ。ぜひ聞かせてもらおう………なんで上位悪魔を連れて来た?」

アルバートの無言の覇気に、パトリックはただただ気圧された。















―――3日前………


フォカロルとの交戦を終えた直後だった。
べリアルがアイリスの目の前に歩み寄って来た。

「………………………離れろ」

いつの間にかべリアルの真横に立っていたキリシマが、べリアルの首に日本刀を向けていた。
キリシマの眼は、悪魔に対する純粋な殺意に染まっていた。

「安心しろ、殺しはしない。話がしたいだけだ」

「……………………悪魔の言葉など信用できるか」

「キリシマ君、武器を下ろして」

アイリスは二挺の銃を既に地面に下ろしていた。それを確認したキリシマは、軋む勢いで日本刀を
握り締め、眼に宿る殺意を一層強めている。

「キリシマ君………お願い」



アイリスの言葉にキリシマは躊躇いを見せた。
しばらく刃を向けたまま考え込み、ようやく彼なりの結論が出た。


「……………………仲間に何かしたら、予告無しで切り刻んでやる……」

日本刀を鞘に納め、べリアルに殺意の込もった忠告を残し下がった。

「ありがとう、キリシマ君………」






「べリアルさん、私に話があるって言ってたけど……」

「あぁ、アンタに聞きたいことがあるしな」

「聞きたいこと? なんでも聞いて」

アイリスはべリアルに笑顔を向けて、べリアルの質問を待っている。
そんなアイリスに、べリアルは心底疑問を持った。


「アンタは…………なんで悪魔を憎まない? 悪魔狩りなのに、なんで俺の話を聞こうとする?」

「え?」

「俺が思うに、刀を持った奴の反応が普通だと思うんだがなぁ………」

その質問に、アイリスは悲しげな表情を浮かべた。


「私は、悪魔を憎んで悪魔狩りになったわけじゃないから………」

「どういうことだ?」

「生まれてきたのに憎まれて、憎まれるから人間を憎んで………優しい感情も壊れちゃった………
そんな悪魔を………私は憎むことができないの。私が悪魔狩りになったのも、彼らの罪を私が背負うため」

べリアルは悲しげな表情を浮かべたままのアイリスに、今まで感じなかった違和感を感じた。
憎まれることが常識だった悪魔。べリアルにも例外なくその常識が染み付いていた。
だからこそ、アイリスの言う「憎むことができない」に違和感を感じた。

「お前は………どこか変な奴だな」

「そう、かな?」


「話に割り込んで申し訳ありませんが……僕もアイさんの優しさに救われたんです」

アイリスのそばまで来たクリスが、べリアルに笑顔で話した。

「お前は………」

「はい、フォールマンと呼ばれる存在です。"悪魔の末裔"とも呼ばれています」


クリスとアイリスを交互に見つめ、べリアルは納得したような表情を浮かべた。


「なるほどな………その子を見ると、お前が穏やかなのも納得できるよ」


「なぁ、無理かも知れないが頼みがある」








「俺を……………連れて行ってくれないか? 人間のことをもっと知りたい」


その言葉に、黙っていた悪魔狩り達が一斉に言葉を発した。

「おいおい、冗談じゃねぇぞ!?」

「そうよ! なんで悪魔があたしと一緒に!?」

「………………………」

「判断はアイさんに任せます」


「いいよ、べリアルさん」









アイリスの一言で、べリアルはヴァチカンまで来ることになった。

















―――そして現在………



「なるほど、つまりアイリスの一言で連れて来た、と………」

「すみません………どうしてもアイリスに反論できなくて………」

無表情のアルバートと、それにビビるパトリック。

「アルバートさん、べリアルさんは何もしないよ。怖い人じゃない。ね?クリス君」

「……僕は、アイさんを信じて承諾しました。言い訳はしません」

アイリスとクリスの言葉に、アルバートの無表情は一気に崩れた。
顔を伏せて肩を揺らしている。どうやら笑っているようだ。

「クククッ………ブッハハハハハハッ!!」

「アルバートさん………怒りすぎておかしくなったかしら?」

「さあ………怖え、アルバートさん………」


「いやいや、ハハハッ………アイリスらしいなぁ、と思ってね」

顔を上げたアルバートの表情は、穏やかで柔らかい笑顔だった。

「べリアル、だったかな。君もアイリスの優しさに触れたようだね。いいことだ。君の存在はヴァチカン
には報告しない。上層部に色々言われるのは面倒だからね。君も派手に暴れるなよ?」

「あぁ……だがいいのか?」

「アイリスが敵じゃないと言うんだ。それを信じるってだけだよ」



こうして、"悪魔狩り連盟"に"上位悪魔"が加わった。 
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