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八条学園怪異譚

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最終話 最後の宴会その七

「知ってる人にお祖母ちゃんと叔父さんの一人がもうどうしようもない人がいるけれども」
「二人もですか」
「それはまた大変ですね」
「お祖母ちゃんの方が遊んでばかりで親戚の中で喧嘩ばかりしてすぐヒス起こして金遣いが荒くて自己中心的でね」
 数え役満もいいところだ、大三元と言うべきか。
「叔父さんが働かないでその癖偉そうに文句ばかり言って家に急に来て大飯をかっくらって礼儀知らずで借金まで持ってるって人がいるのよ」
「何か凄いですね、その人」
「そんな親戚が二人もいるって」
 愛実も聖花も少し目を顰めさせた、流石にそれはないというのだ。
「祟りみたいですね」
「あまりいい縁じゃないですね」
「それで、その人お祖母ちゃんを老人ホームどころか精神病院に叩き込んだのよ。ヒステリーが凄いから精神病院に入れても問題ないだろうって言ってね」
「それでお祖母さんと縁を切ったんですね」
「精神病院に入れて」
「叔父さんはオホーツクの漁船に放り出したのよ。そうして完全に縁を切ったのよ」
「その人お二人を相当憎んでたんですね」
「普通そこまでしませんよ」
「けれど縁は切れたわよ」
 一人を精神病院に叩き込みもう一人を蟹工船に送り込んでだ。
「勿論二人共死ぬまで、ってことにしてね」
「普通そこまでやったら鬼ですけれど」
「そうした人達にはですね」
「そうするしかないからね」
「最終手段としてですか」
「そうしたことまで」
「まあね。縁の切り方としては極端にも程があるけれど」
 本当に普通ならば許されないことだ、しかしその人はあえてそうしたというのだ。
「誰でも縁は切れるのよ。けれどどうしようもない人以外にはね」
「縁を切ることもですね」
「しない方がいいですね」
「そう、切られる方は辛いから」
 これだけ辛いこともそうはない、特に信じている相手には。
「人を平気で切る人は最後は誰かに切られるしね」
「因果応報で、ですね」
「そうなるんですね」
「切られてそこからずっと憎んでる人もいるから」
 切られた人間は決して忘れない、そういうことである。
「自分は忘れてもね」
「相手は覚えてるんですよね、そういうのって」
「向こうは」
「こういうことってよくあるからね」
 世の中にはだ、往々にしてというのだ。
「相手は覚えてるのよ。それにね」
「それに?」
「といいますと」
「周りも見てるから」
 相手だけでなく、というのだ。人の目は二つとは限らないというのである。
「人を切る人かどうかってね」
「それでそういう人と見られたらですか」
「周りにですか」
「冷酷って思われてね」 
 こうしたことは政治やビジネスの世界ではありそうだが案外ない、この辺りはわかっている人間はわかっているということであろう。
「周りからも信頼されなくなるから」
「何時自分が切られるかって思ってですか」
「信用されなくなるんですね」
「あんた達もそうでしょ」
 二人にしてもだというのだ。
「あんた達もそういう人とは一緒にいたくないでしょ」
「そうですね、私も切られたくないですし」
「私もです」
 二人共だというのだ、やはり。
「そんなことする人はどうしても」
「信用出来ないです」
「いじめをする人もそうよ」
 いじめられている人間だけが見ていないというのだ。 
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