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八条学園怪異譚

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最終話 最後の宴会その一

             最終話  最後の宴会
 愛実と聖花は茉莉也の迎えを受けて博士の研究室に戻った、するともう研究室の中は茉莉也の言った通りにだった。
 妖怪達が幾つものグループに別れてそれぞれの鍋を囲んでいた、そしてその中にはすき焼きがある。学園のあらゆる妖怪達がいて幽霊達もいる。そして博士もいる。
 博士は牧村と共に鍋を囲んでいる、そのうえで三人が部屋に入ったところで言って来た。
「おお、戻って来たか」
「はい、お待たせしました」
「今戻りました」
「泉は見付けたのう」
「時計塔の最上階のお部屋がでした」
「泉でした」
  話通りそこだったとだ、二人は博士にありのまま話した。
「それで駅前に出まして」
「今戻ってきました」
「駅のう、あそこじゃったか」
 駅前に出たと聞いてだ、博士は腕を組んで考える顔になって述べた。
「そういうことじゃったか」
「そういうこと?」
「そういうことっていいますと」
「うむ、まずはここに来るのじゃ」
 二人だけでなく茉莉也にも声をかける、その時に手招きもする。
「すき焼きを楽しもうぞ」
「既によく煮えている」
 牧村も三人に顔を向けて言う。
「食べるといい」
「お酒もあるぞ」
 博士は鍋の傍に置かれている一升瓶も指し示した、まだ開けられていないがそこには清酒がこれでもかとある。
「あったまるのじゃ」
「はい、それじゃあ」
「お邪魔します」
 二人も応える、そしてだった。
 茉莉也も入れて三人で博士と牧村のいる席に座る、茉莉也はろく子達の席の方を見て微笑んでこうも言った。
「小林先輩もおられるし」
「喫茶店のお兄さんもですね」
「お坊さんも神父さんも」
「皆さんおられますね」
「どなたも来てくれたんですね」
「そうじゃ、皆君達のお祝いで集まったのじゃ」
 そうだとだ、博士も三人に話す。
「もっともすき焼きとお酒の為もあるがのう」
「それもですか」
「あるんですか」
「そうじゃ、やはり美味いものの魅力は強いのじゃ」
 ご馳走と酒のそれはというのだ。
「だからじゃよ」
「ううん、お祝いと楽しみですか」
「それが両立しているんですね」
「そういうものじゃ、人間らしいじゃろ」
 他人のお祝いだけでなく自分自身も楽しむ、そうしたところが実に人間らしいというのである。
「ではよいな」
「はい、それじゃあ」
「皆で」
「楽しもうぞ」
 こう話してそのうえで全員で乾杯をする、そのうえで二人はすき焼きと酒を楽しみはじめた。妖怪達も食べ幽霊達も騒いでいる。
 そしてその中でだ、博士は二人にこう話した。
「それで駅のことじゃが」
「はい、駅ですね」
「駅のことで、ですよね」
「うむ、駅は他の場所からその場所に出入りするな」
 そうした場所だというのだ。
「特別な場所じゃ」
「じゃあまさか」
「まさかと思いますけれど」
 二人はすき焼きを食べ酒を飲みつつ博士の言葉を聞いて言った。
「駅もですか」
「泉なんですか」
「そうなるのう。おそらく妖怪や幽霊の諸君はじゃ」
 今ここに集まっている八条学園の中にいる彼等はというのだ。 
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