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八条学園怪異譚

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第六十話 時計塔その十一

 そしてその話の中でだ、遂にだった。
 二人は螺旋階段の終わりをその目に見た。鉄の扉がそこにあった。聖花はその鉄の扉を見て愛実に言った。
「あそこがね」
「泉へのね」
「そう、入口よ」
 まさにあの扉がだというのだ。
「今度こそ正真正銘のね」
「そうよね。それじゃあね」
「行きましょう」
 今からだ、是非にというのだ。
「二人でね」
「最後の最後もね」
「あの中に入って」
 聖花は一歩ずつ階段を愛実と共に登りながらその愛実に語る。表情はこれまた愛実もそうであるが自然と強張り緊張したものになっている。
「お部屋の真ん中でね」
「そこでよね」
「そう、十二時にね」
 二人共それぞれの腕時計を見る、するともうすぐだった。
「なると」
「どうなるかよね」
「それは誰にもわからないわ」
「十二時になることもよね」
「妖怪さん達が出るってことで」
 実は泉がどうなるかはわからないのだ、しかし十二時になれば何かが起こるということはマイt外ないことだtった。
 それでだ、二人もその十二時にだったのだ。
「いよいよね」
「あの中で十二時になればね」
 まさにだというのだ。
「その時によね」
「泉にね」
 辿り着ける、二人はこれまで生きてきた中で最も強い緊張を感じた。
 そのうえで扉の前に来た、そしてだった。
 二人同時にだ、お互いの顔を見て言った。
「じゃあね」
「聖花ちゃんが」
「愛実ちゃんが」
 それぞれの名前を同時に言った。
「開ける?」
「どうするの?」
 二人は自然と互いに譲り合った、だが。
 二人同時に言った瞬間にだ、これまたお互いに微笑みになってこうした。
「一緒に開けようね」
「同じこと考えてるから」
「じゃあ最後も二人一緒でね」
「そうしようね」
 こう話してだ、そしてだった。
 二人は同時に扉を開けた、鉄の扉は重厚な、さながら城の牢獄のそれを開ける様な重いものがあった。その扉を開けて中に入ってだった。
 聖花はまた自分の腕時計を見た、するとその時間は。
「十一時五十九分」
「あと一分ね」
 愛実も自分の腕時計をチェックして応えた。
「そうね」
「うん、あと一分でね」
「それでよね」
「泉に入るわ」
 あとその一分でだ、そうなるというのだ。
「探して回ったそこにね」
「そうね、それで泉に入ってね」
 愛実は緊張した面持ちで聖花に言った、聖花もその顔で愛実に応えている。
「何処に出るかよね」
「そうよね。何処かしらね」
「こっちの世界の何処からしいけれど」
 愛実はこのことは知っていた、勿論聖花もだ。
「博士から聞いた限りだと」
「問題は何処に出るかよね」
「変な場所じゃなかったらいいけれど」
 このことがここで不安になった。 
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