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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第四十一話 背徳の皇帝

先程からずっと下へ下へと階段をが続いていている。

「ミストが乱れているわ」

フランが呟くように言った。

「・・・またなにかでるのか?」
「王墓の時に感じたミストと似ているわね」
「ったく面倒だな」

フランの返答にバルフレアが顔を顰めた。

「なんか寒くないか?」
「地下だから・・・かな?」
「それ以外にもなにかありそうな気はするがな。おっ、ようやくひらけた場所にでたな」

話しているうちに階段が終わり、大きい広間に出た。
その広間はドームのようになっており天井に黄道十二宮の紋章が描かれている。
そして奥の大きな扉に双魚宮の紋章が描かれていた。

「・・・どうやらバルフレアの嫌な予感が的中したみたいだな」

その言葉を聞いた全員がセアの方を向く。

「なんのこと?」
「ここに入る前に言ってただろ。バルフレア」
「覇王の伝説の話か?」
「いや、その後の話で俺がミリアム遺跡に宝があるかもよって言っただろ」
「・・・覇王の財宝と同じオチってか」

バルフレアは嫌そうな顔をした後、ふと湧いた疑問をセアに投げかけた。

「なんでそう思うんだ?」
「ベリアスを倒した後、話しただろ。神々に挑んだ12体の異形者のこと」
「確か、そんな御伽噺を言ってたな」
「ああ、その御伽噺の中で双魚の座を司る異形者がいる。フランの言う事を信じるなら多分奥に居るのはそれだ」

それを聞き、全員に先程より緊張が走った。
魔人ベリアスもかなりの強敵だったのだ。無理も無い。

「その御伽噺で双魚の座を司っている存在はどのように語られているのですか?」
「【双魚の座、背徳の皇帝マティウス。下界に暮らす人を守り統治する闇の異形者。統治の中、欲に溺れ闇に心を奪われた彼は悪神へと姿を変える。そして氷の世界を司る女神を拘束し、生きる盾とする背徳的な行為をもって神に戦いを挑んだ。しかし神の絶大なる力の前に敗れた彼は、断末魔と共に地獄の海深くに封じられた】だっけな。確かその話の中では氷の力を操っていたっけ」
「もし本当に氷の力を操るなら、殿下が魔人を召喚すれば大丈夫では?」

バッシュの提案に全員が頷き、双魚宮の紋章が描かれた扉を開いた。
すると中から冷たい風が吹いて、思わず身を震わせた。
部屋の内部はミストが視認できるほど濃く、氷の塊があちこちにあり、中心に奇妙なものがあった。
青みがある美しい下半身が魚の女性が目隠しをされ、両手が拘束されている。
そしてその鎧の肩の部分から腕が生えており、右手に槍なのか杖なのか判断に迷う奇妙な武器を持っている。
その奇妙なものは御伽噺の中で語られた背徳の皇帝マティウスの描写と一致した。
マティウスはセア達の姿を確認すると武器を振り、その動作にあわせて周りの氷が砕けた。
そして砕けた氷が集まって氷の精霊のようなものが何個も形成された。
それは御伽噺の中でマティウスが使役した氷のアーゼという使い魔のようなものだった。
アーシェは自らの魔力を青い魔石に注いだ。
すると魔石からあふれ出たミストが魔人ベリアスの形を成し、氷のアーゼを燃え盛る炎で蒸発させた。
ベリアスはそのままマティウスに向かって突っ込み、武器を振り下ろす。
マティウスはそれを武器で受け流し、空中を泳ぐように後方に下がり、{ブリザジャ}の魔法をベリアスにめがけて放った。
それと同時にマティウスは武器をベリアスに向けて凄まじい速さで突っ込んだ。
ベリアスは正面から炎で飛んできた氷を蒸発させ、自分の周りに火柱を上げる。
火柱がマティウスに当たり拘束されている女神が悲鳴あげたが、マティウスは何の苦も無く火柱を受け止め、魔法で火柱を凍らせた。

「すげぇ・・・」

ヴァンが思わずそんな言葉をこぼした。
周りの皆も声には出さないがそんなことを思っていた。
ベリアスとマティウスの戦闘に気をとられているとベリアスの炎から逃れた氷のアーゼがアーシェに襲い掛かった。
すぐに反応したバッシュの遠隔攻撃で氷のアーゼの攻撃のそれた。
アーシェの近くに居たヴァンが氷のアーゼに斬りかかり、氷のアーゼが怯んだところをセアが真っ二つに両断した。
そして周りを警戒しながら異形者達の方に目を向けるとベリアスが徐々に劣勢になっていった。
バルフレアが銃でマティウスの左腕を狙撃するとマティウスは{ブリザド}をこちら目掛けて放った。
全員が一斉に回避し、セアがそのままマティウスに突っ込み、右腕目掛けて思いっきり剣を振り下ろした。
するとマティウスの右腕が宙を舞い、拘束された女神が奇声をあげた隙にベリアスに背中から貫かれたマティウスは左腕で武器を掴み、ベリアスの腹部を貫いて壁に叩きつけた。
ベリアスはミストを放ちながら消えていき、マティウスはセアに目掛けて武器を振り下ろした。
セアはベリアスが貫いた腹部の穴に剣を差込んで強引に引き裂くとマティウスはミストを放ちながら消えていき、青い魔石が残った。
セアがその魔石を拾うと

「これは【覇王の剣】を手にいれた後で大僧正に渡そうと思うけど別にいいか?」

セアの提案に全員が頷き、セアは魔石をポケットにいれた。  
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