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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第三十一話 愚問

ケルオン大陸ヤクト・ディフォールのゴルモア大森林にて。
古代の形のまま残る森を東へと進んでいたヴァンたちだったが結界に通行を阻まれていた。

「なんだこれ・・・?」

ヴァンが結界を見ながら言う。

「ゴルモアの森が拒んでるのよ」
「私達を?」
「私を・・・かしらね」

フランはそう言って結界と反対の方に歩いていった。

「何それ。ていうかどうすんだよアレ」
「少し黙れ馬鹿弟子」
「なんでだよセ・・・・ガッッッ!」
「まったくこの馬鹿弟子が・・・」

セアはそう言いながらヴァンの首を掴んで黙らせた。
すると反対方向に歩いていくフランにバルフレアが声をかけた。

「寄ってくんだな」
「ええ」
「過去は捨てたんじゃないのか」
「他に方法がないから。あなたのためでもあるのよ」
「ん?」
「焦っているでしょう。破魔石がそうさせているの?」

フランの言葉にバルフレアの顔が僅かに動く。

「あなた意外に顔に出るのよ」

フランはそう言って魔法を崖にかけ始める。
バルフレアはその様子を見てため息をついた。
そこに遅れてきたセア達も来る。
セアはヴァンを掴むのを止めるとヴァンは息を整え、フランに問いかけた。

「つまり・・・どういうこと?」
「こういうことよ」

フランが魔法をかえおえると崖に道が出来た。

「この森に暮らすヴィエラの力を借りるわ」

その言葉を聞きパンネロがフランに聞く。

「もしかしてここってフランの・・・?」
「・・・今の私は招かれざる客よ」
「招かれざる客なのは俺達もだろ?」

フランの言葉を聞き、セアが話し出す。

「【ヴィエラ族は俗世間を好まず、外界との接触を拒むように暮らしており、同種族間でも必要以上の連絡はとらない。それはヴィエラたちが精霊の声を聞くことによって、森で起きている出来事を把握できるからでもある。イヴァリースの歴史においてヴィエラ族が表に出ることは少なく、森での風習や種族の掟など一般に知られていないことが多い。】って昔なんかの本で読んだ。もし俺の記憶が正しければ俗世と関わったフランに限らず俺達も招かれざる客だ」
「ヴィエラってよく街で見かけるけど?」

ヴァンはラバンスタでよくヴィエラを見かけるのでそんなに閉鎖的な生活をしているとは思えなかった。
するとセアが少し呆れた顔で言う。

「はっきり言って亜人種がごちゃ混ぜで住んでるラバナスタなんかイヴァリース全体で見ればかなり特異な街だぞ」
「え?」

ヴァンは驚き、セアや他の皆は頭を抱えたくなった。



ケルオン大陸ヤクト・ディフォールのエルトの里にて。
里の入り口でフランはヴァンに話しかけた。

「この先の里にミュリンという子がいるは呼んできて。私が行かなくてもミュリンならわかってくれるから」

ヴァンは軽く頷いた。
するとセアが森の入り口辺りで座って言った。

「じゃあ俺もフランと一緒にここで待ってるからさ」
「なんでだ?」
「いや、なんというか苦手なんだ。森の掟を守って暮らすヴィナ・ヴィエラは」

森で暮らすヴィエラをヴィナ・ヴィエラ。俗世に関わって生きるヴィエラをラヴァ・ヴィエラということがある。
主に精霊の声が聞こえるかどうかの差といってよい。
身体的な差としてはヴィナは耳が真っ白だがラヴァは黒いものが混ざってる。
だがバルフレア質問を続ける。

「なんで苦手なんだ?」
「・・・ちょっとトラウマがあるんだよ」

セアの返答を聞き、バルフレアは軽くフランに目線を送り里の中に入っていった。
しばらくするとフランがセアに話しかけた。

「どうして一緒に行かなかったの?」
「バルフレアに答えたの聞いてたよね?」
「あなた周りのミストがおかしいのがばれるから?」

フランの言葉を聞き、セアは顔を顰めた。

「・・・ばれてたのか」
「自覚があったの?」
「ああ、前に他のヴィエラから言われたことが・・・」

そこまで言うとセアは笑みを浮かべ笑った。
そして少し真剣な声でフランに話しかけた。

「里に入ればどうだ?」
「何故?」
「疎遠でも家族はいるんだろ?会ってくればいい」
「でも・・・」
「・・・俺にはもう帰る故郷も迎えてくれる家族もいないんだ」

どこか暗い目でセアは空を見上げながらそう言った。
フランは少し迷っていたがやがて里の中に入っていった。

「はぁ、やれやれ」

そう言ってセアは寝転んで里の風景を眺めていた。

「妙なものだな。かつて覇王に全てを奪われ、今は覇王の子孫に手を貸しているとは・・・これが運命とでもいうやつか」

セアは誰に言うでもなく、そう呟いた。



セアが里の入り口で寝転がっているとヴァンたちが里から出てきた。
バルフレアにセアは話しかけた。

「どうだった?」
「ああ、ヴァンが上手い事里の長から情報を引き出してくれたぜ」

バルフレアの返答を聞きセアは意外そうな顔をした。
弟子のヴァンは交渉事にはとても弱いはずだ。
なのにどうやって情報を引き出したんだ?

「やるじゃないか。あんなのから情報を引き出すとはね」

バルフレアはヴァンを珍しく褒めた。
ただヴァンはなにか納得いかないのか腕を組む。

「さて、人間ヒュムの穴とか言ってたが」
「バンクール地方のヘネ魔石鉱でしょう」

ラーサーが自分の推測を述べる。

「オズモーネ平原の南ですね。あの一帯は我が国の植民地なんです。・・・軍もいるでしょう」

ヴァンが里の長から引き出した情報は正確には「ミュリンは森を出て西に向かい、(くろがね)をまとう人間ヒュムどもの(あなぐら)をさまよっている」である。
おそらくだが鉄をまつう人間とは帝国兵のことで帝国兵がいる西の窖はヘネ魔石鉱が思いつく。
バンクール地方はロザリアとアルケイディアが互いに手を出さないということで一応数百年間戦乱から逃れている。
だがロザリアでマルガラス家が帝位に返り咲いた時にアルケイディアがバンクール地方南東部を植民地にすることを認めさせた。
ロザリアは政変直後であったためアルケイディアとの戦争を避けたかった為、渋々認めることになった。

「それがどうした?行くぞヴァン」

そう言ってバルフレアは里から出ようとしたがヴァンが呼び止めた。

「あのさ」
「うん?」
「さっきほらヨーテが言ってたろ。その50年前がどうとか・・・って」
「それで?」

フランの問いにヴァンが少し悩みながら質問した。

「フランって何歳?」

空気が凍って、沈黙が場を支配した。
セアは噴出しそうになったがなんとか堪えた。
あまりにも静かな為、小鳥の鳴き声やあまり会話をしないヴィエラ達の話し声まで聞こえる。
フランは恥ずかしくなったのか質問に答えず里から出て行き、バルフレアは声を出さずに「馬鹿」と口を動かしてフランの後に続く。
他のみんなはというと

「はぁ・・・」
「・・・」

アーシェはため息をつき、バッシュは無言で通り過ぎ、

「失礼ですよ」
「ほんと子供なんだから」

ラーサーとパンネロはヴァンを非難する言葉を言って里から出て行った。
セアはその光景をみてヴァンの腕を掴み

「少しは常識というものを覚えろ!馬鹿弟子!!」

と言ってヴァンを爆笑しながら里から出口にひきずっていく。
ヴァンは女性に年齢を聞くのはちょっと失礼だと知ってはいたがここまで周りからここまで罵倒されるとは思わなかったのである。
だが、それでも聞いてしまうあたりがヴァンらしいところである。
だからつい不満そうな声で一言呟いた。

「納得いかないって・・・」
 
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