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寂しきロックンローラー

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第七章

「楽しくないんだよ」
「やっぱり彼がいないからなのね」
「よくな、どっちが何人とどれだけやったかな」
「それを言い合っていたのね」
「ああ、それが出来ないからな」
 だからだというのだ。
「女の方もな」
「そうなのね、そのことは」
「ああ、全くだよ」
 こう言ったのである。
「酒も女もな、あいつがいないとな」
「彼も言ってたわよ」
「何だよ、ナースの姉ちゃん達をとっかえひっかえじゃないのか」
「貴方がいないからと言ってね」
 それでだというのだ。
「それでなのよ」
「ナースの姉ちゃん達をこましてないのか」
「一人もね」
 そうだというのだ。
「平和に、と言えばいいけれど」
「退屈になんだな」
「色々愚痴を言ってるわ」
「へっ、あいつもかよ」
「貴方がいないと張り合いがないそうよ」
「じゃあ伝えてくれるかい?今日もあいつのところに行くんだろ」
 退院したが今はリハビリ中だ、だから二人で住んでいる部屋にはおらずやはり病院関連の場所二いるのだ。
 ソーサーはその彼のところに毎日見舞いに行っている、それはドワンゴもだがあえてこう言ったのである。
「我慢しろってな」
「貴方も行くでしょ」
「俺は女自慢でも言いに行ってやるさ」
「実際は遊んでないのに?」
「ああ、ハッタリかましてやるさ」
 笑ってそうしてやるというのだ。
「今日はな」
「そうなのね」
「それで頼めるか?」
「わかったわ、それじゃあね」
 ソーサーも微笑んでドワンゴの言葉に頷く。
「そうさせてもらうわね」
「そういうことでね」
 こうした話もした、ドワンゴは半年の間何かと張り合いのない日々を過ごした、その中で彼はいつもさびしい笑顔を浮かべていた。
 その笑顔についてもだ、彼はソーサーに言う。
「やせ我慢でも何でもな」
「笑っていろっていうのね」
「ロッカーってのは余裕もないとな」
「いいロッカーじゃないわね」
「やせ我慢でもいつもクールで余裕がある」
「それが真のロッカーよね」
「あいつも言ってるしな」
 ここでまたラビルの話をするのだった。
「だから俺もな」
「今もなのね」
「ああ、俺は笑ってるんだよ」
「そういうことね」
「何時でも余裕があるからな、けれどな」
 自分でもわかっていた、今の笑顔のことは。
「やせ我慢でしかないよな」
「寂しい感じがするわ」
「だろうな、けれどな」
「それでもなのね」
「俺は笑うさ」
 そうするというのだ。
「あいつが戻って来た時もな」
「笑っているのね」
「そうするからな」
「だから今もなのね」
「笑ってやるんだよ」
「あと少しよ」
 ソーサーは寂しいやせ我慢の笑みの彼に言った。 
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