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鉄槌と清風

作者:deburu
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72部分:70:結婚式


70:結婚式

 良彦とザフィーラが貸してもらっていた部屋へ戻ると、ヴェロッサも起きだしていたようだ。
 お互いに軽く挨拶をすませ、ザフィーラ、ヴェロッサも準備の為に一度別れることになった。

 良彦は、シャワーを浴び、普段着のシャツとズボンに履き替え、時間が来るのをゆっくりと待つ。
 頭に浮かぶのは、海鳴の公園で出会ってから、闇の書の事件や、同じ部隊での任務、自分となのはが怪我したとき。
 さらには、普段一緒に居た何気ない一時…どちらも荒い言葉使いなので、売り言葉に買い言葉は日常茶飯事。

 そして、18の誕生日にした、婚約という名の確かな絆の形。
 それが今日、更に一歩進み、結婚…約11年、思えば長く付き合っている、だが、これからそれ以上に付き合うのだと、今更の実感。

 「…そうだよな、もう11年じゃねー…まだ、11年だ、これから先の方がどう考えても長いんだな」

 そう言って、軽く深呼吸し、歩き出す…式はもう少し、自分も準備しなければならない。



 聖王教会の式場、男性控え室…そこには、男性陣が勢ぞろいしていた。
 次元書庫室長ユーノ・スクライア、次元航行艦隊提督クロノ・ハラオウン、本局査察官ヴェロッサ・アコーズ、地上本部ヘリパイロット/武装隊ヴァイス・グランセニック。
 次元航行部隊事務官グリフィス・ロウラン、辺境自然保護隊所属保護官エリオ・モンディアル、そして、一番付き合いの長い盾の守護獣ザフィーラ。

 式はこの7名が参加だ。
 皆それぞれに似合ったスーツを着ている。

 良彦は現在準備中、古い様式の白い上着、青いズボン、靴と手袋も青で纏められ、今は羽織っていないマントが近くにかけられている。
 マントの背中には、【風王家】の紋章である、3本の斜線に一枚の羽をクロスさせた紋章が入り、基本の色は青、縁が白い毛で彩られている。

 「…毎度ながら、こういう格好は喉元がキツイ気がする」

 「今日は我慢しろ、僕も同じような格好したんだし」

 「まぁ、似合っているよ、良彦君」

 クロノとヴェロッサがそういって、喉元を弄る良彦を止め。

 「まぁ、青の子鬼とはおもえねーっすよ」

 「ヴァイス、それは」

 ヴァイスが言う言葉にグリフィスは止めに入り。

 「でも、ホント似合うよヨシヒコ」

 「僕もカッコイイと思います」

 ユーノとエリオは褒めてくれる。

 「…馬子にも衣装という奴だな」

 とは、ザフィーラだ、一番容赦がない、だがある意味でそれは長い付き合い故だ、だからこそみなの言葉と同じくらいに嬉しい。

 「さて、後はマント付けていくだけだな…皆、きてくれてありがとうな」

 7人を見渡し、頭を下げる。
 7人はそれぞれ、笑い返し、頷く…そろそろ時間になるのだ、ザフィーラが人間形態になり、マントを持ってくれる。

 「後を向け、我がつけよう」

 「頼むわ」

 そういって、マントを良彦に付けさせ、送り出す。
 良彦は長い道を通り、聖王教会の礼拝所…今は式場だ…へと向かう。

 ゆっくりと歩き、扉にたどり着く…この先は、式場、既に皆が待っているだろう。
 扉を開け、踏み込む…式に招待したのはそれほど多くはない、先ほどの男性陣に、高町家一同、八神家一同、ハラオウン家一同、六課新人フォワードの女性陣に、ロングアーチのシャーリー、ルキノ、アルト。
 地球からアリサ、すずか…そして、当然セプトだ。

 皆が椅子に座り、楽団と合唱隊…セントヒルデの学生だろうか、子供達だ…が、音楽を奏で聖歌を歌うなか、良彦は真ん中へ歩み出る。
 反対の扉が開き、純白の古風なドレス、長い梳けるようなヴェール…これは赤…に身を包んだヴィータが、はやての手を引かれ歩いてくる。

 普段は三つ編みか、解いているだけの髪はしっかりと結い上げられ、綺麗なうなじが見える。
 真ん中ではやてからヴィータの手を預かり、共に聖王の像の前へと歩みを勧める。

 聖王教会の神父が、聖句を述べ、それぞれの思いを確認し、誓いの言葉を聞き届けると、二人に指輪を渡し、お互いに付けさせる…此処はカリムに頼んで地球の結婚指輪のくだりを入れてもらった。
 そして、指輪の交換後…良彦がヴェールを持ち上げて、ゆっくりと、でもしっかりとキスを交わしていく。

 皆の拍手が響き、神父の宣誓が行われ、式は終了する。
 二人そろって、出口の方へと歩く、隣で一緒に歩くヴィータへ良彦が

 「この先も、色々あるだろうけど、よろしくな、ヴィータ」

 「あたしにはいいけど、他の人に迷惑かけんなよ、良彦」

 ぎゅっと手を握りながら、その言葉に苦笑する良彦。
 そのまま、後は静かに…周りからはお祝いの言葉や花吹雪などが投げかけられ、教会の扉をくぐり、少し行った所で振り向く。

 「おっし、ヴィータ…レディセット!」

 「おう、任せろ!」

 突然良彦が叫び、ヴィータもノリノリで、ブーケを構える。
 辺りの皆は吃驚して反応が遅れる、そこへ。

 「ブーケ、トス!」

 「ゴー!」

 思い切り上に向かって投げられるブーケ、しかもしっかり身体強化魔法使用のそれは、高く上がり…落ちてくるまで暫く掛かった。
 だれが取ったかは、まぁ…秘密という事で。

 「良彦君も、ヴィータもいつたくらんだんや、あんな事」

 と、その後はやてに聞かれるのだが、二人は

 「何となくあの場で思いついた」

 「良彦が、イイ笑顔うかべたから、ああした」

 と、あれが即興だった事を明かすのである。
 それを聞いた皆は、この二人は結婚して正解だ、と皆語り合ったらしい。
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今回も何時もより短めですが、式のみでお送りしました。

次回は、披露宴の予定です、乗りと勢いで、ミッド側だけになるか、地球側までいけるかは一寸不明です。
 
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