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八条学園怪異譚

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第五十五話 百鬼夜行その四

「神道はそういうことに五月蝿いのよ」
「ですよね、お塩も欠かせなくて」
「いつも清めてますね」
「お塩はね、退魔の力があるのよ」
 このことは東西共にだ。西洋でも悪魔に対して塩をよく使う。
「うちの学園の妖怪さんや幽霊さん達は邪な人達じゃないから関係ないけれど」
「邪悪だと塩にやられるんですか」
「やっつけられるんですね」
 二人はここでこのことも知った。
「つまり邪な心を清められる」
「そうなるんですね」
「そうよ、お塩はそういった効果があるのよ」
 実際にそうだというのだ。
「まあ私もお塩で飲むことあるけれど」
「そういえばうわばみさんもですね」
「あの人もそうして飲んでるんですね」
「そうよ、あの人もあてにお塩食べることあるわよ」
「上杉謙信みたいですね、それって」
「お塩で飲むと」
「そうそう、上杉謙信ってお酒大好きだったけれどね」
 出家していたので般若湯ということにはなっていた、謙信は無類の酒好きであり陣中でも欠かさなかった。そして馬上でも飲める様に独特の形をした杯も持っていた。
「生活は質素だったから」
「お塩を舐めてですか」
「それで飲んでたんですね」
「これがまたあっさりしてていいのよ」
 塩で飲むこともだというのだ。
「飲みやすいわよ」
「そうなんですね」
「お塩もいいんですね」
「あと梅干もね」
 これもいいというのだ。
「謙信さんこっちもお好きだったけれど」
「ううん、質素だったんですね本当に」
「お坊さんでもあっただけはありますね」
「当時梅は結構高価だったみたいだけれどね」
 戦国時代はまだそうだった、味噌等もだ。
「今見ると質素ね」
「それもかなりですね」
「梅干で飲むと」
「食べものの価値も時代によって変わるからね」
 今だと何でもないものが昔は高価だったりする、これはあらゆる食材に言えることだ。
 その例えとしてだ、茉莉也は今自分の傍に置いている饅頭を見て言った。
「お饅頭だって。お砂糖がね」
「あっ、お砂糖って江戸時代で凄い高価だったんですよね」
「それもかなり」
 二人も店で砂糖をよく使う、それでこのことをよく知っているのだ。
「日本はサトウキビ採れないですから」
「甘いものは果物か小豆だったんですよね」
「そういうことがあるのよね」
「輸入肉が入るまで牛肉も高かったですし」
「メロンやバナナも」
 かつてはメロンもバナナも法外に高かった、あくまで昔のことであるが。
「時代によって食べものの値段も変わりますね」
「お店で出すものも」
「でしょ?そういうこともあるのよね」
 実際そうだと言う茉莉也だった。
「色々そういうことも勉強になるわね」
「ですよね、何かと」
「食べるものにしても」
「それでよ、あんた達もね」
 さらに飲みつつだ、茉莉也は二人に酒で真っ赤になっている顔でこうも言う。
「飲みなさいよ、遠慮は無用よ」
「ですから今は」
「お店のことがありますから」
「そう、じゃあまた今度ね」
 茉莉也もあっさりと引き下がる。 
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