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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第8話「現れた災厄」

アイリスとクリスのコンビネーションは完璧と呼べるものだった。

四方を囲むゴブリン達を二挺の銃で的確に撃ち抜き、怯ませ、牽制する。
撃ち漏らしたゴブリンは、クリスの体術で残らず倒されていく。

アイリスはクリスのおかげでゴブリンに接近されない。
クリスはアイリスのおかげで相手になるゴブリンの数が少数で済む。



「グゲゲゲゲゲェェ!!」

「グギャギャギャギャギャギャギャ!!」

汚ない叫びを上げながらアイリスに迫るゴブリンの群れ。










「さぁ、おいで。君達の罪は私が償ってあげる」



悲しげで、無機質な眼。その眼は醜い化け物共を捉えていた。
二挺の銃を静かにゴブリン達へ向けた。


ドガガガガガガガガガガガガガガッ


二挺の銃から、まるでマシンガンのような勢いで弾丸と空薬莢が吐き出されていく。
弾丸の嵐を正面から食らったゴブリン達は、次々と身体を吹き飛ばされる。

アイリスは銃を撃ちながら、腰のマガジンを6つ、自分の頭上へ向けて投げた。
マガジンが落ちるまでに、アイリスの二挺銃から弾丸が凄まじい勢いで吐き出され、無くなっていく。
弾丸が無くなり、手際よく空のマガジンを足下に捨てる。
そして、落ちてきたマガジンを片手で、しかも一瞬で装填した。

弾切れにも弾込めにも、一切の隙が無い。

ゴブリン達はあっという間に蜂の巣になり、無様な肉塊に姿を変えていった。




「相変わらずスッゲェなぁ……アイリス……」


長槍を肩に担いで、離れた場所からアイリスを見守っていた。

「……………………さすがだな……」

斬ったゴブリンの首を片手で弄んでいるキリシマも、パトリックと同じように距離を少し空けて
アイリスを見守っている。


「当然よ。なんたって"あたしのアイリスちゃん"よ?雑魚に負けるわけないわ♪」

「"あたしの"は余計だろ?アリシア……」













しばらくして、一方的な銃撃は止まった。
辺りは不気味なほど静かになり、後に残ったのは粉々に壊れたゴブリンの死骸だけだった。

「お疲れさまです、アイさん」

「…………………」

クリスの言葉に、アイリスは無反応だった。しかし無視をしたわけではない。

アイリスはゴブリンの死骸にそっと近づき、一言。


「ごめんね。君達の罪は私が背負うから………」



アイリスの表情はとても悲しげなものだった………






「ところで………上位の悪魔はどこにいる?」

ふと、パトリックが自身の疑問を呟いた。

「そう言えば……あたし達は雑魚じゃなくて、上位を狩りに来たのよね」


その通りだ。50体の下位悪魔は前座に過ぎない。


「……………………」

「……………………」

クリスとキリシマが静かに意識を集中させ、周りの気配を探り始めた。







「…………………~~…………~~…………」


何かが聞こえた。



「……………ふざけ…………お前…………」


誰かが話している?




「キリシマさん、今の聞こえましたか?」

「……………聞こえた。それに普通とは違う気配もな」

「え?なんだ?お前ら何を感じたんだよ?」

話し声と気配を感じたクリスとキリシマ。そして状況が全く分からないパトリック。




「………………行ってみるか」

そう言うや否や、キリシマが走り出した。

「お、おい!待てって!」

「はぁ……何がどうなってんのよ……」

「まあまあ、キリシマ君に着いていこう、アリシアさん」



















「お前は悔しいと思ったことはないのか?長い間閉じ込められたことを……」

「あぁ、悔しいと思ったさ。だから出れた時は復讐してやるって思ってた。でもよ……」


5人の悪魔狩り以外に、2人の人間が何か口論している。

「なぁあんたら!喧嘩に加わるつもりはないが、ここではやめてくれないか?」

「事情は言えませんけど、ここは危険なんです。この場所から離れてくれませんか?」

クリスとパトリックが口論していた2人の間に割って入った。
ゴブリン達は殲滅したとはいえ、まだ確実に安全というわけではない。そんな場所に一般人がいるのは
危険極まりない。戦いに巻き込まれてもおかしくない。



「…………何故誰もかれもが邪魔をする……………」






「何故邪魔をする悪魔狩り共がぁぁぁぁぁぁ!!」


「「!?」」



口論していた灰髪の男が突然叫び出した。
5人は一斉に身構えた。5人はまだ自分達が"悪魔狩り"だとは言ってない。
そもそも、"悪魔狩り"という言葉を知っている時点でおかしい。


「よせ!」

口論していたパーカーの青年が、灰髪の男を止めようと駆け出す。

「………! 避けろ!」

キリシマが叫ぶ。その瞬間………


ゴォゥ!!

とてつもない勢いで突風が吹いた。
風が当たった地面は、まるでミサイルが直撃したように深く抉れていた。


「"フォカロル"………お前、風を使ったな……」

「フン、天敵に攻撃して何が悪い?不満があるなら俺を"焼き殺せ"。なぁ?"べリアル"」


フォカロル!? べリアル!?

5人の悪魔狩りは驚きを隠せなかった。
"フォカロル"と"べリアル"。どちらも上位の悪魔だ。
"フォカロル"は風の悪魔。べリアルは火の悪魔。
その中で5人が驚いたのは、べリアルの名前。

べリアルは、上位の悪魔の中でベスト5に入るほどの実力を持っている。





「なるほど………"人間に擬態"してんのか………」

パトリックが呟いた。



上位の悪魔は、悪魔狩りの追撃を避けるために"人間に擬態"するという特徴がある。
もし、この2人が本当に擬態した上位の悪魔なら………とても厄介な状況にある。


「どうした?俺を焼き殺さないのか?なら………悪魔狩りもろとも死ね」

フォカロルと呼ばれた灰髪の男が、殺意を剥き出しにした眼で5人とパーカーの青年……"べリアル"を睨む。

「…………やるしかないな」

キリシマが日本刀を強く握り、静かに呟いた。 
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