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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
武偵殺し
  11弾 条件付き降伏

 両手を染めるあかは血の(あか)

 顔を染めるあかは血の(あか)

 部屋を染めるあかは血の(あか)

 床に倒れた両親を染めるあかは血の(あか)

 みーんなみんな、まっかな血で染まってる。

 どうして、こんなことになったんだろう?どうして、こんなことをしたんだろう?どうしてどうしてどうしてどうして?

「どうして、ぼくは父さんと母さんを殺したんだろう?」

 自分でも分からない疑問に頭の中から答える声がした。

「それはな。汝がそう望んだからだ」

「ぼくが?」

「ああ。汝がその者たちを憎悪したから、その者たちを殺したいと思ったから、汝はその者たちを殺したのだ」

「そっか。ぼくが父さんと母さんを殺したいと思ったから、ぼくは父さんと母さんを殺したんだ」

 そっかあ。疑問が解けてすっきりした。はずなのに。

 不意に、頬を熱い何かがつたう感じがした。頬から口もとに落ちてきたそれを舐めると、とてもしょっぱかった。

 どうして?

「どうしてぼくは、泣いてるんだろう」

 今度は、頭の中から答える声はなかった。

 その代わり、別の場所から別の声が聞こえた。

「なんで?なんでなの!?なんでお父さんとお母さんを殺したの!?」

 声が聞こえた方を向くと、ぼくの妹が泣いていた。

「答えてよ!おにいちゃん!」

 そんなこと言われても困る。どうして殺したかなんて、ぼくだって分からない。あれ?でもさっき聞いたような?何だっけ?

 ぼくが殺した理由を思い出そうと頑張っていると、妹が叫んだ。

「絶対に、絶対に許さないんだから!いつか、殺してやる!この犯罪者!」

 『この犯罪者!』。この言葉が、何故か心の奥深くまで刺さってくる。痛い。痛いのには慣れてるはずなのに。この痛みはいつもの痛みとは何かが違って、いつもよりぼくのことを傷つけてくる。

 ぼくは見知らぬ痛みに困惑しながら、その痛みが発生する原因になった妹の方を見る。妹は未だに悲しそうに泣いていたけど、それ以上にぼくに怒っているような、ぼくを憎んでいるような、ぼくを呪っているような気がした。

 なんでか分からないけど、妹がそんな顔してるは嫌だな、と思った。自分のせいで泣いているのに、身勝手にも。

 それでも、妹には笑顔の方が似合うから。妹には笑顔でいてほしいと思った。

 そして、ぼくの意識はそこで途切れ。

 俺の意識が浮上した。



「んっ……ここは、ソファの上、か?」

 目が覚めると、俺は部屋にあるソファの上で横になっていた。しかも、ご丁寧に毛布まで掛けられている。

 えっと、確か俺は夕方にアリアと言い争って、アリアになんか言われて、急に具合が悪くなって、それで――――どうしたのだろう。

 まあ、記憶が途切れてるってことはここで俺の意識は落ちたんだろう。たぶん。

 ということは俺に毛布を掛けて、洗面所からソファまで移動させてくれたのはアリアか。意外と面倒見がいいんだな、アリアは。

 さて、それならばお礼をしなければ。

 そう思い起き上がろうとすると、膝のあたりになんか乗っていた。

 というか、アリアのちっこい頭だった。

「うおっ!?……って、アリアの頭か。びっくりした」

「むにゃ。あれ?ここどこ?」

 どうやら俺が驚いて身体を盛大に動かしたせいで、アリアが起きたようだ。

「って、ミ、ミミミミミ、ミズキ!?なんであんたがここに!?さては、これが夜這いというやつね!この変態!」

 起きたアリアは俺の顔を見るなり得意の赤面癖を発動して顔を真っ赤にし、俺を罵倒してきた。

「落ちつけアリア。俺は夜這いなんてしてないし、そもそもここは俺の部屋だ」

「えっ!?あれ、そう言われてみれば確かにあたしの部屋より狭くて汚いような……」

 狭くて汚くて悪かったな。

「ああ、思いだした。あたし、倒れたあんたをここまで運んで、起きるまで待ってようと思ってここに座ってたんだ。アンタが起きるのが遅すぎるせいで、いつの間にか眠っちゃってたみたいだけど」

「それ、俺が悪いのか?」

「もちろん。一日で二度もあたしを持たせるなんて、本当に最低ね、あんた」

「悪かった、待たせてごめん」

 なんだかこのままだと風穴を開けられる気がしたので、俺はアリアに謝った。

「ふん。反省しなさいよね」

「分かった、反省する。それと、ここまで運んでくれたり、毛布かけてくれて、ありがとな」

「べ、別に、お礼を言われるほどのことじゃないわよ!」

 照れたのか、赤面しながら怒るアリア。ふむ。おもしろ可愛いな、これ。

 よし、もっとアリアを照れさせよう。

「そんなことないって。マジで感謝してる。アリアは俺の恩人だ」

「だ、だからそんなことないってば!そ、そんなことよりミズキ!夕方の話の続きよ!」

「その話まだ続いてたのかよ!?」

 しかも今から再開とか!

「うるさいうるさい!――――とにかく!」

 びしっ!と、アリアは真っ赤になりながら俺を指した。

「あんたなら、あたしのドレイにできるかもしれないの!強襲科(アサルト)に戻って、あたしから逃げたあの実力をもう一度見せて見なさいっ!」

「あ、あれは……あの時は……偶然、うまく逃げられただけだ。俺は戦闘能力皆無な、普通の装備科(アムド)の武偵でしかないんだよ。はい残念でした。これでこの話はおわり!」

「ウソよ!あんた強襲科(アサルト)にいた時、ずっとSランク武偵と組んでたでしょ!」

 げっ。最もバレちゃいけない情報がバレてる。マズイ。このままだと押し切られる。

「つまりあれは偶然じゃなかったってことよ!あたしの直観に狂いはないわ!」

「と、とにかく……今の俺じゃ無理だ!」

 正確に言うと、今の俺がじゃなくて、おまえと組んだ場合の俺、なんだけどな。

「今は?ってことは何か条件でもあるの?もしくは問題?言ってみなさいよ。協力してあげるから」

「いや無理だって!いくらおまえが凄腕の武偵でも、こればっかりはどうしようないって!」

「いいから教えない!どうしたらあんたがあの時の実力を出せるのか!その方法を!」

「だーかーら!無理なもんは無理だって!」

「なんでもしてあげるから!教えて……教えなさいよ、ミズキ……」

 ずずいっ!と俺に詰め寄ってくるアリア。その様子を見て改めて俺は、アリアの真剣さに気付いた。

 こいつ、本気で俺と組みたがってるんだな。

 本当のところ、俺はアリアと組むのはそこまで嫌じゃない。こんな可愛い(外見に限るが)女の子と組めるなんて、とても幸運なことだとも思う。

 だけどダメなんだ。俺は絶対にアリアと組めない。組んだとしても、アリアから逃げた時ほどの実力は発揮できない。

 でも、その理由を説明したとしても、アリアのことだ、きっと

『そんなの、気持ちがちゃんとしてればなんとかなるわ!』

 とか言い出しそうなんだよなあ。

 こうなったら仕方がない。第一希望は諦めよう。この際、もう第二希望でもいいや。

 事ここに至って、俺はやむなく……

 アリアに、白旗を揚げることにした。

「……1回だけだぞ」

「1回だけ?」

 だが、無条件降伏じゃない。

 第二希望――――条件付き降伏だ。

「戻ってやるよ――――強襲科(アサルト)に。ただし、組んでやるのは1回だけだ。戻ってから最初に起きた事件を、1度だけ、おまえと一緒に解決してやる。それが条件だ」

「……」

「だから転科じゃない。自由履修として、強襲科(アサルト)の授業を取る。それでもいいだろ」

 スカートを直したアリアの方に向き直ると……アリアは形のいいおでこをこっちに向けて、何か考えていた。

 武偵校(ぶていこう)では、自分が在籍していない専門科目の授業も自発的に受けることができる。

 これは自由履修と呼ばれ、単位には反映されないのだが、多様な技術が求められる『武偵』という仕事に就くため、生徒たちは割と流動的にいろんな科の授業を受けているのだ。

 優秀な武偵のアリアは、自分のドレイ……手駒を欲しがっている。猛烈に。

 そしてあのチャリジャックの時に俺に出出会い、取り逃がしたことで、目を付けたのだ。

『こいつなら、自分の有能な武偵として使えるかもしれない』と。

 そこまでは仕方ない。トランプで言えば、もう、アリアに取られてしまったカードみたいなものだ。

 だが、まだこっちにも伏せているカードがある。

 それがバレれば、アリアは俺に失望して、離れていってくれるだろう。

「……いいわ。じゃあ、この部屋から出てってあげる」

 俺の妥協案に、やっと――――疫病神が出ていく宣言をしてくれた。

「あたしにも時間が無いし。その1件で、あんたの実力を見極めることにする」

「……どんな小さな事件でも、1件だぞ」

「OKよ。そのかわり、どんな大きな事件でも1件よ」

「わかった」

「ただし、手抜きしたりしたら風穴あけるわよ」

「ああ、約束する。全力でやってやるよ」

 今の俺の全力で、な。

「さて、じゃあそろそろ出て行ってくれ」

「言われなくても分かってるわよ――――って言いたいところなんだけど……あのね、ミズキ。もう一晩だけ泊めてくれない?」

「何で?」

「……部屋のカギ、置いてきちゃった」

「……おいおい」

 前言撤回。どうやらもう一晩だけ、疫病神は俺の部屋から出て行ってくれないようだ。 
 

 
後書き
お久しぶりです!白崎黒絵です。
前回、「なるべく早く更新できるように頑張ります!」とか言っていたクセに、更新が遅くなってしまってすみません。今後は気を付けます。(不用意な発言をしないという意味ですヨ)
それじゃあ今回の内容に触れていきましょう。えーっと、今回の話は……(必死に読み直している最中)……なんか前半はやたらと暗いのに、後半は正反対でめっちゃ明るいですね。どうなってんでしょうね?
今回の話は、前半部分はオリジナル、後半部分は原作を元にした(というかぶっちゃけほぼパクった)内容になっております。前半は頑張った!
なお、前半で出てきた妹?や頭の中の声の秘密などは、しばらく一切出てきません。これからしばらくは原作沿いで書いていきますので、どうか応援よろしくお願いします!(目が本気)
それではここらへんでやっておきますか、いつものヤツ。
今回は我らがメインヒロイン、アリアからのコメントです!

「考えなしにオリキャラを登場させるんじゃないわよっ!」

それでは皆様ごきげんよう。次回は出来る限り早く投稿したいと思っております。(さっき反省したばかりなのに無責任な発言)
疑問、質問、感想、誤字脱字の指摘などがありましたらコメントください。 
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