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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
武偵殺し
  10弾 夕焼け色の部屋で

 温室からマンションに戻ると、窓から見渡す<学園島>を夕陽(ゆうひ)が金色に染めていた。

 武偵校(ぶていこう)とその寮、生徒向けの商店だけが乗っかっているこの人工浮島(メガフロート)、元々は東京湾沿岸の再開発に失敗して叩き売りされていた土地らしい。

 その証拠に、レインボーブリッジを挟んですぐ北にある同じ形の人工浮島(メガフロート)は未だに空き地のままで、見たまんま<空き地島>とあだ名されている。

 そのがらんとした人工浮島(メガフロート)の南端には仕方なしに立てられた風力発電機がノンキに回っていて――――うん。のどかだ。嫌いじゃないぜ。この風景。

「太平洋上で発生した台風1号は、強い勢力を保ったまま沖縄上空を北上しています」

 ニュースを垂れ流すテレビが、(かえ)ってこの部屋の心地よい静けさを際立たせる。

 ああ、まったく。いい部屋だよ。ここは。

 今ここに、性格ド最悪な女子がいることを除いてはな。

「遅い」

 ぎろ、とソファーから頭を傾けてこっちを見てきたアリアは、鏡を持っていた。

 どうやら、暇つぶしに枝毛でも探していたらしい。

 アリアは仕上げにか前髪を上げてパッチンと銀色の髪留めでまとめ、おでこを出した。

 なんかガキっぽい髪留めだが、チビ可愛い見た目のアリアにはよく似合っている。

 たまご肌のおでこはチャームポイントだと、自分でも分かってるんだな。

「どうやって入ったんだ?」

 愚問だと自分でも思うが、俺は抗議の意思表示として一応聞いておく。

「あたしは武偵よ」

 ほら愚問だった。

 たぶん、ここのカードキーを偽造したのだろう。鍵開けは武偵技術の基礎中の基礎だからな。

「それとも何?あんたはレディーを玄関先で待ちぼうけさせる気だったの?信じられない。許せないわ」

「誰もそんなこと言ってないだろうが。そもそも、逆ギレするような奴は日本ではレディーと呼ばないんだよ、でぼちん」

「でぼちん?」

「額のでかい女のことだよ」

「――――あたしのおでこの魅力が分かんないなんて!あんたいよいよ本格的に人類失格ね」

 アリアは大げさに言うと、べー、ちいさなベロを出した。

 ああ。分かってる。分かってはいるさ。確かにアリアは可愛い。

 見 た 目 だ け は な 。

「この額はあたしのチャームポイントなのよ。イタリアでは女の子向けのヘアカタログ誌に載ったことだってあるんだから」

 アリアは俺に背を向けると、楽しそうにまた鏡をのぞきこんで自分のおでこを見た。

 ふんふん♪

 鼻歌まで歌い始める。はっきり言って、迷惑なことこの上ない。

 俺は不機嫌さのアピールとして、(かばん)をアリアの隣に放り投げてやった。だがアリアはそれを意にも介さず、へーぜんと自分の額をご満悦で眺め続けている。

「そんなに自慢のおでこなら地元(イギリス)の雑誌からもさぞかしオファーがあったんでしょうね。貴 族 様」

 俺は洗面所に入って、ちょっとイヤミな口調で背中越しに言ってやった。

 するとアリアは、

「……あたしのこと、調べたわね?」

 と、なんでか嬉しそうにやってくる。

「ああ。本当に、今まで1人も犯罪者を逃がしたことがないんだってな」

「へえ、そんなことも調べたんだ。武偵らしくなってきたじゃない。でも――――」

 そこまで言うとアリアは壁に背中をつけ、ぷらん、と片脚でちょっと蹴るような仕草を見せた。

「――――こないだ、1人逃がしたわ。生まれて初めてね」

「ほう。凄い奴もいたもんだな。誰を取り逃がしたんだ?」

 おっと。理子(りこ)の情報にも間違いがあったか。

 俺はコップに水を汲み、うがいを始める。

「あんたよ」

 ぶっ!

 俺は水を盛大に噴きだしてしまった。

 俺、って、ああ、あのチャリジャックの後でのことか!

「お、俺は別に何もしてないだろ!なんでカウントされてんだよっ!」

「強猥したじゃないあたしに!あんなケダモノみたいなマネしといて、しらばっくれるなんて最低よ!このウジ虫!」

 ドレイからケダモノ、さらにウジ虫か。留まるところを知らないな、俺の評価下落は。

「だーかーら!あれは不可抗力だっつってんだろ!それに、そこまで言われるようなことをした憶えはない!」

「うるさいうるさい!あんたみたいなのがいるから、日本の犯罪はいつまで経ってもなくならないのよ!この犯罪者!」

 俺の中で、そう言ったアリアと別の女の子が重なった。

 記憶の中で、黒い髪の女の子が泣きながら俺に向かって叫ぶ。『この犯罪者!』そうだ、この言葉を俺は昔、誰かに――――

「ちょっと!あんた大丈夫!?なんかすっごく顔色悪いわよ!?」

 アリアが心配した声で俺に駆け寄ってくる。「大丈夫だ」って言おうと思ったが口に、というか全身に力が入らない。あれ?どうしたんだ、俺?

「ミズキ!ちょっと、しっかりしなさいよ!ミズキ!」

 おかしいな?アリアの顔が近くにあるのに、声だけがどんどん遠くなっていく。最後には視界も真っ暗になり始めて。

 俺の意識はそこで途絶えた。
 
 

 
後書き
どうもお久しぶりです。白崎黒絵です。
更新遅れて本当にすみませんでした。最近、ちょっと忙しかったんです。冬休みが終わり、学校が始まった途端に宿泊研修に強制参加させられたり、4月の投稿用の原稿書いてたりと、色々あったんです。ごめんなさい。
さてと、謝罪はこのくらいにして(謝罪というかただの言い訳)、今回の話は……なんか最後にミズキが倒れてるんですけど!?大丈夫なんですかね、これ。(おまえが質問してどうする)
まあ、今回ミズキが倒れた理由やら突如(記憶の中に)現れた少女とかについては次回も含め、おいおい明かされる予定ですので、これからもこの作品を見守ってやってください。
それでは恒例のアレ、やっちゃいますか。
今回はミズキからです!

「更新遅れて、マジですいませんでした!(あれ?なんか既視感が……)」

疑問、質問、感想、その他いろいろやアリア談義のお誘いなど、あったらください!特に後半!
それではまた次回。なるべく早く更新できるように頑張ります! 
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