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少年少女の戦極時代

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第56話 脱出③ vs黒影トルーパー



「すんなり通れるはずもないか――」

 黒影トルーパーが向かってくる。咲は壁を背にして避けた。
 変身したならともかく、生身の咲がアーマードライダーの兵士に勝てる道理はない。せめて応戦する3人の邪魔にならないようにしているしかない。

「僕は別ルートを探します!」
「気を付けろよ!」

 だがそんな咲に黒影トルーパーの一人が槍を向けて来た。避けようと屈んだ咲の頭上で、紘汰が壁走りをかまして黒影トルーパーを吹き飛ばした。

 紘汰が咲の手を取って立たせる。

「戒斗行くぞ!」
「ただ逃げるってのは性に合わない! お前らは先に行け!」

 戒斗は戦極ドライバーとバナナロックシードを取り出していた。

「無茶はするなよ! ――咲ちゃんっ」

 紘汰が走り出そうとする。咲は、バロンに変身した戒斗を顧みて――紘汰の手を振り解いた。

「咲ちゃん!?」
「行って!!」

 咲は返事を聞かず戦極ドライバーとドラゴンフルーツの錠前を装着し、月花に変身した。
 DFバトンを繋ぎ合わせてロッドにする。大橙丸と無双セイバーを繋いで武器にした鎧武を見て思いついた、DFバトンの応用法だ。

『やああ!』

 月花はDFロッドを振り、バロンと戦っていた黒影トルーパーの一人を殴りつけて沈黙させた。

『お前…!』
『足手まといにはならないから!』

 背後から襲ってきた黒影トルーパーの腹に全力でロッドの一突きを入れ、撃沈させる。それを見届けたバロンが、前に向き直った。

『――付いて来い!』
『はい!』

 バロンと月花は背中合わせになり、それぞれ向かって来る敵をバナスピアで、DFロッドで撃退した。
 10分も経つ頃には、その場の黒影トルーパーは全員が床に倒れる結果となった。


 勝利を喜んでいる暇はない。バロンと月花は変身を解除せず、紘汰に追いつくべく走り出した。

 …………

 ……

 …

 独りになってしまいながらも、紘汰は何とか、光実が言っていた地下のクラックに辿り着けた。
 戒斗も咲も光実もいないが、彼らは彼らできっと脱出できたと、今は信じるしかない。

 だがそう易々と逃げられるわけもなかった。
 クラックのあるラボで紘汰はシドに鉢合わせ、二人はアーマードライダーに変身して戦うこととなった。
 銀とオレンジ、二人のアーマードライダーがヘルヘイムに転がり出た。



『この街を守るだと? 笑わせんじゃねえ!』

 銀のアーマードライダーは段違いの力で鎧武に斬りつけ、蹴り飛ばす。

『初瀬を仕留め損なった奴がどの口でほざくかねえ。おめえが奴を逃がしたせいで、よけいな犠牲が出たんだぜ? 忘れたのか』

 頭を持ち上げられ、地面に投げ飛ばされる鎧武。
 耳の奥にリフレインする、公園で逃げ惑った人々の悲鳴と泣き声。

『それでも俺は――』

 思い描くのは、たったさっきの咲の慟哭。
 咲は、自分のことで泣いていた。あの強気な咲が、仲間のためにしか泣かないあの子が泣くほどに苦しいものなのだ。

『あの子みたいに純粋な子を泣かせて平気でいられる、そんな奴を正義とは認めねえ!』

 気炎を吐いても実力差は覆らない。銀のアーマードライダーのソニックアローが鎧武を容赦なく抉った。

 倒れた鎧武に、銀のアーマードライダーは笑い声を上げながら迫ってくる。終わりか、いや、まだ負けられない――そう思った瞬間だった。

 クラックを超えて飛び込んできたローズアタッカーが、銀のアーマードライダーを退けた。
 ローズアタッカーに乗っていたのは、バロンと月花だった。 
 

 
後書き
 ヒーローはピンチの時に現れる。
 咲としては自分を立ち直らせた恩のある戒斗を一人で戦わせることに抵抗があったので、わざわざ紘汰とはぐれてまで戒斗の応援に駆けつけました。
 脱出編に入ってから咲/月花が大人に合わせて走ってばかりでちょいと可哀想になりつつあります。誰か彼女を抱えて逃げてあげて(>_<) 
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