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金木犀

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第二章

「それでも女の子なの?女の子ならね」
「ちゃんとしろっていうのね」
「後片付けとかお掃除も」
「お料理はその中の一つに過ぎないの」
 あくまで、だというのだ。
「お洗濯もしないし」
「そんなの洗剤入れたらボタン一つじゃない」
「そうよね」 
 今時洗濯板は使わないというのだ。もうその板を見たことがない人も多いだろう。
「それで乾かすだけ」
「乾燥機だってあるから」
「アイロンは?」
 母はこのことについても言った。
「それは?」
「そんなのいいわよね」
「クリーニング屋さんがしてくれるじゃない」
「そんなのスーツ位しかしないから」
「だったらね」
「あんた達のハンカチとかはお母さんがいつもしてるのよ」
 母はこのことからまた言った。
「糊まで効かせてね」
「そんなのいいわよ、別に」
「そうよ、しかも今夏だから」
 暑いからしないというのだ、もっともこの娘達は普段からしないが。
「別にね」
「いいわよね」
「アイロンなんて」
「それも女の子の身だしなみよ、夏でも冬でもしないと」
 女の子なら、というのだ。
「いいわね」
「だからいいわよ、アイロンなんて」
「特に」
「全く、お家じゃ何もしないんだから」
 野菊もいい加減娘達に呆れてきた。何しろ今も自分の話をゲームとかをしてアイスを舐めながら適当に、しかもラフな格好でだらしない姿勢でけだるそうに応じているだけだから。
 それでもだ、こう言うのだった。
「お料理だけじゃないのよ」
「ううん、部活あるし」
「お友達とも遊ばないといけないし」
「お勉強もあるしね」
「ゲームもあるから」
「それもいいけれど家事もしなさい」
 どうしてもだというのだ。
「しかもリビングまで汚して」
「あれっ、そんなに汚れてる?」
「そうかな」
 娘達は自分の周りを見回した、見ればかなり散らかっていて汚いものだが彼女達の主観ではどうというものでもない。
 しかしだ、野菊は怒った顔で言うのだった。
「汚れてるわよ、だからね」
「お掃除しろって?」
「そう言うの?」
「しないのならお部屋に戻りなさい」
 自分達の、というのだ。
「今からお掃除するから」
「別に散らかってないのに」
「別にいいのに」
「よくないわよ、お掃除したら洗濯ものを干して買い物に行って」
 家事の順番も言っていく。
「お昼も作って」
「私達が作るわよ」
「ある食材でね」
「あんた達は散らかすでしょ」
 料理の後でだというのだ。
「それも滅茶苦茶に、だからね」
「いいの?」
「そうなの」
「食器も洗ってそれも片付けて」
 このことについてもイライラとした感じで言う野菊だった。 
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