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八条学園怪異譚

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第五十二話 商業科の屋上その三

「そっちは」
「そうね、何時でもいいけれど」
「今日行く?」
 愛実は聖花にこう提案した。
「そうする?」
「今晩ね」
「どう?」
 聖花のその目を見て問う、その眼鏡の奥の目を。
「今回はね」
「早いうちになのね」
「そう、どうかしら」
 再び聖花に問う、その問いは普段より強い感じだ。
「そうする?」
「そうね、文化祭の前にね」
「行ってみるといいでしょ」
「ええ、文化祭になったら忙しいしね」
「そうでしょ、ずっと泊まり込みでね」
「クラスのことと部活のことで忙しいし」
 両方の出しものでだ、二人は文化系の部活なので文化祭は忙しいのだ。それで二人共今こう言うのだ。
「だからその前にね」
「行っておくのね」
「そうしない?」
 聖花に再び言う、今回は本当に普段より強い愛実だった。
「近いから」
「すぐ上だからね」
「そうでしょ、知ってる場所だし」
 知っているから安心感もある、このこともあった。
「早いうちに行ってね」
「それで、なのね」
「そう、行かない?」
「そうね、早いうちに済ませてね」
 聖花も愛実の言葉に頷いて言うのだった。
「そこが違ってもね」
「そう、その次の場所に行けばいいか」
「次の次は何処なの?」
「医学部の標本室よ」
 八条大学のそこだというのだ。
「部屋っていうか小さな博物館みたいになってるけれど」
「何か怖いものが一杯ありそうね」
「みたいね、色々な標本があったから」
「私そういうのは」
 聖花は顔をこれまでになく曇らせて愛実に答えた。
「どうもね」
「駄目なのね」
「愛実ちゃんはどうなの?」
「私も。食材で内蔵とか見るのは平気だけれど」
「ホルモンとかレバーよね」
「そういうのは大丈夫だけれど」
 食材でしかない、だから特に怖く思うことはないというのだ。
 しかしだ、それでもだというのだ。
「標本、ホルマリン漬けとかはね」
「苦手なのね」
「そうなの、私もね」
「夜行くのよね」
 聖花は愛実に行く時間も尋ねた。
「そうよね」
「いつもそうじゃない」
 愛実もだ、暗い顔で応える。
「だから」
「夜にホルマリン漬けの標本が一杯ある場所に行くのね」
「前に理科室に行ったことあるじゃない」
「ええ、動く標本の人達がいた場所ね」
「そこ以上にね」
 ある意味において見応えのある場所だというのだ。
「それでもね」
「次はそこなのね」
「覚悟して行こう、そこも一緒に来てくれる人がいると思うしいなくても」
「一人じゃないからね」
「二人だから」
 愛実と聖花、幼い頃からいつも一緒にいてその時もだというのだ。 
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