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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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神鳴殿


「何でエバがエルザと新人ごときにやられんだよ、ア?いつからそんなに弱くなったァ、エバァ!」

カルディア大聖堂。
そこでは、ラクサスが雷神衆の1人、人質を石にしていたエバーグリーンが敗北した事に対して、柱を殴りながら怒鳴っていた。

「エルザが強すぎるんだ。そして、あの新人もなかなかの実力者だったんだろう。俺かビックスローが行くべきだった」

そこにつかつかとフリードが歩み寄る。

「なぜ戻ってきた、フリード」
「ゲームセットだからな。人質が解放されたら、マスターはもう動かない」

フリードがそう言った瞬間、ラクサスはフリードを睨みつけ―――――――

「!」

そのすぐ右に雷を放った。
あと少しズレていたら、確実にフリードに当たっていただろう。

「ラクサス・・・」
「終わってねぇよ」

目を見開いて驚愕するフリードに、ラクサスは雷を帯びたまま告げる。

「ついて来れねぇなら消えろ。俺の妖精の尻尾(フェアリーテイル)には必要ねぇ」












「バトル・オブ・フェアリーテイル!?」
「ラクサスがそんな事を?」

その頃ギルドでは、石化していた9人がマカロフから事情を聞いていた。

「・・・が、それももう終わりじゃ。お前達が石から戻れば、ラクサスのくだらん遊びに付き合う事もあるまい」
「バカじゃないの?あの七光り」

ステージに腰掛け、興味なさそうに髪の毛をいじっていたティアがぼそっと鋭く言い放つ。

「でも・・・フリードの罠にかかってキズついた皆は・・・」
「ミラちゃんの言う通りよ!今回は絶対に許せない!」

ミラが俯いて呟き、サルディアが叫ぶ。
彼女やヒルダは同じチームのライアーとスバル、そして絶対的忠誠を誓う主であるクロスが傷つけられているのだ。
ヒルダは声こそ出さないが、その手にはしっかりとセルリヒュールが握られている。

「わーっとるわい。後でワシが最大級の仕置きをする。ラクサスめ・・・今回ばかりはただでは済まさんぞ」
「ちょっと待ってくれ」

憤慨するマカロフに、突然待ったがかかる。
かけたのはナツだ。

「確かにアレだ・・・仲間同士無理矢理戦わなきゃならねーって状況はどうかと思ったが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強を決めるっていうラクサスの意見には賛成するしかないだろ」
「いや・・・そうでもないけど」

うんうん、と頷くナツ。
レビィが苦笑いを浮かべながらツッコむが、意にも介さない。

「まあ・・・あまりラクサスを怒らねーでくれって事だ。じっちゃん」
(ナツ・・・お前という奴は~)

ここまでの問題を起こしたラクサスに対してこれほどまでに優しい言葉をかけるとは・・・とマカロフはナツの言葉に感激する。

「つー訳で」

――――――が、感激を感激のまま終わらせてくれないのがこのナツであり。

「今から第2回バトル・オブ・フェアリーテイル開始だぁー!全員かかってこいやー!」
『はいい!?』
「やめーい!」

感激は一瞬にして消え去った。

「だって俺達何もしてねーじゃん!ホラ!バトルしよーぜ!」
「やめてよ・・・アンタが言うと冗談に聞こえないから」
「どうしてもってんなら相手にならなくもないよ」
「カナ、のらないの」

空を切る音と共に拳を突き出すナツにルーシィが呆れ、カナが笑い、ビスカが注意する。

「ナツ・・・女のコ相手にバトルとかはないと思うよ」
「女とか男とか関係ねーし!」
「うわっ、すげームカツク顔」

どんな顔かというと、目は半開き、左の眉を上げて右の眉を下げ、口を開いたへの字のようにしている。
すると、そこにセルリヒュールを構えたヒルダが歩み寄った。

「そうか・・・そう言うのならば私が相手になろう。この怒りと苛立ちを魔力に変え、最大の砲撃をお前に放つ!覚悟しろ!」
「すいませんでしたーーーーーーーーーっ!」
「頭下げるのはやっ!」
『あはははっ!』

魔王の名を持つヒルダには勝てず。
そんな和気藹々を具現化したようなメンバーの様子を、ガジルとジュビアの元ファントム組が遠目で眺めていた。

「どうしたの、ガジルくん」
「別に・・・」

ジュビアの問いに、ガジルはぶっきらぼうに答える。

「楽しいギルドだよね」
「イカれてるぜ」

そんな会話をしていると、ミラがふとギルドの入り口を見る。

「あれ?何かしら」
「ん?」

ミラの言葉にカナがそちらを向いた瞬間、突如ギルドの入り口を塞ぐかのように髑髏マークが現れた。
現れたのはそこだけじゃない。

「何だ!?」
「術式の情報ボードがギルド中に!?」

ビービーと警告音のような音が響くギルド。
その音が止んだと同時に、声が響く。

《聞こえるか、ジジィ。そしてギルドの奴等よ》
「ラクサス」

聞こえてきたラクサスの声にナツが呟く。

《ルールが1つ消えちまったからな・・・今から新しいルールを追加する》
「新しいルール?」
「ふざけた事を・・・」

サルディアが首を傾げ、ヒルダが憎々しげに呟く。

《バトル・オブ・フェアリーテイルを続行する為に、俺は『神鳴殿』を起動させた》

それを聞いた瞬間、マカロフとティアが驚愕する。

「神鳴殿じゃと!?」
「何言ってるのよ・・・そこまでやる必要ないじゃない!」

あのポーカーフェイスのティアでさえ目を見開き、唖然としている。

《残り1時間10分。さあ・・・俺達に勝てるかな?それともリタイアするか?『マスター』。はははははっ!》

その言葉を最後に、ギルド中の情報ボートが消える。
残ったのは呆然とするナツ達と驚愕するマカロフ、唖然とするティア。

「何を考えておる、ラクサス!関係ない者達まで巻き込むつもりかっ!」

ラクサスの行動に、マカロフは怒り叫び声を上げる。
神鳴殿を起動させた・・・それが意味するものはただ1つ。
だが―――――――。

「んぐっ」

それをマカロフが言う事はなかった。

「!」
「じっちゃん!」
「どうしたの!?」

突如胸を押さえ、苦痛の声を上げたのだ。

「うう・・・」

そのまま胸を押さえてマカロフは倒れ込む。

「大変!いつものお薬!」

それを見たミラは慌てて薬を取りに階段を上がっていく。

「こんな時に・・・!」
「マスター、しっかりしてください!」
「くう・・・」
「サルディア!お前の召喚者に治癒が可能な者はいないのか!?」
「いないよ!いたらクロス君だって治してる!」

ビスカとレビィ、ヒルダとサルディアが駆け寄る。
マカロフはきつく目を閉じ、苦痛を堪えていた。

「神鳴殿って何だよ!?」
「ううう・・・」
「じっちゃん!」

ナツが声を荒げるが、マカロフはただ苦痛の声を上げるだけ。
すると、薬を持って階段を下りてきたミラが慌てた様子で近くの窓を指さした。

「大変・・・!皆・・・外が!」







ギルドの屋上。
ミラに言われて外を見ようと屋上に出たナツ達は、全員空を見上げていた。

「何だアレ」
「雷の魔水晶(ラクリマ)・・・?」
「あんなものが・・・」

丸い球体。
黄色く透き通って、中に雷の模様が回っている。

「街中に浮かんでる」

そしてそれは、マグノリアの街をぐるっと一周するように浮かんでいた。

「1つ1つの魔水晶(ラクリマ)にものすごい魔力の雷が帯電している」
「まさか神鳴殿て・・・雷の宮殿とかそういう意味?」
この街(マグノリア)をそれに見立てて・・・」
「てか、あれが放電したらどうなっちゃう訳?」

ルーシィが空を指さす。

「放電すれば、街中に無数の雷が落ちるわ」

こんな状況でも冷静に、ティアが呟いた。
その青い目は真っ直ぐに神鳴殿を見据えている。

「そんな事はさせないわ!スナイパーライフル換装!」

それを聞いたビスカが自分の魔法、|銃士(ザ・ガンナー)を使って別空間からライフルを取り出し、構える。

「!待ちなさいビスカ!神鳴殿に手を出したら・・・!」

ティアは慌てて静止を掛けるが、時既に遅し。
銃口が伸び、スコープを使って目標を捉え・・・神鳴殿を1個破壊した。

「やった!」
「やるじゃない、ビスカ」
「こんなの、全部私が」

完全に壊れた魔水晶(ラクリマ)を見つめ笑うルーシィとカナ。
更に破壊しようとビスカはライフルを構え直そうとし――――――――

「!」

ビキッ、と。

「あああああっ!」

その体に雷が直撃したかのような電撃が走る。

「きゃっ!」
「ビスカ!」
「おい!しっかりしろ!ビスカ!」
「何コレ!?どうなってんの!?」

ドサッと倒れるビスカ。

「だから言ったじゃない。あれに手を出したらいけないって。最後まで聞きなさいよ」
「ティア!」
「どういう事だ!?」

呆れたように溜息をつくティアに、ナツが問う。
ティアはゆっくりと目を空に向け、魔水晶(ラクリマ)の1つを指さした。

「あの魔水晶(ラクリマ)には生体リンク魔法、攻撃してきた者と自分のダメージを連結させる魔法がかけられているわ」
「え!?」
「神鳴殿を壊すのは自由だけど、そのダメージはそのまま自分に返ってくるの」
「そんな!」

その言葉に驚愕する一同。

「このままじゃ街の人まで!」
「ラクサスをやるしかない!行くよっ!」
「あたし・・・出来るだけ街の人避難させてみる!」
「雷神衆はまだ2人いる!気を付けるんだよ!」

戦えるメンバーは各々叫び、ギルドを出ていく。









「ふはははっ!どうだジジィ!次の人質は街の人間全てだ!」











「何考えてんだ、あの野郎!」
「ナツ!」

ビスカを抱えているレビィが顔を上げる。
ナツは屋根に飛び降り、そのまま下って行った。










「ここまでやる事は・・・」
「ここまで?」

驚愕するフリードに振り返らず、ラクサスは呟く。










「やりすぎだろ!?」

ズガガガ・・・と音を立て、ナツは屋根を下る。










「俺の限界は俺が決める」

ラクサスの声に怒りが混じる。










「そんなにマスターになりたきゃ、じっちゃんと戦ってみろよ!」

ガン、と。
ギルドを囲む術式に引っかかり、ナツは外に出られない。











「これァ潰し合いだぁ!どちらかが全滅するまで戦いは終わらねぇ!」

ラクサスが叫ぶ。












「いい加減にしろよ、ラクサス!」

ガコォ、と音を立て、ナツが額を術式の壁に打ちつける。
その額から血が流れた。

「ナツ・・・落ち着いて!」
「落ち着きなさいよバカナツ!」

無理矢理出ようとするナツを止めようとティアも屋根を下る。

「やめなさいって!」
「んな事言ってる場合かよ!」
「ここで騒いだって何も変わらないでしょうが!少しは冷静になりなさい!」
「お前が冷静すぎんだろーが!」
「こういう場合において、冷静さを欠いたらもう負けなのよ!アンタは落ち着きなさい!」
「落ち着いてられっかよ!」

必死にナツを押さえようとするティアだが、いつもの様にとはいかない。
ここは屋根の上。ナツは術式に引っかかっている為屋根の上から落ちたりしないが、ティアは別。
80歳以上でも石像でもない為、下手をすれば落下するのだ。

「ナツ!いいから上がってきて」
「くそっ!こんなトコにも見えねー壁がっ!」

ガンガンと術式を殴るナツ。
すると、レビィが口を開いた。

「術式でしょ?文字魔法の一種だから、私何とか出来るかもしれない」

それを聞いたナツとガジルは同時にレビィに目を向けた。
この術式さえ何とか出来れば、ナツもガジルも参戦出来るのだから。

「本当か、レビィ!?」
「私・・・あなた達ならラクサスを止められるって信じてるから」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
あー・・・どうしようどうしよう!予定通り進むとティア戦いの場がない!
まあ楽園の塔編頑張ったねゆっくり休め、って事になるけど・・・うう。
もう、フリードとミラちゃんの勝負は変えられないかなぁ・・・元雷神衆設定はティアの一匹狼キャラが崩れるし・・・。
あ、でも2年前、イオリが死ぬ前までなら大丈夫かな?元々孤独キャラだけど、エバーグリーンみたいにその強さを買われて入った、とか。断る理由がないから入るわ、みたいな。
でもイオリが死んだ事とラクサスの行く先が変になっちゃった事で雷神衆を抜けて、それでチーム組んだり人と関わるのが更に嫌いになって、とか!

・・・と、何となくティアと雷神衆を絡ませたい緋色の空さんでした。

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