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デート・ア・ラタトスク

作者:エミル
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精霊とASTとフラクシナス

「───で、これが精霊って呼ばれる怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊よ。厄介なものに巻き込んでくれたわね。私達が回収してなかったら、今頃二、三回くらい死んでるわよ。で、行くけど───」

「「ちょ、ちょっと待った(待ってよ)!!」」

ペラペラと説明を始める琴里を制するように二人は声を上げる

「何、どうしたのよ。せっかく司令官直々に説明してあげているっていうのに。もっと光栄に咽び泣いてみなさい。今なら特別に足の裏くらい舐めさせてあげるわよ?」

軽く顎を上げて、二人を見下すような視線を作る。士道は琴里が琴里らしかぬ暴言を吐くことに驚き、エミルは少し引いていた

「ほ………本当ですか!?」

嬉しそうに声を上げたのは、琴里の横に立っていた神無月だった。琴里は即座に

「あんたじゃない」

ガスッ

「ぎゃおふぅ………!」

「「………………………」」

そんなやりとりを眺めていると、士道は呆然と口を開く

「………こ、琴里……だよな?無事だったのか?」

「あら、妹の顔も忘れたの、士道?物覚えが悪いとは思っていたけど、さすがにそこまでとは予想外だったわ。今から老人ホームにでも住んでお年寄りと話でもしていた方がいいかもしれないわね」

士道は汗をひとすじ垂らすと、試しにエミルにほっぺをつねってくれと頼んだところ、結果的には痛かった。士道の可愛い妹はお兄ちゃんのことを呼び捨てにはしないはずだ。士道は頭をかくと、困ったように声を発する

「……なんかもう、意味がわからなすぎて頭の中がごちゃごちゃだ。お前、何してんだ?ていうかここ、どこだ?この人達、何だ?それと──」

琴里は、はいはいと言いたげに手を広げ、士道の言葉を止めさせる

「落ち着きなさい。まずはこっちから理解してもらわないと説明のしようがないのよ。まず、そこの精霊もどきを隔離室に連れていきなさい」

琴里がパチンと指を鳴らすと、エミルの後ろから屈強な男達が現れ、エミルの腕を拘束する

「え!?ちょ………何をする気なの!?」

「早く連れて行って。心配ならあなたが探していた女の子も連れて行った方がいいかしら?」

琴里が言っている女の子というのはマルタのことであろう。もちろんエミルはコクコクと頷き、マルタも嬉しそうにしながら着いていき、隔離室へと連れて行かれ、エミルとマルタは部屋に入れられる

「検査の準備ができるまでここで待っていろ」

と、屈強な男達の中の一人はそう言うとバタンと扉を閉めて立ち去っていった

「何が何だかよく分からなくなってきたよ………」

「災難に巻き込みまくりですね。エミル様」

音も無く闇の中から現われたのはテネブラエだった。これから自分が何をされるか分からないのに呑気そうにあくびをしている

「まぁ、マルタ様には会えましたし、結果オーライじゃないですか」

「それはいいんだけど…何でマルタはここにいたの?」

なぜマルタがここにいたのか不思議に思うエミルはマルタに質問する

「私もよく分かんないだけどこの世界に来た時にはもうここにいたんだよ。琴里が言うからにはあたしがこのフラクシナスに凄い衝撃でぶつかって気絶していたらしくて……」

「簡単にまとめるとエミル様とマルタ様は別々の場所に転送させられたという訳ですね」

「とにかくマルタが無事でよかったよ……」

「私もエミルが無事でよかったよ~♡」

すっかりラブラブモードのマルタはおむろにエミルにぎゅう〜と抱きつく。テネブラエはその光景を見てくっくっくっと笑っていた

「……誰か来るようですね。私は隠れてますので」

テネブラエは闇の中に消えた頃には令音が部屋に入ってきた

「……検査を始めるよ。こっちに来たまえ、エミ郎」

「れ、令音さん!?それに僕の名前間違ってるし!!」

「……そうか?まぁ、とにかく早くしてくれ。エル」

「しかも変な愛称までつけられた!?」

令音の思考がよく分からないまま、エミルは検査を受けにいった























「……エルの検査の結果が出たよ。琴里」

「ん、ご苦労。令音」

士道にひとしきり説明した後、琴里はエミルの検査の結果が書いている用紙を見る

「不思議ね……何なのかしら、あれは」

首を傾け、琴里は不思議に思う。エミルの検査結果は実に普通の人間でもあり、精霊だという結果だったのだ。血液、レントゲン、DNA、何を調べても同じ結果。さすがの琴里でも謎の存在と言えるだろう

「やっぱり直接聞いた方がいいわね。令音、連れきて」

「……分かったよ」

フラフラとした足取りで令音が隔離室へと向かって行った

「琴里。お前、エミルに何をしたんだ?」

「身体検査しただけよ。別に変なことはしてないわ」

士道は少し不安そうだったが、何分かするとエミルとマルタが戻ってきてほっとしていた

「今度は何をしたいの……?」

エミルはぐた~と倒れながら言う。念入りに検査をさせられ、すっかり疲れているようだ

「ただ質問するだけよ。正直に答えること、いい?」

倒れたままエミルは頷くと琴里は質問を始める

「ずばり言うけど──エミルとマルタは何をしにこの世界に来たの?」

「「!?」」

エミルとマルタは驚いた。なぜ自分達が他の世界から来たのが分かっているのかが

「な……何で僕とマルタが他の世界から来たって言えるの?」

「理由は簡単よ。精霊出現の前に強力な霊力の力があったのよ。その力の一つはここの真上、そしてもう一つは士道の通う学校のグラウンドにあった。明らかに他の世界に来たとしか思えないわ。違う?」

琴里の言っていることは当たりだ。確かにエミルは士道の学校のグラウンドに、マルタはこのフラクシナスへと転送されたのだ

「その様子だと他の世界に来たということは本当のようね。で、目的は?」

「ぼ………僕達は」

「私が説明致します」

エミルが言おうとした瞬間、テネブラエが闇から姿を現す

「うわっ、何この生物、犬?」

「犬ではありません。私はエミル様に仕えるセンチュリオン・テネブラエと申します。以後、お見知りおきを」

「ふーん。で、テネブラエって言ったかしら。代わりに説明してくれるのよね?」

「はい。なぜこの世界に来たかと言うと、かくかくしかじかこう言うことでして───」

テネブラエが淡々と説明して終えると、琴里が納得したような顔になる

「つまりあなた達の世界のそのセンチュリオン達の力が私達の世界の精霊が持っていて、それを回収しに来たと」

「「そうそう」」

「なら、あたし達と一緒に行動しない?目的も一緒よ」

「目的も一緒ということは琴里さん達も精霊を?」

「そう。私達は精霊の力を封印、あなた達はセンチュリオンの力の回収。効率的だと思わない?」

確かにそれはいいがエミルは少し疑問に思うことが一つあった

「僕達は大丈夫だけど、そっちの精霊の力の封印はどうやるの?」

「あなたの隣にいる人物がやるわ」

エミルの隣にいる人物は───士道だった


「も、もしかして………士道?」

「うん。当たりよ」

「「えぇ────────!!!!」」

驚きが隠せないほどのエミルとマルタの声がフラクシナスの艦中に広がっていった

「そりゃ驚くわよね。こんなチキンで一人じゃ何もできない士道がやるなんて思わないわよね」

「あの、士道さんがやるのはいいんですが……なぜ、士道さんがやらなければいけないのですか?」

「私達〈ラタトスク〉は士道のために作られた組織なの。簡単に言うと士道を精霊との交渉役に据えて、精霊問題を解決しようって言った方が正しいわ。どちらにしても士道がいなかったら始まらない組織なの。私達はそのサポート役ね」

「ていうか、何で士道のためにこの組織を作ったの?」

「んー、まぁ、士道は特別だからよ」

「それ説明になってないよね!?」

「理由はそのうち分かるわ。とにかく私達が全人員、全技術を持って士道の行動を後押ししてあげるって話よ」

そこまで言うのだから士道のことは問題ないと二人と一匹(?)は納得した

「僕達もこの〈ラタトスク〉に協力するよ。士道が危なくなった時は僕達もサポートする」

「そ、これからよろしくね。エミル、マルタ、テネブラエ」

ここから始まる新たな物語。果たしてエミルとマルタはセンチュリオン達の力を取り戻せるのだろうか───

「じゃ、明日から訓練を始めるわよ。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも一週間後だからね」

「「「………くんれん?」」」

士道、エミル、マルタの三人は呆然と呟いた

 
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