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IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年

作者:Shine
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第15話

 
前書き
皆さん、新年あけましておめでとうございます。

あいさつが二日ってどうなんだろうとかは言わんといてください。

これでも、昨日投稿しようと思ったんです。

まぁ、お察しの通りPCですよ。不調でした。フリーズの連続過ぎて何もできないという。

やっぱあれだね。Vistaはダメだね。本当、いい加減7が欲しいです。8はいらん。

と、愚痴はこれくらいにして。

まだまだ、臨海学校が終わらないという。ISの2期は終わったのに。

というか2期面白いのは最初だけっていう。楯無さん登場と簪登場だけが楽しかったです。2期通して満足できたのはその2点ですね。

というか、9巻はいつ出るんでしょうね。3ヶ月以上延期してますけど。

そこは流石弓弦という感じがしますね。

あ、もう愚痴だけですいません。

では、本編どうぞ。

 

 
臨海学校二日目。

今日はISの試験運用が主となる。専用のビーチがあるのだが、そこまでは遠いので早め移動しなければ面倒なことになる。面倒なことは、まぁあれだ。察してくれ。

俊吾も裁きを受けたくないので、早めに移動を始めた。途中、一夏と合流して玄関に向かっていた。楯無とは朝の時点で別れた。今日は別行動になると前に説明を受けていたので、見送ったのだ。

渡り廊下を歩いていると、外の砂利に機能と同じようにプレートが立っていた。

『抜いてください』

あれ、昨日は抜かないでくださいだったよな?ってことは構って欲しくて、変えたのか。何というか、仕掛けた奴は面倒だな、絶対。

「なぁ、一夏。あれって昨日もあったけど、どうする?」

「え、あれって昨日からあったのか?俺、気づかなかったぞ」

…………え~。マジですか、一夏さん。いかにも気づいて下さいっていうか、分かりやすいだろ。…………一夏は根本的なところから唐変木なのか。いや、これの場合は鈍感(?)なのか。

「で、あれ抜いたほうがいいのか?」

「まぁ、抜いたほうがいいんだろうな。というか俺、あんなことやるの人に心当たりがあるし」

その人、絶対にろくな人じゃないだろ。俺の経験談からだけど。

「とりあえず、抜くか……」

一夏はそう言って砂利に降り、プレートを引き抜く。

「おわっ!」

何かあると身構えていた一夏は勢い余って尻餅を付いた。下には何もなくて、引き抜きた勢いそのままで尻餅を付いたので結構痛そうだ。

「いててて……」

「おい、大丈夫か、一夏」

「まぁ、何とか。と言うか、何もないのか……」

確かに何もないな、と俊吾が思っていると上の方から甲高い音が聞こえてきた。

キィイイイイイイイイイイイン―――――。

あ、これアカンやつや、と思った時には遅かった。

ドカーーーーーーーーーーーン!!!

何かが空から降ってきたのだ。

「イタッ!痛い痛い痛い痛い!!!」

何かが地面に落ちた拍子に、砂利が飛び散ったのだ。この時の教訓。『砂利は以外に殺戮兵器になれる。結構痛いもの』

「ああ、もう!何なんだよ!いてぇよ!!!」

俊吾はそう言いながら、落ちてきたものを見る。そこには

「…………ニンジン……なのか?」

ニンジンがあった。しかも2mくらいの。

「なぁ、一夏。これ……」

「ああ、ニンジンだな。少なくとも俺にはそう見える」

そうか、じゃあ大丈夫だ。俺の目がおかしいじゃないんだな、良かった。

「あっはっはっはっは!いっくん!引っかかったね!!!」

突如、ニンジンが二つに割れ中から人が出てきた。その人は、世界中の人が良く知り、世界中の学者が追い求めている人だった。そう、ISの生みの親の篠ノ之束だった。

「というか、酷いよ、いっくん!昨日気づいて欲しくて、前々から用意してたのに気づいてなかったなんて!!!」

いや、あれじゃ気づいても反応しないだろう。何を言ってるんだ、この人は。

「まぁ、いいや。箒ちゃんはどこかな?」

「え~、多分、先に行ってるんじゃないんですかね」

「そっか~。じゃ、私は行くね!!!」

そう言って、駆け出すかと思われたが、止まり俊吾の方を向く。

「…………へ~、君が大海俊吾か~。へ~」

ジロジロと俊吾を見る。正直、ジロジロ見られていい気分ではない。

「あの、一体、何ですか?」

俊吾かそう言うと、束は観察を止め少し離れた。

「ふむふむ…………中々面白そうな子だね!じゃあ、またね!しゅんくん!!!」

束はそういって駆けていった。物凄いスピードで。

「…………何なんだ、全く」

嵐が過ぎていったとはこのことだ。あまりの衝撃に、思考が追いついていない。だからといって、考えがまとまったところでどうにかなる気もしない。

「凄いな、俊吾。束さんが、身内以外であだ名つけてるの始めて見たよ」

それは光栄な事なのだろうか。正直、面倒な気配しかしないだが、それは。

「……と、少し急がないと不味いかもな。行くぞ、一夏」

時計は集合時間十分前を指していた。二人は、少し急いで集合場所に向かった。

◇   ◆   ◇   ◆

「よし、全員集まったな」

千冬はそう言って、全体を見渡す。

「さて、これから各班に分かれて装備試験を行ってもらう。専用機持ちは専用パーツのテストだ。迅速に行なえ。解散!」

そう言われ、生徒は各々の班に分かれて装備を色々と操作し始めた。

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

「はい」

一体どうしたんだろう、箒さん。ま、気にしても仕方ないか。それよりも、俺の専用パーツってなんだろうな。楽しみだ。

「え~と、高速移動パッケージに防御用パッケージ、それに…………重砲パッケージ?何だこれ……」

訝しげな顔をして、パッケージの説明を見ようとすると、先程聞いたばかりの声が響いた。

「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~~~ん!!!」

あ、これは無視しておこう。関わるとロクなことにならない。え~、何何。

「束……」

「さぁ、ちーちゃん!一緒にハグハグしよう!!!愛を確かめあ―――ぶへっ」

このパッケージは固定砲台の重砲をそのまま黒天慟弐取り付けるもので、文字通り重兵装になってます。

「ぐぬぬ……相変わらずのアイアンクローだね!だがしかし!!!」

ただし、ある程度は軽量化されていて移動式砲台となっています。ただし、普段の移動に比べると遅くなるのであしからず。まぁ、これは仕方ないか。

「そんなものでこの私を捉えられると思ったk―――ぶほっ」

ただし、このパッケージは他のパッケージと併用が出来るので使い勝手の悪さを補えます。ほ~、面白そうじゃないか。

「くぅうう……ちーちゃん、酷いよ!容赦なく右ストレート出すなんて!!!こうなったら、こっちも黙ってないよ!!!」

ただし、パッケージ併用は理論上は問題ないのですがどうなるかわかりません。気をつけてください。要は、そっから先をこれから確認すればいいんだな。了解だ。

「フェイントからの…………ハグハグ~~~~~~~~~!!!!!!ぐへっ」

え~と、パッケージのインストールに三十分か……。それまで、どうしてようか…………。

「も、もう、ちーちゃんは恥ずかしがり屋だなぁ。ハグハグは機会を改めることにするよ!」

あ、諦めた。まぁ、流石に三回も反撃喰らえばなぁ。心も折れるよな。

「やぁ、久しぶりだね、箒ちゃん!」

「…………どうも」

ん?何か、箒さんの様子がおかしいような……。あんまり得意じゃないのかな、あの人。まぁ、俺も得意じゃないけどさ。

「こうして会うのは何年ぶりかな!会えて嬉しいよ!」

「………もです」

「ん?」

「私も、嬉しい……です」

その台詞を聞いた千冬と一夏は目を大きく開いて、驚いていた。その様子を見て、俊吾は近くにいたシャルロットに聞いた。

「なぁ、シャル……あの二人驚いてるけどどうしたんだ?」

「う~ん、ごめん。僕も分からないや」

シャルも分からんかぁ……。一体、どうしたんだろうな、箒さん。

「当たり前ですわ。篠ノ之さんは篠ノ之博士が苦手ですもの」

俊吾たちの疑問にセシリアが答えてくれた。

「えっと、苦手ってことは人間性がとか?」

「いえ、篠ノ之博士と言う人間そのものが苦手なんでしょうね。入学して直ぐにそれ関連で少し、問題がありましたし」

その台詞を言われ、何となく心の中で俊吾は納得していた。根本から人間性として合わないのだろう、あの二人は。片や真面目、片や傍若無人。相い容れないのだろう。

そして、箒の台詞を聞いて驚いているのは二人だけではなかった。その台詞を受けた束自身が一番驚いていた。束自身も箒から好かれているとは思っていなかった。なので、面食らったという表現が一番しっくりくるだろう。

「………………わ、私はその二千倍くらい嬉しいよーーーーーーーーー!!!!!!!」

束はそう言って箒に抱きついた。そのまま強く抱きしめ、箒ちゃんと何度も言っていた。それをどうしていいのか分からないのか箒はオロオロとして、抱きつかれたままだった。

…………あ、箒さんが昨日悩んでたことってこれなのかな。今まで、邪険にしてきた相手と仲直りするのは大変だ。だから悩んで悩んで悩みぬいた。結果、成功したみたいだね。箒さん、困ってはいるけど嬉しそうだもん。

そう、箒は困った顔をしているがどこか嬉しそうだった。そして、遠巻きに眺めていた一夏も嬉しそうだった。

「ん~~~~~~~!!!箒ちゃん成分も補充したし、本題にいこうか!」

束は何かを操作する。すると、空から何か音がした。俊吾は本日二度目の直感発動。『アカン、これ』と。

ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

「ぶへっ!うわっ、砂が口に!!っぺっぺっぺっぺっぺ!!!」

砂が巻き上がり、俊吾を直撃した。そして、その砂が晴れると紅が中から現れた。

「じゃじゃーーーーん!これが箒ちゃんの専用機こと『紅椿』だよ!!!」

「うへぇ~、体中砂だらけじゃん…………もう嫌……………………」

しかも、全部あの人関連で。

「俊吾……?大丈夫?」

「まぁ、何とかな……」

心のダメージは酷いけど。

俊吾は髪やらISスーツに付いた砂を落としていく。

「シャルとセシリアさんは大丈夫なの?」

「うん、僕の方には一切飛んでこなかったし」

「私も大丈夫ですわ」

何それ、酷い。…………もしかして、あの人。俺だけに砂飛んでくるように仕組んでたとか…………?流石に無いよね、そこまでは…………無いよね?

俊吾が心の中で軽く疑心暗鬼になっているにひと悶着あったらしい。すると、誰かから呼ばれた。

「あ、しゅんくん!ちょっと、こっち来て!!!」

束がそう言うと、千冬の目が物凄く鋭くなった。俊吾はそれに気づいたが、特に何も思わなかった。俊吾は言われたとおりに束の近くに寄った。

「え~っと、何でしょう、篠ノ之博士」

「もう、そんな他人行儀な呼び方、お姉ちゃん泣いちゃうぞ♥」

…………………………………………うぜぇ!!!!!!つか、お前誰だ!!!!!!この人こんなテンションの人だっけ!?あ、あれか箒さんに会えて嬉しいとか言われてご機嫌なだけか…………俺、とばっちりやん!!!!!!

俊吾は救いの目を一夏に向けるが一夏も酷く憔悴していた。

一夏…………お前もか………………。

「じゃあ、しゅんくんの黒天慟見せて!!!」

「え、あ、はい」

俊吾は心の中で『じゃあの使い方完全におかしいだろ…………』と思いながら黒点道を展開する。

「ほ~、いっくんよりも展開早いね~!」

そう言いながら束は黒天慟に何かコードのようなものをブッ刺して操作し始めた。

「ん~、へ~、ほ~…………。綺麗なバランスの取れた設定だね~。これ、しゅんくんがやったの?」

「まぁ、自分でやりましたけど」

「うんうん、君は私が思ってるよりも優秀だね~。このまま助手にしても良いかも」

技術的な面では尊敬はしてるからその台詞は嬉しいが、何故だろう心の底から遠慮したい。

「ん!ありがと!もう大丈夫だよ!」

そう言って、束はコードを抜いて別な端末で色々と操作し始めた。俊吾はパッケージのインストール率を見るために荷物のところに戻った。

「ねぇ、俊吾。一体、何されたの?」

「ん?別にISを少し見られただけだよ。…………多分」

もしかしたら、何かされてたかもしれないけど何もない事を祈ろう。っと、もうインストール終わってるのか。

その時、海の方から何か音がした。見ると、箒が紅椿の試乗をしているようだった。動きは俊敏、パワーもある。正直、現存するISの中でトップクラス……いや、それ以上なのではないのだろうか。

…………何か、箒さん浮き足立ってるような気がするな。気のせいかもしれないけど。

皆が呆然とその姿を見ていると、何やら慌ただしくなってきていた。紅椿を見てではない。何か、不祥事が起きたような、そんな感じだ。すると、直ぐに千冬の声が聞こえてきた。

「注目!これより、IS学園教員は特殊任務に移行する!IS稼働は中止!各自、片付けて旅館に戻れ!以上!」

千冬のその台詞に皆戸惑う。いきなりそんなことを言われれば当たり前だろう。

「とっとと戻れ!以後、部屋から出たものは問答無用に拘束する!速やかに片付けろ!」

その恐喝じみた台詞から普通でないことが感じ取れた。皆も尋常さを感じたらしく、速やかに行動し始めた。

「専用機持ちは全員集合だ!織斑、大海、オルコット、鳳、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識!―――それと、篠ノ之もだ!」

これから特殊任務に駆り出されるのかねぇ…………。命に関わる事なんだろうな、何となくそんな感じがする。

◇   ◆   ◇   ◆

―――同時刻、太平洋沖10数キロ地点

楯無は一人、海の上で奮闘していた。

「うぐっ…………いうこと……聞きなさい…………!」

楯無は送られてきた試作武器を扱っていた。試作武器というのは、水を操るナノマシンそのものであった。

今回の目的は『アクア・クリスタルだけは補えない火力を補うための試作』だ。どうしてもアクア・クリスタルだけは少し火力が寂しい。なら、ナノマシンを武器として登録して現地で水を調達→火力不足解消?といった感じらしい。なので、水が沢山ある海が条件に適しているというわけだ。

ただ、競技として使うなら絶対に現地で水は調達できない。ということはだ。競技として使わない用の装備ということだ。なので、俊吾にも言っていない。と言うか、言えない。国家機密なのだ、これは。

現在、その稼働実験中なのだが上手くいっていない。何故なら、一度に大量の水を扱えるようにはなかったがそれに意識を向けすぎて他の物に何も集中できないのだ。しかも、水の量が多くなったせいで制御も難しくなり、操作がままならない。

先程、一緒にラスティ・ネイルも一緒に使おうかと思ったが、ナノマシンに結構な容量を取られ、他の武器をもって来られなかったのだ。

「ああ、もう!………………これは、没かなぁ…………」

まともに武器として使えないのだ。しかも、容量にも難アリときた。それも致し方ないだろう。

「でも……このまま何も出来ないまま終わるのも癪に障るわね…………」

そんな理由だが、楯無には大事なことだ。これでも国家代表なのだ。『扱えないので無理』なんて理由は嫌だ、ということだ。

楯無は水との格闘をまた始めた。


謎の飛行物体が接近していることに気づかずに。

◇   ◆   ◇   ◆

今は旅館の一室に教員全員、一夏、俊吾、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、そして箒が集められていた。

「先ほど、ハワイ沖で実験稼働していたアメリカの第三世代型IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が何者かのハッキングを受け暴走した」

その言葉を聞くと一夏、箒以外の専用機持ちの表情が変わった。

「これより、専用機持ちによって制圧作業を行う。質問があるものは挙手をするように」

「はい」

セシリアが一番初めに手を挙げた。

「敵ISの詳細情報を求めます」

「それはいいが、口外にはするなよ。した場合、国からの監査委員が24時間付くだろう」

「わかりました」

すると、目の前にディスプレイが投影された。そして、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の詳細情報が表示された。

「出力が高いですわね……」

「特殊武装ありってのが難点ね」

「流石にこれじゃ敵の戦闘力が未知数だね」

「一度くらい偵察はできないのですか?」

「それは出来ない。今、ISは超音速状態で移動中だ。アタックできるのは一度と考えてくれ」

……気になったけど超音速ってなんだろうね。正直、ここで聞いたらあれだし。あとで調べよう。

「敵が未知数となると短時間勝負だな」

「そうだね。しかも、一撃で敵を沈められるような攻撃」

そう言うと、みんなは一夏を見た。

あぁ、なるほど。一夏の零落白夜だったら一撃で沈められるか。

「お、俺!?」

みんなは静かに一夏を見つめている。

「織斑、無理ならやらなくてもいい。これは実戦だ。訓練とは違う。命がかかっている」

千冬さんが静かに聞いてきた。すると、一夏は段々と顔の表情が引き締まってきた。

「やります。俺がやってみせます!」

「よし。あとはどうやって織斑を運ぶかだな……高速稼働実験をしている奴はいるか?」

「それなら、わたくしならイギリスから強襲用高速パッケージ『ストライク・ガンナー』がきていますし、超高感度センサーも付いています」

「稼働時間は?」

「20時間です」

へ~、セシリアさん凄いな~。やっぱり、伊達に代表候補生を名乗ってないな。

「ふむ、それなら適任……」

「ちょっと待つんだよ!ちーちゃん!!!」

「…………山田先生、部外者を外に」

麻耶は束を捕まえようとするが、それをうまいことすり抜けていく。変に身軽である。

「ちーちゃんちーちゃん、束さんの頭にいい作戦がナウプリーディング~」

「…………いいだろう、作戦の内容は聞いてやろう」

「こういう時こそ赤椿の出番なんだよ!」

「どういうことだ?」

「ここは第4世代ISの出番の見せ所なんだよ!」

唖然…………。これが今の状況にふさわしい言葉だろう。5秒くらい経ったが未だにみんなはポカンした顔をしていた。いきなり第4世代なんて台詞が出てきたのだから。

「…………束、説明しろ」

千冬が頭を抱えながら言った。

「あれ?説明してなかったっけ?」

とぼけたように束は言った。おそらく、これがこの人の素なのだろう。面倒極まりない。一夏は一人で『何のことだ?』みたいな顔をしている。

「いっ君の為に説明するね~」

束はお見通しだったらしい。だが、誰しもが説明を求めていた。

「まずは世代から説明しようかぁ。まず、第一世代型ISのコンセプトは『ISの完成』。第二世代型は『後付武装による多様化』。そして、第三世代型は『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊武装の実装』。空間圧作用兵器、BT兵器とか、AICとか色々だね。それで第四世代型は『パッケージ換装を必要としない万用機』。これば理論上の空論なんだけど束さんはこれを作っちゃたよ、ブイブイ」

またもや、唖然としていた。当たり前だ。今、世界中の各国は第三世代ISの開発に取り組んでるのにそれを飛ばして第四世代なんて…………夢御伽話がそのまま現実になったようなものだ。

「ちなみに雪片弐型にも使われていま~す。私がぶっ込みました」

「「「「「「え?」」」」」」

「要は紅椿ってのは、全身が雪片弐片ってわけなんだよ~」

「え?ってことは…………」

「うん、強いね。というか、最強だね」

みんながし~んとしてしまった。規格外すぎることを平気なことで言う人間なのだ、篠ノ之束は。

「あれ?みんなどうしたの、御通夜みたいに。誰か死んだわけでもないのに。おかしいの」

いや、おかしいのはあんただ。

「言ったはずだぞ、束。やりすぎるなと」

「えへへ~、みんなに会えてちょっと張り切っちゃった。てへ☆」

「それで、束。赤椿の設定にはどのくらい掛かる?」

「お、織斑先生!」

驚いたような声を挙げたのはセシリアだった。それはそうだろう。あまり稼働していない箒が選ばれるとは思っていなかっただろう。現に、俺もそうだし。

「では、聞くが……そのパッケージはもうインストールしているのか?」

「い、いえ。それはまだですが……」

「私にかかれば調整は7分で終わるよ~」

これは決まりだ、みたいな空気を一体を支配する。だが、一人納得していない人間がいた。俊吾である。一人、束を見つめると、それに気づき笑った。

あの人は……反論されるのを待ってる………………?だったら良いだろう。やってやろうじゃないか。

「それでは決まりだな。ではこれより「いえ、織斑先生。待ってください」…………何だ、大海」

みんなが俊吾を見る。その視線だけで緊張し、吐きそうになるが束の思い通りにはさせない。その思いで俊吾は口を開いた。

「俺はその意見に反対して、セシリアさんに一夏の移動をして貰った方がいいと思います」

「…………言ってみろ」

みんな、俊吾の言葉を待つ。

「まず、高速移動経験の違いです。セシリアさんは20時間、箒さんは0。まず、これは大きいかと思います。高速移動状態では、やはり不足の事態に陥ることがあります。それに対処できる可能性が高いのはセシリアさんです。いくら緊急事態といえど…………いえ、緊急事態だからこそ、パッケージをインストールして確実な人材を選んだほうが良いと思われます」

千冬は鋭い眼差しで俊吾を見ている。束はニコニコしながら、この状況を楽しんでいるように見える。

「次に、第四世代が未知数過ぎる所です。篠ノ之博士の言葉通り、紅椿は性能が高く素晴らしいことが良く分かります。あの言葉に嘘はないでしょう。ですが、性能の限界値というのが分かりません。これでは、作戦を立てる際に限界値が未知数だと確実なものが立てられません。逆にセシリアさんは自分の限界を知っています。それに、遠距離タイプなので近接特化の一夏と相性が良いかと」

束は相変わらず笑っている。

「最後に、箒さんが紅椿に乗ったばかりとういうことです。ISは稼働時間が命です。稼働時間数分と数百時間では比べるまでもありません。それに、箒さんのIS適正はCです。正直、短時間で紅椿の全てを理解し、能力を出し切るのは無理かと」

「あ、最後は違うなぁ。箒ちゃんのIS適性はAになったよ」

「……それはどういうことですか?篠ノ之博士」

「さっきフォーマットとかしてるときにちょちょっと調べたんだけど、適正値が上がってたんだ」

なるほど…………。だが、それだけではこれを覆せないだろう。

「では、最後の問題は取り消します。ですが、篠ノ之博士に聞きたいことがあります」

「ん?何かな、しゅんくん」

さて、最後の仕上げだ。

「パッケージのインストール時間、短縮できますよね?」

その台詞にその場にいた者が、何を馬鹿なことを言ってるんだ、という空気になる。

「ん~、どうしてそう思ったのかな?」

「先程、俺もパッケージをインストールしました。その時、思いました。無駄が多過ぎると。おそらく、俺が手を加えれば5分は短縮できるかと思います。俺でさえも5分は短縮できる代物をあなたが短縮できないわけがない。俺の見立てでは…………10……いや、紅椿の設定時間と同じ7分くらいまで短縮できるのでは?」

その説明を聞いた瞬間、束が嬉しそうに分かった。

「ふふ~、しゅんくんも私と同じ結論に達してくれいて嬉しいよ!パッケージインストールは無駄が多すぎる。私が、最初の頃にやったといえど、あれは失敗だね」

その台詞に千冬さえも驚いていた。それはそうだ。ある意味、今の技術を卓越した会話をしているのだ。誰しもが思わなかったパッケージインストールに無駄があったのだ。それを天才と学生が話しているんのだから。

「でも、ちょっと買いかぶり過ぎかな。私でも、10分は切れないよ。そこは残念だね」

唖然。何度目かわからない唖然が場を支配する。束自身にもそうだが、俊吾にもその唖然は向けられていた。

「うんうん、しゅんくんは私の見立て以上の反論してくれたね!正直、ここまで劣勢になるとは思わなかったよ!でも、今言った問題点を全て覆せるって言ったらどうする?」

……それはない。限界値はどうにかなるだろうが、経験値的なものはどうにもならない。

「というか、しゅんくんが言ってる事って当たり前なんだよねぇ。誰も何も言わなからダメかと思ったよ。気付けてない人間はダメだね。結構分かりやすくしてたのに」

おそらく、その台詞は千冬に言いくるめられ何も反論しなかったセシリアに言っているのだろう。少し、声色が冷たかった。

「まず、限界値はこのグラフを見て!これで万事解決!ぶいぶい!」

そこには丁寧に紅椿の性能について書かれていた。確かに、これで限界値問題は解決だ。

「あと、しゅんくんが言ってた経験値は確かにその通りだね。反論はできないよ。けど、別な角度から攻めるよ!紅椿には箒ちゃんの身体データが事細かに入っています!大体300時間分くらいかけて吸収するものがね!」

うそ……だろ?それは、稼働してデータを収集するって意味が無くなるじゃないか。

「というのは、さっきデータ採取した箒ちゃんのデータをそのまま紅椿にぶち込んだんだ~」

…………やっぱり、この人は凄ぇ。普通はそんなこと出来ない。多分、世界のトップクラスでも出来ないことだ、それは。

「これで少しは経験値的な問題はカバーできるね。あと、最後に私が本気出せば紅椿の調整なんて3分も掛からないね!」

この状況でそれはでかいな…………。

「まぁ、最後はちーちゃんに全部任せるよ!」

千冬は少し考えているようだった。

「…………よし、ではこれより篠ノ之、織斑両名による任務を開始する。時間が押しているから作戦開始は15分後!他の物は機材などの準備をしろ!」

そう言われ、みな各々の仕事始めた。結局、篠ノ之博士に勝てなかったな、と思っていると束が近づいてきた。

「やあやあ、しゅくん!」

「篠ノ之博士…………。流石ですね」

「そりゃ、私は天才ですから!ブイブイ!!!でも、しゅんくんも中々だったよ~!最後だって五分五分だったと思うよ~。最後はちーちゃんの私へのあ―――――あいたぁ!」

束の台詞は千冬の出席簿アタック―――もとい打撃攻撃によって阻止された。

「さっさと仕事をしろ、馬鹿者。大海、お前もだ」

「「はい……」」

千冬は全くと言いながら去っていった。

「えへへ、怒られちゃったね、しゅんくん」

「何で俺まで……」

「ふふ、今日は楽しかったよ、しゅんくん!これからも私を楽しませてね!じゃないと―――――」

―――――うっかり殺しちゃうから。

「それじゃね!」

束は去っていった。俊吾には束が最後に何と言ったのか聞き取れなかった。小さい声で言ったのか、はたまた何も言ってなかったのか、俊吾には分からない。

気にすることでもないので、俊吾は自分に割り当てられた仕事に取り掛かった。すると、麻耶が慌てた様子で作戦室に入ってきた。

「た、大変です!更識……楯無さんが負傷しました!銀の福音によるものです!」

俊吾は一瞬、頭の中で真っ白になった。ふと、視界に入った簪がその場で崩れ落ちた。俊吾は直ぐに簪に駆け寄る。

「嘘……お姉ちゃんが…………?」

「大丈夫だ、簪。お前の姉さんが簡単にやられるわけがない」

「で、でも、さっき負傷って…………」

「負傷っても少し怪我したくらいだって。大丈夫だ、あの人は」

「う、うん……そう、だよね……お姉ちゃんだもん…………」

「ああ、そうだ。だから、俺が迎え行ってくるから、簪は待っててくれ」

正直、銀の福音の攻撃を受けたとなると、ちょっとした怪我なはずがない。かなりのものになるだろう。だが、あの楯無が簡単にやられるとは思えなかった。ということは、何か不足の事態に陥ったと考えられる。救援、又は救出は出来るだけ早いほうがいいだろう。

「…………更識の居場所は?」

「先程、表示した地図で銀の福音から一番近い浮島です」

浮島か…………。地図は覚えてるから、あそこか。よし。

俊吾は簪を近くの教員に任せ、部屋を飛び出した。部屋を出たとき、千冬から名前を呼ばれたが無視した。正直、命令違反だろう。懲罰ものだが、構ってる時間が惜しい。救出しなければ手遅れになる可能性がある。俊吾は全速力で外に向かった。

外に出るとISの用意をしていた一夏と箒がいた。俊吾に気づくと驚いた様子で、俊吾に声をかけた。

「ど、どうした、俊吾。そんな急いで」

「悪い、話してる時間はない」

俊吾は黒天慟を展開し、即座に加速した。高速移動パッケージのお陰で、いつもよりも周りを過ぎる景色がボヤける。その時、ISのコアネットワークを通して千冬が連絡をとってきた。

「大海!即座に戻れ!命令違反だ!」

「すみません、先生。俺は楯無さんの救出に向かいます。罰は後でいくらでも受けます」

そう言って、俊吾はISのネットワークを切った。これで、位置特定も連絡も来ない。だが、これは救援が来ないことを意味する。孤立無援状態というやつだ。だが、それは自分の責任。もし、危険な状態に陥ったら楯無だけでも逃がす。そう、心に決めた。

俊吾はさらに、速度を上げた。

◇   ◆   ◇   ◆

「あの馬鹿者は…………!」

千冬は机を拳で殴った。その場にいた教員と生徒は驚いていたが、直ぐに自分の仕事に戻った。今は緊急事態なのだ。そんなことに構ってはいられない。

「あ、あの、織斑先生。大海くんはどうするんですか……?」

控えめに麻耶は千冬に聞いた。

「……今は作戦を優先します。あの馬鹿の回収と処罰はその後で」

「わ、分かりました!」

麻耶は仕事に戻った。麻耶が去ったあと、落ち着かない様子の千冬を見て、束は微笑んでいた。


 
 

 
後書き
いきなりですが、この小説は3月には終わらせたいと思います。

理由は4月から大学があるんで更新できないと思うんですよ、忙しくて。

なので、それまでには終わらせます。あと、三ヶ月ですがお願いしますね。

更新ペースも上げていきますので、楽しみにしててください。

とりあえず、新年やることはそれですね。終わらせられればいいけど。

というか、今年は何事も無く平和に終わって欲しいです。今年の願いはそれだけですね。

もう、何書いていいかわからないや。

では、これで終わらせていただきます。

誤字脱字などありましたら、感想にてお願いします。

では、また次回。

 
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