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馬鹿でもいい

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第六章

「まあとにかくね」
「彼の突進を受け止める」
「その気持ちもなの」
「そうしてるの、これからもね」
「それもかなりの強さがないと出来ないわよ」
 クラスメイトの一人はウィリアムの性格を考えてから有紗を見て言う。
「あんたも相当ね」
「そうなるかしら」
「例えて言うなら一回から九回まで百五十五キロの剛速球を受け続けるのよ」
 しかも重くノビも凄まじい。
「尚且つ中二日位でね」
「今そこまでの人いないでしょ」
 中二日で先発を投げられるピッチャーは流石に今はいない、昭和三十年代はそれこそ連投でいけたが時代が違う。
「幾ら何でも」
「例えよ、とにかくね」
「ウィリアムはっていうのね」
「そう、そんなタイプじゃない」
 野球選手で例えるとだというのだ。
「それでもいいのね」
「全然平気だけれど」
「やれやれね、とにかくそこまで腹を括ってるのならね」
 それならとだ、クラスメイトも言う。
「あんたも何処までも受けなさいよ」
「ええ、そうするわ」
「多分彼みたいなタイプはあんたクラスでこそだから」
 受けられるというのだ。
「だからね」
「それじゃあね」
 こうした話をしてだった、そうして。
 有紗はウィリアムと楽しい日々を過ごした、その中で有紗の誕生日が近付いてきていた。
 そしてその日になるとだ、ウィリアムは有紗にあるものを差し出した。それはというと。
「あれっ、これって」
「うん、どうかな」
 そのプレゼントを出してにこやかな顔で言った言葉だった。
「これでね」
「まさかそれだなんて」
「有紗女の子だから」
 ぬいぐるみだった、しかもだ。
 ライオンと虎だ、その二匹だった。何故その二種類かというと。
「ほら、有紗虎好きじゃない」
「阪神ファンだからね」
「それで僕もライオン好きだから」
 西武が好きなのもこのことからだ。
「だからなんだ」
「それでその二つなの」
「うん、二人で何時までも一緒にいたいから」
 こう思ってだというのだ。
「作ってみたんだ」
「これ自分で作ったの」
「そうなんだ」
「あの、ぬいぐるみを自分から作るって」
 それはとだ、有紗はここでウィリアムの手を見た。見ればその手はラグビーでの傷以外に裁縫のそれもかなりあった。
 しかも目を見れば赤い、クマまである。
 そこまで見てだ、こう言うのだった。
「大変だったでしょ」
「別にね」
「いや、ぬいぐるみも作るの大変だから」
 有紗はこのことは知っていた、それでウィリアムに言うのだ。
「わかるわよ」
「僕としては全然平気だったけれど?」
「どうしてなの?」
「だってね」
 どうしてなのか、ウィリアムはこのことについても答える。
「有紗が喜んでくれるなら」
「私が?」
「喜んでくれたかな」
 実際にどうかともだ、ウィリアムは有紗に尋ねた。
「どうかな、駄目だったらまた別の有紗が欲しいものを作るけれど」
「嬉しくない筈ないから」
 このことについてはにこりとして答えた有紗だった、そしてこう言った。 
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