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勇者番長ダイバンチョウ

作者:sibugaki
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第9話 結成!地球防衛軍 番長組

「一体何なのだ! このざまは!」
 此処は宇宙の何所かにあると言われている宇宙一極悪な組織、その名も【極悪組】の本部であった。
 その本部内に置いて、極悪組組長は大層ご立腹なご様子だった。無理もない話しだ。
 何せ、何時になっても地球侵略は遅々として進まない上に、密かに建造していた宇宙麻薬製造工場までもがダイバンチョウ達により破壊されてしまったのだから。
 それもこれも全てはあのバンチョウ星人とか抜かす宇宙の暴れ者のせいに他ならないのである。
「貴様等、それでも宇宙一極悪な組織と謡われた極悪組の組員か? 恥を知れ!」
 組長のお叱りに対し、組員達は正にぐうの音も出ない状況であった。
「も、申し訳ありやせん組長! あっしらも必死に地球侵略を進めているんでやんすが……それもこれも全部あのダイバンチョウがいけねぇんでやんすよ!」
「言い訳など聞きたくない! それにしても……おのれ、ダイバンチョウめ……宇宙の暴れ者と言われているバンチョウ星人風情に此処までしてやられるとは……このままでは我等極悪組の沽券に関わる一大事だ」
 このまま地球侵略が進まなければ極悪組の看板に泥を塗る事になりかねない。そうなれば今まで気づきあげてきた威厳が全て台無しになってしまうのだ。
 それだけはなんとしても避けたかった。だが、ダイバンチョウは強い。そしてその取り巻きも中々の強さを誇っているのだ。
「組長、此処はどうでしょうか? 一旦あの狭い島国を諦めて、他の国を攻めると言うのは?」
「むむぅ、確かに貴様等の言う事も一理あるな」
 顎に手をやりながら組長は考えていた。このまま無策で日本侵略を続けるよりも外の国を侵略した方が手っ取り早いと言える。幾らダイバンチョウ達が強くても回りが敵だらけでは手の打ちようがないのは明白な事だ。
「よし、早速作戦に取り掛かれ! あらゆる島と言う島を攻めるのだ! そして、最後に例の島国だけにした後に総攻撃を掛けてやる! そうすればあのダイバンチョウとて一溜まりもあるまい!」
 今、此処にゴクアク星人達の恐るべき計画が開始された。果たして、その恐るべき計画を前に、どうする? ダイバンチョウ!?




      ***




「謎の巨大兵器、アメリカに上陸……敵対国の新兵器か、あるいは未知の異星人の侵略か? おいおい、今度は世界に喧嘩を売ってるのかよ、ゴクアク星人の奴等」
 日曜日のお昼頃。番は一人居間にて新聞を読みながらお茶を啜っていた。
 今日は別に学校もないのでこうして一人くつろいでいるのである。
 が、日本の外では今でもゴクアク星人達が猛威を振るっている。防衛軍が全力を注いで戦っているのだが、地球の兵器では到底ゴクアク星人達に太刀打ちなど出来る筈がない。
 やはり、此処はダイバンチョウの力が必要なのだ。
「なぁ兄ちゃん。こんなとこでくつろいでて良いのかよぉ?」
「何がだよ?」
「新聞やニュースで言ってるだろぉ! あのでっかいロボットが暴れてるんだぜぇ。番兄ちゃんが行って叩きのめしてくれよぉ!」
「あのなぁ、そうは言うけどよぉ、ダイバンチョウは空飛べないんだぞ!」
 今更だと思われるが、ダイバンチョウには飛行能力が備わっていないのだ。
 当然ジャンプ用のブースターなども装備されておらず、大概は足のバネを使ったジャンプしか行えないのだ。
 これでは幾ら世界が危機的状況にあると言ってもとても戦いに行ける筈がない。奴等が日本に来なければ話にならないのが何とも歯痒い話だったりする。
「畜生、番兄ちゃんに毎回負けてるからって今度は兄ちゃん達の居ない外国を攻めるなんて卑怯な奴等だなぁ!」
「全くだぜ、しかしどうしたもんかなぁ……ダイバンチョウもそうだが他の奴等でも飛べる奴って居ないしなぁ」
 実際の所空を飛べるのは茜の紅バンチョウのみだったりする。だが、相手は世界中に蔓延っている状態だ。幾ら空を飛べるからと言って茜一人で対応出来る筈がない。
 何とも歯痒い展開となってしまっていた。
「番、居る?」
 台所の方で昼飯の支度をしていた母、恵が番達の居る居間の方へとやってくる。ついでに番の名前を呼び名がら。
「何か用か?」
「ちょっとバンチョウ君と一緒に醤油を買って来てくれない? 丁度切らしちゃってね」
「あぁ、別に良いぜ」
 料理を作る上醤油は日本人として欠かす事が出来ない代物だったりする。
 そして、今日の昼飯で醤油は絶対に必要なラインナップだったりする。
 これは一大事だとばかりに、番は急ぎバンチョウに乗り込みこの町に唯一あるスーパーマーケットへと向う事にした。
【しかし番、たかが醤油の為に俺を使う必要ってあるのか?】
「良いかバンチョウ、日本人にとって醤油は欠かす事の出来ない貴重な調味料なんだよ。そして、それが今我が家では切れちまってるんだ。これは俺達轟家にとって一大事なんだよ。分かるか?」
【さっぱり分からん】
 所詮宇宙人に一民間人の理論を理解しろと言うのも無理と言うのだろう。とにかく、このままでは昼飯を食べる事が出来なくなってしまう。急ぎ事態の収拾に努めなければならない。
 そんな訳で、不満げなバンチョウを連れて急ぎスーパーマーケットへと向かい醤油を買いに行こうとする両者。だが、そんな軽トラック状態のバンチョウの頭上に巨大な影が飛来してきた。
「何だ、鳥か?」
【嫌、違うぞ!】
 疑問に感じ上を見上げてみる。すると、頭上に居たのは巨大な大型飛行機であった。
 大型飛行機は全くぶれる事なくバンチョウの真上を飛行していたのだ。
 なんだなんだと下で騒ぐ番とバンチョウ。そんな両者を突如大型輸送機の腹部から放たれた奇妙な光に照らされると、そのまま宙へ浮き、何の抵抗も出来ずにその輸送機の中へと吸い込まれてしまった。
 俗に言う誘拐並びに車両強奪事件の発生であった。
 ……多分。




     ***




 此処は何所だ?
 俺は一体、どうなっちまったんだ?
 確か俺は、お袋の用事で醤油を買いに行ってて、それで……


 意識がハッキリする。そして、自分が先ほどどんな目にあったのかを思い出し、即座に体を起こす。
 視線に映ったのは全く別世界と思わしき一室であった。
 かなりゆとりのあるスペースならしく、番の隣には先ほど乗っていたバンチョウも置いてある。
「目が覚めたみたいだね、この寝ぼすけ」
「その声は!」
 明らかに小馬鹿にしたような言い分をしてくる女性に番はそれが何者なのか瞬時に察する事が出来た。
 その声のした方を見るとやはり予想通りと言える存在が其処に居た。
「茜! お前も此処に来てたのか?」
「あぁ、スケバンチョウの中でうたた寝してたら突然現れた大型飛行機に誘拐されてね」
 どうやら彼女も同じ目に合わされていたようだ。良く見れば茜の他にもスケバンチョウも居るし、他にもドリルやレッドの姿も見られた。
 だが、一体何故こうも顔なじみの面子が集められたのだろうか? そもそも、一体何者がこの面子を集めたのだろうか? そして、その目的は……
【揃ったようだな】
 突如、別の声が響いた。近くから聞こえた声だが何所か違う。一斉に声のした方へと視線を向けた。其処には一台の大型モニターが設置されており、そのモニターには一人の年老いた男が映っていた。
「誰だ? あのおっさん」
「さぁ? あたいも見た事ないねぇ」
 番と茜が揃って首を傾げる。そんな仕草をしている二人を見て男性は少々つまらなさそうな顔をしていつつも口を開いた。
【ふむ、私の事を知らないと言うか……まぁ良いだろう。自己紹介は後にして本題に映らせて貰う】
 男性のその言葉に一斉に聞き耳を立てた。一番知りたかった情報がそれなのだから。何故自分達が此処に集められたのか?
 それを知る為にもこの男のこれからの言葉に耳を傾ける必要があった。
【君達は既に知っているかな? 現在世界各地で謎の侵略者の攻撃を受けていると言う事を―――】
「勿論、ニュースや新聞で散々騒がれてるからな」
 最早番ですら知っている有名な情報でもあった。既に世界各地が宇宙からの侵略者の攻撃を受けている現状だ。
 無論防衛軍も反撃を講じているのだが、全く以って歯が立たない。このままでは日本を残して全世界が宇宙からの侵略者達に制圧されてしまう。
「それで、俺達を集めた理由ってのは何なんだよ?」
【情報によれば、君達はあの宇宙からの侵略者達と同じ力を持っているそうだね?】
「な、何で知ってるんだよ?」
「そりゃおおっぴらに戦ってりゃ普通はばれるって」
 茜の言う通りだったりした。実際さっきからバンチョウ達は怪しまれないように黙っていたが、既にバレバレだったようだ。
 しかし、古今東西此処まで早くに勇者達(?)の正体がばれたのってこの作品が初ではないだろうか?
 等と疑問を持つかも知れないが其処は黙っておくとしよう。
【君達を集めたのは他でもない。その力を用いて世界を攻撃している侵略者達と戦って欲しいのだ】
「ちょいと相談して良いか?」
【手短に頼むよ】
 男から了承を得た後、番達は一度集まって小声で相談する事にした。
 事は結構重大そうだ。下手な答え方をするとこのまま施設送りになりかねない。
 まぁ、なったとしてもこいつらなら問題なさそうなのだが、其処は勇者ものらしく振舞って欲しい昨今でもある。
(どうする?)
(別に良いんじゃないのかぃ? あたいは別に断る理由とかないし。スケバンチョウもノリノリみたいだしねぇ)
(だな、バンチョウやドリル達もやる気みたいだしなぁ)
 チラリとビークル形態のバンチョウ達を見る。其処ではやる気充分なメンバーが暴れたい気持ちを必死に抑えているのが見て取れている。
 それに、別に悪い相談じゃなさそうだ。だとしたら断る理由は特にはない。
「分かった。あんたらの条件を呑んでやるよ」
【感謝する。では、了承してくれた君達に我等国連からの少しばかりの贈り物をするとしよう】
「贈り物?」
【まず一つ目はこれだ】
 突如、映像が切り替わった。映ったのは上空から映された絶海の孤島。其処から映るのは自然でカムフラージュされた軍事基地の様な物であった。
 地上には木々や小川など、自然の産物が立ち並んでいるが、その遥か地下には物凄い科学の結晶とも言える巨大な施設が出来上がっていたのだ。
【これは、今君達の居る島。我等国連が兼ねてより無人島を密かに改造して作り上げた場所なのだ】
「すっげぇ……」
【実はこの島には私が直々に名前を考えていてなぁ、その名を―――】
「おっし、今日からこの島は『バンチョーベース』で決まりだ!」
【ゑ?】
 自信満々に名前を披露しようとした矢先に番が真っ先に名前を決めてしまった。その事実に大層ショックを受ける男。
 まぁ、そんなこんなでこの場所は今日からバンチョーベースと命名されたようだ。
【ま、まぁ良いだろう。続いては君達を大空へと運ぶ品だ】
 続いて映ったのは巨大な輸送機だった。そのシルエットは間違いなく、あの時番とバンチョウを誘拐したそれと酷似していた。
「これは、あの時の!」
【我等国連が総力を結集して作り上げた大型輸送船。その名も―――】
「よし、今日からあれは『スカイ番長』だ!」
【あふん……】
 またしても本来決まっている名前を言う前に全く別の名前を決められてしまい、二進も三進も行かないような顔をしてしまっていた男性。
「スカイ番長? さっきのバンチョーベースと良い、今のアレと良い、相変わらずあんたのネーミングセンスって残念なんだねぇ」
「な、何だよ? 俺の命名は何時も俺の中にある直感でつけてんだ」
「あぁ、要するに適当って事ねぇ」
 流石の茜も其処まで自信を持って言われては反論のしようもなかった。
 回りを見渡せば深い溜息を吐いているスケバンチョウとバンチョウの姿もちらほら見受けられる。
【ま、まぁ……この際名前はそれで良いだろう。では、早速なんだが君達にはこれからニューヨークへと飛んで貰いたい】
「ニュ、ニューヨークってぇと……イギリスだっけ?」
「アメリカだよ」
 どうやら番の脳では世界地理すらも厳しいようだ。これで良く番町の番長が務まってるものである。
「ま、まぁこの際どうでも良いや。要するに今からそのニューヨークに行って、其処で暴れてる奴等をコテンパンにすりゃ良いんだろ?」
【早い話がそうだ】
 男性が深く頷いてみせた。となれば善は急げである。
 今もこうしている間にもニューヨークではゴクアク星人達が我が物顔で暴れまわっているに違いない。そんな勝手な真似をさせる訳には断じていかない。
 この星は地球人の母星なのだ。その星を奴等の好き勝手になどさせては番長の名が廃るのだ。
「行くぜお前等! 久々の喧嘩だぁ、気合入れて行くぞぉ!」
 番の号令にその場に居た誰もが賛同した。誰もが若き血を滾らせている戦士でもあり、同時に若者達なのだ。ついでに言えば最近ゴクアク星人達が一切攻めてこなかったので退屈していたと言うのも理由に入っていたりするのだが。
【スカイ番長には専属の操縦士が搭乗している。君達は後部の荷台に搭乗して貰うだけで構わん】
「折角だけど、あたいは自分で行くよ。紅燕ならあたいを乗せて移動出来るからね」
 独自の移動手段を持ってる茜は搭乗を事態した。彼女なりのポリシーでもあるのだろう。
 別に咎める気など毛頭なかった。このメンバーの中で空を飛べるのは茜だけなのだから。
 そうして、番達は早速スカイ番長に乗り込んだ。見た目が結構大型の輸送機だけあり、後部の待機スペースはかなり広々と作られていた。
 これならもっと多くの仲間を空輸する事が出来そうでもある。
【揃ったようだな】
「今度は誰だ?」
 またしても後部の荷台上部にある小型モニターが映り、其処には別の男性が映った。先ほどの男性よりも若い、ガッチリとした体格の男性だ。
 年は二十代半ばか後半辺り。
 明らかに自衛隊か軍隊上がりを臭わせる感じの男性であった。
【紹介が遅れたな。俺は『白鳥流(しらとり ながれ)』と言う。元自衛隊所属で戦闘機のパイロットをしていたんだ】
「そのあんたが何でこれの操縦士やってんだよ?」
【半分はさっきの男にスカウトされたんだよ。そして、もう半分は昔憧れてた正義のヒーローになりたくてな】
 夢があるのは良い事である。それが例え幼稚じみた内容であったとしても―――
「まぁ良いや、とにかく頼むぜ、白鳥さんよ」
【おう、任せておけ! 俺が操縦する以上お前等を全員無事に送り届けてやる】
 何とも頼もしい発言であった。番はその言葉を信じ、バンチョウの中で待つ事にした。本来なら生身の人間専用の待機スペースも用意されているのだが、番曰く【此処の方が良い】との事らしい。
 そんな番の気持ちを察したのかしていないのか、どうかは分からないが、白鳥は機体を移動させた。
 広大な海の真ん中にポツンと浮かぶ孤島。その孤島の崖面の一部がぱっくりと開き、その中から長い滑走路と其処を滑走するスカイ番長の姿が見られた。
【スカイ番長、離陸開始!】
 掛け声と共に巨大なスカイ番長が大空へと飛び立つ。その後を追うかの様に真っ赤なステルス戦闘機が飛ぶ。
 茜の紅燕だ。ステルス戦闘機なのに真っ赤に塗られている辺り、本来のステルス機能はほぼ皆無でありそうにも見える。
 まぁ、所詮は勇者ロボットなのでそう言ったツッコミはご法度でお願い致しますと言う事で。




     ***




 時刻は夜、アメリカの首都ニューヨークでは現在、数体のゴクアク星人達が我が物顔で暴れまわっていた。軍隊の戦力では彼等に決定打を与える事が出来ず、後退を余儀なくされていた。
「キャプテン! このままでは我が軍は全滅するだけです!」
「ガッデェム! 奴等を倒すには我が祖国に核を落とすしかないと言うのか?」
 核。それはアメリカが所有する代物であると同時に、人間が生み出した負の遺産だ。
 その威力は凄まじく、地を焼き、草を枯らし、人々を殺しつくす恐るべき兵器である。その兵器を彼等の祖国に落とそうとしているのだから彼等の胸中は痛み入ると言えるだろう。
 そんな彼等の上空をスカイ番長と紅燕が飛来する。
【到着したぜ、ヒーロー達。思い切り暴れて俺達の事を世界中に宣伝してくれよぉ】
「任せておけって、行くぞてめぇら! 地球防衛軍 番長組の初陣だぜ!」
 番の号令と共にスカイ番長の中からバンチョウ、ドリル番長、レッド番長がそれぞれ降下する。大地を揺るがし、地響きを立てて今、地球防衛軍番長組がアメリカの大地を踏んだのだ。
【げげぇっ! てめぇら、何で此処に居るんだよ?】
【バーロィ! この星は俺達の縄張りでぃ! それを好き勝手するなんざぁ、例え神様仏様、食堂のおばちゃんが許しても、この俺が許さねぇぇ!】
 意味不明な名乗り口上を放つ番。そんな名乗りに場の空気も一瞬しらけそうになってしまったのも頷ける。
【あんたさぁ、もうちょっと啖呵を考えた方が良いんじゃないのかい?】
 すると、上空から紅燕でやってきたスケバンチョウがそう告げた。
 他人に自分の啖呵を指摘されて少し恥ずかしいのかバンチョウが鼻っ柱を掻いていた。
【るっせぇ、啖呵ってなぁ頭で考えるもんじゃねぇ! 魂で叫ぶもんでぃ】
【だったら尚の事少しは頭を使って啖呵を切りな。それじゃ丸きり馬鹿って言ってるようなもんじゃないのさ】
 茜の言う通りであった。流石に場の空気に居た堪れなくなったのか、即座にバンチョウは数歩前へと躍り出る。
【と、とにかくだ! てめぇら、覚悟しやがれよぉ!】
【な、何か調子狂うが、構わねぇからやっちまえぇ!】
 半ば話が反れてしまったが、そんな事お構いなしにゴクアク星人達が攻めて来た。空気を読んでくれてとても有り難い敵だったりする。
 が、そんな敵に一切情けも容赦もなしに返り討ちにしていく番長組。
 本来ならば戦闘の場面を事細かく記載しておきたかったのだが、生憎の事今回攻めて来たのがゴクアク星人のチンピラ、即ち雑魚キャラだった上に番達が只殴る蹴る等の場面を見せてしまい本来の勇者小説とは180度違った作品になってしまう恐れがあるので割愛させて頂きます。
 決して記載が面倒だった訳でも展開が思いつかなかった訳でもないのであしからず。
【へっ、何でぃ! 大した事ねぇ雑魚のチンピラじゃねぇか】
【ホンマじゃのぉ! これじゃ片慣らしにもならんわぃ】
 流石にあっさりと倒してしまったが為に力を有り余らせてしまったらしい。
 元気の良い事である。が、そんな矢先の事であった。
【大変だ皆! さっき連絡があって、別のゴクアク組が日本の番町に攻めて来たらしいんだ!】
【何だとぉ!】
 どうやら囮作戦に引っ掛かってしまったようだ。アメリカ地方にチンピラを集めておき、其処にバンチョウ達を誘き寄せる。その隙に本隊で日本を侵略すると言う手筈だったようだ。
 その作戦にバンチョウ達はまんまと引っ掛かってしまったようである。
【すぐに日本へ向う。早くスカイ番長に戻ってくれ!】
【番、あたぃは一足先に戻ってるよ! 今から間に合うかどうか分かんないけど、やるだけやってみるさ】
 スカイ番長に乗り込むバンチョウ達を他所に、茜ことスケバンチョウは上空を旋回していた紅燕とドッキングし、一足先に日本へ戻る事にした。
 だが、幾ら紅燕がマッハのスピードで急いだとしても相当時間が掛かる。下手すると番町が壊滅してしまう恐れすらあるのだ。
(頼む、間に合ってくれよぉ)
 祈る気持ちで番はスカイ番長の中に入った。




     ***





【ガッハッハッ! ダイバンチョウの居ない日本なんぞ赤子の手を捻る位に簡単に制圧出来るわぃ!】
 その頃、ゴクアク組が差し向けてきた刺客こと、ボウジャク星人が我が物顔で暴れまわっていた。
 右腕には巨大な鉄球。左腕には6連装の大型ガトリング砲を搭載し、背中からは誘導式のミサイルを搭載し、足には非常食としてき○この山が取り付けられていると言う完全防備状態であった。
 自衛隊も出動し、迎撃を行ったのだが、軍隊ですら敵わなかった相手に自衛隊が敵う筈もなく、既に部隊は壊滅状態にも等しかった。
 後は番町を破壊しつくし更地に変えるだけの簡単な仕事であった。
【しかし、こうも歯ごたえがないとつまらんのぉ。やはりこれだったら俺がアメリカに残ってバンチョウ達と戦ってた方が良かったかも知れんなぁ】
 余裕綽々な事をほざくボウジャク星人。だが、そんな時であった。
 暴れまわっているボウジャク星人に向い、一台のパトカーが接近してきたのだ。他には何もない。たった一台のパトカーが来ていたのだ。
【なんだぁ? そんな豆粒みたいな車でこの俺様とやりあおうってのか? 舐めるんじゃねぇぞボケがぁ!】
 怒りの口調宜しく、鉄球をパトカー目掛けて振り下ろす。
 しかし、その刹那にパトカーは上空高くジャンプしてそれを回避した。
 そのままボウジャク星人の背後へと着地した瞬間、パトカーの姿は変貌していた。
 その姿は正しく人型のロボットであった。
 全長は約3メートル前後。バンチョウとほぼ同じ大きさであった。
【んだぁ? てめぇ何者だぁゴラァ!】
【この星を守る正義の使者、人呼んで『イインチョウ』!】
 小型ロボットが名乗りを上げる。何となくこっちが主人公ロボットっぽく見えるが勘違いしないで貰いたい。
 彼は断じて主人公ではないのだ。少なくとも今回の作品では。
【イインチョウだぁ? 変な名前しやがって! そんなマッチ棒みたいなボディなんざ、この鉄球で砕いてやるぜぃ!】
 勢いや良しの如く。頭上で重さ20トンはあろう巨大な鉄球を豪快に振り回し、そのままイインチョウへと放ってきた。
 あれを食らえば例えダイバンチョウでも危ういであろう巨大さだ。しかし、それを諸に食らった筈のイインチョウはその場から微動だにしていなかった。
 全く動いていないのだ。それこそ、その場から一ミリもだ。
【な、何故だ!? 俺の鉄球を食らって、何で一歩も下がらないんだ?】
【当然だ。私がこの鉄球を押えているからだ】
 見てみると、其処には細い両の腕で巨大な鉄球を押えているイインチョウの姿があった。
 考えられない出来事だった。華奢なボディであるイインチョウがあの巨大な鉄球を受け止めてしまったのだから。
【お前の鉄球はこの星の文明を破壊する。よって、粉砕させて貰う!】
 巨大な鉄球に徐々に亀裂が走り、やがて崩壊した。委員長が素手で破壊してしまったのだ。
 凄まじい握力であった。
【ば、馬鹿な! 俺様の鉄球が! えぇい、こうなりゃこれで蜂の巣になりやがれ!】
 ならばと、もう片方の腕に取り付けられていた巨大なガトリング砲を連射した。一発一発が弾道ミサイル並の威力を誇る弾丸を連続で発射してきた。しかし、それをイインチョウは上空に飛翔して回避する。されど、その回避はボウジャク星人には予想していた。
【馬鹿め、これでお陀仏だ!】
 背中に装備していた誘導式ミサイルが火を噴く。上空に飛んだイインチョウ目掛けて無数のミサイルが跳び立ったのだ。
 これでボウジャク星人の勝利は確実の物だと思えた。
 だが……
【甘い、ジャスティス・ショット!】
 イインチョウの腰にマウントされていた小型の拳銃が火を噴いた。
 両手に持ち、狙いを定めて寸分の狂いもなくミサイルを全て打ち抜いていく。
 そのついでに残っていたガトリング砲と背中のミサイル発射装置、後ついでに腰にマウントしていたき○この山も打ち抜いてしまった。
【ひぃぃっ! つ、強すぎる……俺じゃ勝てねぇぇ】
【ボウジャク星人! 貴様は宇宙法第785状を違反した! よって、刑法に基づき貴様を逮捕する!】
 イインチョウの口から、宇宙刑法と言う聞き慣れない言葉が発せられたかと思うと、今度は手錠を取り出し、ボウジャク星人の両手に取り付け出した。どうやら、イインチョウはバンチョウ達の様に只喧嘩をする様な輩ではないようだ。
 それから数刻した後、一隻の巨大な宇宙船が上空から飛来してきた。
 其処にはでかでかと『宇宙警察太陽系支部』と書かれていた。
【ご苦労様です、ジャスティス・リオン巡査】
【後の事は宜しくお願いします】
【お任せ下さい。あいつは札付きの悪党ですからね。宇宙警察本部にて裁判を行い、その後で刑が執行されますよ】
 部下と思わしき同型のロボット達に連れられて、ボウジャク星人は宇宙船に搭乗して宇宙へと飛び去ってしまった。脅威は去った。
 突然現れた正義の使者を自称するイインチョウの手により、番町は、そして日本は守られたのであった。
 だが、彼は一体何者なのか?
 そして、彼はバンチョウ達の味方と成り得るのであろうか?
 それらについては、また後に語るとしよう。




      つづく 
 

 
後書き
次回予告


「また別の宇宙人が暴走してるってよぉ。しかも今度は救急車じゃねぇか? まぁ良い、相手が喧嘩売ってくるってんなら買うまでだ。っと思ったら、こいつ滅茶苦茶弱虫でやんの……」

 次回、勇者番長ダイバンチョウ

【弱虫番長登場!? 喧嘩はダメ、絶対!】

次回も、宜しくぅ! 
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