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たちまち遊戯王

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第2話 よくならない現実は口に苦い

 
前書き
次の冒頭辺りからデュエルです。デュエル以外どうでもいいんじゃぁ!って方は飛ばしても構いません 

 
「あぁあもぉっ!」
 鈴瞳は乱暴にソファに腰掛けた。
「なにあれ私らは失敗作ですか深夜に命を与えられて持ち主の元に復讐に行くんですかって元々生きとるわー!」
「……ふふ、確かにあなた達にしてみればたまったもんではありませんね」
 レタウ・ダンネと名乗っていた少年が盆のような物に、ケーキに似ている物と琥珀色の飲み物を乗せて持ってきた。
 レタウは背がかなり低い方の埒路より少し背が高い。どうも埒路より1才年下らしい。細い目に少しハスキーな声。柔和な雰囲気を醸し出しているが、どこか油断ならない気配を持つ。務都弥は、レタウを少し警戒していた。
「う……」
 鈴瞳は途端に気まずそうな顔をした。
「……聞いて、た?」
「聞いてましたよぉ」
 レタウは歌うように言いながら微笑み、盆をテーブルの上に置いた。
「え、えっと、ね……」
「まぁ、そう思うのが普通でしょう」
 言い淀む鈴瞳を気にする様子も無く、レタウは続けた。
 務都弥達はいきなり銃の様な物を突きつけられてからいかにも偉そうな老女に謝罪され、応接間の様な場所に案内されて、様々な説明を受けた。
 務都弥達は、宣約という技術によってここに呼ばれたが、実は呼ぶ予定だったのは他の人達だった。
 宣約によって務都弥達を送り返すことは出来るが、3週間程準備が必要。
 宣約を依頼した人は人違いなら面倒を見ないと言っている。
 そう言われると宣約を行う側としては 強く言い辛い。
 というわけで急遽泊めてくれる家を探したところ、ダンネ家で預かってもらえることになった。
 言語の問題については、宣約を行う人達が持っている万能翻訳機を貸してもらえるそうだ。
「これはエカックと言って、そちらで言うスポンジケーキみたいな物ですかね。それで、こちらがエッタ。紅茶みたいなものです」
「おぉー、異世界のスイーツ!」
 鈴瞳は歓声を上げた。
 レタウは食卓から椅子を持ってきて、務都弥達と向かい合うように座った。
「……それで、皆さんにお願いしたいことがあります」
 4人でエカックを食べ始めた頃、レタウが口を開いた。
「……」
 務都弥は手に持っていた二又の小さなヘラのようなものを置いた。まだエカックには手をつけてない。埒路はそれを見るとエカックを口に運んでからヘラのようなものを置いた。鈴瞳はまだエカックを頬張っている。
「そちらにとっても大変な話ではないですよ、食べながら気軽に聞いて下さい」
 レタウは務都弥の心を見透かしたように穏やかに微笑んだ。
「では、」
 埒路は再びエカックに取りかかった。
「……」
 務都弥はまだ手をつけない。
「どしたのー?食べないのー?」
 鈴瞳は首を少し伸ばして務都弥の方を見た。
「さぁな。その気軽な話とやらが気になる」
 務都弥は表情を変えない。
「やれやれ……今更どうにかなるものでもないのに」
 レタウが口だけで微笑むと、務都弥は表情を険しくした。
「冗談ですよ、冗談」
 レタウはころころと笑った。
「……」
 務都弥は固い表情のままだ。
「でさぁ、お願いって何?」
 鈴瞳は口元に手を当てながら呑気な様子で尋ねた。
「そうですね。話を戻しましょう」
 レタウは目を瞑った。
「皆さん……遊戯王は、ご存じですか?」
「へゃ?」
 鈴瞳は素っ頓狂な声をあげた。
「……知っている」
 務都弥は短く答えた。
「……では、どれ程やってますか?」
「10人規模の小さな大会で、大体4位以内」
「あーそいや、むっ君大会にちょくちょく行ってるよねー」
 鈴瞳は思い出したように呟いた。
「……それで、鈴瞳さんと埒路さんは?」
「実は結構やってるんだよねー」
 鈴瞳はニマッと笑った。
「ルール知らない」
 埒路は首をぷるぷると横に振った。
「あー2人もいましたか、これは好都合です」
 レタウはにっこりと笑った。
「って遊戯王も知ってるんだ」
 鈴瞳は少し驚いたように、目を僅かに開いた。
「知ってるも何も、この国では有名ですよ」
「えぇっ!?」
「昔……ここに2人の日本人がやって来たんです」
「私達みたいに、間違ってつれてかれたのかな可哀想に」
 鈴瞳は喋りながら怒りの感情が吹き返したらしい。
「落ち着いて下さい鈴瞳さん。違います、彼らは宣約ではなく彼らの技術でここに来たんです」
「何それ」
 前に鈴瞳が、ここと日本の距離を尋ねたことがある。その時レタウは、「ここから日本に行くのは、徒歩で海を渡るようなものです」と答えた。
「彼らがどのようにしてここに来たのかの話は置いときましょう、ともかく、そういう経緯でこの国は初めて日本を知りました。そして、その文化や娯楽を知ることにしました」
「なんで?」
「なんででしょう。暇だったからじゃないですか?」
 レタウはいかにもあてずっぽうといった風で答えた。
「……それで、遊戯王が有名になったと」
「そうです」
 鈴瞳の総括にレタウはゆっくり頷いた。
「にしてもなんで遊戯王?」
「さぁ?世の中何が流行るか分かんないものですね」
「……なぁんか、分かったような分かんないような」
「それで話を戻しますと、」
 レタウは言葉を切って居住まいを正し、3人を改めて見た。
「あなた方2人には遊戯王狩りを止めるのに協力して欲しいのです」


「ゆ、遊戯王狩り?」
 鈴瞳は地球外生命体によって絵本の世界に誘われたかのような怪訝な表情をしている。
「ここでの遊戯王カードの扱いは日本と同じです。本物そっくりの実物を使って遊びます」
「え、それって著作権とか……」
「法定で争いますか?」
 レタウはにっこりと微笑んだ。
「うわぁ、えぐっ。ここから日本に行くのも一苦労なんでしょ」
 鈴瞳は苦いものを舐めたかのように顔をしかめた。
「まぁまぁ、ここのことを嫌いにならないで下さい。楽しむことに貪欲なんですよ。……それで、実物があるということは盗みにも遭うわけです。そして、それを略奪する輩がたむろする場所……『札の墓場』」
「ふ、ふだのはかばぁ……」
 鈴瞳は少し馬鹿にしたように反芻した。
「あなた達に頼みたいのは、『札の墓場』にいるならず者達の退治です」
「……ぁ、はぁ、」
 鈴瞳は曖昧な表情を浮かべた。
「何故国家権力に頼まない?」
 務都弥が急に口を開いた。
「わっ、むっ君いたの?」
 鈴瞳は驚いたように務都弥の方を向いた。
「こんな一般の人間に任せるような事態じゃないと思うが?」
 務都弥は鈴瞳を無視して話を続けた。
「勿論警察には協力を仰いでます。ですが、それだけで解決する程甘いものではありません。そこで、ならず者達を内部からも追い詰める方法を私が提案したんです」
 レタウはそう言うとにっこり微笑んだ。
「ならず者のルールでならず者達から略奪すれば、その分だけ相手の資産を削られる。ならず者達に干渉出来るんです」
「そのならず者のルールとは?」
「遊戯王でデュエルを行い、勝った者は負けた者のデッキを略奪出来るんです」
「……なんか紳士だね」
 鈴瞳は胡散臭そうに目を細めた。
「一種の賭け事の様なものみたいですね。……さて、何か質問はありますか」
 レタウは務都弥と鈴瞳を見回した。埒路は寝ている。
「略奪って犯罪だよね?」
「警察からは特別に許可を得ています」
「カード持ってないんだけど」
「こちらで貸し出します」
「でも負けたら取られちゃうんでしょ?」
「ある程度なら許容出来ます」
「うーむ……」
 すらすらと答えるレタウに対し鈴瞳は渋い顔だ。
「百聞は一見に如かず。後で現場にご案内しますよ。それより私は、2人の実力が見たいです」
「実力?」
「2人でデュエルしてみて下さいよ。それ位ならお安い御用でしょう?」
「まぁそれ位ならいいけど」
 鈴瞳がそう言うと、レタウはにっこりと微笑んでその場を立ち去って、少しして紙を2枚持って戻ってきた
「じゃあ、レシピをここに書いて私に渡して下さい」
「それ、ダジャレ?」
「言われてみればそうですね」
 レタウはクスリと笑った。
「ルールは最新の2月のリミットレギュレーション。1本先取にしましょうか」
「……あの、今思ったんだけどさ、」
 鈴瞳は手を挙げた。
「なんですか?」
「もしかしてそのならず者達も守ってんの制限改訂?」
「そうですね」
 レタウは頷いた。
「そっかぁ、ならず者達がいかつい顔で『黄金櫃制限とかふざけんな!』とか言ってたのかぁ……」
 鈴瞳は斜め上を見上げて薄く微笑んだ。
 それから2人はデッキレシピに記入し、レタウが完成したデッキを持ってきた。
「では2人共、これを」
 レタウはデッキと四角くて薄くて青い板状の物を持ってきた。
「何これ?」
「決闘台です」
 レタウがパーツを起こしたり伸ばしたりなにやらすると、務都弥の胸辺りの高さになって直立するようになった。
「へぇぇ」
 鈴瞳は興味を示したようだ。
「デュエル開始時に指定の決闘台と通信する機能もついているので、……あ、2人共デッキ貸して下さい……2台の距離を置いて始めます」
 レタウは2人のデッキをそれぞれの決闘台に乗せて2台のどこかのボタンをほぼ同時に押した。
《ピー、デュエルを、始めます》
 高い電子音の後に、電話受付の女の様な声がした。 
 

 
後書き
第2話の要約:難しいことは作者が考えておくので、読者の皆さんは気にせず遊戯王をお楽しみ下さい
さるとんどる、おみのづえSPです。
もっと更新速度を上げなければと思う次第ですが、1次の方や他の名前で書いてる小説も書きたいぃ。
……ハッ。……大丈夫です。これからはもっと早めに更新します。おとといに友人と話しててやっぱ更新速度が大事だなって話し合ってました。
ではでは、次は完成してるのでこれの翌日に予約投稿しておきます 
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