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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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流星


「うおおおおお!」

右拳に炎を纏ったナツが、ジェラールに向かって駆け出す。
そのまま拳を振るうが、ジェラールは簡単に避けた。

「!」

が、ナツはすぐに体勢を立て直し、炎を纏った左足で蹴りを放つ。
それだけではない。
拳、脚、肘、膝・・・体の武器になりそうな場所をフルで使い、全く反撃をしてこないジェラールに攻撃を仕掛けていった。

「火竜の翼撃!!!!と、鉤爪!!!!」

炎を纏った両腕で薙ぎ払い、連続で蹴りを決める。
何の抵抗もせず吹き飛ばされるジェラールを見て、ナツは叫んだ。

「行ったぞティア!」
「解ってる!」

ジェラールが吹き飛ばされる先には、身の丈を軽く超える水の剣を構えたティアが立っていた。

大海聖剣(アクエリアスエクスカリバー)!!!」

ティアは剣を一閃に振るい、ジェラールを斬りつける。
しかし攻撃はそれだけで終わらず、斬りつけた衝動で跳ねあがったジェラールを目に映し、地を蹴って跳んだ。

大海怒号(アクエリアスレイヴ)!!!」

指を鳴らし、一瞬で魔法陣を展開させる。
そこから凄まじい勢いの水の発射し、ジェラールの体を床に叩きつけた。

「ナツ!」
「おう!」

ティアの声を待っていたかのようにナツは動き、ちょうど2人はジェラールを挟んで立つ。

「火竜の・・・」
大海(アクエリアス)・・・」

ナツは大きく息を吸い込んで頬を膨らませ、ティアは両手に水の大砲を持ち――――

「咆哮!!!!!」
大砲(キャノン)!!!!!」

片方からは竜をも滅する炎のブレスが、片方からは圧縮し金属をも撃ち抜く水が、ジェラールを襲う。
相反する2つの属性の魔法が直撃した事で煙が起こり、2人にジェラールがどうなったかは見えない。
すると、煙の中で人影が動いた。

「それが本気か?」

その人影は、ジェラール。
着ていたフード付きマントはナツの炎で燃え、ボディスーツのようなものを着ている。
そして、無傷だった。
それを見たナツは悔しそうに顔を歪め、ティアは軽く舌打ちをする。

「この手で消滅させちまう前に1度、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と『あの』カトレーン一族の破壊力を味わってみたかったんだが」

パンパン、とジェラールは服の埃を払う。

「この程度なら怖れるに足りんな」
「なんだとォーーーーーーーーっ!!!!」

その余裕に溢れた言葉にキレたナツはジェラールに向かって駆け出していく。

「よくも儀式の邪魔をしてくれたな。俺の『天体魔法』のチリにしてやるぞ」

そう言ってうっすらと笑みを浮かべるジェラール。
すると、その全身が金色の光に包まれた。

流星(ミーティア)!!!!」

その瞬間、ジェラールの姿はそこにはなく――――

「うがっ!」

そのジェラールに向かって駆け出していたナツの背後に回り込み、ナツを殴った。

「っ速い!」

それを見ていたティアは海の閃光(ルス・メーア)の異名に恥じぬ素早い動きでジェラールに向かっていく。
もちろん魔法を使っているジェラールには敵わないが、それでも追い付けるほどに素早かった。

「くっ!」

ティアがジェラールを追いかけ始めたと同時に、ナツに膝蹴り、拳が決まる。

「ヤロォ!!!」

負けじとナツも拳を振るうが、その拳は空を裂いた。

「ぎっ!」

逆に蹴りを喰らい、その場に倒れ込む。

大海銃弾(アクアリアスガンス)!」

持ち前のスピードでジェラールを追い、その右手から圧縮した水を勢いよく放つ。
水の銃弾はジェラールに向かうが、それも空を裂いた。

「なっ・・・!きゃあ!」

避けられた事に驚きつつも次の攻撃に構えようとしたティアの腹に、ジェラールは容赦なく膝蹴りを決める。
そのままティアは吹き飛ばされ、何とかステップを踏みナツの近くに着地した。

「くそ、速すぎる!」
「解ってるとは思うけど、こういう時は目で追わないでよ」

短く会話を交わすと、意識を集中し周りの気配を察知する為に目を閉じる。

「臭い・・・感覚・・・音・・・」
「動きの予測・・・集中・・・」

全神経を研ぎ澄まし、ジェラールの動きを予測する。
そしてジェラールが2人に向かってきた瞬間――――――

「「そこだ!!!!」」

同時に目を開き、ナツは炎を纏った右拳を、ティアは水の針を一気に放った。
が、その瞬間、金色の光は一気に素早さを増す。

「まだ速くなるのか!?」
「ウソでしょ!?」

ジェラールの動きが速くなった事で予測が外れ、2人の攻撃は空振りに終わる。

「お前達の攻撃など、2度と当たらんよ」
「うわあああああ!!!」
「きゃあああああ!!!」

目に留まらない様な素早さでの攻撃に、2人とも手も足も出ない。
ナツの腹に蹴りが決まり、ティアの腹に拳が決まる。

「とどめだ。お前達に本当の破壊魔法を見せてやろう」

そう言うと、ジェラールは一気にナツとティアが丁度中心辺りに見える上空に飛んだ。

「七つの星に裁かれよ」

左手の指を全て開いて立て、その掌に人差し指と中指を開いた状態で建てた右手を乗せる。

七星剣(グランシャリオ)!!!!!」

刹那、上空から七つの金色の光が楽園の塔に降り注ぐ。
閃光、爆音、爆風。
3つが合わさり、重なり、調和し、ナツとティアを襲う。
塔の一部が崩壊し――――――

「・・・」

ナツとティアは、遂に倒れてしまった。

「隕石にも相当する破壊力を持った魔法なんだがな・・・よく体が残ったもんだ」

ドサッと地に落ち、ピクリとも動かない2人を見て、ジェラールが呟く。
いくらナツが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中では強く、ティアがギルドのS級魔導士でも、相手は思念体(ジークレイン)で聖十の称号を持っていた男。
大陸で強い魔導師10人の1人―――つまりはマスター・マカロフやマスター・ジョゼと同じくらい強い―――に勝つなど、難しい事なのだ。
ジェラールは倒れた2人から目を外し、ゆっくりと塔を見回した。

「それにしても少しハデにやりすぎたか。これ以上Rシステムにダメージを与えるのはマズイな・・・魔力が漏洩しはじめている。急がねば」

そう言いながら、ジェラールは倒れるエルザに目を向ける。

「なあ、エルザ」

その顔には歪んだような笑みが浮かべられていた。
ジェラールがゼレフ復活の儀式を始めようかと考えた、瞬間。

「!」

コン、コロン、コッ、コッ、カラン。
小さい音を立て、水晶のカケラがジェラールの足元に転がってきた。
水晶が転がってきた先に目を向けると―――――

「ハァ、ハァ・・・・ハァ・・・ハァ・・・」

息を荒げたナツが、近くにある水晶のカケラをジェラールに投げ付けていた。

「・・・」

それを見るジェラールは、ただ沈黙する。
ヒョイ、と水晶を掴み、コン、コン、と水晶同士がぶつかる音を立てながら、2発目は少し逸れた。
掴み、投げ、コン、コン、コォーン。
3発目はジェラールの少し右側に、2発目よりも逸れた。
そして4発目。ようやくそれはジェラールの胸元にトン、と軽く当たる。

「へへ・・・当たったぞ、攻撃・・・」
「当てるまでに・・・時間、掛けすぎよ・・・バカ、ナツ・・・」

喰らったダメージは大きい。体力も魔力も少ない。
が、この2人は諦めの悪いギルドの魔導士――――否、諦める事を知らないギルドの魔導士。
ぐぐ・・・と無理矢理体を起こす。

「この塔・・・つーか水晶?壊されちゃマズイって訳か・・・」
「きっと今頃評議院は機能停止・・・もうエーテリオンは落ちてこない・・・27億イデアもの魔力を溜めるのは・・・もう不可能だろうし・・・」

そして2人は顔を見合わせ、何かを確かめるように頷き――――――――












「運が悪かったな!!!!」

「なら話は早いわ!!!!」












ナツは拳を、ティアは圧縮した水を、自分の足元の水晶に直撃させた。

「よせ!」

ジェラールが叫ぶ。
傷つき、体力も魔力も少ないなか、2人は立ち上がる。

「生憎ね・・・私達は・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士は、問題を起こす事と物を壊す事が何よりも得意なのよ・・・特に、コイツと私は」

仕事に行けば毎回、必ずと言っていいほどに何か物を壊すナツ。
数々の問題を起こし、ギルド最強の女問題児と評されるティア。
マカロフがいたら気を失いそうなほどのギルドを代表する問題児2人、元素魔法(エレメントマジック)を使う3人が集うよりも最悪で最高な問題児2人が集えば・・・起きない問題などないし、壊せないものなど何もない。

「燃えてきたぞ。今までで最高にだ!!!!」

笑みを浮かべ、ナツが拳を握る。
ティアもその右手に水のナイフを持ち、口元を挑発的に緩めた。

「このガキ共がぁ~~」

表情を怒りだけに染め、ジェラールは憎々しげにナツとティアを睨んだ。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
いつもより文字数少なめですが、書きたい事書けたしいいかな、と。
それに次回は・・・うっ・・・悲しくなっちゃう話ですし。
どうやって描写しようかな・・・。

感想・批評、お待ちしてます。 
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